『SILENT HILL 2』インタビュー! 23年を経て現代に蘇る霧の街での物語──その魅力や開発の舞台裏を制作陣が語る

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『SILENT HILL 2』インタビュー! 23年を経て現代に蘇る霧の街での物語──その魅力や開発の舞台裏を制作陣が語る

10月8日(火)発売予定のPlayStation®5用ソフトウェア『SILENT HILL 2(サイレントヒル 2)』。本作は2001年にPlayStation®2で登場したサイコロジカルホラーのリメイク作品だ。主人公のジェイムスは亡き妻メアリーとの思い出の地である荒廃した街「サイレントヒル」を探索し、クリーチャーやさまざまな登場人物たちとの遭遇を通して、自身の過去の記憶と対峙していくことになる。

『SILENT HILL 2』インタビュー! 23年を経て現代に蘇る霧の街での物語──その魅力や開発の舞台裏を制作陣が語る

この記事では、世界最速試遊となったメディア向けイベント「『SILENT HILL 2』Tokyo Media Premiere」で行なわれた開発陣とのQAセッションとインタビューの内容をお伝えする。試遊レビューについては以下の記事をご覧いただきたい。

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オリジナル版の登場から23年。目指したのは一体感のあるゲーム体験

QAセッションとインタビューでは、コナミデジタルエンタテインメントの岡本基氏(「SILENT HILL」シリーズプロデューサー)と、オリジナル版の開発に携わっていた山岡晃氏(作曲家)、伊藤暢達氏(コンセプトアーティスト)、そしてリメイクを手掛けたポーランドのデベロッパーであるBloober TeamのMateusz Lenart氏(クリエイティブディレクター)、Maciej Głomb氏(リードプロデューサー)という主要な制作陣にお話をうかがった。

岡本 基

コナミデジタルエンタテインメント
「SILENT HILL」シリーズプロデューサー

山岡 晃

作曲家

伊藤 暢達

コンセプトアーティスト

Mateusz Lenart

Bloober Team
クリエイティブディレクター

Maciej Głomb

Bloober Team
リードプロデューサー

──岡本さんはオリジナル版に関わっていた山岡さんと伊藤さんのおふたりと一緒に本作を制作することについて、どのように感じましたか?

岡本:『SILENT HILL 2』はとても長く愛されているタイトルです。そのため、オリジナル版を手掛けたふたりと一緒に仕事をすることによって、非常に深い洞察というか考察というか、設定を掘り下げて作ることができてよかったと思っています。

──オリジナル版の発売から23年の月日を経てのリメイクとなりましたが、山岡さんと伊藤さんはどのような想いで参加されていたのでしょう?

山岡:オリジナル版の楽曲を手掛けていた当時の生き方や考え方、生活などを思い出してリメイクに挑むつもりだったのですが、最初はそれらを思い出せなかったんですよ。思い出すための自分との問答による毎日が、とても苦しかったです。オリジナル版を手掛けていたときはお金がなくてギリギリの環境だったのですが、それでも尖ったものを、そしていいものを作ろうと思っていたことすら忘れてしまっていたんです。俺はどうやってこんな楽曲を作っていたんだろう? この曲ってカッコいいんだよな……というようなことを、リメイクにあたって繰り返し考えていました。

伊藤:2019年頃に岡本さんから『SILENT HILL 2』のリメイクに参加してほしいと連絡をいただいたのですが、その時点ではオリジナル版をいじる必要がないと個人的には思っていたので、初めは断るつもりでした。とはいえ、私が参加しなかったために違う方向性のゲームになってしまうよりは、オリジナル版のコアとなる部分だけは引き継いでもらうために尽力しようと思ったんです。まだ遊んだことのない人に、オリジナル版のインパクトをどうすれば当時よりも感じてもらえるか、ということに力を入れました。

──本作の開発にBloober Teamを選んだ理由を教えてください。

岡本:リメイクにあたって世界中のスタジオが候補に挙がったのですが、やはり「SILENT HILL」シリーズに対して愛情のあるチームを選びたいという想いがありました。私が実際にBloober Teamを訪ねて話をうかがったのですが、その際にとても愛情が強いチームだと確信したことが理由です。

──実際にリメイクを手掛けたデベロッパーとしてBloober Teamが目指したものはなんですか?

