『ゴッド・オブ・ウォー』(2018)が世に出てから、とても濃密な5年間が経ちました。そして私たちサンタモニカスタジオはこの5年間で、『ゴッド・オブ・ウォー』(2018)のNG+モード、次世代機向けアップデート、PC移植版、そして続編となる『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』をリリースしました。そのどれもが、長年にわたる皆さんの熱烈なサポートがなければなし得なかったものです。
今回は『ゴッド・オブ・ウォー』(2018)の発売5周年を記念して、本作のクライマックスであるバルドルとのボス戦の制作秘話をご紹介します。
ここから先は『ゴッド・オブ・ウォー』(2018)のネタバレを多分に含んでいるので、どうかご注意ください!
謎の男の襲来
後にバルドルであることが判明する“謎の男”は、オープニングでクレイトスとアトレウスが登場した後に続けて登場し、すぐにクレイトスと敵対します。そしてバルドルの高い戦闘能力とその執念深さを目の当たりにしたプレイヤーは、バルドルが旅を続ける主人公たちを付け回すもっとも危険な脅威になることに気づくのです。
ミズガルズにあるクレイトスの家でクレイトスと対峙するバルドル。
クレイトスとアトレウスはバルドルと戦いを避けようとしますが、バルドルは九界の各地で何度も戦いを挑んできます。バルドルは本作のラスボスであり、アース神族最強の刺客として、プレイヤーの前に立ちはだかるのです。そしてプレイヤーは、フェイの灰を九界一高い山頂から撒くため、このバルドルを乗り越えなくてはなりません。
バルドルのコンセプトアート – アーティスト:Jose Cabrera
バルドルが、母であるフレイヤ、そしてクレイトスとアトレウスに怒りを向けた時、戦いはクライマックスを迎え、クレイトスたちはオーディンの切り札のひとりであるバルドルと命を賭けて戦うことになります。サンタモニカスタジオのアニメーションディレクターであるBruno Velazqueは、この最後の戦闘について次のように語ります。
「プレイヤーは壮大なフィナーレを期待していることはわかっていました。だからバルドルとの最初の戦闘で行ったことをさらに進化させて、あらゆる面であの戦いを上回ることを目指したんです」
この戦闘シーンは、その最初から最後まで、本作のなかでももっとも野心的な試みのひとつであり、まさしく開発チーム全員の努力の結晶です。キャラクター間のドラマチックな対立を描いた壮大なムービーや、さまざまなフェーズや場所を経て進行するスケールの大きいボス戦にいたるまで、物語を締めくくるこの劇的な結末は、本作のなかでもっとも重要な場面のひとつであり、プレイヤーが満足感を得たうえでヨトゥンヘイムにたどり着けるよう仕上げる必要がありました。
物語の構築
ゲームの序盤から“引き”を作ってきた以上、このシーンは壮大で満足感のあるものに仕上げなければならないという大きなプレッシャーがありました。その最初の一歩として、まずは物語を組み立てなければなりません。
サンタモニカスタジオのナラティブディレクターを務めるMatt Sophosは、チームが目指した目標について、次のように語りました。
「この物語で達成したいゴールはふたつありました。まずひとつ目は、物語とゲームプレイの両方の観点から、クレイトスとアトレウスの関係性がどれだけ深まったかを伝えること。彼らが連携し、互いを守り、チームとして戦う姿を見せたかったんです。
そしてふたつ目のゴールは、クレイトスとアトレウスに、予定調和的なハッピーエンドが存在しない、険しい旅路を用意することです。この戦いは代償を伴い、彼らの選択によってフレイヤは味方から敵へと変わるんです」
バルドルとの最終決戦前の場面の台本。
クレイトスは戦わずに状況を解決しようとしますが、バルドルは執拗にフレイヤの命を求めます。これによってバルドルとクレイトスは再び衝突し、最終決戦の火蓋が切って落とされるのです。
壮大なスケール
