かつてないプレイ体験を──満を持して発売された『ペルソナ5』の開発裏話【特集最終回】

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かつてないプレイ体験を──満を持して発売された『ペルソナ5』の開発裏話【特集最終回】

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9月15日(木)に発売となった、PlayStation®4/PlayStation®3用ソフトウェア『ペルソナ5』。「ペルソナ」シリーズのナンバリング最新作であり、若者たちの成長を描く”ジュブナイル(ティーンエイジャーを対象にした小説ジャンル)”に、”ピカレスクロマン(主人公が悪者の物語)”の要素を加えた新機軸のストーリー、練りに練られた奥深いシステム群など、様々な魅力に満ちあふれたRPG作品だ。

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特集最終回となる今回は、アトラス『ペルソナ5』のクリエイティブプロデューサー兼ディレクターを務める橋野桂氏に、本作が持つ魅力や、発売後だからこそ言える開発の裏話などを聞いた。

株式会社アトラス『ペルソナ5』クリエイティブプロデューサー兼ディレクターの橋野桂氏。『ペルソナ3』より制作に携わる、「ペルソナ」シリーズ開発の中心人物。

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前回までの特集記事はこちら

ついにこの時が来た――! 『ペルソナ5』の魅力を余すことなくお伝えする総力特集開始!!【特集第1回】

昼は学生、放課後は怪盗! 『ペルソナ5』の充実した二重生活をフィーチャー【特集第2回】

その身に宿す、もうひとりの自分――強大な力を持つ「ペルソナ」とは?【特集第3回】

本日発売! 『ペルソナ5』の独特な世界観をお伝えするプレイインプレッション【特集第4回】

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激動の時間の中で開発された『ペルソナ5』! 橋野桂氏が語る、本作の魅力と込められた想い

――前作『ペルソナ4』から、約8年を経てのナンバリング新作リリースとなりましたが、現在の心境や気持ちなどをお聞かせください。

僕らの開発環境の変化などを含め、激動の時の流れでの開発だったなと。時折「これ、出せるのかな?」という考えなどもよぎったりして。

ただ、今思い返してみると、常に集中力を切らさずに開発できたタイトルだったように感じますね。今までなら、ゲーム完成時にはあれをこうすれば、ここが足りなかった、というように、少なからず心残りが出てくるものですが、そういったこともあまりなくて。

大風呂敷を広げて始めた割に、それを無理やり畳むことなく、想定の範囲内でコトを終えられたかなと思います。その代わりに、相当なお時間をいただくことにはなりましたが。

――PS.Blogにも、「心待ちにしていた」「期待していた」というユーザーの方からの声が非常に多く寄せられていました。

『ペルソナ3』『ペルソナ4』のときは、ユーザーの皆さんの反応としては意外性のほうが勝っていたんですよ。「続編が出るのか!」というように、驚きを示す人が多かった。

しかし、『ペルソナ5』の場合は、すでに続編が出ることを想定している、望んでいるという方のほうが多かったんです。もちろん、それだけ期待してくれている方が多いのは喜ばしいことではあるのですが、クリエイターとしては、やはりその期待に応えなくてはいけない。

そういった意味では、期待に応えられたという実感はありつつも、それがズレてはいないか、間違ってはいなかったか……という怖さがあります。今後、プレイしたユーザーの皆さんからの声も続々と届くと思いますし、それをドキドキしながら待っている状態ですね(笑)。

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【開発途中で、大きく作り変えることになった『ペルソナ5』】

――『ペルソナ5』開発の経緯についてお聞かせください。

企画当初は、『ペルソナ3』『ペルソナ4』とは路線を丸っきり変えてしまおうという考えでいました。”自分探し”、”旅”という二つのキーワードを元に、学校を飛び出して、外の世界へ旅に出てしまうというイメージでしたね。

そこを起点に取り掛かり始めたのですが、シナリオや技術方面での土台を固めていく段階で、東日本大震災が発生し、僕らを含め、日本国内全体の情勢が大きく変化しました。

人々が、足元からの、地続きでの繋がりを意識するようになり、それを大切にして危機を乗り越えようという。

「ペルソナ」シリーズは現代の高校生が中心となる話ですが、『ペルソナ5』でも、”今”の時代背景を盛り込む必要があると考え、人の繋がりや”絆”をメインに据えた作品へ、大きく路線変更することになったんです。

――それまでできあがっていたものをすべて破棄して作り直した、と?

ほぼ作り直しですね。ただ、外世界への旅ではなく、主人公たち自らの内なる精神世界への旅というように、旅をするという設定は残しつつ、異なる方向性にシフトさせる形を取っています。

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人は、たったひとつの気の持ちようや思い込みからでも、現実をどうとでも歪んでとらえることができてしまう生き物です。それこそ、人によって見えている世界がまったく異なるくらいに。

そういった人の心が生む”歪み”を、未熟ながらも段階を追って乗り越え、仲間と手を取り合い、自分の糧にして成長していく姿。どうすることもできないような困難や辛い出来事に直面しても、「乗り越えてやる!」と、現実に対して抗う若者たちのひたむきな姿を描きたいと考えました。

――見方の違いで、他人とは異なる形に現実を捻じ曲げてしまう”歪み”?

