※本記事は英語版PlayStation®.Blogの日本語翻訳記事です。
先週の「State of Play」でついに、私たちプレイヤーおよび主人公アーロイを新たに待ち受ける『Horizon Forbidden West』の世界が初披露されました。新たに加わるゲームシステム、新たな脅威や舞台などを、開発スタジオGuerrilla(ゲリラ)が紹介。美しい映像はもちろんのこと、魅力的なサウンドトラックも注目のポイントでした。今日は、『Horizon Forbidden West』の楽曲に焦点を当てて、本作の作曲家を招いてお届けしたいと思います。
まず最初にお伝えしたいのは、「State of Play」にて公開されたゲームプレイデモ映像で使用されている4曲のサウンドトラックが、ストリーミングサービスで個別にリリースされたことです。ご視聴はこちらからお楽しみいただけます。
今回のメイントピックは、『Horizon Forbidden West』の音楽を生み出した作曲家たちのご紹介。前作『Horizon Zero Dawn』でサウンドトラックに携わったヨリス・デ・マン(Joris de Man)、ニールズ・ヴァン・デル・リースト(Niels van der Leest)、作曲デュオのThe Flightという顔ぶれに、今回オレクサ・ロゾウチュク(Oleksa Lozowchuk)が新たに加わりました。
今回はこの作曲家たちと共に、Guerrillaで音楽監修を務めるルーカス・ヴァン・トール(Lucas Van Tol)が、今回魅力的な対談セッションに参加してくれます。本記事では大まかなポイントを本ブログで抜粋してご紹介しますが、対談のフルセッション(英語のみ)は以下からご覧いただけます。対談では、前作『Horizon Zero Dawn』で構築された世界の上に新たに楽曲を築き上げる難しさや、担当作業の分担(『Horizon Forbidden West』では前作よりも更に多くの楽曲が使用されているとのこと)、それぞれ作曲アプローチなど、さまざまなトピックについて語ってくれました。
メンバー再集結
最新作『Horizon Forbidden West』のための音楽の検討は、「“続編”があると知ったときから」始まっていたと、ヴァン・トールは語ります。
Guerrillaの音楽監修は、『Horizon Forbidden West』のどの側面を誰が担当するのかを決定するだけではなく、全作業の管理も担っています。部族、キャラクター、敵、ロケーション、ヒントなどを音楽で表現することはもちろんのこと、続編のオープンワールドの音楽風景を作成すること、しかも前作からさらに進化させることは、当然骨の折れる仕事です。そういったことを考えると、やはり作業の分担が必須でした。
ヴァン・トールは舞台監督と指揮者のふたつの役割を担い、全体の制作を通してチームへの導入および、制作指揮を担当。彼はさらに、今作の楽曲制作に当たって、これまでとは異なるアプローチをしたいと考えていました。「前作『Horizon Zero Dawn』で最初に目を付けたのはその舞台となる場所でした。今作では、よりストーリーに細かく寄り添い、カットシーン以外でももっと自然に、感情に訴えかける体験を作り出したいと思いました。」とヴァン・トールは語ります。
前作でのコラボレーションの経験が、最善の道を決める助けとなりました。「誰にどの部分を作曲してほしいのか、ヴァン・トールはいつもはっきりとしたビジョンがあるんです。」The Flightのアレクシス・スミス(Alexis Smith)は、ヴァン・トールはそれぞれの作曲家のサウンドと得意分野について非常に知見が深いと語ります。ヨリス・デ・マンは、エリアに限定されないタイプの感情的なヒントの作業を担当し、ニールズ・ヴァン・デル・リーストは、狩りなどの特定のイベント向けのパーカッション音楽や、ゲームに登場する各部族の音楽を担当。作業分担には例外もあります。鍵となるシネマティックやクエストを含むキャラクターを追う一連の流れは、テーマの一貫性を確保するため、同一の作曲家が担当しました。
