※本記事は英語版PlayStation®.Blogの日本語翻訳記事です。
数々の伝説的なボスでプレイヤーを魅了してきたフロム・ソフトウェア。その手に汗握る戦闘、魅力的なクリーチャーデザイン、そして心に残る設定は、10年以上にわたって忘れられない出会いを生み出してきました。いよいよ『ELDEN RING』の発売が来月に迫るなか、今回は「PlayStation Studios」の開発者の皆さんに『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』『Bloodborne』『Demon’s Souls』、そして「DARK SOULS」シリーズのお気に入りのボスを聞いてみました。
「黄衣の翁」 |『Demon’s Souls』
「2009年のことです。『Demon’s Souls』をプレイしていたところ、ワールド3-3で黄衣の翁との戦闘が始まりました。それは今までのボスとは全く違っていました――小柄なうえに、縦横無尽にローリングして、私のプレイスタイルにほぼそっくりでした。あっという間にパリィされ、バックスタブされて死にました。“なんて凄いAIだ”と思いましたよ。
「この戦闘における真の独自性がわかったのは、2回目の対戦でのことでした。今度は全く違う見た目になって魔法を唱えてきたのです! 2回目に死んだあと、インターネットで攻略法を見ることにしました。“バトルで毎回戦闘スタイルを変えてくるボスのパターンをどうすれば学べるんだ?”と思いながら…。そして思わず唸りました。
真相を知って衝撃を受けました。戦っていた相手はCPUではなく、他のプレイヤーだったのです――あれはPvP(プレイヤー対プレイヤー)のボス戦だったのです! 本当に驚きでしたよ!」。
Thomas Hart(インソムニアックゲームズ、アソシエイトコミュニティマネージャー)
「灰色の大狼シフ」 |『DARK SOULS』
「ムービーが始まると、墓石の向こうから飛び出したシフが巨大な剣を咥え、激しい戦闘に身を投じました。倒す直前、シフは少し足を引きずるようになっていました。攻撃速度も遅くなり、少し悲しくなりましたが、シフは死ぬまで戦うつもりのようでした。倒すと「大狼シフのソウル」を入手しました。その説明を読むと、さらに気持ちが沈みました。シフはかつて忠実な友であり、主人の墓を守っていたのです。その後、ゲームの伝承をさらに読んでいくにつれ、ボスに対する見方が変わっていきました――その多くが可哀そうに思えてきたのです。本シリーズのボスは、どれも倒したときに大きな達成感を与えてくれますが、ボスにはそれぞれ物語が備わっており、その多くは物悲しいものです。ボスを倒すことで、そのボスについて深く考えさせられるようになるのです」。
Tom Clercx(Nixxes Software、アニメーター)
「竜狩りオーンスタイン」と「処刑者スモウ」 |『DARK SOULS』
「2体のボスと同時に戦わなければならないことを知ったとき、信じられないほど絶望的で、不可能に思えました!
オーンスタインは素早く、休む間もなく攻撃し続けます。その間、近づいてくるスモウの巨体が地響きを立てる音を聞きながら、その同じく巨大なハンマーで虫のように押しつぶされるかもしれないという恐怖を味わうことになります。ついに片方を倒せたときには勝てるかもしれないと思いましたが、今度は残った方がさらに強力な形態に変化したのです! ただでさえ凄い戦闘なのに、どちらを先に倒したかによって、それぞれの形態がどう変化するのかを楽しめる、嬉しいおまけもついていました」。
Dzan Wong(Firesprite、シニアQAテスター)
「“ソウルライク”とは、難易度が高い、手加減しない、プレイヤーに真剣勝負を挑む…というようなことを指す言葉です。オーンスタインとスモウは、『DARK SOULS』のなかでも特にソウルライクなボス戦です。どちらも容赦なく好戦的、互いを貫通する攻撃が可能――プレイヤーは今までゲーム内で学んだすべてを発揮することを強いられますが、重要なのです。オーンスタインとスモウは、ゲームに慣れてきたプレイヤーの鼻をへし折ります。苦しくも魅力的な本作を楽しみ、進めていきたいのなら、状況に合わせて適応し、倒されることに慣れなければならないことを教えてくれるのです」。
Duncan Tyrer(Firesprite、エンベデッドQAアナリスト)
「騎士アルトリウス」 |『DARK SOULS』
「騎士アルトリウスによる最初のジャンプからの一撃以上に“アノール・ロンドへ戻れ”と言われた気分になるものはないでしょう。その先制攻撃を目の当たりにすれば、最強の“選ばれしアンデッド”でさえも、火継ぎの祭祀場まで逃げ帰るスタミナがあることを祈りたくなるはずです。最も英雄的で高貴な騎士だという伝説とは対照的に、戦うことになる相手は獰猛で予測不可能な技の数々を使い、剣を不器用で動物的に振るい、突き刺してきます。