はい。事実は変わらないのに、見ている世界は違うわけですよ。

例えば今、僕も含めたここにいる全員が、同じ部屋にいるという事実を共有してはいますが、僕が見ている景色と皆さんが見ている景色は異なると思うんです。そういった見えているものの違いや、認識のズレがあるからこそ、若者たちは未熟さゆえに間違いを犯すし、大人ともぶつかり合う。

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――単純にそれは違う、と切り捨ててしまうのは難しいところですよね。時には”歪み”を受け容れることも必要になる?

人間なのだから、それぞれが抱く気持ちや行動において、絶対なんてないんですよ。人とは違う見方、捉え方をしていた自分も間違いではない。

これまでの「ペルソナ」シリーズでもテーマにしてきましたが、そこ(自分)を否定してはいけないんです。自分とは違う見方をしている人と触れ合うこと、そして異なる見方によって生じた事実を認めることも、成長するために必要な一歩だと考えます。

――本作に登場し、ターゲットとなるオトナたちも、何かをきっかけに歪んで”しまった”、ということですよね。

かつては純粋で、熱い正義感を持った人間だったかもしれない。しかし、厳しい現実社会では、それまでに培ってきた価値観なり、考え方なりを変える――つまり自らを”歪ませる”くらいに変えないと、ついていくのが難しい時もあると思うんです。

ですから、現在すでに社会人と言える年代の方が『ペルソナ5』をプレイした場合、主人公側の言い分とオトナ側の言い分、両方に共感できるところが出てくると思います。

その辺りは前作までとは明らかに異なる部分ですし、『ペルソナ5』の隠れたテーマのひとつにもなっています。逆に、現在学生……主人公たちに近い年代の方々の場合は、今の自分と重ね合わせながらプレイすると、いろいろと感じ取れる部分があると思いますよ。

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【アトラスらしさに重なった、ピカレスクロマン】

――『ペルソナ5』のストーリー形態として、ピカレスクロマンを選んだ理由をお聞かせください。

アトラスは、世の中の当たり前に対して、こういったアプローチの仕方もあるのでは? という”カウンター”とも言えるような独自の形を示すことで、受け入れられてきたブランドだと思います。

それで、ちょうど『ペルソナ5』制作時は、アトラスらしさにこだわりたい時期でもあって。そこからピカレスクロマンを選択するに至ったのですが……。

――その理由を伺ってもよろしいですか?

自分の居場所がなくなってしまうような絶望的状況であっても、アイデアや心意気ひとつで打開できる、ピカレスクロマン特有のパワフルさに対して、自己投影してしまったというか……。言うなれば、”異端”ですかね(笑)。

人がやらないようなことを皆でやってやろう、みたいな部分が”らしさ”なのかなと思って。そう考えると、妙にしっくりきたんですよ。あと、世間や社会が決めたルールではなく、自分が決めたルールで動ける、というところにも憧れがありましたね。

――”怪盗”をテーマに選んだ理由も、ぜひお聞きしたいです。

最初は、もう一度警察や刑事が絡んだ事件モノをやろうかという話も出ていました。それだけでなく、他にもいろいろな案は挙がりましたが、悪役としてわかりやすく、かつ美学も持たせられるのは”怪盗”だよなと。で、”怪盗”にするなら探偵も必要だし、オタカラを盗む前には、やっぱり予告はしたいよね……というように肉付けされていきました。

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――そういった、”怪盗”モノゆえの当たり前やお約束にはこだわったということですね。

そこは徹底しましたね。入れられる要素は全部入れなきゃダメだと。そうでないと、「”怪盗”モノだって言っていたのに、これはないのか、あれはないのか」と、プレイヤーさん側の想像力に負けてしまうじゃないですか。

それを踏まえたうえで、歪んだ心の異世界「パレス」に潜入したり、心(オタカラ)を盗んだりといった、オリジナルの、「ペルソナ」ならではの味付けをしていきました。

――なるほど。逆に、”怪盗”と敵対する探偵を、あえて主人公に据えるという考え方もあったのでは?

確かにその通りかもしれません。ただ、『ペルソナ4』が、まさに探偵モノに近いというか、主人公たちで犯人を捜して追い詰めるストーリーなんですよ。

過去作品はそれぞれ別々のものとして楽しんでもらいたいですし、『ペルソナ5』も当然別物として、新作として楽しんでほしい。僕らとしては、やっぱり前作とは違うよ、違う楽しさがあるよと胸を張って言いたいんですよね。ちなみに、主人公側を”怪盗”にしたのは、『ペルソナ4』に”反抗”するという意味も少しだけあったりします(笑)。

【変えるべき部分と変えてはいけない部分の選択】

――今回、PlayStation®4でソフト開発をなさってみて、感触はいかがでしたか?

