
PlayStation®5ダウンロード専用タイトル『The Berlin Apartment』は、ドイツのベルリンを舞台にした一人称探索アドベンチャー。音声は英語とドイツ語のみだが、字幕やUIは日本語に対応している。制作はドイツに拠点を置く開発会社「Blue Backpack」で、2026年1月に開催される「台北ゲームショウ」が主催するアジア最大級のインディーゲームアワード「Indie Game Award 2026」ベストナラティブ部門のファイナリストに選出されている話題作だ。ファッション、エンタテインメント、アートなど、さまざまなカルチャーに携わる日本の「パルコ」が立ち上げたゲームレーベル「PARCO GAMES」のパブリッシングタイトル第1弾となる。

CHECK POINT①
ドイツ・ベルリンの古いアパートで体験する4つの時代の物語

物語の舞台は、時代とともにつねに変化し続ける街、ドイツ・ベルリンの古いアパートだ。時は2020年。少女・ディラーラは、そのアパートの一室の改装を任された父・マリクとともにアパートを訪れる。父を手伝うために部屋の片づけをしていくなかで、ディラーラはかつての住人たちが残したさまざまな遺物を発見していく。それらは物言わぬ証人であり、過去の住人たちが過ごした時間を静かに語る。娘が発見した遺物を見たマリクは、その痕跡に秘められた過去の物語を聞かせるのだった──。


ゲームはディラーラを操作してアパート内を探索し、遺物を発見することで進行していく。このアパートは長い歴史を持っているため、遺物を所持していた住人たちの時代もさまざまだ。遺物によって明かされるのは、自由が奪われて民主主義が崩壊した激動の1933年、第二次世界大戦が終結を迎えた1945年、東西冷戦の最前線であり政治的な緊張と社会的変動が同時に進行していた1967年、そして東西冷戦の終結とドイツの再統一という大きな転換期となった1989年という4つの時代の物語。2020年のディラーラが遺物を発見するたびにそれらの時代へ舞台を移し、その時代を生きた住人の視点で物語が描かれる。

時代ごとに異なる主人公や雰囲気
遺物に秘められた物語は舞台こそ同じアパートでありながらも、そのすべてが異なる主人公、異なるジャンル、そして異なる雰囲気となっているのがポイントだ。1989年はベルリンの壁を挟んで暮らす男女の小さな恋の物語であり、1967年は執筆に苦しむ作家の葛藤を描いている。そして1945年の主人公は戦後を生きる少女であり、1933年の主人公はユダヤ人の老人となる。本作は1900年代から2020年までの約120年間にわたるさまざまな時代のベルリンを舞台としており、そのなかにはドイツの歴史に忠実な表現が含まれる。センシティブな時代背景だが、だからこそドイツに拠点を置く開発会社が手掛けていることに重みが感じられた。

ゲーム内の歴史的描写は特定の時代背景や物語性を伝えるための表現であり、特定の思想やイデオロギーを推奨または美化するものではない。派手な展開やアクションなどはないものの、人々の生活を静かに語る切ない物語にきっと心を打たれるはずだ。ドイツ・ベルリンの120年をともに歩んできたアパートで、変化を続ける都市の歴史的背景と住人たちの人生におけるターニングポイントを追体験しよう。

CHECK POINT②
トゥーン調のグラフィックで表現された各時代のアパートを探索しよう
色鮮やかなトゥーン調のグラフィックも本作の大きな特徴だ。窓から見える景色はもちろん、部屋にある家具、壁のポスターなどが細部まで描写され、存在感と生活感を演出。特定のオブジェクトを調べると住人の反応を楽しむこともできる。ゲームの進行に関係のないオブジェクトもあるが、それに対する反応から時代背景や住人の人となりを知ることができ、物語により深く没頭できるようになっている。


部屋の間取りは基本的に各時代で共通しているものの、外の景色や内装は時代によって異なるため、雰囲気もガラリと変わる。例えば、同じ部屋でありながらも時代や住人によっては観葉植物で埋め尽くされていたり、壁が崩れて雪や風が吹き込んでいたりなどの変化があり、歴史を感じるとともに、つねに新鮮な気持ちで探索できる。


1989年の台所には収納式の浴槽とシャワーがあって驚いたが、これも歴史的な事実なのだろう。「こういうものがあったのか」と、知らない文化に触れることができるのも面白い。また、とある時代ではなんと宇宙船の内部のような場所も。それまでは時代によって景色の違いを感じてはいても、これほど大きな変化はなかったため、かなりの衝撃を受けた。

各時代とも、アパート内を探索して何かを調べたり、物を集めたりすることで物語が進んでいく。行動範囲はさほど広くなく、何をすればわからなくなってもメニュー画面から目的を確認できるので、行き詰まることはないはずだ。

CHECK POINT③
時代ごとのミニゲームやパズルによってゲームプレイも変化
時代によって変化するのは、景色や内装だけではない。各時代にはミニゲームやパズルが用意されていることがあり、時代ごとに異なるゲームプレイを味わえるのも特徴となっている。

思わず熱中する紙飛行機シミュレーター
1989年では、手紙を紙飛行機にしてベルリンの壁の向こうに暮らす女性のもとへ飛ばすという展開があり、実際に紙飛行機を折るところからスタート。アナログスティックやボタンを操作して紙飛行機を作成するのだが、これはさほど難しくはない。しかし、紙飛行機を女性のもとまで飛ばすのが至難の業なのだ。


紙飛行機の軌道は多少の制御が効くものの、一度降下すると上昇させるのは難しく、射出する角度が重要となる。最初は簡単だが、手紙をやりとりするなかで風が吹き、さらに雨さえ降るように……。紙飛行機はそれらの影響を受けやすいため、難易度は跳ね上がっていく。失敗してもすぐに再挑戦できるうえにスキップして物語を進めることもできるのだが、かなりの歯ごたえだった。

スーツケースにうまく荷物を収納せよ
1933年では、スーツケースに荷物を収納するパッキングパズルが楽しめる。サイズや形が異なる複数の荷物を、回転させたり重ねたりしながらスーツケースに収納していくのだが、これがなかなかシビアだ。ああでもない、こうでもないと試行錯誤を重ねてなんとか収納できたと思ったら、追加の荷物があってパニックに。時間制限もあり、最初のチャレンジではあえなく失敗してしまった。それでも問題なく物語は進むので詰まることはなかったのだが、これはくやしい。各時代の物語は繰り返し振り返ることができるため、ぜひ再チャレンジしたい。

そのほかの時代でも、クリスマスの飾りで部屋やツリーを彩ったり、選択肢によって小説の物語を紡いだりする展開などが楽しむことができる。景色だけでなくゲームプレイも変化することによって、各時代の体験がより印象深いものになっている。

古い歴史を持つアパートを舞台に、ドイツ・ベルリンの歴史的背景や住人たちの転機にまつわる物語、そして時代の変化を体感できる『The Berlin Apartment』。プレイ時間はさほど長くなく、気軽に遊びやすい内容なので、この年末に触れてみてはいかがだろうか。

The Berlin Apartment
・発売元:PARCO GAMES
・フォーマット:PlayStation 5
・ジャンル:一人称探索アドベンチャー
・配信日:好評配信中
・価格:ダウンロード版 販売価格 2,750円(税込)
・プレイ人数:1人
・レーティング:IARC 16+(16才以上対象)
※ダウンロード専用タイトル
『The Berlin Apartment』公式サイトはこちら
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©btf
※IARC(the International Age Rating Coalition)は、世界のゲーム評価機関により管理される国際年齢評価連合です。









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