とにかくデカい『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』インタビューvol②──上級騎士なるにぃが語る“ココがデカい!”

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とにかくデカい『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』インタビューvol②──上級騎士なるにぃが語る“ココがデカい!”

北欧神話の世界が舞台のアクションゲーム、PlayStation®5/PlayStation®4用ソフトウェア『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』。2018年に発売された『ゴッド・オブ・ウォー』の続編となり、主人公クレイトスとその息子アトレウスの壮大な物語が描かれます。

世界観や物語、キャラクターから戦闘アクションまで、すべてがとにかく“デカい”本作の魅力を、上級騎士なるにぃさんに語っていただきました。

※前作『ゴッド・オブ・ウォー』のネタバレが含まれます。

上級騎士なるにぃ

インディゲームの開発を夢見て、現在YouTubeにてゲーム解説系の動画投稿を行なっている配信者。

開発者の思いやりが“デカい!”

──本作のどんなところを“デカい”と感じましたか?

まず、敵がデカいですね。強大な敵や探索するマップのスケール。そして何よりも僕が感じたのは、このゲームは思いやりがすごいというところです。

プレイしていてストレスがかかることはあるんですが、ストレスの波が交互にやってきて、しだいに飲み込まれていくんです。その感覚がすごくて、気がつけばこの広大な世界にどっぷりとハマっている。息つく間もないイベントと、道中に挟まれる相棒との会話が楽しくて、自然と先に進みたくなってしまいます。

しかも、ステージがめっちゃ作り込まれているんですよ。探索に退屈しない。特に私は”行き止まりを全部調べないと先に進めないタイプ”ですので、作り込まれていればいるほど嬉しいですね。このステージ構成も、思いやりのデカさが表れているところです。「何かあるかも?」と思ったところには、必ず何かがあります。さらに、用意されたサプライズは往々にして予想の斜め上。予測はできるけれど、予想はつかない。

例えば、砂漠のど真ん中にある生物が埋まっている状況。こんな光景が目の前に現れても、納得感しかないんです。壮大なものを見て理解はおよばないけれど、でも納得させてくれる世界観の包容力たるや! ほかにも、何気ないところにポツンとある墓に触れたらとんでもない強敵が現れてボコボコにされるとか。いろいろなイベントが押し寄せてくる感覚は、“デカい”としか表現できません。

飽きることなく探索できるのは、ゲームに対する信頼感があるからです。僕の予想を超える何かがまだあるかもしれない。そういう一期一会のドラマを期待できるのは、開発者の思いやりがあってこそ。気がつけば強敵と鉢合わせしてボコボコにされて、顔を真っ赤にしながら1時間くらい粘っちゃう。難しい探索は後回しにすればいいんですが、殴られたら殴り返すのが清く正しい北欧紳士の嗜みというもの(笑)。そんな強敵を倒すと、とんでもないアイテムを落とすものだから、また粘っちゃうんですよね。

はい、完全に開発者の思うつぼです。これはもう、SMプレイですよ。根底に愛と信頼がないと成り立たない、アメとムチの世界なんですね。まあ、クレイトスさんはムチというか、地獄の業火で鍛えられた武器を使っていますが(笑)。

探索していると、まるで宝箱の中をひとつひとつ覗き込んでいるような気持ちになってきます。何気ない景色に、ふと立ち止まって深呼吸をすれば、造形美に一切の妥協はないという開発陣の狂気を胸の隅々まで摂取できます。非常に健康にいいですね。

私は常識を超えた何かを、狂気と呼んでしまいます。予測のつかないものを追い求めた先にあるのが狂気なんですが、それは人々にとって今まで見たことのないものだから、狂っているとしか表現できないわけです。でもそこにあるのは、「これを表現したい」という確かな意思なんです。

『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』は色彩やライティングもすごいです。前作にあったフレイヤの家もそうでしたが、草木と花、そして家という3つが組み合わさったときに生まれる調和。色のフルコースが視覚的に襲ってきます。荒々しいゲームなのに、「なんて美しいんや!」と立ち止まらずにはいられない。気がつけば、作り込まれた花の美しさを前のめりになって見てしまっている。そんな道草もいいものです。

個人的には、シンドリの家がなぜだか落ち着きます。あの場所には、物語の進行に従って小道具が増えたり減ったりする要素があるんですが、そこまで気にしているプレイヤーはそんなに多くないはずです。それなのに、全く手を抜かない開発者のこだわりがすごい。スルーしてもいいところは、いくらでもあるんです。でも、『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』はスルーしないでつぶさに作り込む。愛がなければやりきれない所業です。

