『龍が如く8』制作総指揮・横山昌義氏インタビュー! シリーズ最大規模の自信作を語る!【特集第2回】

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『龍が如く8』制作総指揮・横山昌義氏インタビュー! シリーズ最大規模の自信作を語る!【特集第2回】

本日1月26日(金)発売のPlayStation®5/PlayStation®4用ソフトウェア『龍が如く8』は、どん底から再び這い上がる男・春日一番と人生最期の戦いに挑む男・桐生一馬のふたりの主人公が繰り広げるドラマティックRPGだ。

特集第2回では、「龍が如くスタジオ」代表であり、「龍が如く」シリーズの制作総指揮を執る横山昌義氏にインタビュー。シリーズ最大規模を誇る『龍が如く8』の見どころ、開発の裏側について語っていただいた。

セガ「龍が如くスタジオ」代表
「龍が如く」シリーズ制作総指揮

横山 昌義

『龍が如く7』での大解散を経て、極道はどこへ向かうのか

──『龍が如く8』のコンセプト、開発チームの皆さんが最初に掲げた指針について、改めてお聞かせください。

「龍が如く」は連続性のあるシリーズで、いわばサッカーのようなものです。サッカーでは点を取ることが目的ですが、その過程ではファウルやミスがあり、紆余曲折を経たうえで1点を勝ち取ります。「龍が如く」も、最初の1作からシリーズが始まり、『龍が如く7 光と闇の行方』(以下『龍が如く7』)があって『龍が如く 維新! 極』、『龍が如く7外伝 名を消した男』(以下『龍が如く7外伝』)と続き、『龍が如く8』につながりました。つまり、流れの中で続いていくものなので、コンセプトはあるようでないんです。「龍が如く」シリーズが続くなら、今度はこういう流れで点を取りにいくことになるだろう──そう考えた結果、生まれたのが今回の『龍が如く8』です。

──『龍が如く7』の完成後、「シリーズが続くならこうなるだろう」とストーリーを考えていったのでしょうか。

そうですね。流れで考えると、春日一番の物語はまだまったく終わっていませんでした。ですから、『龍が如く8』も春日一番の話です。『龍が如く7』で極道大解散がありましたから、その流れを描くなら桐生一馬が登場しなければ幕引きはできません。そういった『龍が如く7』の延長線上に今回のストーリーが生まれました。

ストーリーも長い時間をかけて考えるわけではなく、思いつく時はほんの数秒しかかかりません。思いついた瞬間、ホワイトボードにキーワードを書き出し、スタッフに説明することが多いですね。話しながら頭の中が整理されたり、矛盾に気づいたりしますから。もちろん細部までは詰められませんが、おおかたの流れはその場で決まります。

──今回はハワイが新たな舞台になりますが、そういったことも最初に考えつかれたのでしょうか。

そうです。極道組織が解散し、日本で法的に締め付けられた人間はどこに行くのか。真面目に生きようとする人もいるかもしれませんが、私の考える悪いヤツらの性根は不真面目に生きることです。だとしたら、きっと不真面目な生き方を貫くために国外に向かうのが自然だろうと。

そこで、日本人がたくさんいても不自然にならない海外はどこだろうと考え、真っ先に思い浮かんだのがハワイでした。日本人にとってなじみ深い場所ですし、観光地なのもよかったです。観光地は、トラブルやハプニングが起きるくらいがちょうどいい。観光地ならではのテンションの高さで、犯罪を隠せるのではないかと思いました。例えば、静かなバーで喧嘩をしていたらすぐに気づきますが、居酒屋の喧騒の中では目立ちませんよね。そこで、今回の舞台をハワイに設定しました。

そこに絡んでいくのが、春日一番です。『龍が如く7』であえて残していた秘密のひとつが、春日の母親に関することでした。春日と桐生の行動を考える時に、とにかく大事なのが動機です。彼らは積極的に事件に絡んでいく人たちではありません。相当強い動機がないと動かない。春日を動かすきっかけとして母親のエピソードを絡めました。