フレイヤはヴァン神族の魔法を使ってバルドル、クレイトス、アトレウスを引き離そうとしますが、3人の戦いを止めようとはしません。そこでフレイヤは、石工の巨人サムールの亡骸を操り、より大胆な行動に出ます。
サムールのビジュアル資料 – アーティスト:Dela Longfish & Yefim Kligerman
サムールの姿はゲームを進めるなかで何度か見かけることがあります。その大きさに威圧感は感じるものの、その時点では特に脅威となる存在ではありません。サムールは、プレイヤーに驚きを与え、見た人の好奇心を刺激する存在なのです。そしてミーミルがサムールとトールの戦いについて語った際に、「もしかしたら……」と想像したプレイヤーもいたことでしょう。
サムールの大きさを示すコンセプトアート – アーティスト:Jose Cabrera
サム―ルの凍りついた巨躯を、3つの戦闘フェーズにまたがってメカニズムとして組み込んだことは、物語の最終決戦にふさわしい大胆なアイデアでした。
フレイヤが魔法で憑依したサムールの外見案として使用されたコンセプトアート。
通常、巨大な舞台装置を使ったゲームプレイを作る場合、最初からナラティブチームがそうした台本を書くことはないとSophosは言います。石工の巨人を戦闘の一部として利用するアイデアを思いついたのも、はじめはデザインチームでした。
「ナラティブチーム側から、ボス戦を作り上げるにあたってあまり大がかりなことは提案しないようにしています。なぜかというと、それを実現するのが他の部門だからです。脚本家として何か書けば、ほかのたくさんのチームメンバーがそれを実現しなければならないんです。なので核となる物語は小規模で個人的なものにしておいて、デザインチームにそれをどこまで広げたいか聞くようにしています。
フレイヤがサムールの亡骸を操るという案は、私たちのアイデアではありません。デザインチームがこのアイデアを思いついて、サムールの体の上も含めたあらゆる場所で戦いを展開させたいと言ってきたので、私たちはクラクラしながら『ああ、うん……やってみるよ』と答えたんです」
サムールがフレイヤの魔法で操られる場面の台本。
「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズを象徴する特徴のひとつが、巨大なボスとの戦いです。開発チームは、プレイヤーを圧倒するような、壮大なスケールの戦いを生み出すことを得意としています。しかし、『ゴッド・オブ・ウォー』(2018)で導入されたとある新要素が、こうした場面の表現の仕方に大きな影響を与えました。その新要素とはカメラです。
ゲーム全体を通して、カメラをクレイトスの近くに配置し、それぞれのシーンをノーカットで描き出すことは、旅を通じて深まっていく親子の絆を感じさせるうえで欠かせない要素でした。これはムービーか戦闘中かを問わず、プレイヤーがつねにクレイトスの近くで、彼が見るもの、することを体験できるようにするためです。
サンタモニカスタジオのリードカメラデザイナーを務めるErol Oksuzは、サムールの登場シーンに、このアプローチがどのような影響を与えたかを語ってくれました。
「サムールの大きさを表現できたのは、シネマティックチーム、アニメーションチーム、アートチーム、ライティングチームのみんなのおかげで、まさにチームワークの賜物でした。ギリシャを舞台としたこれまでのタイトルでは、カメラを遠くに置いて、クリーチャーや背景と比べてクレイトスを小さく描くことで、敵の大きさを際立たせていました。
ところが『ゴッド・オブ・ウォー』(2018)では、プレイヤーがクレイトスとアトレウスの旅に寄り添えるようにカメラの距離感をぐっと縮め、ドキュメンタリーのような体験を提供することを目指していたため、たくさんの制約がありました。例えば“ノーカット”のほかにも、“空中カメラ禁止”なんてルールもあったんです。つまり、カメラを遠くに置くような超遠距離ショットも使えなくなったんです。それを補うために生まれたのが、見事に作り込まれた演出です。これによって、ゲームにスケール感が生まれました。各チームの見事な仕事ぶりには、今でも驚きを隠せません」
※映像は英語版です。
