“リアルな世界を『グランツーリスモSPORT』が変えていく” メディアセッションの質疑応答をレポート
イギリス・ロンドンの現地時間5月19日(木)から2日間にわたって開催された、PlayStation®4用ソフトウェア『グランツーリスモSPORT』のアンヴェイルイベント。1日目には、日本国内での発売が2016年11月15日(火)に決定したことをはじめとする、ゲームの新情報が次々と明らかになったほか、FIA(国際自動車連盟)公認のチャンピオンシッププレシーズンマッチが実施された。
PS4®『グランツーリスモSPORT』アンヴェイルイベント開催! 世界最速公開情報から注目のプレマッチをレポート!!
イベント2日目となる現地時間5月20日(金)にはメディアセッションが行なわれ、「グランツーリスモ」シリーズプロデューサーの山内一典がメディアの質問に応じた。初日の発表内容を掘り下げた、質疑応答の模様を紹介しよう。
――まずは、FIAとの取り組みが実現に至った経緯を聞かせてください。
FIAのみなさんから我々にコンタクトがあり、何か新しいことができないだろうかというお話がありました。このお話をいただいて、すぐに閃いたのが、今回発表した2つのトピックである、チャンピオンシップを行なうことと、デジタルライセンスを発行するということです。その大まかな骨子をまとめて、FIAのみなさんにプレゼンテーションしたのが3年前のことですね。
当初、我々からこの話を提案した時、FIAのみなさんも半信半疑というか、雲をつかむような話だったとのではないかと思います。しかし、その後も全世界から200以上の自動車クラブが集まる総会でプレゼンテーションしたり、ワークショップを開いたりして、何をやろうとしているのか、この取り組みによってモータースポーツの世界にどんな未来が拓けるのかを説明し続けてきました。
そして2カ月ほど前、ワールドモータースポーツカウンシルでの投票結果によって、この取り組みが議決されたのです。こうしたプロセスを経たうえでの、今回の発表となります。
――デジタルライセンスの発行については、日本は未参加とのことでした。今後の展開をどのように見込まれていますか。
そもそも、モータースポーツのライセンスを取ろうとする人は世界的に見ても減ってきていて、そうした国々は危機感を持ち、デジタルライセンスに興味を示してくれました。また、インドや中国、中東など、これからモータースポーツを盛り上げていきたい新興国も積極的です。
一方で、ドイツのようにモータースポーツが盛んな国は、アクセシビリティの高い新たなライセンス取得の動きにそれほど興味を持ちません。このように、デジタルライセンスへの温度感は国ごとに異なります。
僕自身、自動車クラブの世界に足を踏み入れるのは今回が初めてでした。実際に参加し、コミュニケーションを深めていってわかったのは、自動車の文化は100年を超える歴史があって、新興国を除くどの国の自動車クラブも同じだけ長い歴史を持っているということ。少数の意思決定で物事が決まるのではなく、みんなが集まり、じっくり協議をしていろいろなことが決まっていきます。
現在、デジタルライセンスに参加表明した国の数は、3年の歳月をかけて決まったものです。今回発表できたのは22カ国でしたが、ローンチの段階でもっと増えているでしょうし、今後、毎年増えていくのではないかと思っています。
――FIAとのパートーナシップにより、今後、チャンピオンシップでリアルなスポンサーを用いたレースの開催や、スポンサードを受けたドライバーの育成といった取り組みは考えているのでしょうか。
前提として、現在のモータースポーツはそれほど安定していないという問題があります。僕が生まれた1960年代の最後から70年代にかけては、モータースポーツが自明な存在としてあり、スポンサーマネーもたくさん入っていました。しかし、今はそんなモデルがすでに崩れていて、モータースポーツの新しい在り方を提案すべき時期だと感じています。
GTアカデミーの取り組みでは、ゲームで磨いた腕がリアルでも通用することを実証できました。ただ、現在、スキルとは関係なく、本当の意味でプロフェッショナルといえるドライバーがどれほどいるのかという疑問もあります。今回のFIAとの取り組みでは、これまでのモータースポーツにバーチャルのドライバーを接近させるのではなく、僕たちが働きかけることによって、むしろリアルを変化させていきたいと考えています。これはドライバーの話だけではなく、僕たちが触媒となって、リアルな世界に変化を与えることができれば、それは幸せなことですね。
