『モンスターハンターワイルズ』インタビュー&スタジオツアーレポート! アクションや世界観表現のこだわりとは?

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『モンスターハンターワイルズ』インタビュー&スタジオツアーレポート! アクションや世界観表現のこだわりとは?

ハンティングアクション「モンスターハンター」シリーズの最新作として、2025年2月28日(金)に発売が予定されているPlayStation®5用ソフトウェア『モンスターハンターワイルズ』。本記事ではメディア向けの試遊会と合わせて行なわれた開発スタッフインタビューと、制作現場であるスタジオツアーのレポートを紹介する。

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【インタビュー】より没入できる世界観の中で、自由でスケールアップした狩猟体験を──

今回は辻本良三氏、徳田優也氏、藤岡要氏の3名にインタビュー。オープンベータテストの反応を受けた武器アクションの調整、試遊で触れた「緋の森」をはじめとするフィールドの特徴、ストーリーや世界観に対する深堀りなどについてうかがった。

辻本 良三
『モンスターハンターワイルズ』プロデューサー

徳田 優也
『モンスターハンターワイルズ』ディレクター

藤岡 要
『モンスターハンターワイルズ』エグゼクティブディレクター

ベータテストを受けての武器アクション調整

──発売まで約3カ月となった現在、どのような作業を行なっていますか?

辻本:完全に追い込みといいますか、QA(品質管理)チェックもしなければなりませんし、パフォーマンスに関しては、まだ少しいじっているところもあります。オープンベータテスト(OBT)を受けて、手を入れたところのチェックもしています。2月28日(金)発売ですので、時期的にもかなり終盤になっています。

──武器のアクションもOBTを受けて調整が入ったようですが、どのような調整がされたかお聞かせください。

辻本:OBTの反応にかぎったことではなく、製品版に入れるつもりでOBTには入らなかったものや、DAY 1アップデートで入るものも含めて、「製品版ではこうなります」という調整内容はまとめて公開する予定ですが、少し例を挙げて説明しましょうか。

徳田:特にランス、スラッシュアックス、操虫棍、片手剣は、手触りの部分を含めて、かなり手を入れる予定です。最終的なエンドコンテンツのバランスを含めた武器のダメージ量や、武器格差を均す調整は全般的に入っています。また、各武器のコンセプトが伝わっていない部分は、その武器の良さが伝わるように調整しようとしています。例えばスラッシュアックスの派生の最後にある「フルリリーススラッシュ」は、ほかの武器の最終派生に比べて、手応えの面でも数値の面でも魅力が薄かったので、そこにいたるまでのサイクルも含めて魅力あるものにしようと調整する予定です。

──操虫棍について、『モンスターハンターワールド:アイスボーン』のときは空中戦を主体にしてダメージを稼ぐコンセプトだったと思いますが、今回は地上戦が強力になり、空中戦が減った印象を受けました。これは意図的に調整したものでしょうか。

徳田:まず、これまでの試遊バージョンになかった「舞踏跳躍」は、現在の調整ですでに復活していることをお伝えしておきます。飛びながらヒット数を稼ぐ戦い方は過去作から用意していたものですが、今作ではそこまで空中戦でダメージを取る設計をしていませんでした。「舞踏跳躍」のようなアクションがあると、今回の新しい部分がフォーカスされる前に、そちらばかり使ってしまうのではないかと危惧し、いったん「舞踏跳躍」がないバージョンを出していました。しかし、試遊してくれた操虫棍使いの方々から、「舞踏跳躍」は強いとか弱いとかではなく操虫棍のアイデンティティだ、という意見を多くいただき、皆さんの気持ちに寄り添えなかったと反省しました。すぐに「舞踏跳躍」を復活させつつバランスを取る方向に舵を切り、調整を続けているところです。

──今作は武器をふたつ持てるようになっていますが、その狙いをお聞かせください。

徳田:基本的に遊び方は自由で、メインの武器ひとつしか使わなくてもクリアできる設計にしていますし、ふたつの武器を使い分けないとクリアが難しいモンスターもいないので、そこは安心してください。そのうえで今回は、環境がどんどん変化して、新たなモンスターが急に出てくることもあります。そのときに新たなモンスターにとって有利な武器を持っていれば対応しやすくなりますし、同じモンスターを狩猟する中でも、例えば属性的なサポートができるサブ武器で状態異常をかけてからメイン武器でダメージを取るような遊び方もできます。複数の武器を均等に使い分けなければならないこともないので、より幅が広がったと思って使ってほしいです。

──OBTでは狩猟笛をサブに持ち、バフをかけてからメイン武器に切り替える戦い方がされていましたが、これは想定していましたか?