オレクサ・ロゾウチュクの担う作業範囲は「全てのタイプの楽曲」と、他より広範的。「そのおかげで、さまざまな種類の音楽が互いにどう適合し、ゲーム全体の流れを通してどう紡がれていくか、その感覚をよりしっかりと掴むのにとても役に立ちました。」開始時点からこの世界について深い理解が彼にあったというのは、満場一致の意見だったそうです。ロゾウチュクは、カプコン・バンクーバーで7年務めた業界のベテラン。今作のオーディションに持ち込んだ作品でチームを驚かせ、今回の作曲チームに加わることとなりました。
これはつまり、ロゾウチュクがほかの作曲家の作品を継続的に確認し、まとまりを作る役割を担っているということです。その他の開発メンバーと同様、作曲家たちは世界中のさまざまな国で作業を行っているため、グループ会議やクラウドドライブの共有を活用することで、互いに素早く確認ができました。これにより全体指揮を行うことができ、COVID-19によって強制的に作業が中断された間も(アレクシスの回想によると、デバイスを家に持ち帰って、そこで作業を続けたのこと)、仲間とつながる機会を確保できました。こういったデータの共有は、予想外のコラボレーションも生み出しました。「The Flightは、私が作成した、とある部族用の9部合唱のボーカルアセットを、リミックスして再利用したんです」と回想するのはロゾウチュク。ゲーム内の全く違う場面で、ほかのシーンを肉付けするために独自の方法で使用したんだとか。
『Horizon Forbidden West』の作曲家たち。左から右: The Flight (アレクシス・スミス, ジョー・ヘンソン), Guerrilla 音楽監修, ルーカス・ヴァン・トール (中), オレクサ・ロゾウチュク, ニールズ・ヴァン・デル・リースト、ヨリス・デ・マン.
『Horizon Zero Dawn』への帰還
ロゾウチュクがまず最初に行ったのは、アーロイの世界を深く知るため、1作目のサウンドトラックに立ち返ること。前作で表現されたものに敬意を表すとともにその輪郭をはっきりとさせ、過去作のテーマ曲のバリエーションやパーツを作成すると共に、新たな感情に迫るビートを作曲し始めました。他の作曲家たちも同様で、The Flightはプロセスを思い出すために1作目のレコーディングセッションを振り返り、de Manは前作の楽曲が機能したポイントを掴むために、自身の作品を見返しました。
再び登場する前作のテーマ曲もあります。アーロイのテーマはそのひとつですが、「新作に適応させた」とde Manは言います。前作でストーリーが展開する中、強くなっていくアーロイの自信を表現したこの楽曲を、いかにして馴染みの響きを保ちつつさらに進化させられるのか質問したところ、「それがこの続編の制作で、私にとって一番面白かった部分だと思います」と彼は答えました。
前作から引き続き楽曲を担当した作曲家3者にとっては、自分たちが定義した音楽的なDNAを持つ世界に、新たなレイヤーを追加するのにワクワクしていました。「前作の単なる焼き直しではなく、新たな音楽の領域になるだろうとは覚悟していました」とde Manは先に控える困難を予見します。
チームメンバーは皆それぞれ、現実世界とアーロイの生きる世界の両方でインスピレーションを探しました。「『Horizon Forbidden West』の世界の、自分が担当する部分のバックストーリーを読み込みました」とヴァン・デル・リーストは語ります。「まずは自分たちそれぞれの音楽的な経歴との類似性を見つけ、その要素を抽出して新しいものを作り出すんです」――ロゾウチュクは、前作の楽曲と新しい楽曲とで紡ぎ合う良いバランスを、チームが見出せたと感じていると言います。「前作ゲームのファンを決して遠ざけず、続編でたくさんの探索と旅をしてもらいたいんです。」
新たなサウンドを見つける
楽曲を制作する中で、ゲームのサウンドパレットから外れたもの、またはそぐわないと感じるものが出来上がることはあったかと質問したところ、ルーカス・ヴァン・トールの手腕で、チームが正しい軌道を維持し続けたと再び満場一致。「彼に曲を送ると、『この楽器は特定の部族とリンクしているから、この場面では使わないで』や『このテクスチャの一部を使うのもいいし、ほかのメンバーにこのエリアにぴったりの楽曲を作るコツを聞いてみるのもいいよ』といった具合に具体的なフィードバックをくれました。」とde Manはエピソードを話してくれました。
