1999年に第1作、2001年に第2作が発売され、ついに11月19日(火)に「シェンムー」シリーズ最新作『シェンムーIII』が発売を迎える。本シリーズは”オープンワールドゲームの元祖”や”リアルな町や人々の作り込み”などから、”時代を先取りしすぎた作品”と呼ばれ、ゲームユーザーの間で伝説の作品と語り継がれてきた。
2015年、『シェンムーIII』はKickstarterでクラウドファンディングを開始。そして”最も短時間で100万ドルを集めたビデオゲーム”としてギネスワールドレコーズに認定され、最終的に”Kickstarter史上、最も資金を集めたビデオゲーム”となった。
そして先日、『シェンムーIII』のクラウドファンディングに出資したバッカー向けの体験版が配信。それをプレイした多くの「シェンムー」ファンが口にした感想は”「シェンムー」だ!”であった。つまり「シェンムー」という作品が、ほかのゲームでは持ち得ない魅力を継承してきたことになる。その魅力とは何か、特集第1回で解説していこう。
バリエーション豊かな遊び方と作り込まれた人々の生活
「シェンムー」というゲームを簡単に説明すると、主人公の芭月涼が父の仇を討つのが目的の物語で、さまざまな土地でアドベンチャーとバトルパートを繰り返して進んでいく。そして、しっかりとした本筋の物語に加え、ガチャガチャ(ゲーム内では「グルッパ」という名称)や亀レースといったミニゲームなど、多彩な寄り道要素が用意されているのが特徴だ。
これだけ見ると「シェンムー」は”リアルな町や村で自由な冒険ができることが魅力”というように感じるだろう。しかし、それだけでは昨今のオープンワールドのゲームも同じだ。「シェンムー」には、それらの作品では味わえない体験が数多く待っている。
例えば作中で”顔に傷のある胴元を捜す”というシーンがあり、これを元に村の人々から情報を集めることになる。そこで得られる情報は人によって異なり、なかには物語の進行とまったく関係ない情報をくれる人も……。
このように、上記の女性は亭主がギャンブル好きという、物語の進行とは関係のない情報を得られた。こういった情報を集めれば、より「シェンムー」の世界や人々のことを知り没入感を深めることにつながる。その結果、いつしか村や町で暮らす人々に対して感情移入をするようになり、ただのモブキャラではなくなっていくのだ。
彼らの行動や会話内容は、物語の進行状況やゲーム内の時間で変化。さまざまなシチュエーションで人々と会話をするだけでおもしろいのが「シェンムー」だ。人々の生活感を感じられるシミュレーターで、リアルなモニタリングを楽しめるだろう。
世界一KYな男と呼ばれる主人公・芭月涼から目が離せない!
本作の魅力は、前述したように多彩な人々によるところが大きい。それは主人公である芭月涼にも言えることだ。寡黙でぶっきらぼうなところがあるが、内に秘めている想いは強く正義感にあふれている。
とだけ説明すると非常に主人公らしいのだが、物語本編以外を進めていくと、彼のさまざまな一面が見えてくる。「グルッパ」で出たフィギュアを「クールだな」と表現したり、生薬マップを見つけたときに「そんなにもうかるのか」と独り言をつぶやいたりするなど、非常に独自のセンスを持ち、マイペースなところが感じられるだろう。
また、人々と会話をしているとき、彼はりちぎに返事をすることが多いのだが、「はあ…」や「そうですか」と、まったく気のない返事をしてしまうことも。そのためか、「シェンムー」の会話のテンポは少し特殊で、筆者をはじめとするコアなファンは、会話時に芭月涼がどのような反応をするのか期待してしまう。
そして極めつけは、とにかく女性の気持ちにうといこと。ファンの間で世界一KY(空気の読めない)な主人公と呼ばれているだけはある。その鈍感さはコメディレベルの重症なもので、過去作のヒロインたちの想いは彼に届くことはなかった……。その芭月涼が、『シェンムーIII』で魅力的な女性たちとどのような関係を築いていくのかは、間違いなく注目ポイントのひとつだろう。
何かをそぎ落とさずに作られた世界だからこその自由度の高さ
ここまでの記事を読むと「シェンムー」とは、少し変わったゲームなのでは? と思われる読者も多いだろう。それに関しては、まったくもってその通りだと思う。ほかのゲームで考えると「シェンムー」には余分なものが多いのかもしれない。しかし、本来はそぎ落とされるであろう要素がふんだんに残されたことで、「シェンムー」という伝説のゲームが築き上げられたのも事実だ。
そう考えると、決して「シェンムー」は時代を先取りしたゲームではない。いつの時代も「シェンムー」は「シェンムー」というオンリーワンの作品となるだろう。ストーリーやバトルという本筋の道をたどる基本的なゲーム部分以外は、どこにでも寄り道を楽しめるようになっている。
しかし本筋の物語があるということは、過去作をプレイしていないと『シェンムーIII』を存分に楽しむことはできないだろうか? たしかに過去作のダイジェストムービーが見られるとはいえ、詳細なストーリーは過去作を通じたほうがわかることもある。ただ、それよりも『シェンムーIII』で味わえるゲーム体験は過去作に捕らわれていない。その体験を目当てに『III』から始め、本作を楽しんだら『シェンムーI&II』をプレイするという順番で問題ないだろう。
このように、伝説として語り継がれてきたゲーム性をしっかりと継承した『シェンムーIII』。第2回以降は、主人公の芭月涼が新天地の白鹿村や鳥舞でどのような生活を送るのかをレポート。本作ならではの要素や楽しみ方をお届けする予定だ。
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シェンムーIII
・発売元:Deep Silver
・開発元:YS NET
・フォーマット:PlayStation®4
・ジャンル:アクションアドベンチャー
・発売日:2019年11月19日(火)予定
・価格:パッケージ版 希望小売価格 6,980円+税
ダウンロード版 通常版 販売価格 7,678円(税込)
ダウンロード版 デジタルデラックスエディション 販売価格 9,658円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:B(12才以上対象)
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