徳田:もちろん想定はしていましたが、OBTでは強すぎて狩猟笛一択になっていたので、修正されます。ただ、意味がないものにはしません。使う意味は持たせつつ、強すぎないような落としどころを目指します。

──武器に装備スキルがつくようになったのは、ふたつ持ち込めるようになったことと関係ありますか?

徳田:そうですね。今までは防具にスキルがついていましたが、そもそもの問題として、特定の武器種にしか効果がないスキルがついていると武器に合わせた防具選びになり、着合わせしにくいところがありました。また、メインとサブの武器を切り替えたときに、せっかくのスキルビルドが無駄になってしまうので、ふたつの武器を持ち込めるようにしたとき、どんなスキルビルドがいいのかを検討しました。その結果、主だったスキルは武器側につけてしまって、プラスアルファの効果をほかのパーツで補う、という設計にしています。

──これまでに比べて、かなり柔軟なスキル構成ができるという考え方でしょうか。

徳田:はい。武器側にも装飾品の追加スキルをつけられますし、強化していけば複数のスキルをつけられるようにもなります。また、武器スキルは武器と護石だけについて、防具スキルのスロットにはつけられない仕組み、つまり武器には武器専用のスキルがあり、防具には防具専用のスキルがあるということです。さきほどお話しした、ついているスキルによって防具選びの着合わせがしにくくなる問題と同じように、特定のスキルがついている武器しか選べなくなることがあってはなりません。武器側のスロットに攻撃スキルをつけられることで、例えば”この武器種でありながら「集中」(※特定の武器種に有効なスキル)をつけて遊ぶ”といったこともできるようになっています。

──今作はシームレスなフィールド環境で狩猟体験を楽しめるようになりましたが、それによってスキルの内容が変更されたものはありますか?

徳田:エンドコンテンツを含めて、今作のゲーム設計に合った調整をしています。とくに変わったのは発動の時間です。食事の効果は、これまでクエスト単位だったところを今作は時間制にしているように、シームレスになったからこそ変えた部分になります。スキルのレベル上限の設計も見直しました。支配力が高すぎるスキルなどはレベル上限を下げていて、反対にレベル上限を増やしているものもあります。

リアリティと爽快感を表現するこだわりのアクション

──今作は新規で追加されたアクションも数多くあると思います。「モンスターハンター」ならではのアクションにどのようなこだわりを持っているかお聞かせください。

藤岡:リアリティを感じつつ、手触りよく、気持ちよく。これを表現するために、モンスターの重量感だったり肉体の強さだったり、個性的な部分をどう見せていくかを考えています。アクションは99%をモーションキャプチャーで撮っており、”人ができること”としてキャプチャーしていますが、人間の限界を超えたアクションの気持ちよさを足すために、デザイナーともつねに話しています。また、今回からキャプチャールームでなくても撮れるモーションにもチャレンジしています。例えば、土手の坂を登るとか草むらを歩くとか、何気ない挙動ですが、スタジオでは撮れない”生っぽい動き”を特殊な機材を使ってキャプチャーしました。

──過去作から共通の基本アクションもあるかと思いますが、それらは流用していますか? それとも作り直しているのでしょうか。

藤岡:今回はほぼ、デザイナーが手を入れています。いろいろなモデルの見直しだったり、ベーシックなモーションの作りじたいの見直しだったりと、『モンスターハンター:ワールド』から取り入れていましたが、ベースから見直すのであれば基準から新しくしたほうがやりやすいですし、デザイナーも表現にチャレンジしたい部分がたくさんあったので、イチから手を入れています。

狩猟だけにとどまらない世界観への没入体験

──過去作に比べて、今作のストーリードリブンな導線がとても新鮮に感じました。モンスターをじっくり観察させたり、現地人との交流だったり、風習を深堀したり、これまでにない試みがたくさんあります。こうした表現の意図をお聞かせください。