――今回のイベントで試遊できた『グランツーリスモSPORT』は開発途中のものですが、それでも次の世代を感じられるだろうと仰っていました。山内さんが考える次の世代のレーシングゲームとは、どういったものでしょうか。
『グランツーリスモSPORT』で提案していることが、次の世代で行なうことの全てであるといえます。
そもそも、最初に『グランツーリスモ』が登場して以来、レースゲームというものは何も変わっていないと思います。リアルなレーシングゲームは増えているものの、新しい遊び方、新しい見せ方というのは生まれていません。これに関しては僕たち自身も、PlayStation®3の時代で苦労した経験があり、新しいことをやりたいのに、いろいろな制限があって実現できませんでした。
「グランツーリスモ」が生まれてまもなく20年が経ちますが、この間に各クルマメーカーと確かな信頼関係を築くことはできました。その上で、ハードがPS4®になり開発環境も向上したために、新しい提案ができる手応えがあって、作っている僕らもワクワクしています。イメージしたものをそのまま形にできるのは、とても楽しいですね。
――スーパープレミアムカーは、どれくらいのポリゴン数で構成されているのでしょうか。また、挙動の開発でコンセプトにしていたことをお聞かせください。
最近は、ポリゴンの数をあまり意識していません。次々とテセレーション(1つのポリゴンを分割して、より滑らかに表現する技法)するものですから、1車種が何ポリゴンというのは難しいですね。
挙動については、その開発に終わりがありません。僕たちが常に目指しているのは、リアルを徹底すれば乗りやすくなるという、クルマの本来の姿を当たり前に実現することです。これは簡単なことではなく、今もチャレンジが続いています。
その上で『グランツーリスモSPORT』は、初めてレースゲームをプレイする人や、初めてクルマを運転する人たちにも楽しんでもらえるように作っています。ドライビングシミュレーターがリアリティを高めると、運転が難しくなると思われていますが、それは完全な誤解です。それを乗り越えるため、徹底した乗りやすさにこだわり、ゲームとしての敷居は下げつつも、ドライビングの深みは出していきたいと考えています。
――最近のレースゲームには、リワインドと呼ばれる巻き戻し機能が実装されているものが多くありますが、本作にも導入されますか?
クラッシュシーンをリプレイで見せるようなことはできているので、技術的には問題なく、システムとしていつでも取り入れることができます。ただ、ゲームデザインとして取り入れるべきか、取り入れるとしてもどこに使うか、そういったことはまだ決めていません。
――近年、自動車産業ではAIによる自動走行開発が盛んです。かねてから自動走行を取り入れている「グランツーリスモ」は、この分野でリアルな自動車産業に技術提供する考えをお持ちでしょうか。
「グランツーリスモ」は、すでにAI開発に使われています。自動走行の路上試験は一度のミスも許されないので、シミュレーターで機械学習させることが安全ということから声がかかりました。ただ、今後、僕らがコンシューマ向けのゲーム作りという枠を超えて、自動車産業に向かうかは、いま目の前にあるタイトルを作り終えてからでないと考えられません(笑)。
――『グランツーリスモSPORT』はVRに対応するとのことですが、現在の開発状況と、どのようなコンテンツになるのかを聞かせください。
『グランツーリスモ6』がオキュラスリフトに対応していたように、VRに対する経験そのものは持っているので、PlayStation®VRにも自然に対応できると考えています。『グランツーリスモSPORT』の全ての機能をPlayStation®VRで丸ごと動かすことも、技術的には可能です。どこまで組み込むのかの判断はこれからしていきますが、レースゲームとVRの相性自体はとてもいいので、現時点ではローンチに実装を間に合わせたいと考えています。
――レース中のダメージ表現や天候変化はどのようになりますか?