──なるにぃさんは神話の世界もお好きそうですね。

きめ細やかな作り込みは美術だけでなく、シナリオやテーマ、世界観そのものにも当てはまります。『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』では、北欧神話に基づいたさまざまなステージを訪れることになります。ファンタジー好きな人間ならば、北欧神話の世界設定はだいたい頭に入っているものなんです。

息子のアトレウスはロキとされていますが、北欧神話でロキといったら、神々を裏切ってラグナロクを起こす悪役です。これを最初から全力でネタバレしてきます。でも、『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』は必ずしも北欧神話の世界がそのまま出てくるとは限らない。どストレートに表現されている神様もいれば、違う表現で出てくる神様もいる。なかなか油断できません。

だから、北欧神話ベースで考えたら「きっとこうなるんだろうな」と予測しやすい物語の構造をしているのだけれど、それをあえて裏切ってくる。正しい北欧神話の流れでストーリーを追っていると、意表を突かれる演出がある。当然、予測を裏切られたときのショックはデカいです。

例えば、狼のフェンリル。フェンリルといったら北欧神話で重要なキーパーソンですが、「なんでお前が死ぬん?」という場面が序盤に出てきます。モヤモヤした気持ちでいたら、あるタイミングで登場して「そういう解釈があるのか。一本取られた!」とピースがピタッと当てはまる。脇道に逸れたと思っていたら、結果的に北欧神話の流れどおりに収束していく。

運命とはそういうもの。果たして運命から逃れることはできるのか!? まさに予測はつくけれど予想はつかない世界。物語の構造そのものにテーマを押し込むという離れ業をやってのけています。デカさは密度。密度は職人芸。まさに神は細部に宿る!

用意された謎解きにしても、詰み防止のヒント機能があるのは個人的に助かりました。細かい謎解き要素のひとつひとつが凝っていてわかりづらいんですが、めちゃくちゃ親切なヒントがあるから詰んでしまうことなくゲームプレイに没頭できるんですね。悩みたい人は好きなだけ悩めるし、戦闘だけ楽しみたいという戦闘狂にも嬉しいところだと思います。

──荒々しい戦闘にも思いやりが詰まっているということでしょうか?

戦闘面も最高です。殴りたいと思った時、必ず傍に現れてくれる数々の敵。彼らを殴れば、血しぶきとともに母性が噴き出します。この母性とは、開発者の思いやり。おもてなしです。「どうぞどうぞ、殴ってください」と。武器が箸だとすれば、敵を箸置きのように添えてくれています。

今作は武器ごとにいろいろな技があります。敵を打ち上げたり、まとめて薙ぎ払ったり。でも、すべてを兼ね備えた技は存在しないから、武器に応じたひとつの大技を手に入れることがモチベーションになってきます。ただし、レベルアップで覚えられる技は限られていて、戦いで使える大技は探索で手に入るアイテムが必要です。だから探索がはかどるんですよ。強さを求めて探索に行って、探索していると強敵にぶち当たると、おもてなしの往復ビンタをされている気分。デカいマップを探索する気力も湧いてくるというものですね。

こういうふうに、すべてがひとつの線につながっていく感覚が『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』のデカさの象徴だと思います。もちろん好みは人それぞれで、細かいマップ探索をしなくてもメインストーリーを進められます。まあ、少なくともうちのクレイトスさんは、気がつくとマップの端をこすっているんですけどね(笑)。

鍛えた強化は無駄じゃない。鍛えるほどに強敵が現れて、強敵を倒すほどに強くなっていく。このバランスが神。まさに神ゲー。そう、探索の成果をデカい敵にぶつけるとき、『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』の懐のデカさを痛感します。求めれば与えてくれる。探せば答えてくれる。気を抜けば殺される。ゆえに『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』は思いやりが“デカい”のです。史上最高のおもてなしを体験できる『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』。和の心です。

死を覚悟した父の背中が“デカい!”

──クレイトスとアトレウスの親子関係など、作品テーマにはどのような感想を持ちましたか?