藤岡:『モンスターハンター:ワールド』では、モンスターの生態系にはかなり注力しました。ゲームデザインを含めて「モンスターハンター」をより大きなものにできたと思っています。ただ、「モンスターハンター」はもともと、そこに人も生きているという世界観で描いているので、人をどのように描くかは大切なところです。今回、ギルドが足を踏み入れたことのない「禁足地」の人々との交流を描くことで、その人たちがモンスターをどのように見ているか、自分たちが介入することでどのような反応を見せるか、そうした交流をする中で、私たちが大事にしてきた”ハンターとはなんぞや”とか”描きたい世界”が、よりコントラストをもって表現できると思いました。人を生態系の一部として描くことは初期段階から話し合ってきましたし、キャラクターがただ立っているだけではなく、自分たちの意思で動いているNPCを作り、モンスターと人を一体に描くことで世界をより感じてもらおうとしているのは、今回チャレンジしたことのひとつです。

──村の各NPCに固有の名前がついていて、全員が異なる挙動をしていました。彼らそれぞれの生活も描いているということでしょうか。

藤岡:はい。個々でタイムスケジュールを持っていて、時間帯による動きや、人と出会ったときの動きなどもしっかりと作っています。村の中を眺めているだけでも楽しめるので、ぜひ浸ってほしいです。

──ゲームの進み方としては、新しい土地に着いたら観察から始まり、新しい住民の深堀りが行なわれるような流れでしょうか。

徳田:切り口としては、各集落の人たちとの関係性を築いていくことです。最初の村である「クナファ」と、のちに訪れる「アズズ」では、違った形の交流になりますが、各地に文化と生活を持った人たちがいて、彼らとコミュニケーションを深めながら進んでいきます。

──「緋の森」に住むモリバーのユニークな性格は、どのように考えられたのでしょうか。

藤岡:モリバーは言葉に精通していない種族で、何を言っているかわからないのですが、がめつい性格をしていて要求するための単語だけを覚えている感じです(笑)。その中でも言葉の覚えがいい者が交渉役になって、そのコントラストも面白いと思います。

徳田:なぜ彼らが強欲でカタコトなのか、その理由が設定としてあるので、ストーリーを遊びながら考察を楽しんでほしいです。

──世界観の設定でいえば、”ハンターとはなんぞや”という部分について序盤で触れられていました。アルマが各武器を説明する際、規約のもとで活動していることをあらためて話していますね。

藤岡:そういうハンターの設定じたいはもともとあって、今あらためて言うことでもなくなっていますが、ハンターを知らない人に自然な流れで説明できればと思いました。ハンターたちは何気なく武器を持っていて、ゲームデザインとして不思議なことではありません。でも、ハンターを知らない人にはどう映るのか、それが当たり前ではないことを表現しても面白いと思いました。

徳田:今までの「モンスターハンター」の世界を元にすると、ハンターという存在が当たり前で、知っていることが前提の薄いリアクションになってしまいます。今回はあえてハンターを知らない世界にすることによって、人々の反応も新しいものを見たリアクションになり、私たちもそれに応じた説明ができます。『モンスターハンター:ワールド』でやりきれなかった部分でもあるので、”ハンターとはなんぞや”という伝え切れていなかった設定を、ストーリーに混ぜながら伝えていきたいと考えていました。

──それは『モンスターハンターワイルズ』から入るユーザーを意識してのことでしょうか。

藤岡:僕たちは当たり前のこととして設計している部分も多いですが、『モンスターハンター:ワールド』や『モンスターハンターライズ』あたりから触れた方にも、あらためて世界観を知ってもらうために取り組んでみようと思いました。

──今作は、NPCとの会話選択肢が数多く用意されています。世界観設定やバックボーンに触れた内容もあり、これを見ることで理解が深まることになるのでしょうか。

徳田:世界観の深堀りは、好きな方とそうでない方で分かれると思います。「モンスターハンター」は、多くの遊び方をするユーザーさんがいるので、深堀りしたい方は会話を選択してもらい、どんどん狩りをしたい方は会話をスキップして次のクエストに向かってもらいたいので、強制的に見せるのではなくて選択肢を選ぶ形にしています。

