
PlayStation®5ダウンロード専用タイトル『Viewfinder(ビューファインダー)』は、スコットランドのSad Owl Studiosが開発する一人称視点のパズルアドベンチャーゲーム。先日行なわれたインディーゲームイベント「BitSummit Let’s Go!!」でも注目を集め、ゲーム・デザイン最優秀賞を受賞している。

このゲームの世界では、インスタントカメラで撮影した写真、絵画、スケッチ、スクリーンショット、絵葉書などに「命を吹き込む」ことができ、その風景を現実世界の空間に置き換えられる。何もない空間に道を作ったり、壁を取り払ったりと、世界を再構築することが可能だ。パズルを解くように世界を改変する中で、知的好奇心を刺激するめくるめく体験が楽しめる。
なお、本レビューにはパズルを解くヒントになる記述が含まれる。自分の気づきでクリアしたいという方は、この記事は読まずに今すぐ本作を始めよう。
CHECK POINT ①
写真で空間を再構築する新感覚パズル
一人称視点のパズルアドベンチャーである本作では、各ステージでさまざまなギミックを解きながら、ゴールであるテレポーター(転送装置)にアクセスしてクリアしていく。そしてギミックを解く方法となるのが、写真や絵を空間に設置し、そこに描かれた風景が元の空間を上書きして世界を再構築するというものだ。
写真や絵は平面だが、描かれた風景は立体。これに命を吹き込むことで、立体空間が現れる。元の空間にテレポーターが見当たらなくても、テレポーターが写った写真に命を吹き込めば、そこがゴールになるというわけだ。

テレポーターの写真を見つけてゴールに入るというギミックはほんの序の口で、先のステージに進むほど、どんどん難しくなっていく。ゴールにたどり着くまでの道筋、あるいはゴールを見つけ出すまでの道筋は、固定観念にとらわれていては思いつかない。床がなければ歩けないとか、壁の先には進めないとか、脳にこびりついた当たり前の考えを壊しながら進んでいく。写真や絵が実体化するこの世界では、どんなことだって起こり得る。


実体化された空間によって、雰囲気がガラリと変わるのも面白いところ。最初のエリアは植物の緑鮮やかなリゾート地を思わせる景色だが、鉛筆画の中に入り、油絵の中に入り、さらにはカートゥーン調や子どもの落書き、ピクセルアートの中へと、次々に景色が様変わりしていく。現実を再構築する、不思議なプレイ体験が可能だ。



ミスをしたら巻き戻し機能でやり直し!
写真や絵の風景を実体化させたとき、上書きされた元の空間は破壊されており、場合によってはゴール不可能になることもある。わかりやすい例でいえば、テレポーターがある場所を上書きしてゴールを消してしまった場合などだ。また、本作の世界は空中に浮かんでおり、足を踏み外せば真っ逆さまに落下し続ける。しかし本作では、それでゲームオーバーになりスタート地点に戻されることはない。○ボタンを押し続けることで時が遡り、任意のタイミングまで巻き戻すことができるのだ。巻き戻す回数にも制限がなく、好きなだけ使える。

想像力や発想力が重要な本作では、とりあえず何かを動かしてみて、いろいろと試しながら正解を見つけ出していく。その過程で取り返しのつかないミスをしていることもあるのだが、もしゲームオーバーやリスタートばかりではストレスが溜まり、トライする気力がなくなってしまうだろう。巻き戻し機能のおかげで、そんなストレスから解放され、「これじゃダメか。巻き戻そう」とトライを続けられる。そして何度も試しているうちに解き方にハッと気づき、想像どおりにゴールできたときが本当に気持ち良い。プレイヤーが諦めなければ、詰むということがないのだ。

CHECK POINT ②
想像力を働かせて豊富なパターンのパズルを解こう
パズルのギミックや解き方の種類はじつに豊富。新しいパターンに出会うたびに驚き、頭を悩ませるが、基本から応用へとステージが進むため、手応えを感じながら楽しめる構成がうまい。そんな本作のパズルギミックをいくつか紹介しよう。ネタバレ注意!
写真や絵を設置するときは、回転させて角度を変えることができる。横から見た壁の写真はそそり立っているが、斜めに傾ければ坂道になるし、90度回せば床になる。また、写真の中で床や机の上に乗っている物体は、命を吹き込み実体化させたときに取り出せるようになる。つまり写真を斜めにして実体化すると、その物体が転げ落ち、直接取りにいけない場所からでも手に入れられることもある。

命を吹き込み実体化できるのは、手に持った写真や絵だけではない。ステージ内の壁や風景が、見る位置や角度によって一枚の絵になる、トリックアートのようなギミックもある。まさに、一人称視点ならではの立体だまし絵。妙な模様だと思って違和感を覚えてから、正解の場所を探っていき、ピタリと絵が完成して実体化する瞬間がたまらない。写真や絵を手に入れてから謎解きが始まると決めつけていると、意外と見つけられないものだ。