──ストーリーの骨子となるのは、春日一番の母親探しの旅でしょうか。

いえ、春日の母親探しは、彼がハワイに行く動機にはなっていますが、それだけが主軸のエピソードではありません。ストーリーの本質は、このシリーズの世界が『龍が如く7』以降どう動くのか。そのため、ストーリーを考えることは、3年後の世の中はどうなっているのかを考える作業でもありました。ロングトレーラーも公開していますが、それを観てもきっとメインストーリーは想像がつかないと思います。実際にプレイしたら、きっと皆さん驚かれるのではないでしょうか。

『龍が如く8』ストーリートレーラーはこちら

──主軸となるのは、あくまでも「『龍が如く7』のあと、極道はどうなっていくのか」なんですね。

そうです。ですからキーマンは、長谷川博己さん演じる海老名や堤真一さん演じる沢城。沢城は『龍が如く7』にも登場しましたが、なぜ彼が出所しているのかという点も含めて鍵を握っています。

僕は、どこまでいっても「龍が如く」シリーズは裏社会が絡んだドラマだと思っています。その事件性、そこに主人公たちがどう絡んでいくのかを描くことが大事なんです。表から見えている世界の裏側では、こういう事件があっても不思議ではない。そう思っていただけるようなリアリズムを重視してストーリーを作っています。

──となると、開発段階から世の中の流れを読み、未来を見通すことも重要になりそうですが、いかがでしょうか。

今回は企画の規模から開発期間が約3年かかる計画でした。つまり3年後の世の中を予想しなければなりません。言ってみれば、3年後の未来を当てるか外すかの勝負。例えば今回劇中にVTuberが登場するのですが、3年前の時点でVTuberが2024年の世の中でどれだけ大きな影響を持つ世の中になっているかを予想しながらシナリオを書き進める。キャスティングに関しても同様です。長谷川博己さんや堤真一さんは時代を問わず活躍される普遍的な俳優ですが、3年後の旬を読む難しさは毎回感じています。

春日一番というキャラクターが持つ力により、明るくパワフルな作風に

──『龍が如く7』から主人公が春日一番に代わり、全体にカラッと明るい作風になりました。『龍が如く8』ではハワイが舞台になったことでさらに明るさを感じますが、演出を行なううえでも作風の変化を意識しているのでしょうか。

単純に、春日一番というキャラクターのパワーがすごいんです。開発チームまで明るくなりますから。例えば、『龍が如く8』のプレイスポットには、ド派手なアクションやトリックを成功させて魅せる配達でフードを届ける「クレイジーデリバリー」というゲームがありますが、それも春日一番だから生まれたもの。春日はしみったれた遊びよりも、勢いがあってみんなでワーワー楽しめるものが似合うんですよね。そのイメージが開発チーム内にも浸透しているだと思います。

『龍が如く6 命の詩。』(以下『龍が如く6』)までは、桐生一馬に似合うプレイスポットを採用してました。桐生のようなキャラクターが、急にカラオケでラップを歌うからギャップが生まれて面白い。最初から春日が主役だったら、もしかしたらカラオケは今の形にはならなかったかもしれません。春日はパートナーがいてこそ面白いので、社交ダンスとかも似合いそうですよね。つまり主人公のパーソナリティに合わせてプレイスポットを考えるので、『龍が如く7』以降は必然的にゲーム全体が明るくなるんです。それが最大の化学変化でした。

また、『龍が如く6』までは、「龍が如く」=オーセンティックな極道ものという固定概念がありました。『龍が如く7』以降はその制約が外れ、海外におけるタイトルも『Like a Dragon』に。開発者が今良いと感じるものを注ぎこんでいますし、僕自身も春日が主人公になってからは明るい話にしようと意識しています。そのため、イメージが変わったのだと思います。