しかしこの戦闘で最も強烈なのは、そのアートです――滅びてしまったかつての黄金時代を物語る闘技場は、廃墟となって草木が生い茂り、アルトリウスの鎧は傷だらけで汚れ、破れています。利き腕は折れて力なくぶら下がっており、弱い方の手で攻撃してくるのです。アルトリウスの悲劇的なバックストーリーのせいか、容赦ない難易度のせいかはわかりませんが、アルトリウスのせいでエスト瓶に涙が溜まってしまいました。DLCにまで手を出してしまったことに対するふさわしい罰ですね」。
Matthew Kemp(Firesprite、ゲームデザイナー)
「冷たい谷の踊り子」 |『DARK SOULS III』
「ロスリックの礼拝堂に入ると、扉が閉じて、闇が室内を満たします。そして私のゲーム人生で最も印象的な瞬間が目の前で繰り広げられました。暗闇のなかから吊るされた踊り子が落ちてきて、しなやかに動きながら私のキャラクターの前に立つのです。あの戦いが始まったときのことを思い出すと、今でも鳥肌が立ちます。バトルは滑らかで、ときには熱狂的。敵が脅威であることは最初から明白でした。まさしく互いを支配しようとするふたつの勢力が繰り広げる踊りのように感じられ、こんなボス戦は初めてでした。『Demon’s Souls』で初めて「つらぬきの騎士」と戦ったときのことを思い出させてくれましたが、それよりもずっと洗練されていました。バトルに勝利したとき、さびしい気持ちになりました。こんなことは「Souls」シリーズのボス戦で初めてでした。物足りなかったのです。さらなる戦闘の段階や、アリーナを満たすさらなる攻撃…とにかく、もっと欲しかったのです。『ELDEN RING』で、あのときのようなスリルを再び味わえるのを楽しみにしています」。
Randall Lowe(Bluepoint Games、プロデューサー)
「無名の王」 |『DARK SOULS III』
「無名の王との戦いは、苦しいと同時に壮観でした。バトルエリアは雷雲に覆われ、ボスが巨大な竜の背に乗り降り立ちます。王は火を吐く竜に乗りながら、プレイヤーに鉄と雷の攻撃を浴びせ、王者の称号にふさわしい優雅さと威厳を見せつけてきます。竜を片付けたあとは、無名の王との一対一の決闘に臨むことになります。王は武器と嵐の力の両方を自在に操り攻撃します――鉄と風と雷の攻撃を受ければ、簡単に打ち負かされてしまうことでしょう。王の攻撃と同じぐらい恐ろしい点を挙げると、攻撃の合間にゆっくりとプレイヤーに向かって歩いてくることでしょう。熟練の戦士の持つ忍耐と平静さを見せつけてくるのです。この恐るべきボスを倒すことで、それに匹敵するまでに上達できたという実感と、ロスリックの頂に立つボスを倒せたという誇りが手に入ります」。
Tucker Cole(ベンドスタジオ、テクニカルアーティスト)
「時計塔のマリア」 |『Bloodborne』
「巨大な時計塔の廃墟に足を踏み入れると、椅子に腰かけた死体が待ち受けており、豪華な窓から差し込む陽の光に照らされています…何がやってくるのかはわかっていました。しかし、これが本作で最も難しく、そして最も美しいボス戦になるとは思いもよりませんでした。時計塔のマリアはシリーズで一番好きなボスです。それは、マリアにリードされながら踊っているように感じられたからです。
エリアはほとんど空っぽですが、教会を思わせるろうそくが脇に並び、白い花びらが床に散らばり、時計塔の豪華な窓から入る光に照らされているエリアは情緒的で、このようなボス戦に良く似合っています。音楽は美しく、アドレナリンを湧き立たせるのに十分なテンポがあります。マリアが躊躇することなくこちらへ歩いてくる様子からは、プレイヤーを完全に滅ぼすのだと確信しているのが伝わります――その素晴らしいアニメーションは、このキャラクターデザインにぴったりでした。
マリアの各戦闘段階の遷移はとてもバランスが取れていて、つながりが非常に滑らかでした。第一段階は、素早い攻撃に合わせたリズミカルな踊り。第二段階はペースが上がり、自らの血を鞭のように使って遠距離攻撃をしてきます。第三段階は…血と炎の両方を避けなければなりません。一歩でも踏み間違えたら終わりです。初めてマリアと戦ったときは、本当に素晴らしい体験ができました」。
Ivanna Liittschwager(サンタモニカスタジオ、環境アーティスト)
「聖剣のルドウイーク」 |『Bloodborne』
「最初のうちは典型的なハンター対怪物のバトルですが、これが本当に特別なバトルであることが途中で判明します。
負傷したルドウイークは、倒れこみます。そして傍らに、長らく見失っていた月光の聖剣があるのを見つけます。理性が凶暴さに取って代わり、「醜い獣、ルドウイーク」は消え去ります。獣に追加ダメージを与えていた武器からは、その効果が失われます――金切り声を上げる獣は、巨人に変わるのです。
おかえり、“聖剣のルドウイーク”。