Mateusz:私たちはオリジナル版に対して、とても深い愛情と思い入れがあります。本作では、レベルデザイン、コンバットデザイン、パズルなどのあらゆる要素を見つめなおし、一体感のあるゲーム体験として成立させることを目指しました。

Maciej:皆さんが試遊しているのを、後ろから拝見させていただきました。開発陣以外の方々がどのように反応するのかを間近で見ることができ、新たな知見を得られました。

オリジナル版から変更した部分と、あえて変更しなかった部分とは

──オリジナル版から変えたかったことと、変えたくなかったことについて、日本のチームとBloober Teamとで意見の交換があったと思います。印象に残っている意見はありますか?

岡本:開発当初は、クリーチャーのデザインをすべて変更したり、サウンドの方向性を現在のものよりもさらに新しくしたりするのはどうか、という議論をしたこともありました。デザインが全く異なるクリーチャーのアイデアを伊藤さんからいただいたこともありますし、ゼロからつくる完全新作の『SILENT HILL 2』のようなものについて議論したこともあります。

Mateusz:逆に、オリジナル版から全く変えないという案もあったのですが、現在の市場で通用する作品にしたいという想いもありましたので、ある程度の変更を模索しながら現在の形に落ち着きました。

伊藤:原作のコアとなる部分は変更しないとしても、外側は全く新しいものにしたほうがディテールとしての価値はあるし、新しく作る意義もあると考えていました。

──ゲームのリメイクにあたって、山岡さんが新たに書き下ろした楽曲はあるのでしょうか。

山岡:オリジナル版のパートを使いながらも、基本的にはすべて書き下ろしています。当時の楽曲も愛されていてうれしいのですが、オリジナル版をプレイしたことがある人にも新たな感動や興奮を抱いてほしいと思いました。合計すると9時間くらいのボリュームがあるのですが、これをサウンドトラックにするときはどうしたらいいのかと頭を悩ませています(笑)。

──登場するクリーチャーにオリジナル版との違いはありますか?

伊藤:クリーチャーごとに微妙な違いがあります。全く新しいクリーチャーは登場しないのですが、オリジナル版ではストーリー的にこうすればよかったと思っていた部分を反映させました。実際にプレイしてオリジナル版との違いを探していただくのも、本作の楽しみのひとつかなと思います。

──オリジナル版では冒頭で少し間延びしていると感じる箇所があったのですが、本作を実際に試遊しているとテンポがよくなっていると感じました。プレイフィールの変更も意識されていたのでしょうか?

Mateusz:確かにオリジナル版では間延びしている箇所がありました。難しい判断ではあったのですが、序盤にもう少しアクション要素を盛り込んだり、今どきの作品らしく、もう少し盛り上がりを加えたりといった方法も検討しました。最終的にはオリジナル版に近づけつつも、ペースを変更するという形にしています。

肩越し視点への変更により、マップや演出の再構築が必要に

──固定カメラから肩越し視点のカメラになったことにより、プレイしているとボリュームが増したように感じます。そのうえで、探索エリアを拡張するに至った理由やコンセプトについて教えてください。

Mateusz:肩越し視点へと変更するにあたって、既存のマップを再構築する必要がありました。とはいえ、序盤で訪れるサイレントヒルの東地区など、屋外のマップはオリジナル版からあまり変更していません。細かい部分を見ると変更している箇所はありますが、概ねオリジナル版と同じ印象を持たれたかと思います。しかし、屋内のマップはプレイヤーが肩越し視点で探索するうえで探索しがいがあり、そして面白くなるようにとオリジナル版から一新しています。変更した視点を最大限に活用できるよう、マップを新しく作り直しました。

