PlayStation®5/PlayStation®4用ソフトウェア『Inscryption』は、デッキ構築型ローグライトと脱出ゲーム、サイコロジカルホラーを混ぜ合わせたカードゲーム。暗い秘密が刻まれたカードをめぐる旅は、やがて予想もつかない結末へ。衝撃のメタフィクション展開が話題を呼び、PC版は100万本を超える売り上げを記録した大ヒットタイトルだ。
なお、本レビューには一部ネタバレが含まれるので要注意。核心に触れる部分を明かしてはいないが、予備知識なしにゲームを楽しみたいという人は、この記事は読まずにすぐにゲームを始めよう。
CHECK POINT ①
生贄を捧げてカードを召喚! 血塗られた闇のカードバトル!
ゲームを始めると、そこは暗闇に包まれた小屋。プレイヤーはなぜそこにいるのか記憶がないまま、闇の中で目を光らせるレシーという人物とカードゲームを行なうことに。このカードバトルが、ゲームの中核を成す要素。プレイヤーはボードゲームのようにコマを進め、新たなカードを手に入れたり、カードの能力を強化したりしながら、カードバトルを勝ち進んでいくことになる。
カードバトルのルールは、それほど複雑ではない。プレイヤーとレシーが交互にカードを出し合い、互いに攻撃し合うというのが大まかな流れだ。
バトルが始まると4枚のカードがランダムで配られ、プレイヤーのターンになると山札、もしくはリスのカードをどちらか1枚引くことができる。カードには、オコジョ、オオカミ、カワセミといった生き物が描かれており、それぞれに召喚コスト、体力、攻撃力が設定されている。この攻撃力の数だけ、相手にダメージを与えられるというわけだ。
テーブル上に出せるのは、最大4枚のカード。ただし、カードを出すには召喚コストがかかる。カードに描かれた血の数だけ生贄を捧げなければ、そのカードを使うことはできない。例えばコスト1のオコジョのカードを出すには、リスのカードをその場に出し、リスを生贄にしてオコジョを召喚することになる。
攻撃力・体力も高いカードは、その分、多くの生贄を捧げる必要がある。血以外にも、犠牲になった動物たちの骨を捧げて召喚するカードも存在する。コストの低いカードを多く出して相手にじわじわダメージを与えるか、それとも一発逆転を狙って高コストのカードを出すか。戦術を考える楽しみを味わえるが、動物を犠牲にする罪悪感も待っている。
召喚したカードで相手を攻撃し、体力を0にすると相手のカードはその場から消滅する。攻撃対象となるカードがなくなると対戦相手を直接攻撃し、ダメージを与えられる。与えたダメージの数だけ天秤に重りが置かれ、自分と相手の重りの差が5以上になると勝利となる。
スキルやアイテムが勝敗のカギを握る!
カードによっては、特殊なスキルが付与されているものもある。例えば、クサリヘビなら相手を毒で倒したり、ヤマアラシなら攻撃を受けた時に反撃したり、といった具合。たとえ攻撃力が低くても、スキル次第で頼れる1枚になってくれることも。
ボードゲームで特定のマスに止まると、カードを1枚犠牲にしてスキルを別のカードに移すことも可能。攻撃力・体力に優れたカードをさらに強化するもよし、威力は低いけれど低コストで召喚できるカードにスキル効果を付与するもよし。自分のデッキをどんどん強くしていくことができる。
最大3個まで持てるアイテムも、プレイヤーを助けてくれる。相手のカードを1枚切ることができる「ハサミ」、リスのカードを1枚ゲットできる「瓶に入ったリス」、天秤に重りをひとつ置ける「ペンチ」など、窮地を救ってくれるアイテムがいろいろ用意されている。
ただし、「ペンチ」を使う時は要注意! 自分の歯を抜いて(!?)、重りの代わりに天秤に置くという痛々しい演出にゾクッとするはず。PS5版は、DualSense™ ワイヤレスコントローラーのハプティクスフィードバックで痛々しさ倍増……。血なまぐさい世界観を、触覚で体感できるようになっている。
ひと癖もふた癖もあるボスとバトル!
ボード上のコマを進めていくと、ボス戦が発生する。通常のバトルとは違い、厄介な特殊攻撃を仕掛けてくるので苦戦を強いられるだろう。例えば「探鉱者」はプレイヤーが出しているカードをすべて金塊に変えてしまうし、「釣り人」はプレイヤーのカードを釣り針で引っ掛け、相手の陣営に引き込んでしまう。手持ちのカードを使って対処しつつ、一気にダメージを与える必要がある。単調になりがちなカードバトルだが、こうしたボスの存在により、メリハリの効いた戦闘を楽しめるようになっている。
CHECK POINT ②
席を立って室内を調査! 監禁された部屋からの脱出方法を探そう
暗闇で目を光らせるレシーに促されるがまま、カードバトルを繰り広げるプレイヤー。だが、途中で席を立ち、室内を調べることもできる。これが、このゲーム独特の持ち味。自分は一体なぜ山小屋に監禁されているのか、ここから出るすべはないのか。真っ暗な室内に置かれたオブジェクトを調べ、手がかりを探すという脱出ゲームのような要素が盛り込まれている。レシーもプレイヤーが自由に歩き回ることを許容しているので、気になるものをゆっくりと調べることができる。
カードバトルと脱出ゲームはゆるやかに連動しており、バトル中に得た情報が謎解きのヒントになることも。そのヒントをもとに室内を調べると新たなカードが手に入り、カードバトルが有利になるといった相互作用もある。ボードゲームを進めてカードバトルに励むだけでなく、並行して進めていくのが面白い。
山小屋の中には、パズルも仕掛けられている。ヒントはなく、どういう仕組みなのかもわからないまま手探りで解くことになるのだが、「そういうことか!」と解法が閃く瞬間が気持ちいい。カードバトルとはまた違った楽しみが待っている。
CHECK POINT ③
敗北すると意外な展開に……!? 謎が謎を呼ぶストーリー
ここまで基本的な流れを紹介してきたが、このゲームの本質的な魅力は設定やストーリーにある。そもそもこのゲーム、スタートから何かがおかしい。というのも、初めてゲームを起動しているのに「ニューゲーム」を選ぶことができず、何者かのデータをコンティニューすることしかできないのだ。この世界で何が起きているのか、レシーは何者なのか。冒頭から謎が謎を呼ぶ展開を迎えることになる。
さらに、プレイヤーがカードバトルに負けた時の演出も不可解だ。敗北を喫したプレイヤーは、レシーによってカードにされてしまう。一体これはどういうことなのか。狐につままれたような気持ちで、プレイヤーはまた一から新たな勝負に挑むことになる。
ちなみに、『Inscryption』というタイトルは造語らしい。「碑文」「刻むこと」を意味する「inscription」、「暗号化」を意味する「enscryption」、「地下室」などを意味する「crypt」あたりに由来するのだろうか。カードバトルの遊びごたえだけでなく、ストーリーも考察しがいのある1本になっている。
『Inscryption』プレイ動画
Inscryption
・発売元:Devolver Digital
・フォーマット:PlayStation 5 / PlayStation 4
・ジャンル:アドベンチャー, ストラテジー
・配信日:好評配信中
・価格:ダウンロード版 販売価格 2,310円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:C(15才以上対象)
※ダウンロード専用タイトル
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