藤岡:会話の選択肢は、あくまで深堀りの部分です。メインのストーリーを追い掛けていくだけでも、今回の世界観や設定は理解できるようになっているので、小ネタなどをもっと知りたい方は、会話を進めることで新しい気づきを得られると思います。

──NPCのヴェルナーは、ガンランスのアクションである「竜撃砲」の原理を開発した人物という設定を持っていて、「モンスターハンター」の世界観として重要な人物だと思います。こうした設定を持つ人物は今作で多く登場するのでしょうか。

藤岡:ヴェルナーについては、ガンランスのギミックを人がどうやって開発してきたか、世界観を匂わせるような設定です。大剣など、そもそもの成り立ちで発生した武器と、ガンランスのように人の叡智や工夫で完成させた武器とで、世界のバックボーンを感じてもらえたらうれしいと思いました。ほかにも世界観が見えるようなことを要所に仕込んでいますが、ここで言いすぎると無粋なので、感じてもらうくらいがいいと思います。

変化するフィールドと生きた生態系

──OBTにはなかった「緋の森」を体験して、過去作の森林フィールドに比べて、背の高い木々が並ぶ奥行のある場所に感じました。今回の「緋の森」を構築するにあたり、過去作との差別化を図った部分や技術的な進化で実現できた部分があればお聞かせください。

藤岡:森林は、原始のかたちになるほど植物が多く生えるので、いろいろな表情の植物があることが特徴です。たくさんのアセットを置いていますし、それだけのスペックがないと鬱蒼とした雰囲気を表現できません。豊穣期や荒廃期によって表情が変わり、ある時期に花を咲かせるなど、色味の変化も見られます。これはロードを挟んで切り替えるのではなく、動的に変化させられるスペックが必要ですし、それを使って彩りを表現することは「緋の森」を作るうえで意識したことです。

──森の中に真っ赤な花がありました。まだ咲いていませんでしたが、観察していれば花が咲く様子も見られるということですか?

藤岡:はい。食虫植物が虫を捕らえる瞬間など、植物が生きていることを感じてもらえると思います。「緋の森」ではツタをどんどん登っていって、高い場所から俯瞰で見下ろせるスポットもあるので、ぜひ注目してみてください。

──「緋の森」の特徴としては異常気象のひとつに豪雨があって、雨による生態系の変化なども見られるのでしょうか。

徳田:豊穣期になれば、赤い樹液が流されて水がクリアになって、モリバーやモンスターの生活が変化します。

──「緋の森」のステージデザインとして、過去作の森林マップは狭い場所が多かったのに対して、より広く作られていて大型モンスターとも戦いやすく感じました。この広い環境は、どのような狙いがあるのでしょうか。

藤岡:鬱蒼として狭すぎると迷いやすくなってしまうので、遊びやすさを含めて考えました。腰まで水に浸かるような湿地帯にも取り組んでいます。

徳田:ババコンガのハチミツがある場所やラバラ・バリナの巣など森の奥地を中心に、今までに近いサイズ感でしっかりと遊べる場所も用意していますし、抜け感があってワイドに遊べる場所もあります。ただ広くしただけではなく、ステージごとのコントラストと役割を持たせたうえで設計しました。

──「隔ての砂原」でも時間経過による変化が起こりますか?

藤岡:落雷は異常気象でしか起こらない現象です。また、荒廃期では草が砂に埋もれていますが、豊穣期では草が立ち上がるので、火の攻撃を使うと草が燃え広がるようなギミックもあります。

徳田:特定の時間でしか見られない環境生物もいます。青く光ってめちゃくちゃ速い「砂の流星」は、夜の砂漠にだけ出てきます。「闇照らし蜂」は森の中に巣があって、夜になると砂漠に出てくる環境生物です。モンスターに攻撃させると毒にしてくれて、夜以外の時間帯は森にある巣を落として攻撃させることができます。