そもそも、我々は作り方を変えるつもりがあまりなかったので、それほど戸惑うことはありませんでした。とはいえ、作っていくうちにこれまでにできなかったことや変えなければならない部分がどうしても出てきますので、その都度対処に追われるということはありましたね。

『ペルソナ5』ではキャラクターの頭身が過去作品よりも上がっていますが、それだけで表現技法がまるで違ってきますし、背景や小物などのディテールも変えなければいけない。グラフィックの質が上がった分の変更や調整は、どうしても必要になります。

昔はデフォルメすればそれで済んでいた部分が、PS4®クラスのハードではデフォルメもしつつ、ある程度のディテールが必要になるという感じですね。

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――PlayStation®3版とPS4®版は、それぞれどのような流れで開発されていましたか?

ほぼ平行と言っていいと思います。PS3®とPS4®、それぞれに対する向き合い方を、僕らの制作方法では変える必要がありませんでしたから。

ただ、ハードパワーの差を感じさせられることが多々あったのは事実です。例えば、昼から夕方、そして夜へと時間が過ぎるたびにフィールドマップも読み直す必要があるのですが、やはり快適性の面でPS4®は段違いですね。扱うデータ容量は膨大なのに、凄くゲームがプレイしやすいハードになっていると感じました。

――『ペルソナ5』では、「ダイレクトコマンド」など新たな要素も導入されていますが、ベースは前作までと同じコマンド選択型バトルですね。

現在、いわゆるコマンド選択型バトルを採用しているRPG作品て、そんなに多くはないですよね。制作当時は、弊社のスタッフからも、「アクションバトルも試してみたい」「リアルタイム要素も入れてみよう」といった案も出ましたし。

――アクションバトルの方向も検討されていたんですか?

凄く短い期間ではありますが、アクションバトルとしてのテストも行なっていました。ただ、バトルシステムを丸ごと変えるとなると、僕らが今までに培ってきたノウハウも捨てることになるわけで、影響がとても大きいんですよ。

バトル自体の調整はもちろんですが、そのバトルに勝つために用意されている要素……レベルアップや「ペルソナ」合体なども、すべて構築し直さなくてはならない。

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RPGにおける要素のほとんどは、いかにバトルに勝つかというところに集約されています。アトラス製RPG作品のバトルは基本的に難度が高めですが、それはプレイヤーの皆さんに苦しい思いをさせたいわけではなくて、ある程度の難度が保たれていないと、バトルを楽しむために用意された要素が成立しないからなんです。

例えば、何回戦ってもボスに勝てない状況に陥ったとします。だったら打開策の一つとして、「ペルソナ」合体で強力な「ペルソナ」を作ろう、という思考になりますよね。しかし、ボスが簡単に倒せてしまうようなら、レベル上げもしないし、「ペルソナ」合体もしなくなる。

――そこは変えるべきではないと。

そうですね。ただ、作り方自体は変えないけれど、進化はさせたいんですよ。クリエイターとしては当然なのですが、やはりもっと爽快に、おもしろくしたい。

ですから、ダンジョンもえっちらおっちら歩かなくても済むように、ダッシュやカバーアクションなどの素早い移動方法を入れたり。コマンドを直感で選べるように「ダイレクトコマンド」に変更したり。でも、プレイ感覚自体は今までと同じに……といったように、様々な部分をきちんと成立させるための調整がとても大変でしたね。

【さらなる高みを目指す、「ペルソナ」シリーズとアトラスブランド】

――橋野さんご自身が、今後やりたいと考えていることはありますか?

「ペルソナ」シリーズに限らず、どんな作品を作るにせよ、今後もアトラスらしさについて追求していきたいと考えています。

ユーザーの皆さんにも、今は話題性の面で『ペルソナ5』が先頭に立っている状態ですが、アトラスはこんなにもおもしろい作品を作っている、こんなにも変化に富んだゲームを提供している、ということをお伝えしていきたいですね。

――最後に、『ペルソナ5』&「ペルソナ」シリーズファン、そしてPS.Blog読者に向けてメッセージをお願いします。

そうはできない、濃厚なゲームプレイ体験ができる作品に仕上がったという、確かな手応えがあります。僕自身、おもしろいゲームに出会うと「今までゲームファンでよかったな」と思える瞬間があるのですが、それを皆さんにも感じてもらえたら、これほどうれしいことはありません。

皆さんが最も落ち着ける、くつろぐプレイ環境で、お菓子や飲み物を用意して、秋の夜長に『ペルソナ5』の世界へどっぷりと浸かっていただければと思います。

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作り手の様々な想いが詰まった『ペルソナ5』。このインタビューを読み、少しでも興味を持ったなら、すぐにでもこの魅力的な世界へと飛び込み、”想い”の一つ一つを感じ取ってみてほしい。

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ペルソナ5

・発売元:アトラス
・フォーマット:PlayStation®4/PlayStation®3
・ジャンル:RPG
・発売日:好評発売中
・価格:
 PS4®:通常版 パッケージ版 希望小売価格 8,800円+税
    通常版 ダウンロード版 販売価格 8,800円(税込)
 PS3®:通常版 パッケージ版 希望小売価格 8,800円+税
    通常版 ダウンロード版 販売価格 8,800円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:C(15才以上対象)

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『ペルソナ5』公式サイトはこちら

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