PlayStation®4用ソフトウェア『恐怖の世界』は、旧き神が目覚めようとする町で、続々と発生する不気味な事件や、奇怪な敵に立ち向かっていくコズミックホラーRPGだ。ポーランドのゲームデベロッパーである「panstasz」が開発を手掛けており、日本語、英語をはじめとした多言語ローカライズにも対応している。
冒険の舞台となるのは、大きな灯台が目を引く海辺の町・塩川町。プレイヤーの役どころは町の異変に気付いた住民のひとりだ。学校、病院、市街、謎の因習が残る村、うっそうとした森など、町とその周辺で起きた不可解な事件を調査し始めたプレイヤーキャラクターは、そこで謎だらけの出来事や怪異たちと遭遇。その末に、町を破滅に導く旧き神の脅威と対峙することになる。
CHECK POINT①
レトロスタイルなグラフィックで描かれる狂気はびこる町
本作の特徴は、なんといってもゲーム全体を彩るレトロスタイルなドットグラフィックだ。画面のレイアウトも、80年代ごろのPCのアドベンチャーゲームを思わせるものになっており、かつてその時代のゲームを遊んだ人にとっては懐かしく、それらに触れたことのない人にとっては新鮮に感じられるだろう。
舞台となる日本の塩川町は陰鬱な雰囲気を感じさせ、モノクロのグラフィックによって、その空気感がさらに強調されている。こうした雰囲気は、『うずまき』などの作品で知られる漫画家の伊藤潤二氏や、「クトゥルフ神話」で知られる小説家のハワード・フィリップス・ラヴクラフト氏の作品に強く影響を受けているという。
BGMもドットグラフィックにふさわしいダークなチップチューン系のサウンドがあてられ、次に何が起きるかわからない、本作の探索を大いに盛り上げてくれる。
CHECK POINT②
怪奇事件の手がかりを追って町の各所を調査せよ
旧き神の目覚めが目前に近づき、それによって塩川町で多数の奇怪な事件が起きはじめるところからゲームが始まる本作。プレイヤーはその状況の中、それぞれ能力などが異なる多彩な探索者となって町で発生している事件を調査し、それらの謎を解くことによって旧き神の脅威に直面することになる。
基本となるゲームモードは、手軽に始められる「クイックプレイ」と、ゲーム中にアンロックされた要素を自由に組み合わせられる「カスタムプレイ」のふたつ。どちらも複数の事件を好きな順番で調査・解決していき、最終的な目的地となる灯台で怪異の元凶と対峙するという流れになっており、今回はクイックプレイでのプレイを軸にゲームの流れを紹介する。
クイックプレイでは、プレイヤーキャラクターである「探索者」や、特殊ルールである「旧き神の制約」、ストーリーの大枠にあたるバックストーリーが自動で決定されてゲームが始まる。最初は起点となる自宅から始まり、家を出る際に調査候補である5つの事件が提示されるのでどれに挑戦するかを選ぶことになる。
ゲームには20以上の事件が存在し、プレイするたびにそのうち5つがランダムで提示される。探索者や旧き神の制約、バックストーリーなどは自動的に決められるので、遊ぶたびに異なる展開が楽しめるのだ。事件は自宅、中心街、学校などアイコン化された調査先を選んでそこに移動し、「調査」を行なうことで進行する。多くの場合、次に調査するべき場所はアイコンに〇がついているので、迷うことはないが、一部の事件は専用マップのようなところに閉じ込められてしまう場合もあるので注意が必要だ。
また調査の際は、調査中の事件とは直接関係のないイベントがランダムに発生し、結果に応じて「スタミナ(体力)」や「理性(精神力)」が増減したり、アイテムや呪文を入手できたりする。時には得体のしれない敵と遭遇してバトルになることも……。基本的にはスタミナも理性もイベントのたびに失われることが多く、どちらかがゼロになるとゲームオーバー。回復は自室に戻って休息するかアイテムなどを使って行なえるが、全回復するようなことはほぼなく、かなりシビアなバランスだ。
さらに注意が必要なのは、行動を行なうたびに増えていく「破滅値」だ。これは旧き神が来るまでのリミットを示しており、プレイヤーが何か行動をするたびにどんどん増えていく。100%になると旧き神が町に襲来し、事件の進行度合いとは関係なくゲームオーバーになってしまうので、無駄な寄り道をしている暇はない。やられたらセーブポイントからやり直せるといったシステムもないので、慎重に無駄なく、かつ安全を優先して進めていこう。
調査を進めて条件を満たすと、事件の核心に迫るクライマックスが訪れる。事件の裏にいたボスとのバトルになることもあれば、バトル前の選択によってうまく逃げおおせられる場合も。どんな方法でもいいので、うまく生き延びることができれば事件は解決。再び自宅で次に調べる事件を選び、状況を先に進めていくことになる。なお、各事件には解決の仕方によって複数のエンディングが用意されている。
全体のプレイを通してみると、行動自体はコマンド形式でごく簡単に済むため、最終クリアまでいったとしてもプレイ時間は1時間程度だと思われる。事件の終わり方が複数あり、本筋とは関係ないイベントのバリエーションも非常に多いため、違う展開見たさに繰り返して遊んでしまうはずだ。またプレイにある程度慣れても、ランダム発生するイベントの「引き」が悪いとあっけなく死んでしまうことも多く、クリアには運も必要な印象。それだけに、サクサクとプレイできるテンポの良さは好印象だった。
CHECK POINT③
狂気に落ちた人間から謎のクリーチャーまで、敵もインパクト大!