──「隔ての砂原」は短時間で天候が激しく変化していましたが、「緋の森」の天候変化は緩やかに感じました。この違いはどのような意図で設計しているのでしょうか。

徳田:まず、ストーリーに沿って遊ぶときと、自由に遊ぶときのサイクルとで違いがあります。ストーリーは進行状態によって天候を固定している場面もあるので、プレイヤーがどこまで時間を使うかによって天候の時間サイクルに違いが生まれます。ちなみに、OBTのマップは「隔ての砂原」ひとつだけということもあり、製品版よりも短い時間サイクルで飽きさせないように変化させていました。製品版ではたくさんのマップがあるなかで、ちょうどいいバランスになるように時間サイクルを調整しています。

──最初の「隔ての砂原」のベースキャンプとは別に「緋の森」にもキャンプが作られましたが、先々のフィールドにも新たなキャンプが増えていくのでしょうか。

徳田:ベースキャンプは、プレイヤーが力尽きたときのリスポーンポイントとしての機能も担っています。力尽きたとき一番近いキャンプに送られる仕組みになっていて、ストーリー進行に合わせてキャンプが設置されていきます。プレイヤーが任意で設置できる簡易キャンプもありますが、こちらは壊されてしまうこともあるので、ベースキャンプは帰る場所がなくならないようにするためという意味合いもあります。

──各地のベースキャンプに機能的な違いはありますか?

徳田:基本的な機能は、どのベースキャンプも同等のものを持っています。「隔ての砂原」のベースキャンプが最初の場所という設定もあるので、地続きでトレーニングエリアに行けたり本部機能のようなものがあったりと、ここの機能が一番多いということになります。

リアルタイムで動き続ける世界で体験するシームレスな冒険

──PS5になったことで実現したことはありますか?

藤岡:つねにたくさんのことをリアルタイムで動かしておかないと、どのタイミングで動くかわからないプレイヤーが来たときに、関係性の矛盾があったり不具合が起こったりする可能性があります。それだけの数を動かすには、しっかりと計算できるスペックが必要ですし、PS5だからこそ実現できたことです。もちろん表現力も格段に上がっていて、草が燃えるようなちょっとしたことでも、ハードの恩恵を受けています。

徳田:これまではクエスト単位で情報をロードして、また破棄して読み直すという形でしたが、時間が経過しても環境が積み重なり、残り続けていくことが大きな違いです。しかも、ひとつのマップだけではなくて、プレイヤーがいない別のフィールドでは何が起こっているかまで計算するのは、ハードの演算能力によるところが大きいと思います。

──これまでは拠点でクエストを受注して目的のフィールドに飛ぶ流れでしたが、今作はフィールドのモンスターと交戦が始まることでクエストがスタートします。拠点とフィールドが地続きになっているのは、これまでと大きく変わったところだと感じました。

藤岡:つねにお互いを裏で動かしているからできることです。シームレスにクエストを発生させつつ、今までのようにクエストを狙っていく遊びも同時にできる仕組みになっています。狩りに集中して遊びたいときは、拠点のアルマに話しかけることで、今までと同じようにセットされた環境に入れますし、その遊び心地はスポイルせず、シームレスな狩猟体験も楽しめます。

──最後に、発売を楽しみに待っているファンに向けてメッセージをお願いします。

徳田:今日、メディアの皆さんには5時間ほど遊んでいただきましたが、そこで出会える物量と魅力はほんの一部です。序盤のストーリー重視の部分からもっと進んでいけば、自由に遊べるようになっていくので、「モンスターハンター」の遊びをしっかりと保ちながらも、あらゆる面でスケールアップしたゲーム体験を提供できていると自信を持っています。ぜひ、楽しみにしていてください。

藤岡:アートディレクターとして参加して、世界観やビジュアルの構築をしてきました。今回の世界を描くうえで、デザイナーがいろいろな細かい部分にこだわって、そこまでしなくていいよというところまで(笑)表現しきってくれました。ちょっとウロウロするだけでも発見があったり、見たことのない表情を見せていたり、たくさんの気づきがあると思います。世界観に浸りながら、いろいろなものを発見してほしいですし、それが今回のストーリーと一体になって楽しんでもらえるゲームになっているので、ぜひ遊んでください。

