HBOオリジナルドラマ『THE LAST OF US』の第一話について、制作チームが語ります!

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HBOオリジナルドラマ『THE LAST OF US』の第一話について、制作チームが語ります!

※本記事は英語版PlayStation®.Blogの日本語翻訳記事です。

ジョエルの人生は、ひと晩にして永遠に変わってしまう……。 プレイヤーを「The Last of Us」の世界に導く、その夜。ジョエルとサラ、そしてトミーがともに過ごした夜は、寄生菌の発生によって、シリーズのトーン、スタイル、そして迫りくる危機を確固たるものとしました。

約10年前にその夜を体験した方にも、最近PlayStation®5の『The Last of Us Part I』で、またはHBOのオリジナルドラマ『THE LAST OF US』で体験した方にも、あの恐ろしい夜はジョエルとエリーの旅を完全に理解するために必要な序章となっています。

あの恐ろしい夜がどのように生まれ、どのようにして現在に受け継がれたのか。ドラマ版の印象的なオープニングを作るために行なわれた作業、そしてそれに『The Last of Us Part I』がどのような影響を与えたのかをノーティードッグとHBOのチームが語ります。


ネタバレ注意! 「The Last of Us」シリーズをプレイしたことがない、またはまだドラマ版を見たことのない方はご注意ください。


HBOオリジナルドラマ『THE LAST OF US』の第一話について、制作チームが語ります!

終わりは始まり

オープニングは、そのゲームがプレイヤーに印象を残す最初の機会です。そして、ノーティードッグは開発中オープニングのシーンを繰り返し調整してきました。その調整のなかでも特に重要な要素として、“ジョエルとしてプレイし始めるタイミング”があります。

ノーティードッグのプレジデントであり、「The Last of Us」シリーズの共同ディレクターのニール・ドラックマンは、「ゲーム冒頭のシーンは、『The Last of Us』の開発過程において一番最後に完成したことのひとつです」と語ります。

「初めはサラではなくジョエルを操作してゲームが始まる予定でした。ジョエルが隣人の様子を見に行き、そこで感染者を目撃します。そして急いでサラを迎えに戻り、みなさんの知っている完成形の通りに続くという計画でした。

しかし、始めから主人公の視点ですべてを体験することは、ノーティードッグにとってはありきたりな設定でした。同じジャンルの作品との差別化を目指していた私たちは、「最初はサラとしてプレイする」というアイデアを思いつきました。ドラックマンによると、そこから「すべてがはまっていった」ようです。

「サラとしてプレイを始めることは、この物語をユニークに表現しているように感じました。純粋な子どもの視点で世界を見ることで、すべてがより不気味に、より恐ろしくなり、それが指標になったのです」とドラックマンは続けます。このような明確な視点を持つことが、この序章に命を吹き込もうとするチーム全体のアプローチに影響を与えたのです。

SIEのサウンドディレクターであり、ゲーム版『The Last of Us』のリードオーディオを務めたPhil Kovatsは、「聞こえるものには必ず理由があり、それに紐づく感情が必ずあります」と説明します。サラの視点から見せることによって、開発チームは暗くミステリアスな夜に目覚めたサラのリアルな感情を呼び起こすことができたと述べました。

「サラはその時何が起きているか知りませんでしたが、父親が家にいないことだけはわかりました」とKovatsは説明します。「その断絶と不安の気持ちを描くために、荒涼とした静かな音……例えばテレビの大きな音や、爆発で部屋が揺れたりする音を混ぜました。すべては、その瞬間に感じられたこの不安な緊張を作り出すためです」

サラの視点は、このようなシーンにとって非常に重要となるアートディレクションにも影響を与えました。サラがその夜に眠る前、父親であるジョエルと少しの間親子の時間を過ごします。このシーンは、開発者がプレイヤーにシーン全体を通して感じてほしい感情を伝えるために、最も重要な瞬間です。

アートディレクターのErick Pangilinanは、「あのゲームの冒頭では、ジョエルとサラの関係を構築することが非常に重要でした」と語っています。「このシークエンスでは、光を非常に暖かくして、ふたりの距離を縮め、親子の関係を表現しました。その光はとても柔らかく、家庭的な雰囲気がありますが、やがて状況が悪くなった時は光を遠くに移動させました。そうすることで影が長くなり、シーンに緊張感やコントラストが生まれます。プレイヤーを暗闇に追いやり、光を目指して向かわせることができるのです。

プレイヤーをその光に向かわせることで、サラは急速に混乱していく世界のなかで、一片の希望を見出します。やがてジョエルが戻り、ジョエルとサラ、そしてジョエルの弟トミーが安全な場所を求めて車を走らせ、何も知らないサラにも夜の重圧が忍び寄り始めます。

このようなシーンでは、ストーリー、キャラクター、プロットをプレイヤーに伝えるために、ほんの短い時間でさえも重要になります。しかし、その時々に応じた誠実さも重要です。トミーとジョエルがどうすべきか議論し、世界のパニック状態について話し合っている間、プレイヤーはサラを操作し、360度の視界でそのドライブを体験します。

「車に乗り込むと、パトカーがライトを回しながら通過していき、緊張感が高まります。燃えている家、残された家族を照らすヘッドライトなど、さまざまなシーンがありますが、その視界はとても閉塞的です」とPangilinanは、開発チームがどのようにそれぞれのシーンの感情を作り上げたかを指摘します。

「あのドライブで最も重要なことのひとつは、助けを求める家族と、その家族に対しジョエルが“車を止めるな”と言うことでした。その瞬間に、ジョエルの人間性がわかるのです」とドラックマンは説明します。

