【アソビの遺伝子】「日本独自のコンテンツを世界に向けて」プロダクトテクノロジー部・山田裕司<後編>

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【アソビの遺伝子】「日本独自のコンテンツを世界に向けて」プロダクトテクノロジー部・山田裕司<後編>

ソニー・インタラクティブエンタテインメントのワールド・ワイドスタジオの中でもPlayStation®黎明期から歴史を支え続けてきたJAPAN Studio。その開発環境を整備する重要なセクションがプロダクトテクノロジー部である。

前回に引き続き、プロダクトテクノロジー部・山田裕司にそのゲームづくりのビジョン、そして次代に続くクリエイターたちへのエールを訊く。

前回の記事はこちら
【アソビの遺伝子】「クリエイターが制作に専念できる環境を」プロダクトテクノロジー部・山田裕司<前編>

自分で動くというクリエイティビティ

山田裕司(やまだ・ゆうじ)
テクニカルディレクター

<主な担当作品>
・『サルゲッチュ』
 (PlayStation®用ソフトウェア/1999年発売)
・『サルゲッチュ2』
 (PlayStation®2用ソフトウェア/2002年発売)
・『サルゲッチュ3』
 (PlayStation®2用ソフトウェア/2005年発売)
・『フリフリ! サルゲッチュ』
 (PlayStation®3用ソフトウェア/2010年発売)

――クリエイターのゲーム環境を整えるプロダクトテクノロジー部の立場で、達成感が最も得られる瞬間、アドレナリンがMAXになる瞬間というのはどのようなタイミングなのでしょうか。

ゲーム制作においてはマスターアップという最大の達成感がありますが、その中でも今の僕の立場だと、新たなハードウェアのローンチに合わせたソフトのマスターアップが特に盛り上がりますね。

まず第一歩として”どうやってつくろう”というところから新しいハードに関わる仕事は始まるので、その検証や試行錯誤をクリエイターが制作にかかる前にクリアにしておくのが我々の役割です。たとえば『KNACK』だと、PlayStation®4のローンチに合わせるための仕切りが上手くできた、というのが達成感ですね。

『KNACK』(PlayStation®4用ソフトウェア/2014年発売)

――山田さんの立場から、ゲーム業界志望者へのメッセージはありますか? こういう資質、こういう情熱がほしいというアドバイスは?

面白いことを考える時って、枠にとらわれたりするとうまくいかないと思うんですけど、会社に入っちゃうとそれを「どうやるんですか?」と会社に求めてしまいがちになります。それを純粋に「どういう風にしたらいいのか、どんな技術があれば実現できるのか」というのを自分で調べるのが重要だと思います。

これはゲーム業界に限らないことかもしれませんが、会社の中にいても、そうやって自分で動く人と、自分の経験の中だけで作業する人だと明らかに差が出てきます。とにかく好奇心を持って自分で調べることが大切ですね。もう既存のモノは全て疑うくらいの気持ちで。

――山田さんのお仕事は、まさしく自分で調べる人にしかできないことですよね。

そもそも「どうやればいいんだろう?」という解のない仕事が多いので、自分でそれを探していかないと。

僕が入社したばかりのときは、まったく何も指示をされずに、機材だけを渡されて「好きなことしてていいよ」と何ヵ月も放置されたんです。「何をしようか?」と思いながら自分でドキュメントを読んで適当にゲームをつくったりしてたんですけど。

そのくらいフリーダムでした。上の人が何をしろと言うでもないし、周囲のクリエイターの方も教えてくれないので、こちらからどんどん聞きに行くしかない。

――自分がやりたいから人に聞くというモチベーションが大事だということでしょうか。

仕事柄パソコンに向っていることが多いので、なかなか人と話しづらいというか、業務に必要なこと以外はコミュニケーションを取らないということが起こりがちなんですが、そこで自分からコミュニケーションを取りに行くというのが重要になってきますね。