──『龍が如く8』も、桐生が病気を患ってはいますが、全体としては明るい作風になっているのでしょうか。

そうですね。例えば井筒和幸監督のかつての映画は、扱っているテーマは重厚なのにあっけらかんとしていましたよね。『パッチギ!』や『ゲロッパ!』なども、乾いたストーリーなのになぜか明るい雰囲気でした。やっぱり、ただ明るい話だけでは面白くありません。つらい状況の当事者なのに、妙に達観していたり、他人事のように捉えていたり、明るく困難を乗り越えたりするから面白いんですよね。例として正しいかわかりませんが、そういう作風にしたいとは思いました。

──今回は登場人物も、バラエティに富んでいます。中でも横山さんが面白く仕上がったと感じるのは、どのキャラクターでしょうか。

今回はエリック・トミザワですね。『龍が如く7』以降、春日一番が裸で捨てられるというひとつの型ができつつあります。前回は横浜に捨てられましたが、今回はハワイのビーチに捨てられる。その時、最初に手を差し伸べる人物は、強く印象に残りますよね。前回は安田顕さん演じるナンバでしたが、今回はその役回りがトミザワです。でも、トミザワも単なるいいヤツではなく、むしろ嫌なヤツ。そういうところも含めて、面白い人物ですね。

しかも、春日一番はどんなに嫌なことをされたとしても、自分と関わった人を大切にします。そういう意味でもトミザワとの出会い、仲間になっていくまでのストーリーは面白くなりました。井口理さんの演技も素晴らしく、プレイしたらみんな好きになってしまうキャラだと思います。

──意外性のあるキャスティングだと感じましたが、いかがでしょう。

そうですか? 井口さんが一番ピッタリじゃないですか(笑)。King Gnuの「Teenager Forever」のミュージックビデオで彼が走っている姿を見て、このイメージだと思いました。彼が俳優としても活動しているとは知らず、演技を見たことがないままオファーしたんですよね。演技も含めて、とても印象深いキャラクターに仕上がりました。

──今回は、安田顕さんをはじめ続投されたキャストも複数います。収録時のエピソード、印象的だった出来事はありますか?

『龍が如く8』のキャストを発表した際、安田顕さん、堤真一さんが続投することにファンが驚き、喜んでいました。僕としては、それが意外でした。確かに過去の「龍が如く」シリーズでは、俳優さんは毎回1作で退場していました。基本的に続投はなかったのですが、僕にとってはもう普通のこと。10年以上前は、俳優さんをお迎えするにあたってこちらも構えるところがありましたが、今ではレギュラーの声優さんとお仕事するのと何も変わりません。「龍が如く」シリーズも知名度を得ましたし、僕らもこういう作り方に慣れてきたのだと思います。

移動を取り入れ、より戦略的かつ自由度を高めたバトルシステム

──『龍が如く8』では、バトルも大きく進化しています。コマンドバトルではありますが、キャラクターが移動できるようになったことで、戦略の幅が広がりました。新しくなったバトルの面白さについて、横山さんからおすすめポイントを紹介していただけますか?

今回は、バトルが最大の評価を得るのではないかと予想しています。事前にプレイした方々も、まずバトルについて「面白かった」と言ってくださいますね。

今回の戦闘は、コマンドバトルではありますが「リアルタイムストラテジックアクションコマンドバトル」のようなものだと思っています。リアルタイムストラテジーやアクションの要素が感じられる、戦略性の高いコマンドバトルに仕上がっています。前作のようにボタン連打で「攻撃」を選び続けることもできますが、敵の背後を取ったり、吹き飛ばしたりすると素早く勝てます。慣れてくるとアクションゲームのような感覚で戦えるので、プレイヤーの腕さえあればレベル差のある敵にも勝つことができるようになりました。その一方で、コツコツレベルを上げて、圧倒的な攻撃力で敵を叩く遊び方もできます。