「例えばバルドルが不死身でなくなった直後に、フレイヤがカメラのすぐ傍で彼を拘束して連れ去る場面があります。その後、フレイヤのシルエットが映って、その後ろに立ち上がろうとするサムールが映ります。この場面では、パンやティルトといったカメラのわずかな動きで「ゴッド・オブ・ウォー」らしさあふれる瞬間を演出しています。
画面にフレイヤと巨人が一瞬映った次の瞬間、クレイトスとアトレウスが手前に再び入り込んできて、プレイヤーも一気にその状況へと引き込まれるんです。シーンをカットしたり、カメラを遠くに動かしたりする必要なんてどこにもありません」
サムールがクレイトスとアトレウスをその巨大な手で掴む場面転換のシーンでも、カメラに特別な配慮が必要だったとVelazquezは付け加えます。
「ノーカットのルールを破らずに、サムールがクレイトスとアトレウスを掴み上げるシーンを描くのには特に苦労しました。クレイトスたちを包み込んだ手が完全に光を遮って、そのまま傷つけることなふたり人を別の場所に移動させるという一連の流れを、説得力のある形で伝える必要がありました。技術的な観点から言って、このシーンは非常に難しかったですね」
※映像は英語版です。
このシーンにサムールを組み込んだことは、ムービーの表現だけでなく、戦闘中のカメラにも影響を及ぼしました。戦闘シーンでは、サムールの攻撃が迫っていることをうまく伝えられるように、カメラの位置を工夫する必要があったのです。例えばプレイヤーがバルドルと戦っている最中にサムールが地面を叩きつけると、その地点から一定範囲内に波状攻撃が発生します。戦闘中はカメラが近い場所にあるうえに、戦いは目まぐるしく展開していくため、うまくサムールのスケール感に対応する必要があったとOksuzは語ります。
「ギリシャ時代を舞台にした過去のシリーズでは、カメラは特定方向に固定されていて、ボスが攻撃してくる時にはカメラが引いてその動きを完全に画面内に収めていました。そうすることで敵の攻撃の予備動作を見せて、プレイヤーが反応する時間を作っていたんです。でも本作では、カメラ操作が完全にプレイヤーに委ねられているので、敵の攻撃もそれに合わせて変える必要がありました。なのでプレイヤーの操作の邪魔にならないようにしつつ、できるだけ多くの情報をプレイヤーに伝えたいと考えたんです」
※映像は英語版です。
「サムールの手ができるだけ低い位置に来る動きを何度か試した後に、いつもよりさらにカメラを引いて、レンズを広げて、通常の近接戦闘のカメラとの違いが出るように調整しました。画面に映る範囲が広げれば、地面に落ちる影も見えやすくなって、巨人の手がより見えるようになるんです。最終的にそこに音や画面の揺れ、コントローラーの振動を組み合わせることで、プレイヤーにも緊迫した事態だということが伝わるようにしました」
石工の巨人の出番は、アトレウスがヨルムンガンドに助けを求めた時点で終了します。ヨルムンガンドがその声に応じて、巨人に激突して噛みつき、フレイヤの呪文を破ってサムールを押し戻すのです。
サムールを退場させる方法をいろいろと探った結果、この場面がゲームに追加されたのはかなり後半になってからのことでした。クレイトスとアトレウスの動きにはモーションキャプチャーが活用されていますが、このシーンに登場するほかのものはすべて、才能溢れるシニアスタッフアニメーターのDennis Penaが手作業でアニメーションがつけています。周囲で起こっている混乱やアクションをすべて見せながら、主人公たちが画面内に収まるように調整されているのです。
ヨルムンガンドがサムールに攻撃する場面のアニメーションの製作過程。
※映像は英語版です。
神々の激突
バルドルとの最終決戦は、本作でもっとも複雑な戦闘シーンのひとつです。ここにいたるまでに、クレイトスとアトレウスは全ての装備を使えるようになっているため、開発チームとしては、プレイヤーにそうした装備のパワーを感じてもらうとともに、物語を通じて学んできたあらゆるスキルを活用してほしいと考えていました。
