※本記事は英語版PlayStation®.Blogの日本語翻訳記事です。
『Returnal』(リターナル)や『ASTRO’s PLAYROOM』をはじめ、『The Last of Us Part II』『Dreams Universe』『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』などPlayStation®の大ヒット作を生み出してきた世界的な開発スタジオ「PlayStation Studios」の統括としてハーマン・ハルストが就任してから約1年5ヵ月が経ちました。
今回ハルストは、PlayStation®.Blogでの20分間におよぶインタビューのなかで、スタジオデベロップメントの現状や、PlayStation®5とPlayStation®4の開発に関する考え、PlayStation StudiosのPC版リリースに対するビジョンなど、さまざまなトピックについて語りました。
本記事ではインタビューから重要部分を抜粋して簡潔にまとめてご紹介します。また、フルインタビュー(英語のみ)はこちらの「Official PlayStation Podcast」からご視聴いただけます。
PS Blog:PlayStation Studiosのコンソール体験には、ストーリー重視のシングルプレイタイトルが欠かせないと考えますか?
ハーマン:もちろんです。ストーリー重視のシングルプレイタイトルは、私たちのDNAです。PlayStation Studiosは、最も記憶に残るストーリー体験をお届けしてきました。私たちはこういったゲームを作ることが好きですし、ユーザーの皆さんに楽しんでいただける限り、作り続けたいと考えています。週末の夜に腰を据えてまったく新しい世界と素晴らしいストーリーに浸る──これ以上ない体験だと思いませんか?
さらに私たちは、ユーザーの皆さんにさまざまな体験をお届けしたいと考えています。フランチャイズ、新規IP、大作ゲーム、小規模で革新的なゲーム、ストーリー重視のシングルプレイタイトル、そしてマルチプレイタイトルなど。マルチプレイタイトルでは素晴らしいストーリーが体験できないというのは、もう昔の話です。
PS Blog:先日、ジェイド・レイモンド氏を含むゲーム業界のベテランたちが、新スタジオHaven Entertainment Studiosの立ち上げを発表しました。さらに直近ではFirewalk Studiosとのパートナーシップを発表しましたが、こちらも業界トップクラスの方々が参画されています。このようなパートナーシップは、PlayStation Studiosの重要なビジョンにどのようにフィットすると考えますか?
ハーマン:こういったスタジオとのパートナーシップは非常にワクワクしますね。位置づけとしては、例えばノーティードッグ、インソムニアックゲームズ、メディアモレキュール、サッカーパンチ・プロダクションズなどのSIEの一部である開発チームと、パートナーとして仕事をしている開発チームとで分けて考えることもできると思います。後者のなかにはHavenやFirewalkはもちろんのこと、コジマプロダクションやフロム・ソフトウェアのように長年にわたってともに仕事をしてきたチームもいます。
一方で、私にとってはいろいろな意味で両者に違いはないとも考えています──どちらもPlayStation Studiosなのです。つまり、私たちはクリエイター主導の組織です。世界で優れた開発スタジオを見つけ出し、そのスタジオが情熱を持ってアイデアを追求することを支援するのが私たちの使命だと思っています。
私にとって重要なのは、PlayStation Studiosがクリエイターにとって各々のキャリアのなかで最高の仕事ができる環境であること。それが私の目指すところです。
PS Blog:現在、PlayStation StudiosがPS4またはPS5向けに開発しているタイトルの総数を教えてください。
ハーマン:現在PlayStation Studiosでは非常にたくさんのプロジェクトが進行しており、25以上のタイトルを開発中です。そのうちの約半数は新規IPで、残りの半数はPlayStationファンの皆さんがすでにご存じのフランチャイズのタイトルです。かなりの数になりますね。
PS Blog:PlayStation Studiosにとって、新規IPの重要性は?
ハーマン:新規IPは私たちにとって非常に重要で、ゲームの生命線と言えます。ただ、新規IPは私たちの戦略において、ひとつの側面にしか過ぎません。PlayStation Studiosは大胆かつリスクを取ってチャレンジします。PlayStationのレガシーを継承し、遊びの限界を超えて、ほかでは作り得ない意義のあるゲームを作り続けたいと思っています。
ご存じの通り、ベンドスタジオは今、非常に高い熱量でエキサイティングな新規IPの開発に取り組んでいます。『Days Gone』で開発した深いオープンワールドのシステムをベースに構築しているタイトルです。私としてもベンドスタジオの新たな取り組みを嬉しく思っています。
PS Blog:PlayStation Studiosのチームは、この一年間の大きな困難にどのように対処し、適応してきましたか?