──やはり移動によるポジショニングが重要なのでしょうか。

そうですね。僕らは「ドラゴンエンジン」というアクションを制御するハウスエンジンを使っているので、『龍が如く7』でもキャラクターを移動させようと思えばできました。ただ、それをあえてRPGのコマンドバトルに落とし込んでいたんです。今回は、どうすれば無理なくキャラクターを移動させ、戦略性のあるバトルに仕上げられるか調整した結果、世界でも類を見ないRPGになりました。RPGは、敵をたくさん倒して経験値を稼ぐという遊び方が一般的ですが、『龍が如く8』はプレイヤー次第で幅のある楽しみ方ができます。

──素早く勝つには、敵の背後を取ることや吹き飛ばし攻撃が有効なのでしょうか。

仲間との絆攻撃も有効ですね。絆を深めることで、連携攻撃も出しやすくなります。キャラクターの強化方法にも幅があります。

──新たなジョブも追加されていますが、面白く仕上がったものはありますか?

前作で物足りなかった点をすべて解消し、全体的に面白くなりました。『龍が如く7』では、範囲攻撃をできるジョブが少なく、敵をひとりずつ撃破していかなければなりませんでした。ですが、今回は背後を取って吹き飛ばして壁に当てて……と一回の攻撃で何度もダメージを与えたり、敵をまとめて倒せるようにしたりとジョブのスキルも改良しています。

また、前作では転職する時に残せる技が決まっていましたが、今回は自分で選べるんです。「このキャラは回復役」と役割を固定しなくてもいいので、キャラクター育成の自由度が上がりました。

ただ、だからと言って面倒なゲームではありません。前作のように何も考えず、攻撃するだけでも敵に勝てますし、転職しないでひたすらレベルを上げるという楽しみ方もできます。プレイヤーごとに、自由に楽しんでいただきたいですね。

「龍が如く」は好きなところだけ選んで楽しむ”大人のゲーム”

──今回はプレイスポットがさらに増え、以前のインタビューでは「バケモノ級」のボリュームになったとお話されていました。どのような経緯でボリュームが拡大していったのでしょうか。

「龍が如く」チームが、3年かけて新作を開発するとこうなってしまうんですよね。普通は「ここまで作ったら終わり」という全体のボリュームがあらかじめ決まっていますが、われわれのチームはひとつひとつの遊びが広がりがち。今回新たに搭載した「ドンドコ島」はその象徴です。

──「ドンドコ島」は、どのようにして生まれたのでしょうか。

「ドンドコ島」を作ることは、初期から決めていました。ハワイが舞台となれば、やっぱり海と島で遊びたいですよね。そこから、「ドンドコ島を訪れるお客さんもいるよね」「そのお客さんにもそれぞれエピソードがあるはずだよね」と、みるみるうちに規模が拡大していきました。それを担当スタッフがどんどん思い付き、どんどん実装していくわけです。迷いなく作ると、これくらいのボリュームになるんだなと思いました。

──ゲーム全体のプレイ時間は、どれくらいを想定していますか?

ちょっと寄り道しただけでもメインストーリーをクリアするのに80時間くらいかかると思います。プレイスポットやサブストーリーを徹底的にやり込もうとすると200時間近くになるでしょう。ただ、僕らは別にボリュームを増やしたかったわけではないんです。正直多すぎるくらいですが、作っているうちに増えてしまったんですよね。

ユーザーの皆さんにはなかなか理解していただけないのですが、「龍が如く」シリーズは好きなところだけ遊んでもらえれば十分なんです。もちろんメインストーリーはすべてプレイしていただきたいですが、大人のゲームなので食わず嫌いが許されます。子どもは出された食事をすべて食べるよう言われますが、大人は体調や健康を意識して腹八分で留めてもよい。麻雀のようにルールが難しいミニゲームも入っていますが、街を構成するために必要なスポットとして入れているので、やりたいものを選んで遊んでいただけたらと思っています。

──プレイスポットを遊び尽くさなくても、レベルも上がりますし、お金もある程度は貯まるのでしょうか。

もちろん「ドンドコ島」のほうがお金を稼ぎやすくなっていますが、必須ではありません。桐生一馬の「エンディングノート」もやらなくてもかまいません。

──「エンディングノート」は、どのような位置づけなのでしょうか。これまでのシリーズをプレイしていない人に向けた要素ですか?