リードコンバットデザイナーのDenny Yehは、サンタモニカスタジオのコンバットチームの哲学を次のように解説しています。
「最後の戦いは、ある種の最終試験なんです。ヴァルキュリアのような、あらゆるプレイスキルが求められるようなやりこみ要素的なボスとは違って、バルドルのようなストーリー上のボスは、ゲーム内に登場するなかでももっともインパクトを残すような戦いでなければいけません。単なる厳しいテストではなくて、これまでにプレイヤーが学んできたことを褒め称えるようなものにしたかったんです」
バルドルはゲームの最初と最後に登場する敵です。なので最後の戦闘は、慣れ親しんだものではありつつも、それと同時に新鮮なものでなくてはならず、ほかの戦闘にはない難しさがありました。さらにバルドルは、他のアース神族の神々のように武器を使って戦うわけではないので、その点でも他の敵とは一線を画しています。Velazquezは次のように語ります。
「制作の早い段階で、バルドルには武器を持たせないことにしました。痛みを感じないのであれば、無謀で大胆な戦い方をするだろうと考えたんです。バルドルは自分自身の体を武器として使うので、防御のための盾も、攻撃のための剣も持たないんです」
この決断により、それまでの戦いで確立されたキャラクターの一貫性を保ちつつ、戦闘に新しいメカニズムを組み込まなければならないという課題が生まれたのです。そしてその解決策のひとつが、石工の巨人とフレイヤを戦闘シーンに加えることでした。こうした要素は単なる邪魔な障害物ではなく、プレイヤーが有利に立つために利用できるギミックでもあるとYehは言います。
「フレイヤはクレイトスを殺したいわけではなく、むしろ戦いを止めようとしているだけで、基本的にはクレイトスの動きを止めようとして介入してます。そしてフレイヤがクレイトスの動きを止めることによって、結果的にバルドルが簡単にクレイトスの顔面を殴れるようになるわけです。
フレイヤが操るツルの面白いところは、クレイトスとバルドルの両方に影響を与えるという点です。プレイヤーがうまくツルを避けつつ、反対にバルドルをツルにおびき寄せれば、戦況を一変させることができるんです」
フレイヤの魔法やサムールの画面全体に及ぶ攻撃以外にも、もうひとつ重要な要素があります。それはバルドル自身です。
「バルドルはストーリーの最後を締めくくるボスなので、プレイヤーがあらゆる手段を使って立ち向かうメカニズムを作りたかったんです。戦闘面で言うと、バルドルの炎や氷を吸収する能力がこれに当たります。この能力があることで、自然とプレイヤーに武器を切り替えさせて、それまでに習得したさまざまなアビリティを使わせるきっかけが生まれるんです」
バルドルのエレメンタルバーストのアニメーションの制作過程。
※映像は英語版です。
炎や氷を体に宿すことができるバルドルの能力や一連の新しいアクションは、どれもプレイヤーを飽きさせないための重要な要素です。プレイヤーに自分が“戦の神”であることを感じさせつつ、さまざまな道具や知識を活用できるような戦闘を実現する責任者として、コンバットデザインを担当したシニアスタッフコンバットデザイナーのLoren Bordasは、次のように語ります。
「属性を吸収するという特徴に加えて、バルドルがその時身に宿している属性によって、あらゆる攻撃の性質が変わるんです。これによって、プレイヤーが既に見たことがあるアクションにも、ひとひねりを加えることができました。さらに、属性を帯びた投擲物を投げるといった新しいアクションも追加しています。戦いの最終フェーズでは、これらすべての攻撃を組み合わせてコンボを繰り出してくるので、緊迫したバトルが楽しめるんです」
戦闘中に炎を身に宿すバルドル。
例えばパズル的な要素として、攻略するには雷の樹液を使う必要があるハラーズリール戦のように、ゲームプレイ上のテーマが前面に出たボスもなかにはいます。ですがバルドルのようなゲームを締めくくるボスの場合、戦闘以外のゲームプレイ要素を大きくしてしまうと、プレイヤーがそれまでに重ねてきた成長を無駄に思ってしまうリスクが生まれます。こうした事態を避けるためにも、バルドルとの戦闘には、壮大なフィナーレとして、多彩なフェーズやアクションが求められるのです。Yehは次のように語っています。
