
こんにちは、『Lumines Arise(ルミネス アライズ)』のゲームディレクター兼アートディレクターを務める石原孝士です。2004年にPSP®「プレイステーション・ポータブル」で誕生したパズルゲーム「Lumines (ルミネス)」シリーズを再構築し、現代的に進化させた最新作『Lumines Arise』。PlayStation®5(PlayStation®VR2対応)タイトルとして発売されてから、早くも1ヵ月余りが経ちました。
JOURNEYモードでの旅や、MISSIONモードでのトレーニングやチャレンジ、世界中のプレイヤーとオンライン対戦が楽しめるBURST BATTLEなどマルチプレイヤーモード、そして週末72時間限定イベント“Loomii-Live”への参加など、皆さんが思い思いに楽しんでくださっていれば幸いです。
今回は、私たちエンハンスと開発チームがどのようにして『Lumines Arise』というプロジェクトに命を吹き込んだのか、その開発の裏側について少し掘り下げてお話ししたいと思います。
新しい、かつ次世代の「Lumines」について考える
『テトリス エフェクト・コネクテッド』のプロジェクトを終えたあと、次は新作「Lumines」の制作に移ることが決まっていました。当時の私たちの頭のなかにあった一番の難題は、「次世代の「Lumines」を定義するものは何か?」ということでした。
私の頭のなかで構想が練り上げられ始め、“新しいLumines”を象徴するキーワードや色といった要素を検討する時間を重ねていき、最初は非常に抽象的なものでしたが、徐々にメインとなるアイデアが定まっていきました。また、「Lumines」シリーズの生みの親でもあり、エグゼクティブプロデューサーの水口哲也と膝を突き合わせ、コアとなるコンセプトや、今作が目指すべき方向性について意識合わせを行ないました。
コアのコンセプトが定まったところで、個々のステージデザイン、視覚化したい瞬間や感情、UI/UX、そして各ステージにマッチする音楽スタイルのアイデア出しなどのさまざまな要素の制作にほぼ同時進行で取り掛かりました。
全体像が見えてきた段階で、私はプリビジュアライゼーション(試作映像)を作成しました。ちょうど本格的なチーム編成が始まった時期だったので、なるべくメンバー間で共通のイメージを持てるようにするためです。「どうすれば表現をさらに良くできるか」、「体験をどう強化するか」という議論が始まり、初期の形成と研磨のプロセスを経て、本格的なゲーム構築がスタートしました。
ひとつのステージを長期間かけて作り上げる
よく聞かれる質問に、「ひとつのステージを最初から最後まで作るのに、どれくらいの時間がかかりますか?」というものがあります。実はこれに答えるのは少し難しいのです。
開発中、私たちは常にステージのブラッシュアップと改善、微調整を続けているからです。これはエンハンスの“流儀”とも言えるスタイルになっていて、「よし、このステージは完了だ。次はこれ!」と区切って進めることは、ほとんどありません。
ひとつのステージの初期デザインは、ビジュアル、音楽、サウンド、そして喚起したい感情など、ラフの状態からスタートします。そこから作業を進めるなかで、ビジュアルデザイナーであれサウンドチームのメンバーであれ、各人が微調整や変更を加えていきます。この行なったり来たりのプロセスは止まることがありません。
もし合計日数を数えたら、コンセプトから完成まで、1ステージあたり平均して3〜4ヵ月ほどかかっていると思います。ときには、特定のステージに集中しほかのステージは一度“寝かせて”しまうこともあります。
本作では、ビジュアル、効果音、音楽といったステージの全要素が、調和して機能しなければなりません。まさに、“ビジュアルが音楽に影響を与え、音楽がビジュアルに影響を与える”と言うことです。
そのため、開発中はこういったプロセスを最後まで繰り返すことになりますが、ビジュアル、効果音、音楽のすべてが調和すると、プレイしていて「気持ちいい!」と感じるゴールラインにたどり着きます。そこでやっとステージが完成するわけです。