桐生が未練を残さないよう「エンディングノート」にやりたいことを書き、それを実現していくものです。いわば、サイドストーリー群のようなものですね。どちらかと言うと、シリーズをプレイしてきた方、桐生に思い入れのある方に向けた要素になっています。新規ユーザーはプレイしなくてもかまいませんが、遊んでみると過去のシリーズに興味が湧くような内容になっています。

──ほかに、プレイスポットやサブストーリーなどで注目すべきポイントを教えてください。

街なかでのチームメンバーの会話、雑談が面白いですね。『龍が如く7』でもパーティーチャットが楽しめましたが、今回はより会話が増えています。『龍が如く7』では、最年長の足立が60歳くらいで春日一番とナンバが40代前半、紗栄子は30歳くらいでパーティーメンバーの年齢に幅がありました。それでも友達になれるのが、彼らなんですよね。同年代の友達ではありませんし、お互いに大人。いつも一緒にベタベタくっついているわけではありませんが、何かあれば利害関係抜きで助けに行きます。そんな彼らの関係性が、街なかでの会話から感じ取れるんです。

──春日一番のパーティーだけでなく、桐生側のチームでも会話が発生するのでしょうか。

発生します。みんなが桐生に気を遣うような空気もあって、そこも面白いんです。ああいう何気ない会話は、本音が出るような気もしますね。イベントシーンでは見栄を切ってカッコいいセリフを言いますが、パーティーチャットでは日常のオフショットのような雰囲気を楽しめます。

街での会話に関しては、僕はノータッチですし、担当スタッフもシナリオライターではありません。ひとりのスタッフが書いているのですが、あの会話がキャラクターのイメージを形作っているように思います。今回は、全体的にそういうキャラクターの空気感が伝わる仕掛けが山ほど入っているので、ぜひその点も楽しんでいただきたいです。

シリーズ史上最高の自信作。ゲームの中で、最高の旅を

──ほかに、全体を通して特に力を入れた点、ご苦労された点についてお聞かせください。

長期にわたるプロジェクトだったので、何に苦労したか忘れてしまいました(笑)。『龍が如く8』を制作しながら、『龍が如く 維新! 極』も『龍が如く7外伝』も開発していたので、時空が歪んでしまって。そもそも『龍が如く8』を作り始めた頃は、コロナ禍でしたから。

──ハワイにもなかなか取材に行けなかったそうですね。

約7割はリモートでの取材でした。現地の制作会社にカメラを回しながら歩いてもらい、オンライン会議ツールを使ってリアルタイムでその映像を見せていただきました。夜の街は治安が心配なので、車の中から撮ってもらったことも。ほかにも、特定のアングルを指定して「こういう写真を撮ってきてください」とハワイのコーディネーターや映像制作会社にお願いするなど、いろいろな方の協力を得て作り上げていきました。その後、渡航制限が解除されたギリギリのタイミングで、細部を確認するために開発チームもハワイへ向かいました。

──開発期間は3年間と長期にわたりましたが、その間ユーザーの興味を常に惹きつけておく必要もあります。「龍が如くスタジオTV」などの配信番組やイベントなど、さまざまな取り組みをされていましたが、どのようなことを意識してプロモーションを展開してきたのでしょうか。

「龍が如く」シリーズのナンバリングタイトルを作るには約3年かかりますが、その間に作り手自身も飽きてしまうんですね。もちろん、ユーザーもこちらがなにもしないままではそんなに長く待ってくれません。自分自身を顧みても、翌シーズンの洋服を予約したところで3ヵ月も待てません。待っている間に欲しいものが出てくるので、予約をキャンセルすることもよくあります。ましてや3年間も待っていただくのは至難の業。ユーザーも開発チームも活性化させていかなければ、どちらにとっても不幸なことになります。