──肩越し視点のゲーム体験によって没入感が増し、ホラー演出などに関する表現にも変化があったと思います。肩越し視点になったことで得られる体験について注力したことや見どころなどを教えてください。

Mateusz:オリジナル版ではカメラが固定されていたので、見えるものや見えないものが決まっていました。本作では自由に視点を変更できるため同じ演出をすることはできなかったのですが、オリジナル版と同様の印象を抱いてもらうことに苦労しました。例えばクリーチャーのマネキンは、プレイヤーの視界から一度外れると隠れるような挙動を取るようになっています。また、オリジナル版では扉を開けて屋内や室内へ入る際にロード画面が挿入されましたが、本作ではシームレスに移動できます。それも加味して、常に移動できることをホラー演出へつなげられるように再構築しました。

──クリーチャーとの戦闘も肩越し視点によって迫力や恐怖が増したと思います。戦闘における演出のポイントについて教えてください。

Maciej:クリーチャーのデザインや挙動は、肩越し視点になったことによって少々変更する必要がありました。本作では、各クリーチャーに複数の挙動やホラー演出となる要素を盛り込んでいます。ライングフィギュアは地上を這って動き回ることがあれば、立ち上がって飛び道具で攻撃してくることもあります。マネキンは先ほども申し上げたように隠れることがありますし、飛びかかって攻撃してくることもあります。さまざまな挙動を盛り込むことによって、クリーチャーが次に何をしてくるのかわからない……と、不安を感じることができるようにデザインしました。

霧の演出やキャラクターの表情など、グラフィックが大幅に進化

──グラフィックはオリジナル版が登場した当時でも高品質だった印象です。そのグラフィックを進化させるにあたって特に気を付けたこと教えてください。

Mateusz:ビジュアルやグラフィックに関しては伊藤さんともかなり検討を重ね、研究したうえで辿り着いたものになります。特徴的な霧の演出に注力したのはもちろんですが、ゴア表現はオリジナル版の趣旨ではなかったので、グラフィックが向上したからといってもそこを強化する方針はとらないよう徹底しました。霧をはじめとした雰囲気を重視する演出になるように心がけて開発を進めています。

伊藤:霧の演出に関してはかなり口を酸っぱくして伝えていたので、Bloober Teamの皆さんは僕に対して嫌な感情を持っていると思いますが、注文にしっかりと応えてくれました(笑)。本作の霧はただ街を漂う霧ではなく、ジェイムスの記憶や心境を表現するというオリジナル版の大きなポイントを再現しています。グラフィックにおいては、この霧の表現がリメイクで一番成功した部分になったと思いました。

──Bloober Teamの手掛けたゲームは一人称視点のものが多く、三人称視点のゲームは少ない印象です。しかし、本作のカットシーンではキャラクターの表情が最高峰のクオリティだと感じました。なぜあそこまでのクオリティを達成できたのでしょう? また、オリジナル版からアンジェラなどのデザインが変更された理由についてお聞かせください。

岡本:確かにBloober Teamは三人称視点のゲームが少ないことはわかっていたのですが、とても情熱のあるチームでしたので信じてお任せしました。アンジェラのデザインに関してですが、本作ではキャラクターをリアルに表現するにあたって、オリジナル版のように3Dデータをイチからつくるのではなく、俳優の顔をキャプチャーしています。オリジナル版とデザインが異なるのはそのためです。演技力の高い俳優を選んでいるので、顔の造形がオリジナル版と違っていても、演技でその魅力を表現できると考えました。

Mateusz:オリジナル版の人気を考えると、ファンの皆さんからの本作への期待がかなり大きなものになると思っていました。そのため、カットシーンは完璧なもの以外は許されないという覚悟を持って制作しています。表情や口周りの動きといったものは、キャラクターの魅力を最大限に伝えるうえで妥協できない部分です。俳優はビジュアルだけでなく演技力も申し分のない方々を選出し、3Dモデルも優秀なパートナーの助力を得て完璧なものに仕上げました。

──本作で初めて『SILENT HILL 2』に触れる人に向けて注力したポイントはありますか?