ハーマン:思うに最大の課題は専門技術が必要な場所、それも多くの場合、物理的な場所が必要なケースです。主にモーションキャプチャーやオーディオの作業です。この課題に対して私たちは、一般家庭に小さなレコーディングスタジオを作るという解決策を取りました。
ただ、多くのシネマティックシーンを撮影したり、複数の役者でモーションキャプチャーを行なう場合はそう簡単にはいきません。そこでいくつかの選択を迫られることになります。それらの作業を開発スケジュールの後半に回すこともできますが、そうなると問題が発生する可能性もあります。あるいはそれ以外の方法で実施し、最終的な品質面で妥協せざるを得ない選択肢も存在します。
それでも品質の妥協はしないと断言できます。私たちは極めて高品質のゲーム、完成度の高いゲームをお届けしたいと考えており、当然のことながらチームに過剰な負荷をかけることなく、これを実現しなければなりません。
現在、私たちはストーリー重視のふたつの非常に大きなタイトルを開発しています。『Horizon Forbidden West』と『ゴッド・オブ・ウォー』の次回作です。どちらのゲームも、モーションキャプチャー作業や人材確保において影響を受けています。『Horizon Forbidden West』については、今年のホリデーシーズンの発売に向けて順調に進んでいると思います。なお、まだ確定ではありませんので、できるだけ早く皆さんにご報告できるよう全力で取り組んでいます。
そして『ゴッド・オブ・ウォー』については、プロジェクトの開始が少し遅れてしまいました。そのためサンタモニカスタジオは、私たち全員がプレイしたいと思えるような『ゴッド・オブ・ウォー』作品を確実にお届けできるよう、発売を来年に延期することを決定しました。
このような状況では、何かを犠牲にしなければなりません。しかし、タイトルの品質や素晴らしいチームの健康や福利を犠牲にしてはいけないと思っています。
PS Blog:PlayStation Studiosの開発ビジョンのなかで、PS4はどのように位置づけていますか? 今後のゲーム開発においても注目していますか?
ハーマン:もちろんです。1億1,000万人を超えるPS4ユーザーの皆さんのコミュニティを構築しておきながら、放置するなんてことはできません。そんなことがあればPS4のファンにとって悪いニュースであるのはもちろん、正直に言うとビジネス的な側面から見てもよくないことだと思います。
『Horizon Forbidden West』『ゴッド・オブ・ウォー』の次回作、『グランツーリスモ7』など、PS4とPS5の両ハードに対応することが理にかなっているタイトルは、PS4でのリリースを引き続き検討していきます。PS4ユーザーの皆さんがそのゲームをプレイしたいと思うならPS4でプレイしていただきたいと思いますし、もしPS5版をプレイしたいと思うならばPS5でもご用意する、という形です。
とはいえ、PS5でしか味わえないタイトルを用意することも非常に重要ですから、『Returnal』や『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』のような、PS5専用のタイトルも開発しています。
PS Blog:今後のPlayStation Studiosのビジョンのなかで、PC版の発売はどのように位置づけていますか?
ハーマン:PC向けの計画はまだ初期段階ですが、『Horizon Zero Dawn』のPC版の発売は非常によい結果が出ています。これは、PlayStationファンの皆さんが長年楽しんできた素晴らしいゲームを体験したいという欲求が、PlayStationコミュニティ外の方にもあることを示していると思います。
ただ、ここで強調しておきたいのは、PlayStation Studiosのタイトルを発売時にプレイしていただくためには、今後もPlayStationが最高の遊び場であるということです。一方で、私たちはPCユーザーの皆さんも大切にしたいと考えており、それぞれの作品を発売する適切な時期を検討していきたいと思っています。5月18日(火)にはべンドスタジオ開発の『Days Gone』のPC版を発売したばかりです。PS4版の発売から約2年後のPC版発売ということになります。
新たなファンの方々にもタイトルを楽しんでいただきたい、それが私たちの目標です──私たちが手掛けてきた素晴らしいストーリー、キャラクター、そして世界を体験したことのない新しいユーザーの皆さんにお届けしたいと思っています。PC版を発売することで、コンソールゲームの素晴らしいラインナップが犠牲になることは断じてありません。
PS Blog:最近日本で話題になっていることをお聞きしたいと思います。PlayStation Studiosの立場から見て、日本は今でも開発の大きな焦点になっていると感じますか? それとも欧米を中心としたゲーム開発へのシフトを考えていますか?
ハーマン:日本のゲームと人材は、ソニー・インタラクティブエンタテインメントとPlayStation Studiosにとって引き続き非常に重要であることを明確にしておきたいと思います。日本とアジアは私たちのレガシーと強く結びついています。ソニーグループの成功、PlayStationというブランド、そしてPlayStationを象徴する多くのフランチャイズは、日本とアジアで生まれたものです。
昨年のPS5の映像イベントでは、ご紹介したゲームの数々に日本の影響が色濃く反映され、それがPlayStationのDNAの重要な部分を占めているのだと実感したことを憶えています。これこそがPlayStationを他とは違うユニークなものにしている要因のひとつだと思います。
私は日本やアジアの高品質なゲームの可能性を理解していますし、ここには世界でも有数の開発人材がいます。日本やアジアには、イノベーションの歴史、職人の技やスキル、そして誇りやチームスピリットがあります。私たちは、そのような伝統を引き継いでいきたいと考えています。
ポリフォニー・デジタルは、世界最高のリアルドライビングシミュレーターを制作している、PlayStationファミリーの重要な一員です。また私たちは、世界のあらゆる年齢層に向けたフランチャイズを開発しているグローバルなスタジオとしてTeam ASOBIを東京で立ち上げています。彼らは非常にクリエイティブなチームです。
またTeam ASOBIと共に、引き続き外部の開発チームの皆さんとのパートナーシップも維持・構築していきます。日本、そしてアジア発のPlayStationゲームの未来にとても期待していますし、日本の開発チームへの関心と情熱的なサポートに感謝しています。
PS Blog:そのことをお聞きできてよかったです。最後にもうひとつ、おまけの質問をさせてください。今後も「ASTRO」が活躍するような気がしているのですが、いかがでしょうか?
ハーマン:そうであることを願っています! 大好きなキャラクターですから。
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