「開発初期のバルドルには、属性要素はなくて、好きなアビリティを使って思い思いのプレイスタイルで戦えるようになっていました。その後、属性を吸収するという要素を加えて、それぞれの武器のルーンアタックをうまく使い分けながら戦う必要があるように調整していったんです」
※映像は英語版です。
「Lorenたちは後半のフェーズに敵を追加して、敵の集団を一掃するのが得意なプレイヤーが輝ける舞台を用意しました。そして最終フェーズでは、バルドルが属性を頻繁に切り替えるようにして、状況に合わせて武器を切り替えることを前提とした戦いに仕上げたんです」
個と個の戦い
戦闘中の多くのシーンで、クレイトスは武器を複数持っているにも関わらず、バルドルと素手で殴り合います。これは、クレイトスとバルドルの最後の戦いが、それぞれにとって譲れない戦いであり、この戦いの絶望的かつ暴力的な側面を強調するための意図的な演出です。Velazquezはさらに次のように語ります。
「バルドルは武器を持っていないので、クレイトスも武器を使わないようにすれば、インパクトがさらに大きくなると思ったんです。これはカメラワークによって戦闘の没入感を高めるという全体的な方針と合致していましたし、クレイトスとバルドルの戦いを暴力的なものとして描きたいという、この戦闘シーンの方針とも合致していました。クレイトスがバルドルにとどめを刺すときに手を使わせたのも同じ理由からです。手を使わせることで、武器を使った場合よりも、はるかに生々しい場面になるんです」
※映像は英語版です。
プレイヤーはカメラワークによって、クレイトスとバルドルが拳の応酬を繰り広げるシーンに引き込まれます。ここではクレイトスとアトレウスが力を合わせて、ゲーム開始当初から自分たちのことを理不尽に襲ってきたバルドルへ立ち向かうため、プレイヤーの気分を盛り上げるシーンがいくつも登場します。ですがそれと同時に、この戦いにはそれぞれのキャラクターが背負う宿命や、争いがもたらす代償を描くため、開発チームが意図的に盛り込んだ残酷さも秘められているのです。
ひとつになった親子
Sophosが説明したように、開発チームの重要なゴールのひとつは、家族として、そして戦いにおける相棒として、クレイトスとアトレウスの絆が物語のなかでどれだけ深まったかを描くことでした。最後のバルドル戦では、プレイヤーがクレイトスとして達成感や力強さを感じられるように設計されている一方で、アトレウスがゲームプレイや戦闘においてクレイトスの力になっていることを示すことで、アトレウスにも感情移入できるようになっています。
鹿も仕留められないような自信のない少年だったアトレウスが、クレイトスが戦闘のなかで頼りにできるような、自信に満ちた戦士へと大きく成長した様子が描かれるのです。Velazquezはこれらの場面について、次のように説明しています。
「クレイトスがアトレウスを空中に放り投げて弓を射らせるシーンや、クレイトスがバルドルを掴みながら石工の巨人から飛び降りると、アトレウスもそれに続いて飛び降りるシーンなど、親子のチームワークを強調するシーンはいくつかあります」
跳躍するシーンのアニメーションの制作過程。
※映像は英語版です。
「でもふたりの絆が一番伝わるのは、プレイヤーがタイミングよくボタンを押すことでクレイトスとアトレウスが交互にバルドルを攻撃する場面でしょうね。父と子の一体感を強く感じさせるシーンを作り上げることができて本当によかったです」
クレイトスとアトレウスが連携して攻撃するアニメーションの制作過程。
※映像は英語版です。
戦闘中のアトレウスは、敵にダメージを与えたり、バルドルをスタンさせて接近する機会を作ったりと、クレイトスを積極的に援護しますが、開発チームはこうしたムービーやQTEに力を入れることで、アトレウスによりスポットライトを当てて、プレイヤーがアトレウスを心から応援できる瞬間を作り出したのです。
記憶に刻まれる演技
