
皆さん、こんにちは! 『Dreams of Another』のディレクターであり、マルチメディア・アーティストのBaiyonです。いよいよ本作の発売日、10月10日(金)が間近に迫ってきました。今回は、本作のテーマが生まれたきっかけや、作品の魅力のひとつである“モノとの会話”のセリフの発想、そして私自身が手がけたサウンドトラックへのこだわりについてご紹介したいと思います。
“破壊なくして創造なし”というテーマはどうやって生まれたのか
『Dreams of Another』は”破壊なくして創造はない”という哲学的なテーマを掲げた、新感覚の三人称探索型アクションゲームです。通常のTPSゲームのように武器で”撃つ”ことによりオブジェクトを破壊するのではなく、”撃つ”ことで世界を創造します。
“破壊と創造”について、記憶に残っている出来事があります。
それは中学生のときの文化祭での出来事です。学校のルールとしてそれぞれに何か出し物をする必要があり、僕は友人とふたりで段ボールを集め、オブジェを作って展示することにしました。
1日だけの文化祭の終わりを告げるチャイムが鳴り、片付けが始まると、軽い気持ちで僕はオブジェを殴って壊し始めたのです。結局、廃棄するものだったので「どうせ片付けるなら楽しくやろう」といった若さゆえの軽い気持ちだったのかもしれません。
最初は友人も笑って見ていたのですが、しばらくして背中に痛みを感じ、振り向くと怒った顔の友人が僕の背中を蹴っていました。そこから思い切り喧嘩になり、気が付いた先生が教室に入ってきて僕に向かって「お前は壊すために作るのか!?」と怒鳴りました。その言葉は、先生の意図とは違う形で、ずっと自分のなかに残っていました。
自分の作ったものを大事にしろという意味なのはわかっていた気がしますが、とはいえ結局は廃棄するものなのに……と思ったのと同時に、この矛盾は複雑な人間らしさのひとつとして、なんだか興味深いと思ったのです。それが、自分のものづくりの根底にずっと流れていて、本作ではそれを形にできました。
木やドアなどのモノとのユニークな会話やセリフの発想
本作では、不思議な夢の世界で人だけではなく木やドアなど、モノたちとも話すことができます。彼らの思いを聞き、彼らの感情に触れることが出来るということも本作の大きな魅力のひとつです。
例えばこのドアのセリフのアイデアを考えたとき、まず“ドア”といってもいろいろな種類や立場があることに気付きました。公共施設のドア、自分の家のドア、リビングルームや子供部屋のドア、数十年住んでいた実家や、旦那を亡くしたおばあちゃんの一人暮らしの家のドア……。それぞれのドアが、人間の生活と結びつき、私たちと同じように誇りを持ったり、ほかのドアを羨んだりしているのではないかと思ったのです。
もし自分がドアだったら、ただ空間を区切る存在でいるよりも、誰かの個人的な空間のために存在する個人に寄り添うようなドアでありたいなと思いました。しかし、リビングルームで大家族にワイワイと雑に扱われる方が心地よいドアもいれば、公共施設で見知らぬ人たちのために存在するのが性に合うドアもいるかもしれません。ドアにも、いろんな好みや考え方があるイメージです。
セリフでは、何が正しいかや結論を押し付けることはありません。プレイヤーが自分の環境に照らし合わせてみたり、以前の記憶にアクセスしたりして、自己対話できる時間を作りたかったのです。そうやってセリフを平面的な一視点だけではなく、立体的で多層的に、自分の記憶と照らし合わせながらさまざまな角度から味わえるようにしたかったのです。
もちろん、ドアがちょっと変なことを言っているな、くらいの感じで楽しむのも全然ありです。その“ありえなさ”や唐突さも、この夢の世界ならではの面白さだと思います。

ディレクターBaiyon本人による、楽曲制作のユニークなこだわり
これまでも自身の作品と並行してさまざまなゲーム音楽を手がけてきましたが、今回は特に「ゲームの音楽を作った」という実感が強いです。自ら書いたシナリオやテキスト、各場面の状況や空気感に合わせて曲を作る必要があり、これまでとは違った形で音楽と向き合うことになりました。そして、各場面に対して「こういった気持ちになってほしい」、「こんな感情を描きたい」という想いから、曲を作っていきました。
また、大きなテーマとしては、夢の世界の不安定さや曖昧さを表現するために、あえて“作り込みすぎない”というアプローチがありました。これは音楽家にとって少々悩ましい部分もありましたが、展開がギチギチに練り込まれすぎているのではなく、流れるような音楽に仕上げました。
また例えば、自分の記憶や経験をインスピレーションに作ったとある川のシーンの為に、長時間をかけて実際に現地まで行き、水音や拾った石をこすり合わせた音をフィールドレコーディングして楽曲に使用しました。こうしたこだわりは誰にも気づかれないかもしれませんが、自身のこだわりとして“本物であること”に重きをおいています。そういったインスピレーションの源泉の要素を少しでも埋め込むことで、より作品を豊かにすることができるのではないかと思います。
ゲームのなかでは普段あまり耳にしない音も色々入っていると思います。ぜひプレイしながら、そうした細かい音の世界にも耳を傾けてみてください。ちょっとした発見や面白い体験があるかもしれません。

『Dreams of Another』は10月10日(金)、PlayStation®5とPlayStation®VR2で発売予定です。私が手掛けた前作『PixelJunk Eden 2』とセットになったスペシャルバンドルをプレオーダー中です。気になった方は、ぜひストアページを覗いてみてください。皆さんがこの特別な体験を楽しんでくれる日を、心から楽しみにしています。
『Dreams of Another』をPS Storeで予約購入する
Dreams of Another
・メーカー:キュー・ゲームス
・フォーマット:PlayStation 5
・ジャンル:アドベンチャー
・発売日:2025年10月10日(金)予定
・価格:ダウンロード版 販売価格 通常版 3,960円(税込)
ダウンロード版 販売価格 スペシャルバンドル 4,620円(税込)
・プレイ人数:1人
・レーティング:IARC 3+(3才以上対象)
※ IARC (the International Age Rating Coalition) は、世界のゲーム評価機関により管理される国際年齢評価連合です。
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