その解決策のひとつが、ナンバリングタイトルが発売されるまでの間に他のタイトルを作ることでした。例えば『龍が如く 維新! 極』は、「Unreal Engine」で開発することで、制作チームの技術的な飽きを解消しました。また、『龍が如く7外伝』のようなコンパクトなアクションゲームを制作したことにも、作り手を活性化する狙いがありました。もちろんストーリー上説明すべきことがあったので作ったゲームでしたが、ユーザーと作り手双方を活性化できたのではないかと思います。

さらに、「龍スタTV」という配信番組を通して、ファンとコミュニケーションを図ってきました。コンシューマーゲームは、スマートフォンアプリやオンラインゲームのようにコラボやイベントで興味を惹くことができませんし、3年間沈黙を守ったままではユーザーが離れてしまいます。忙しい3年間ではありましたが、こうしたやり方が僕らには合っていたと思います。

──昨今は、開発期間がどんどん延びる反面、ユーザーが飽きずに待てる時間はどんどん短くなっています。ゲームの作り手としては厳しい状況ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

僕らは3年で新作を出しますが、開発期間がさらに長いゲームも多いですよね。例えば開発に8年かかるとしたら、新卒で入社したスタッフが30歳になるまで自分が作ったゲームが世に出ないわけです。それではモチベーションも保つのが難しくなりますよね。『龍が如く8』も3年かかっていますが、新人クリエイターもその間に『龍が如く 維新! 極』や『龍が如く7外伝』の開発を経験できたので、自信をもって『龍が如く8』の発売日を迎えられるでしょう。開発チームの内側の問題ではありますが、大きな課題だと思います。

──今後のシリーズの展望についてもお聞かせください。

とりあえず、現時点では『龍が如く9』についてはまったく考えていません。『龍が如く8』が発売され、ユーザーの皆さんがどう感じたのかを受け止め、春日一番の将来を考える日が来れば作るかもしれません。まずは『龍が如く8』が売れなければ、続編は考えられませんしね。

──とはいえ、横山さんとしては『龍が如く8』に大きな手ごたえを感じているのではないでしょうか。

そうですね。間違いなく、これまでで最も自信のあるタイトルです。これが売れなかったら、世の中に正義はないと思うほどに(笑)。個人的な好き嫌いはあるかもしれませんが、これまでのシリーズ作品と比べても圧倒的なタイトルになりました。

──シリーズ作品は、新規ユーザーが敬遠する傾向があります。『龍が如く7』で主人公が代わったことで始めやすくなったとは思いますが、改めて新規ユーザーに向けてメッセージをいただけますでしょうか。

知人が入院した際、暇を持て余して「龍が如く」シリーズのプレイ動画を観たらしいんです。『龍が如く7』から観始めたのですが、ストーリーにも問題なくついてこられて楽しかったそうです。このように、エントリーポイントはどこにでもあるんですよね。新規ユーザーでも、面白そうだったらきっとプレイしてくれるはず。そうでなければ、「龍が如く」に限らず、シリーズものがこんなに続くはずはありませんから。

『龍が如く8』は、事前知識がなくても遊べますし、間口もかなり広げました。シリーズに興味がなくても旅に出たいという方にはオススメです。コロナ禍での渡航制限は解除されましたが、まだ皆さんそこまでアクティブに旅をしていませんよね。ですから、まずはゲームを旅してみてはいかがでしょうか。僕は特に旅を求めていないタイプなのですが、それでも開放感を味わえました。ゲームの中はいいですよ、虫にも刺されませんし、日焼けもしませんから(笑)。最高の旅をお約束します。

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龍が如く8

・発売元:セガ
・フォーマット:PlayStation 5 / PlayStation 4
・ジャンル:ドラマティックRPG
・発売日:好評発売中
・価格:パッケージ版 希望小売価格 9,680円(税込)
    ダウンロード版 販売価格 スタンダードエディション 9,680円(税込)
    ダウンロード版 販売価格 デラックスエディション 10,780円(税込)
    ダウンロード版 販売価格 アルティメットエディション 12,760円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:D(17才以上対象)


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