実装します。今回のイベントではお見せしていませんが、内部的にはダメージモデルを持っています。
天候変化については、レーススタート前に天候を選択するオプションは用意しますが、レース中の変化はなくなると思います。自由度を上げるとクオリティは下がり、クオリティを上げると自由度が下がるという、トレードオフの関係にあります。前作までの経験上、このバランス設定の効果は把握しているので、今回はある程度ビジュアルのクオリティを重視したデザインにしました。
みなさんも1080/60pでプレイしたいでしょうし、僕自身もそうでないとゲームではないと思っています。今は部分的に下がっているところがありますが、今後の開発で達成していきたいです。
――最後に、『グランツーリスモSPORT』の発売を待っている日本のユーザーにメッセージをお願いします。
僕を含めた開発チーム全体が、初代『グランツーリスモ』以来の高揚感に包まれながら作っています。たとえば一日の間に、8時間もすると小さな新しい進化が見えて、3~4日するとそれが大きな進化に変わっているなんてことが日々起こっています。いろいろな条件が整ったことで、そんな奇跡のようなことができているんです。今、僕たちは心から楽しんで作っているので、良いものができる自信があります。その幸せを、『グランツーリスモSPORT』をお待ちいただいているみなさんと共有したいです。
【モータースポーツの未来を変えるかもしれない、新たな「グランツーリスモ」】
今回の『グランツーリスモSPORT』は、そのドライビング結果がモータースポーツ業界の権威・FIAによって現実のレースと同様に評価されるという、ゲーム業界とモータースポーツ業界の両者にとって画期的な試みを実現するタイトルとなる。
そもそも「グランツーリスモ」は、山内一典の”クルマの魅力や、リアルなドライビングの楽しさをゲームで再現し、多くの人に体験してほしい”という想いから生まれた作品だ。初代『グランツーリスモ』の開発にあたり、山内プロデューサーは自ら国内の有名カーメーカーを1社1社訪問し、自身のクルマやドライビングに対する愛情と熱意を真摯に語り、信頼関係を築くことから始めたという。さらに、フォトリアルなビジュアルや各車のリアリティあふれる挙動を実現するために、開発スタッフも心血を注ぎ、誕生した初代『グランツーリスモ』は世界中で多くの人々を魅了する大ヒット作となった。
それ以来、山内とポリフォニー・デジタルのスタッフは、シリーズ誕生20周年を迎えようとする現在に至るまで常に熱意を注ぎ続け、ユーザーやクルマ業界と歩みをともにしながら、「グランツーリスモ」というブランドをクルマ文化を支えるひとつのメディアへと成長させてきた。世界的なカーメーカーによる”未来のクルマ”を体験できる”ビジョン グランツーリスモ”、ゲーム発のプロレーサーを育成する”GTアカデミー”など、「グランツーリスモ」にしかできない数々の挑戦的な試みは、クルマ業界との地道な信頼構築と、初代PlayStation®からPS4®に至る各ハードでの技術の積み重ねがあってこそなしえたものだ。
今回の『グランツーリスモSPORT』での数々の取り組みも、「グランツーリスモ」ブランドに対するモータースポーツ業界の確かな信頼があったからこそ実現したもの。アンヴェイルイベントの中で、山内プロデューサーが『グランツーリスモSPORT』の革新性や高揚感を語る際に”初代『グランツーリスモ』以来”という言葉を何度となく口にしたのも、今までに実現しえなかった新しいクルマの楽しさを表現するタイトルを、またひとつ送り出せたことに対する喜びがあったからだろう。
老人から子供まであらゆるプレイヤーが、宝石のようなクルマたちを意のままにドライビングする楽しさと、世界中のライバルと競うプロドライバーさながらの熱いレースを体験できる『グランツーリスモSPORT』。「できないことが、できるって、最高だ。」という現在のPS4®のコンセプトにも通じる本作が、日本をはじめ、世界のモータースポーツ業界に新たな風を起こし、現実のレースを変えていく。そんな未来を期待してしまう作品だ。
欧州の招待ユーザーが最新作を満喫 開発チームとのQ&Aコーナーも実施!