私も水口哲也も今まで繰り返し言っている“音楽とビジュアルの調和”は、初期段階では非常に大まかなものです。先ほど説明した通り、私たちの開発スタイルは非常に同時進行かつ流動的で、最初は音の波形やMIDI、タイミング、BPMデータを分析するなど、音楽に関する計画を入念に行ないますが、実際の制作のイメージは、何人もの作り手によって“粘土の山”から何かを作り出すような作業だと感じています。
開発チーム全員で共通の完成イメージはありますが、作っていく過程でなにかを削ったりあるいは足したり……。やっぱり戻したりするような行程でした。「追加した形や曲線が、やっぱり合わないな」となることもあります。常に完璧を目指して修正を続ける、私たちの開発スタイルには、そうした柔軟性のための余地があるのです。
没ステージの裏話
さて、「ゲームからカットされた(没になった)ステージはあったのでしょうか?」と時々聞かれますが、 実は、開発の非常に早い段階で取り組んでいたものの、テーマ的に合わなかったものがいくつかあります。 ひとつは“海”をテーマにしたもの、もうひとつは“森”をテーマにしたものでした。このふたつのステージは、『Lumines Arise』のJOURNEYモードに入る数多くのステージのなかから見るとあまり面白みのない・魅力的なものにならず、泣く泣くカットをしました。
今回の『Lumines Arise』を作るにあたり、私は自分自身にとても高いハードルを課していました。ここ20年ほど、ずっと“共感覚”という体験を軸にゲームを作ってきましたが、今回はそこからさらにもう一歩、深い領域へ踏み込む必要があると感じていたからです。
試行錯誤した結果、私は『テトリス エフェクト・コネクテッド』に見られるような“明るく、柔らかで、壮大”な空気感とは違う、もっと“ダークで、クール”なトーンこそが、この新しい『Lumines』にはしっくりくると確信し、このスタイルを貫くことにしたのです。
結果的に“海”と“森”のステージはお蔵入りとなりましたが、本作で収録されている全36のステージは、どれもこれまで取り扱ったことのない新しいテーマかつ斬新なものに仕上がったと思います。
VRで感じる“ライブ”の感覚
今作は「Lumines」シリーズとして初めてVRでプレイできる作品でもあります。私たちが目指したのは、VRで「Lumines」をプレイしたときに“ライブコンサートの最前列にいる”ような感覚を味わってもらうことでした。
目の前に広がるステージ、ライト、そしてエネルギーの雰囲気を引き出すために、カメラの位置調整にはかなりのチューニングを要しました。PS VR2でプレイされた方は、テレビ画面では見えない光やパーティクル(粒子)が舞っていることに気づいたかもしれません。そうした細部の表現とヘッドセットの振動機能が相まって、体験への没入感をさらに深めていますので、ぜひPS VR2をお持ちの方は体験してみて下さい!
3D化という大きな挑戦
さて、シリーズファンの方ならご存じの通り、これまでの「Lumines」シリーズはすべて2Dで作られていました。『Lumines Arise』ではこれらすべてを3D化しており、膨大なアセット、多数のサウンドの制御、そして音楽と効果音を扱うことになります。
ステージはすべて、ビジュアル、音楽、効果音が異なり、その規模は想像以上に膨大な作業で、制作スケジュールを6ヵ月延長したほどです。 完成したゲームは、そんな苦労を感じさせない、あたかも当たり前のようにありますが、これを実現するための規模と作業量は、今となってはよくぞ乗り越えられたなという作業量だったと思います。
3年半にわたる開発期間で、開発チームは成長し、これまで使ったことのない多くの新技術を学び、各ステージを徹底的なディテールまで調整し、通常のテレビプレイ、PlayStation Portal™ リモートプレーヤーといった携帯機、そしてPS VR2とさまざまなスタイルで楽しめるゲームを送り出すことができました。この『Lumines Arise』というゲームで突きつけたあらゆる課題を乗り越えられたことは、今となってはかけがえのない財産となったと開発チーム一同感じています。

『Lumines Arise』は現在、PS5(PS VR2対応)で発売中です。PlayStation®Plus プレミアム加入者向けにはゲームトライアルも用意されていますので、ぜひ“実際に”体験してみてください。
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Lumines Arise
・発売元:エンハンス
・フォーマット:PlayStation 5
・ジャンル:パズル
・発売日:好評発売中
・価格:ダウンロード版 販売価格 通常版 5,400円(税込)
ダウンロード版 販売価格 デジタルデラックス版 5,900円(税込)
・プレイ人数:1~2人
・レーティング:IARC 7+(7才以上対象)
※ IARC (the International Age Rating Coalition) は、世界のゲーム評価機関により管理される国際年齢評価連合です。
Lumines Arise © Enhance Experience Inc. 2025 © Resonair / BANDAI / BNEI. All rights reserved.









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