辻本:まだ公開していない情報がたくさんあります。発売日まで、出せる情報は出していきますので、注目してください。また、今回は「モンスターハンター」を初めてプレイする方をすごく意識して作ってきました。シリーズ未プレイの方や、しばらくプレイしていない方が、『モンスターハンターワイルズ』から入ってもしっかり遊べるように意識して作っているので、ぜひプレイしてほしいと思います。

【スタジオツアーレポート】モーション、サウンド、モンスターボイスの制作現場にあふれる最新技術とユニークなアイデア

今回の試遊会では、モーションキャプチャー、楽曲や環境音、モンスターボイスの制作スタジオを見学することができた。本作の世界を彩る要素がどのように作られたか、実演を交えて知ることができたので紹介しよう。

●モーションキャプチャースタジオ

最初に案内されたのはモーションキャプチャーの撮影スタジオ。アニメーター兼マネジメントを担当する谷口直弘氏によれば、『モンスターハンター:ワールド』からAAAタイトルとしての進化を求められ、モーションにおいてもよりリアルで多彩な表現を追求するようになり、ハンターのような人型だけでなく、モンスターでもモーションキャプチャーを使用する頻度が高くなったという。

モーションキャプチャーを使う利点は主にふたつある。よりリアルな動きの表現を作れることと、手作業で作るモーションよりも早期の仮実装ができて方向性の確認も早くなることだ。

このスタジオの周囲には36台のカメラが設置されており、アクターが演じる動きをデジタルに変換し、リアルタイムでモニターに投影する。この日は市販のソフトを使って投影していたが、本来はRE ENGINE上で実装に近いかたちで確認できるため、演技をすぐに再生して質の高いトライアンドエラーを実現。その後、アニメーターの手作業で画面に映えるように細部を調整するという流れだ。『モンスターハンター:ワールド』以前のモーションは手作業で作っていて苦労も多かったが、モーションキャプチャーを使うことで作成スピードが上がり、実機上での調整がしやすくなったという。

カプコンは3つのスタジオを持ち、そのうちひとつは150台のカメラを設置する大規模スタジオになっている。また、『モンスターハンターワイルズ』のインゲームアクションは、社内に在籍するアクターが社内スタジオで撮影している。社内アクターを抱えることでノウハウを蓄積しやすい環境になり、高品質なアニメーションデータの作成につながるという。

アクターの演技がキャプチャーされ、リアルタイムでモニターに投影される様子も披露された。アクターが大剣を構えると、モニターの中のハンターも同じように構える。叩きつけるような斬撃は、叫び声とともにマットへ飛び込むという迫力の演技だった。ドシャグマ役のアクターも唸り声をあげながらモンスターらしい動きで演技をしていた。アクターが演じるうえで感情やテンションは大切な要素であり、つねに声をあげながら撮影に臨んでいるそうだ。

単体の演技のあとは、ゲームの紹介ムービーとしても公開されている「鍔迫り合い」のシーンが再現された。ハンターとドシャグマが激突する場面では、アクターが実際にぶつかるのではなく、サポートのひとりがハンター役を受け止める。これがわずか数十秒後には、微調整をしてBGMとSEまでついたゲームとほぼ同等の映像になっているのだから、質の高いトライアンドエラーができるというのも納得だ。

なお、『モンスターハンターワイルズ』のアクションのほとんどは、アクターによるモーションキャプチャーで作成しているが、人間が表現しづらい蛇のようなモンスターはデザイナーの手作業で作られている。もっとも、デザイナーは経験が豊富でスキルも高く、モーションキャプチャーに勝るとも劣らないクオリティで表現できているとのことだ。

●ミキシングスタジオ

続いてはミキシングスタジオへ。ゲームの楽曲や環境音を制作する場所だ。モーションキャプチャースタジオに比べると狭い部屋だが、複数のスピーカーが並ぶほか、音楽調整用の大型スピーカーも設置してあり、カプコンタイトルのサウンドはこのスタジオで最終調整して完成する。

コンポーザーの森本章之氏がミキシングスタジオでの仕事を紹介し、まずは『モンスターハンターワイルズ』のメインテーマ「美しき世界の理」が再生された。フルオーケストラの壮大なサウンドに、さまざまな民族楽器などを織り交ぜ、人もモンスターも包括した自然の大きさを表現した曲だ。シンセサイザーが使われており、電子音を音楽のコンセプトそのものに組み込むことによって、物語の舞台「禁足地」の音として意図的に演出している。「禁足地」は豊穣期と荒廃期の季節が移り変わり、その間には厳しい異常気象が発生する。そうした環境の移り変わりを、シンセサイザーの電子音を変調させることによって音楽として表現したそうだ。