この作品に触れて感じたのは、「死を覚悟した父の背中が、なんとデカいことか!」というところです。クレイトスという男の人生の集大成を描いていて、彼の人生は大きな苦痛を伴うものであり、その末に得たものが愛息子アトレウスでした。しかし、ラグナロクは予言します。クレイトスとアトレウスに何か大きなことが起きると。

この運命は川の流れのようなもので、何もしていないと気づきません。立ち向かうと決めた時にそのデカさに気づき、絶望することになるんですね。この世界はデカい。でも、そのデカさをもってしても、「こうありたい」という理想をすべて受け入れることは不可能です。どうあがいても、すべての選択肢を満たすことはできない。選択肢がどれだけ多くても、選べるのはたったひとつだけ。そのひとつに収束していくことが運命。必ずどこかで犠牲が出てしまう。

例えば、物語の冒頭でクレイトスは前作で仲間だった女神フレイヤに襲われます。クレイトスとフレイヤの関係は壮絶です。前作でクレイトスは過ちを犯して、アトレウスを死なせかけてしまいます。そのときアトレウスを救ってくれたのがフレイヤでした。クレイトスにとって、かけがえのない恩人ですね。しかし物語が進んでいく中で、クレイトスはフレイヤを助けるため、彼女の最愛の息子を殺すことになってしまいました。クレイトスはフレイヤからとんでもない恨みを買って、今作の冒頭から襲われたわけです。

皮肉な話ですよね。息子の命を助けてくれた彼女自身の息子を殺すことになってしまうなんて。何もしなければ、誰の恨みも買わない。しかし仁義を通すならば、過ちごと押し通すしかない。生きるならば、どこかで血は流れるわけですよ。覆水盆に返らずとは言いますが、その時こそ、選べなかった選択肢のデカさを痛感します。

その後もフレイヤは何度も何度も襲ってきます。クレイトスは自分の息子を殺した仇ですから当然です。でも、クレイトスにとっては、アトレウスの命を救ってくれた恩人だから殺せない。何度襲われても、絶対に殺せない。そこでクレイトスが放った「自分が死ぬつもりはないが、お前を殺すつもりはもっとない」という言葉が忘れられません。なんて罪深い優しさなんだろう。クレイトスはフレイヤの攻撃を防ぎながら、彼女の恨みと怒りを粛々と受け入れるんですよ。息子を愛するその気持ちは、自分も痛いほどわかるから。

このどうしようもない運命と、それに抗う者たちの葛藤こそが『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』のメインテーマです。正しくありたいならば、死ぬしかない。生きる意味を求めるならば、罪を背負うしかない。だが、大切なもののデカさだけ、背負う罪もデカくなるというもの。ゆえに、クレイトスの背中はデカかった。

──ユーザーには本作のどこに注目して、どのように楽しんでほしいですか?

先ほども言ったように、スルーできる要素をスルーしないで作り込むのが『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』のすごいところです。誰も見ないかもしれない、誰にも理解されないかもしれない。そこを作り込んでいるのは、ひとつのオブジェクトやマップ構成に限ったことではなくて、話の構造そのものにも当てはまります。

緻密で理解されないかもしれないけれど、それでも作らざるを得ない。僕にはそれが、クリエイターの魂の存在証明だと思えてならないんです。なぜなら、ゲームにおける世界観の説得力は、そこにしか宿らない気がするから。細かすぎる思いやり、あるいはこだわりの数々は、プレイヤーの意識に上がらないだけで、でも本当はみんなが気づいているポイントなんです。最初から視界には入っているけれど言語化できないのは、あまりにも細かすぎて数が多すぎるから。言葉にすらならない、感覚のもたらす叫び。その総称が“デカい”なんです!

ぜひ『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』に触れてください。そしてプレイが終わったあと、振り返ってみてください。きっと表現しきれない“デカい”何かがあったと信じたくなるはずです。

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ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク

・発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
・フォーマット:PlayStation 5 / PlayStation 4
・ジャンル:アクション
・発売日:好評発売中
・価格:PS5/PS4 ダウンロード版 販売価格 デジタルデラックスエディション 9,790円(税込)
    PS5 パッケージ版 希望小売価格 スタンダードエディション 8,690円(税込)
      ダウンロード版 販売価格 スタンダードエディション 8,690円(税込)
    PS4 パッケージ版 希望小売価格 スタンダードエディション 7,590円(税込)
      ダウンロード版 販売価格 スタンダードエディション 7,590円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:Z(18才以上のみ対象)


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©2022 Sony Interactive Entertainment LLC. God of War is a registered trademark of Sony Interactive Entertainment LLC and related companies in the U.S. and other countries.

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