事件の調査を進めるにあたって避けられないのが、さまざまな敵とのバトルとキャラクターの育成だ。プレイヤーキャラクターである探索者には複数の人物が用意されており、それぞれ身体的なパラメーターや身に付けている特性・特殊能力などにも違いがあり、同じ敵が相手でもどの人物でプレイするかによって難易度も多少変わってくる。
キャラクターのパラメーターは、筋力、敏捷性、知覚、賢さ、カリスマ、運の6種類があり、バトルやイベントで経験値を稼ぐと行なえるレベルアップで強化できる。また、学校の校庭などで加わる仲間に特定のパラメーターを向上させてくれる人物がいたりもする。人物ごとの得意分野を伸ばすもよし、弱点を補うもよし、自分好みに育成しよう。また、レベルアップ時にはパークと呼ばれる特殊能力も身に付けられる。呪文を使う際に消費する理性を抑えてくれたり、特定のイベントで別の選択肢が出てきたりと、こちらも注目すべき効果があるので、どれを付けるかよく吟味しよう。
そしてバトル。本作ではボス戦などの特定の状況以外にも、町の各所を調査したとき突然敵が現れることがあり、いつ何時でも油断はできない。バトルシステムはターン制で、プレイヤー側が基本的に先行を取る仕組みになっている。使用できるコマンドは非常に豊富で、攻撃ひとつとっても、素手での攻撃、装備した武器を使った攻撃、武器による強攻撃、呪文、特定の呪文を唱えていると使える噛みつきなど、多彩な方法が用意されている。
バトル時、プレイヤーは1ターン内の行動を先にまとめて選んで実行する。戦闘コマンドにはそれぞれ使用速度が設定されていて、それらを最大200の行動シーケンスのなかに収める必要がある。例えば武器の強攻撃のコストが115だった場合、2度繰り返しては出せない。そこで、コスト10で次の攻撃の命中率がアップするブーストを2度行ない、その後に強攻撃を1回、コスト55の素手攻撃を1回追加するなど、効率よくダメージを与える方法を考えるのはなかなか楽しい。
補助行動はほかにもたくさんあり、防御、呪文を使うと減る理性の回復など、ピンチの時にこそ使いこなしたいコマンドがいろいろ用意されている。仲間を連れているときなら、コマンドで敵の注意を引きつけさせることも可能。ただし、こちらは失敗すると仲間を失う可能性もある。
また敵も、単純に武器で襲ってくるもののほか、物理攻撃が効かない霊などバリエーション豊富。ビジュアルについてもまるで悪夢のような風貌の敵が数多く登場し、なかには不気味なアニメーションを見せる者もいる。ホラー感満載の映像で、戦略的なバトルを楽しめるのは大きな魅力といえるだろう。
不気味な怪異事件が発生し、まるで異界のように変貌していく日常をレトロスタイルなビジュアルとサウンドで描き出す『恐怖の世界』。次から次へと起きる不条理なできごとに見舞われる恐怖と戦略的なバトルシステムで、独自のホラー体験を味わえる意欲作だ。紹介したホラー要素以外にも、探索者たちの個性的な着せ替え要素や、一度見たイベントやエンディングをコレクションしていくコンプリート要素など、やり込み派のプレイヤーにも注目してほしいポイントがまだ複数用意されている。ホラーゲーム好きの人や、クトゥルフ神話的なコズミックホラー作品が好きな人はぜひプレイしてみてほしい。
『恐怖の世界』プレイ動画
恐怖の世界
・発売元:YSBRYD GAMES WORLDWIDE LIMITED
・フォーマット:PlayStation 4
・ジャンル:ホラー
・発売日:好評発売中
・価格:パッケージ版 希望小売価格 4,400円(税込)
ダウンロード版 販売価格 2,420円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:D(17才以上対象)
© 2020, 2023 panstasz Pawel Kozminski. All rights reserved. Published worldwide by Ysbryd Games Worldwide Limited.
Licensed to and published in Asia by Active Gaming Media Inc.
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