また、重力の使い方がポイントになることも。下の動画は、テレポーターに正しく乗る方法を模索した結果、写真を床に設置してプレイヤー自身が飛び降りることで正解にたどり着いた場面だ。写真を回転させ、横に向けても下に向けてもダメ。ふつうでは考えない、垂直方向に設置する発想は目からウロコが落ちる思いだった。

このほかにも面白いパズルギミックが盛りだくさん。元の世界にひとつしかないバッテリーを増やすために、カメラで撮影した写真の中から複製したバッテリーを取りだしたり、あるいはバッテリーの写真をコピー機にかけて複製を増やしたり、工夫しだいで数の不足を解消できる。

テレポーターの動力はバッテリーだけでなく、音や重さを利用することもある。音の場合は集音器の近くにラジカセなどの音源を持ってくるのだが、ムンクの「叫び」の絵を実体化させ、叫び声が音源になるというユニークな解き方もあった。

どのギミックにも共通していえるのは、よく観察して想像力を働かせることが正解への第一歩。「ここを写真で切り取れば道がつながるかもしれない」「壁の裏側にゴールがあるかもしれない」など、いくつもの”かもしれない”を思い浮かべては試していく。しかも、この世界は現実ではありえないことが次々と起こるから、とことん頭を柔らかくして考えなければならない。それがハマって正解したときは、ほかのパズルゲームにはない快感で満たされるのだ。
ちなみに、同じステージに長時間滞在していると、オプションメニューでヒント表示が選べるようになる。直接的な正解を示すわけではないので、どうしても解き方が思いつかない場合は頼ってみるのもいいだろう。
CHECK POINT ③
不思議な世界に隠されたストーリーとは?
本作の世界は、モノレールのような列車で移動する大きなエリアが連なっており、各エリアにはいくつものパズルステージがある。そしてステージをクリアし、次のエリアへと進んでいく中で、本作のストーリーが少しずつ明らかになっていく。この不思議な世界はなぜ存在するのか? 誰がこの世界を作ったのか? プレイヤーはなぜ謎を解きながら先へ進んでいるのか……?
プレイヤーのバイタル変化を観察しているというJessieとの通信や、この世界で唯一実在するキャラクターであるネコのCAITとの会話からは、この世界を旅する理由が語られる。また、ステージ内に残されたメモや音声記録からは、この世界を創造した者たちが、かつて過ごしていたころの様子が見えてくる。いずれも断片的な情報ではあるものの、先のエリアに進むほど深刻な様子を見せはじめ、けっして楽しい謎解きアトラクションとして創られた世界ではないようだ。

ギミックを解きまくるカジュアルなパズルゲームとしてももちろん楽しめるが、ストーリーにも注目すれば、この世界により深く没入できるようになる。メモや音声記録は、自分からインタラクトしないと内容に触れられないので、ステージの隅々まで探索して世界の情報を集めてほしい。


オプションチャレンジやコレクション要素も!
各エリアには、必ずクリアしなければならないステージと、クリアしなくても先のエリアに進めるオプションチャレンジのステージがある。オプションチャレンジをスルーしても、ストーリーに関する大きな情報を逃すことにはならないため、ストーリーを重視するならメインステージだけをサクサク進めるのもアリだ。もっとも、ほかのゲームでは味わえない本作ならではのパズルアドベンチャーの楽しさを知ってしまったら、プレイできるステージを見送るなんてことはできないだろう。

また、ステージによっては、コレクションアイテムを手に入れられることがある。こちらはトロフィー獲得のためのやり込み要素となっており、トロフィーコレクターとしては見逃せない。

これぞインディーゲームという斬新なゲーム性でデザインされており、似ているゲームを探すのは難しい。非現実的なひらめきを必要とするパズルも歯応えがあり、悩みに悩んだ末にクリアする達成感は格別。パズルゲームが好きなプレイヤーはもちろん、これまでにないプレイ体験を楽しみたい方にもオススメの作品だ。
『Viewfinder』 プレイ動画

Viewfinder(ビューファインダー)
・発売元:THUNDERFUL PUBLISHING
・フォーマット:PlayStation 5
・ジャンル:一人称アドベンチャーゲーム
・配信日:好評配信中
・価格:ダウンロード版 販売価格 2,860円(税込)
・プレイ人数:1人
・レーティング:IARC 3+(3才以上対象)
※IARC(the International Age Rating Coalition)は、世界のゲーム評価機関により管理される国際年齢評価連合です。
※ダウンロード専用タイトル
『Viewfinder』体験版をPS Storeでダウンロードする
© 2023 Sad Owl Studios
Published by Thunderful Publishing AB
コメントの受付は終了しました。