――コミュニケーション能力はやはり必要だと。

社内はグローバルなので、たとえば海外スタジオのクルーに「『アンチャーテッド』ってどうやってつくってるの?」とか聞く機会はいくらでもあるんですが、それが日本人にはなかなかできない。コミュニケーション能力はやはり重要な武器になりますね。

『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』(PlayStation®4用ソフトウェア/2016年発売)

世界を見据えながらも、日本独自のゲームを

――PlayStation®VRの登場などで、ゲームファンの間では新しい体験ができると期待されています。この時期、山田さんのお仕事もまた忙しくなってきたのではないでしょうか。

PS VRに関しては、いかに没入感のある仮想空間を作るかというのが重要で、ゲーム制作の環境もVRに特化したものや、ひょっとしたらVR空間内での制作環境が必要かもしれません。なによりVRの登場は初期のゲームクリエイターが持っていた”何か新しいモノをつくりたい”という衝動を呼び覚ます存在だと強く感じています。

――ゲームハードがどんどん進化して表現が多様性を増す中、今後ゲームづくりの劇的な変化というのはあるとお考えですか?

無償あるいは低価格なゲームエンジンが公開され、ハイクオリティなゲームが作れることが普通になりつつある中で、グラフィックは必ずしもゲームの売りにならない。ゲームの価値は純粋なストーリーやアクション性などの、コアな部分に戻りつつあると思います。

そこで、元来そういったゲームづくりを目指していたJAPAN Studioは有利になるのではないか、と。技術を持つだけではなく、どう使うかということにこれからのゲームづくりの主軸が移って行くのだと思います。

――ワールドワイド・スタジオというグループの中で、世界に目を向けることがゲームづくりに影響を与える可能性はあるでしょうか。

やはり日本と海外とはゲームに対する好みが違いますので、日本色をどこまで出すか、海外にも受け入れられるものにするか、それとも独自路線で行くのか、そのあたりは非常に気を遣いますし、バランスも大事だと思います。

僕自身としては、やはり日本独自の、海外ではつくれないものをつくって、なおかつそれが世界に受け入れられるようにしなければいけないと思います。その意味では「GRAVITY DAZE」シリーズをはじめ、ここ最近のJAPAN Studioのタイトルはよく考え抜かれていると思います。欧米に媚びるというと語弊がありますが、変にJAPAN Studioの個性を曲げることは考えていません。

『GRAVITY DAZE 2/重力的眩暈完結編:上層への帰還の果て、彼女の内宇宙に収斂した選択』(PlayStation®4用ソフトウェア/2016年発売)

──JAPAN Studioの中にあって、各タイトルごとの制作チームに違いや個性は感じられますか?

けっこうありますね。たとえば『プレイルーム』のチームは少数精鋭で、VRやARの要素をいかにエンタテインメントにしてゆくかを常にみんなで討論しています。旧SCEをほうふつとさせる、全員参加型です。みんながゲームデザイナーという雰囲気。

それに対して『KNACK』や「GRAVITY DAZE」シリーズのチームは、現在の大規模でシステマティックなゲームづくり。『KNACK』は海外のアウトソーシングを駆使した、制作面でもワールドワイドなものになりました。そこから学ぶことも多かったですね。

「GRAVITY DAZE」チームは、『プレイルーム』と『KNACK』の中間といったところでしょうか。昔のSCE時代からのつくりかたをうまく残し、スケールアップしたような。

――なるほど。それでは山田さんにとって、ゲームの楽しみとは?

ゲームを通して様々な体験ができること、そして、それを実現させる技術を見ること。言ってみれば面白さの宝庫、つくっても楽しいし、プレイしても楽しい。二度美味しいじゃないですけど(笑)、ここには無限の面白さがあると感じています。

――最後に、読者やこれからゲーム業界を目指す人々に対して、メッセージをお願いします。

ワールドワイド・スタジオの中でJAPAN Studioも世界にゲームを発信していますが、当然まず日本のユーザーの皆さんにとって面白いものをつくって行きたいと思っていますので、これからもよろしくお願いいたします。

次回、「アソビの遺伝子」は9月12日(月)に公開予定です!お楽しみに!

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