イベント2日目の会場は、地元イギリスの一般ユーザーが自由に入れたほか、イギリス国外から招待を受けたユーザーも参加。シリーズ最新作『グランツーリスモSPORT』を体験しようと、多くのファンが足を運んだ。
【エキシビションマッチに日本勢もゲスト参戦!】
試遊台は常に多くのファンが取り囲み、ユーザーたちは最新作の迫力ある走りを満喫。1日目にプレシーズンマッチで沸いたステージ上では、抽選を受けたユーザー16名ずつのグループがレースを楽しんでいた。この最終グループに、昨日のレースで世界トップレベルの実力を示した日本人ユーザーがゲストとして急きょ参戦! 高橋拓也さん、冨林勇佑さん、種市悠士さんの3名に加え、過去シリーズの大会で名を馳せ、現在はポリフォニー・デジタルに在籍する山田氏も参加するという、豪華なエキシビションマッチとなった。
日本勢は全員が12番グリッド以降のスタート。距離の長いニュルブルクリンクとはいえ、1周だけのレースではスターティングポジションが影響したか、トップをつかまえきれない捕らえきれない展開に。それでも終わってみれば、冨林さんの2位を最高に、5位までを日本勢4名が占め、テクニックの高さとメンタルの強さをあらためて示す結果となった。
レース終了後には、プレイヤー同士がお互いの健闘を称えながら、「グランツーリスモ」談議に花を咲かせていた。
【Q&Aコーナーで開発スタッフとユーザーが交流】
レースイベントが終了したところで山内が改めて登壇し、集まってくれたユーザーに感謝の言葉を述べるとともに、先日メディア向けに行なわれた『グランツーリスモSPORT』のプレゼンテーションを行なった。
その後は、今回のイベントに帯同した開発スタッフもステージに登壇したうえで、ユーザーとのQ&Aコーナーを実施。この日のイベント冒頭、山内は「これまで世界中でイベントを行なってきましたが、ユーザーのみなさんを招いてのイベントは初めてです。若手のスタッフもたくさん連れてきているので、ユーザーのみなさんとディスカッションする場を用意したい」と話していた通りに、スタッフとユーザーが顔を合わせながらの質問会となった。
以下に、Q&Aで交わされた一部を抜粋して紹介しよう。
――PS4®での開発で難しかったのはどんな機能ですか?
「グランツーリスモ」は最近のゲーム制作では珍しい、自社製のゲームエンジンやレンダリングエンジンを開発して作っているタイトルです。PS4®という新しい環境になって、最初に映像が出てくるまでの時間が長かったことが大変でした。ただ、映像が出てきてからは、一気に開発が進みました。
――今回の『グランツーリスモSPORT』は、理想的な「グランツーリスモ」だと思っていますか?
僕たちは今、クオリティが日に日に上がっていくのを感じながら作る、とても幸せな時間を過ごしています。こんな気持ちで制作できているのは初代の『グランツーリスモ』以来なので、すごくいいものができる予感がしています。
――初代『グランツーリスモ』から遊んでいます。ポルシェの参入をずっと待っているのですが、まだ入りませんか?
僕たちは、いつでもウェルカムなんですけどね……(笑)。
――FIAとパートナーシップを結んだということは、WRC(世界ラリー選手権)のようなFIA主催レースがゲームで遊べるようになるのでしょうか。
この場で約束することはできませんが、可能性はあると考えています。
――『グランツーリスモSPORT』にDLCの予定はありますか?
具体的なプランはまだ決まっていませんが、DLCや無料アップデートのどちらもあると思います。
――過去シリーズの名作コースが復活することはないのでしょうか。『グランツーリスモSPORT』で復活しなくとも、『グランツーリスモ7』でならあり得ますか(笑)?
さきに『グランツーリスモSPORT』と『グランツーリスモ7』の呼び方についてお話しすると、今回はスポーツモードにフォーカスしていたので『グランツーリスモSPORT』というタイトルにしました。ただ、今になって振り返ってみると、やろうとしている内容は『グランツーリスモ7』と同じです。もはや、呼び方の違いに意味がないので、名前を『グランツーリスモ7』に変えてもいいかもしれない、とも思います(笑)。
その上で、過去の名コースの復活についてお答えすると、僕も復活させたいと思っていますが、それには時間がかかりそうです。
「グランツーリスモ」シリーズにかける開発チームの情熱とユーザーの熱量の高さを、あらためて感じることとになった今回の『グランツーリスモSPORT』アンヴェイルイベント。2016年11月15日(火)の国内発売に向けて、今後もさらなる情報が公開され、完成に近づく様がお伝えできるはずだ。『グランツーリスモSPORT』が拓く、レースゲームの新たな時代に期待しよう!
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グランツーリスモSPORT(「グランツーリスモスポーツ」)
発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
開発元:ポリフォニー・デジタル
ジャンル:リアルドライビングシミュレーター
対応機種:PlayStation®4
発売日:2016年11月15日(火)
価格:未定
CERO:審査予定
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