さらにde Manは「メインの焦点は、オーガニックなテクスチャとサウンドにありました。『Horizon Forbidden West』のゲーム世界の美に適合し、同時に『Horizon Zero Dawn』が基づいているサウンドをアップグレードするもの。つまり、前作でのオーガニックなトーンを補完する、シンセサイザーの作業と人工的なテクスチャがもっと必要でした。」と続けます。
一方でヴァン・デル・リーストはつねに主人公を念頭に置いていました。「私が軸にしたテーマは、世界をつねにアーロイの目線を通して見ることでした。アーロイは、自身の世界の見方に影響を与えるような、困難な任務に再び旅立ちます。」
質問をしていく中で、興味深い事実が浮き上がってきました。ほとんど知られていない楽器を追い求め、どれがそれぞれの部族に適合するか調べているうちに、ニールズ・ヴァン・デル・リーストはオリジナルの楽器を作り上げることで、アーロイの世界にさらに一段階上のレベルで浸ることができたそうです。「アーロイの世界に住む人間たちは、今私たちが生きている社会の記憶が全くありません」、「だから、彼らは自分たちの楽器を1から作り上げるんです。となると、この世界の楽器とは似ても似つかぬ楽器が生まれるというのはあり得る話です。」 とのこと。
作曲プロセスはメンバーによってそれぞれ異なります。ヨリス・デ・マンはピアノを即興演奏したり、たまに独自の小技を使うそう。例えば、バイオリンの弦の間に紙を挟んでピック代わりに使ってみたり…などなど。今回、さらに予測のつかない危険が待ち受けるエリアとしての“禁じられし西部”を反映したスタイルができあがった結果、自らのサウンドパレットはより歯ごたえがあり粗野になったと彼は言います。
ヴァン・デル・リーストの場合は、新しいエリアの楽曲を始める前には、スタジオとキーボードから「休暇」を取り、一度白紙の状態に戻るようにしています。The Flightは、作業デスクを作曲対象のビジュアルでいっぱいにして、実験精神を刺激するようにしています。ロゾウチュクは、担当楽曲を作り出すのに使用する、オーガニックな音源、土着のパーカッション楽器、シンセティックな音源を含めた、途方もない楽器のリストを書き出すとのこと。「あらゆる注意のレベルで、メロディー、ハーモニー、テクスチャすべてを流れるエネルギーの潮流を聞こうとするんです。もう聞き飽きたというレベルに到達しても、それでも注意を引くようなものでなければいけません。鼻歌が自然に出るくらいまでに聞いたら、次に進めます。」
ほかにはないサウンドトラック
2017年に達成した、オリジナルのサウンドスケープを作り上げた成功体験について、「作曲チームが『Horizon Zero Dawn』で成し遂げた誇らしいことのひとつは、楽曲が自然とフィットしていると感じられたこと。楽曲を聞いた人が、”Horizonの世界では当然こういう楽曲が流れるだろうな”と感じてくれるということです。」とde Manは語ります。ヴァン・デル・リーストも同意して語ります。「それが音楽を創作する中で一番ワクワクする部分だと思います。聞いたことないはずなのにどこか懐かしく感じられる、そんなサウンドを作ること。耳にしたことがある楽器もあるとは思いますが、この世界に存在しない楽器や電子音と組み合わせると、サウンドが新しくフレッシュな印象になります。」
対談の中で、前作では、プレイヤーがこれまでに聞いたことのないようなサウンドトラックを作ることがコンセプトだったと明かされました。この精神は、続編でも作曲チームの念頭に置かれています。前作と最新作の系譜について「同じ血脈だが、異なるもの」であるとアレクシスは語ります。ロゾウチュクはその結果生まれた作品を「音楽的錬金術」と呼んでいるそうです。「このプロジェクトでは、人間の音声を使って人間以外のサウンドを作り、アコースティックな楽器を使って人間の声やフレーズを再現している部分があります。」この世界に一歩踏み入れた瞬間にすべてが生き生きとし、音楽風景が広がる。ニールズ・ヴァン・デル・リーストのこのコメントで対談を締めたいと思います。「『Horizon Forbidden West』はつねに創造的に考えることを求められる、特別なプロジェクトでした。本作のゲーム音楽を創ることは、まさにほかにはない唯一無二の体験でした。」
※本記事で紹介しているトレーラーは英語版となります。
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