ゲームのクライマックスであるこのシーンは、壮大な戦闘の舞台装置であるだけでなく、クレイトスとアトレウスの物語とは別に、ふたつの重要なストーリーを締めくくる大事な役割を担っています。
シーンの開始時点では、フレイヤがどちらの味方なのかわからないクレイトスとアトレウスですが、バルドルのフレイヤに対する敵意を知ると、ふたりはフレイヤを守ろうとします。フレイヤはアトレウスの命の恩人であり、彼らの旅に欠かせない存在でもありました。
バルドルとフレイヤの間に割って入るクレイトス。
クレイトスとアトレウスはフレイヤから受けた恩を今でも忘れていません。ですがヘルヘイムでの旅を通して、バルドルが抱えている苦しみも描かれています。感覚を失ってしまったバルドルが、精神的にどれだけ傷ついたかをプレイヤーはあの地で目の当たりにするわけです。バルドルの行動は許されるものではありませんが、フレイヤの呪文がバルドルに与えた代償を知ることで、この戦いにある種の悲哀が生まれるのです。バルドルを演じた俳優のJeremy Daviesは、見事にその悲哀を体現しています。Sophosは次のように付け加えました。
「Jeremy Daviesは、物理的に痛みを感じることができないキャラクターが感じている、強い心の痛みを表現してくれました。彼の演技によって、プレイヤーはバルドルの酷い言葉の裏には悲劇があることを理解して、憎み切れないキャラクターとして受け止めることができるんです」
Jeremy Daviesの演技が光るもうひとつのシーンは、ヤドリギの矢がバルドルの呪いを解き、100年ぶりに感覚を取り戻した直後の場面です。Velazquezは、バルドルが想うさまざまな感情を表現しきったJeremy Daviesの演技力について、次のように語ります。
「Jeremy のバルドルの演技はどれも素晴らしいものでした。なかでも深く記憶に残っているのは、ヤドリギの矢によってバルドルにかけられたフレイヤの呪文が解かれて、再び彼に感覚が戻った場面です。Jeremyがこのシーンを見事に表現してくれたおかげで、プレイヤーはバルドルと彼が置かれていた苦境に共感できたはずです」
※映像は英語版です。
この戦いを締めくくるムービーには、もうひとつ際立った演技がありました。それはDanielle Bisuttiが演じたフレイヤです。
ナラティブチームがゲームの最終決戦の目標について触れたように、全員が幸せになるようなエンディングは描かれません。そしてクレイトスの行動がもたらした結果に重みが生まれたのは、Bisutti の心を締め付けるような演技によるところが大きいでしょう。すべてを犠牲にしてまで守ろうとした息子の亡骸に覆い被さったフレイヤは、悲しみと怒りに打ち震え、味方から敵へと変貌します。Bisuttiはこの瞬間を見事に表現してくれました。Sophosは、このシーンは自分が見てきたなかで、もっともインパクトのあるシーンのひとつだったと言います。
「Danielle Bisutti演じるフレイヤが、息子を殺したクレイトスへの復讐を誓い、徐々に感情を高ぶらせ、クレイトスに向かって憎しみと悲しみに満ちた容赦のない言葉を投げかけるあのシーンは、私が携わってきた作品の中でも、一番力がこもった演技のひとつでした」
※映像は英語版です。
「あのときの現場は静寂に包まれていました。みんなが口をつぐんで、長い沈黙が続いたんです。Danielleが真剣にフレイヤに向き合っていたことは知っていたので、真に迫ったシーンになるとははじめから思っていましたが、あれはその想像を超える演技でしたね……」
以上、今回は『ゴッド・オブ・ウォー』(2018)のラスボス戦を振り返ってみましたが、お楽しみいただけたでしょうか?
ゲーム制作に関わったスタッフ全員、そしてサンタモニカスタジオの開発チーム全員を代表して、コミュニティの皆さんから頂いたこの5年間のサポートに心から感謝します。皆さんのサポートがなければ、ここまでたどり着くことはできませんでした。全て皆さんのおかげです!
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