岡本:シリーズ未体験の方でも遊べるように、オリジナル版と同じくアクションとパズルの難易度を3段階から選択できます。また、本作では英語だけでなく日本語の吹き替えも収録していますので、字幕を読みながらゲームを遊ぶことに慣れていない方でもプレイしていただけると思います。

Mateusz:パズルの難易度を変更すると探索中に発見できるメモに記された情報量が変化し、パズルの難易度が変わります。また、周囲の環境から得られるヒントも難易度によって変化します。

岡本:パズルの難易度を選択できるのは「SILENT HILL」シリーズの特徴なので、Bloober Teamの皆さんに頑張ってもらいました。周回プレイをする際は、ぜひパズルの難易度を変更してみてください。

物語、登場人物、体験や道程──開発陣が考えるオリジナル版のポイント

──サバイバルホラーは歴史的名作が多いジャンルだと思います。その中でもオリジナル版は伝説的なゲームのひとつだと思うのですが、オリジナル版はここが特別だったと思っているポイントがあれば教えてください。

Mateusz:ひとつはストーリーですね。本作のストーリーはプレイヤー自身に響き、心に直接刻まれるような要素が盛り込まれています。もうひとつは作品全体の雰囲気です。オリジナル版が醸成していた雰囲気は、ほかの作品では見られないものだったと思います。

Maciej:私はキャラクターにあると思います。ゲーム以外の媒体においても、物語は時間が経つとその本筋を忘れてしまうことがあると思うのですが、キャラクターの印象は濃ければ濃いほど心に刻まれて、まるでそのキャラクターが実在していたかのように感じます。オリジナル版のキャラクターは特に設定が練りこまれており、存在意義を実感できるほどにキャラクターが立っていると思っています。

岡本:私もストーリーだと思います。特にエンディングの苦さというか、決して安易なハッピーエンドにならないことが、オリジナル版を特別なものにしているポイントだと考えています。

山岡:私はひとつの”体験”だと思っています。システムやグラフィックがすごかったとか、どうやって遊んだのかといったことではなく、独特の体験をしたと感じたことが23年も愛される理由なのかもしれません。当時はホラーというよりも、ジェイムスとメアリーの夫婦愛を描いていたつもりでした。ちぐはぐだったり、こなれていなかったりした部分もありましたが、それもひとつの特徴だったと思います。

伊藤:オリジナル版の開発当初はデザイナーが「SILENT HILL」チームに自分を含めて数人しかいませんでした。しかし開発期間は決まっていたのでバトルデザインよりも、ストーリーというかプレイヤーが遊ぶ道程に特化しようと決めたんです。プレイヤーの道程が、実はジェイムスの抱えた感情を反映していたり、最終的な答えだったりする。プレイしていてそれに気づく驚きを、一番の核にすると決めていました。まさか23年も愛される作品になると、当時は全く思っていませんでした(笑)。

──最後に。シリーズの未来において、今回のリメイク作品はどのような存在になるのでしょうか?

岡本:オリジナル版はファンの皆さんにとって「SILENT HILL」シリーズのスタンダードであり、思い出でもあると思います。そのリメイク作品となる本作を、自信を持ってお届けすることによって、皆さんにその他すべてのシリーズ作品のクオリティを保証するとお伝えしたいです。

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SILENT HILL 2(サイレントヒル 2)

・発売元:KONAMI
・フォーマット:PlayStation 5
・ジャンル:サイコロジカルホラー
・発売日:2024年10月8日(火)予定
・価格:パッケージ版 希望小売価格 スタンダードエディション 8,580円(税込)
    ダウンロード版 販売価格 スタンダードエディション 8,580円(税込)
    ダウンロード版 販売価格 デラックスエディション 9,790円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:C(15才以上対象)


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