そして始まるのが、『Bloodborne』のために作曲された最高の一曲です。ルドウイークが剣を振るうのに合わせて、戦いは血と星明かりに満ちた激しいワルツへと変化します。すべての攻撃は音楽の強弱に従っており、戦いに踊りのようなリズム感が生まれます。不規則な戦いとして始まったものが、血塗られた舞踏場におけるハンター同士の優雅な決闘として幕を閉じるのです。
ルドウイークは、ボス戦という形で『Bloodborne』のゲーム体験を完璧にまとめ上げています。ハンターと、獣と、古の血が繰り広げる戦いを表現しているのです」。
Keano Raubun(Nixxes Software、ストーリーデザイナー)
「梟(義父)」 |『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』
「「狼」の人生において重要な決断のほぼすべては梟が下してきました。鉄の掟を教え込むことや、九郎の家来となること、これらすべては梟が竜胤を手にするための計画の一環でした。プレイヤーは大人になった狼として、人生最大のターニングポイントに戻り、梟の計画に終止符を打つのです。葦名城での戦いは友への忠義を示すものでしたが、今度の戦いは息子を見捨てた義父との間で繰り広げられます。全盛期の梟は、不死を目指す計画を阻止しようとするプレイヤーを、あらゆる手を使って妨害してきます。戦いの前に静寂が訪れ、そして戦いが始まると一気に感情が爆発します。裏切りへの怒り、見捨てられた苦痛、復讐の喜び。ぶつかり合う刃は、言葉では表せないものを表しています。戦いのスピード、激しさ、感情的な重みが、完璧に音楽的テーマへと変換されているのです。梟(義父)は、物語と機能的なゲームプレイを融合させ、忘れがたい戦いへと昇華させるフロム・ソフトウェアの得意とするところを見事に体現しています。『ELDEN RING』が何を見せてくれるのかが楽しみです」。
Israel Rey(Bluepoint Games、QAアナリスト)
「獅子猿」 |『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』
「フロム・ソフトウェアの素晴らしいボス戦のなかからひとつだけを選ぶのは、ちょっと難しいですね。昔から好きなのは「血に渇いた獣」ですが、今回はぜひともお話ししたい体験ができた『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』の獅子猿を選びたいと思います。
これは本シリーズにありがちな、アンデッドの騎士や不気味な怪物ではありません。それは、フンを投げてくる大猿です。初見では、ジョークで入れられたボスだと思うでしょう。
ですが猿の首を切り落としたあと、笑い者は自分だということに気づきます。勝利画面が現れ、その場から去ろうとすると…。なんと猿が片手に剣、もう片方の手に切り落とされた頭を持って立ち上がるのです。
なんといってもお気に入りなのは、フロム・ソフトウェアが作り上げた第一形態の非常に実感的なゴリラのアニメーションと、そして第二形態になるとそれが一変し、猿の胴体が半分ヘビ、半分バレエダンサーのようにウネウネと動き回ることです。
そして最後、不思議なことに敵の首の穴から巨大なムカデを引きずり出すことで、真相が明らかになります。戦っていた相手は、ゴリラの体内で生きていて、その体を操り人形のように動かしていた虫だったというわけです。カットシーンによる説明もなければ、メモによる説明もありません。すべてが圧倒的なビジュアルによって語られるのです」。
Joe Pettinati(ノーティードッグ、ストーリーリード)
「まぼろしお蝶」 |『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』
「ゲームに年配の女性が登場するのは珍しいことです。特に戦闘能力を持つ人物とあってはなおさらです。なので、私は戦いが始まる前からまぼろしお蝶が好きになりました。屈強で、並外れた熟練の武道家が、かつての弟子に長年の経験の成果を披露するのです。これは彼女の望まない戦いですが、掟には従わねばなりません。戦いは近接格闘のマスタークラスです。予測、バランス、キャンセル…すべてが完璧に的を射ています。ボス戦で勝利するのに運が絡まなかったといえるのは稀ですが、まぼろしお蝶戦のセットアップとアニメーションは本当に完璧です――弾きと回避が求められる攻撃のリズムと流れや、絶妙に設定された攻撃可能タイミング…彼女を倒せたときは、100%の努力でスキルを勝ち取ったのだと感じられました。そして戦いの間、まぼろしお蝶は派手で巨大で悪魔的な形態に変化することなく、ごく普通の人間の姿のままです。私が今までで一番好きなボスのひとつです」。
Anna Marsh(Firesprite、アソシエイトデザインディレクター)
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