また、シンセサイザーは本作用に制作したオリジナルパッチが使用されている。「隔ての砂原」の荒廃期を表現した音は、美しさの中にノイズが混じって異常気象の嵐の前の静けさを表わしており、異常気象の砂嵐はノイズがもっと強くなった印象だ。こうした音を複数用意して、ゲーム内でランダムに再生しているという。各フィールドの効果音は、その場所の頂点モンスターのテーマに含まれ、「隔ての砂原」ではレ・ダウの狩猟曲にも使われている。森本氏がゲーム映像に合わせてレ・ダウの狩猟曲を演奏した際は、フィールドの効果音が印象的に使われていることがよくわかった。

●フォーリーステージ

最後は、効果音の制作現場であるフォーリーステージが紹介された。カプコンタイトルの効果音の大半がここで制作されており、今回はモンスターのボイスをどのように作っているかを、実演と合わせて解説してもらった。

サウンドディレクターの細井秀基氏によれば、モンスター全体に共通するサウンドのコンセプトは、モンスターそれぞれの生物感やバックボーンを個性的に表現すること。『モンスターハンター:ワールド』では、いかに自然な生き物として表現するかに注力し、実際のライオンやシマウマの生の声を収録し、モンスターの声に活用していたという。今作ではそこから一歩進み、生の動物に加えて個性的な違和感を表現するため、モンスター1体ずつにオリジナルの楽器を作り出していた。

例として紹介されたのは、レ・ダウのモンスターボイスを表現するためのオリジナル楽器。ホームセンターで揃う、塩化ビニル管とフィルムを組み合わせ、吹くとフィルムが響いて「ボォー」という音が鳴る構造だ。スライドホイッスル式を採用して音の高さをゆっくりと変えることができ、音色の異なる2種類が作られた。

実際にそれぞれの音色を聞いてみたが、どちらもレ・ダウのボイスには感じられない。ふたつの音を合わせて再生してみても、まだまだ程遠い。しかし、ここにサウンドデザイナーが加工を施すと生物感が増し、動作音が加わることでモンスターらしい声が表現されていた。

モンスターサウンドを作る際は、猫の鳴き声を「ニャー」と表現できるように、オノマトペで表現できるくらいの個性を出すことを心掛けているという。個性を出すために必要なのはユーザーの違和感であり、楽器は違和感のあるリズムやキャッチーな抑揚を作りやすいため、個性的な音作りに効果的。なお、レ・ダウのオノマトペは「ずぃーんめーんぎょー(人面魚)」とのことだ。

モンスターそれぞれのボイスを決めていく際に、デザインが先行すると音のイメージが引っ張られてしまうため、「できるだけデザインを見たくない」のがサウンドチームの本音だという。そこでモンスターのラインナップをもとに個性を割り振った相関図を作り、それぞれにボイスのイメージを当てていく。ボイス作りの具体的なイメージは担当者のセンスによるところも大きいが、デザインチームから「これは違う」と言われることはほとんどないそうだ。レ・ダウに感じたのは、混雑した道を歩く王様が「どけ!」と言わなくても「邪魔だなぁ」とつぶやけば道が開けるイメージ。生物的に強い存在なので落ち着いた鳴き声が合うと思ったそうで、完成したオリジナル楽器には「王様の独り言」という名前がつけられている。

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モンスターハンターワイルズ

・発売元:カプコン
・フォーマット:PlayStation 5
・ジャンル:ハンティングアクション
・発売日:2025年2月28日(金)予定
・価格:パッケージ版 希望小売価格 9,990円(税込)
    ダウンロード版 販売価格 通常版 9,900円(税込)
    ダウンロード版 販売価格 デラックスエディション 11,900円(税込)
    ダウンロード版 販売価格 プレミアムデラックスエディション 13,900円(税込)
・プレイ人数:1人(オンライン時:1~4人)
・CERO:C(15才以上対象)


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