逃避行は街中を必死で駆け巡るにまでに発展し、ジョエルの車がほかの車と衝突してしまいます。その瞬間、状況はより深刻になり、また開発者がプレイヤーの視点を調整する機会にもなりました。

「騒ぎのなか、気がつくとプレイヤーは別のキャラクターを操作しています。窓を割り、今度はサラを掴みます。そこで、あなたは娘ではなく父親になっていることに気づくのです」とドラックマンは言います。

「(このシーンは開発の最終段階で完成したため)ゲームを完成させようとする混乱が、そのシーンの混乱にも影響を及ぼしました。そしてそれは、混乱、カオス、一貫性のなさ、何が起きるかわからないという感情そのものでした」とKovatsは説明します。

怒鳴り散らす市民、うなる感染者、ジョエルが負傷したサラを燃え盛る炎のなかから運びだし、混乱はさらに加速します。そして、その場から逃げ出したと思った瞬間、ジョエルは銃を突きつけられます。銃を突きつける兵士には、ふたりを殺すように指示が出されていることは明らかでした。兵士が発砲した瞬間、ジョエルは娘を守るため振り返りますが、間に合いません。あまりに残酷なその瞬間、ジョエルは自分の世界を失ってしまうのです。

「サラの死の描写は、実はとても難しかったのです」とドラックマンは説明します。「これは私のせいでもあるのですが、(ゲームでジョエルを演じる)Troy Bakerに、あのシーンがいかに印象的で、その後のストーリーに影響を及ぼすかを何度も説明してしまいました。そしていざ撮影してみると、大袈裟に感じてしまいました」

Troy Bakerの演技は迫真的なあまり撮影現場から立ち去るスタッフもいるほどでしたが、ゲームの編集作業中、ドラックマンは、このシーンが、自分が望んでいたものを表現できていないことに気付きました。そこで、モーションキャプチャーの際にもう一度同じシーンを撮影することになったのです。

「そこには、もっと可能性が眠っていると感じました。もっといいものができるはずだと。そして、プライドを飲み込まなければいけませんでした。というのも、ディレクターというのは望み通りの表現ができた・できなかったときをしっかりと伝えるものだと思っていました。だから、自分の間違いを認め、「やっぱりできていなかったです」と、言わなくてはいけなかったのです」とドラックマンは語ります。

そして、このシーンで何を伝えたいのかをドラックマンが再認識した上で、チームは2回目の撮影でシーンのなかに誠実さを見出すことができたのです。

「2回目の撮影で私は「悲劇に目を向けないでほしい。次に何をするかという“思考”に集中してほしい。サラは怪我をしている、どこに連れて行く? まず、彼女を持ち上げなければならない。サラは苦しんでいる。その痛みを和らげなければ」このシーンはすでにとても悲しいので、悲しさや感情をさらに高める必要はなく、ただその“思考”を強調するだけでいいのです。それ以外のことは自然に起こります」

象徴的な瞬間をもういちど

ノーティードッグは、この象徴的なオープニングからはじまる物語を現在PS5で発売中の『The Last of Us Part I』で再び世に送り出しました。PC版はSteamEpic Games Storeで3月29日(水)の発売に先駆けて予約受付中です。ゲームのオープニングのような重要なシーンは、リメイク版と同様にオリジナルのストーリーとゲームプレイを尊重し、それぞれのシーンの感情を可能な限り引き出すために、現代の技術で強化することに努めています。

「オリジナルのゲームは、非常に感情的です。そして、進化した技術と新しい表情表現を使えば、私たちがこれまでやってきたことの限界に挑戦することができます」と、Bryant Wilsonは述べています。

「進化した技術により、ジョエル がトミーに安全を確保させる険しい表情が見て取れます。そして、トミーが感染者の群れをドアで抑えるなか、逃げろと叫んでいる様子も見て取れます。このような小さなアニメーションを見るだけで、初回ではそれほど大きく感じなかった、より深い感情的なつながりを感じられるのです」

『The Last of Us Part I』で行なったすべての調整は、シーンにおけるありのままの感情を、これまで以上に詳細かつ微妙なニュアンスで表現することに帰結します。それは、車に乗ったジョエル、トミー、サラが通り過ぎていく光景から、街で彼らを迎える混乱、NPCが周囲の恐怖に反応する様子まで、あらゆる要素を意味します。

「彼らは、オリジナルよりもずっと現実的に環境に対してリアクションしています」とWilsonは説明します。

もちろん原作に忠実でありながらも、チームにとって重要なポイントは最後の瞬間の感動をさらに引き出すことでした。

「私たちは、光の当て方をすべて逆光にしてその光をプレイヤーに集中させ、より強いシルエットを作りたかったのです」とPangilinanは説明します。「そして、兵士は遠く離れていて彼が何をしようとしているのか読めないけれども、危険があることはわかるような距離感と冷たさを作り出したかったのです。その厳しい影の強さが、最後の瞬間をとても強烈なものにしているのです」

そして10年後、ドラックマンがエグゼクティブプロデューサーのクレイグ・メイジンとともに、HBOのオリジナルドラマ『THE LAST OF US』として、まったく新しい形でこのシーンを再訪することとなります。視聴済みの方はもう知っていると思いますが、(まだ見ていない人はネタバレ注意!)長年のファンが期待するおなじみのシーンがたくさんある一方で、HBOシリーズの第1話はこの夜以外の場面に多くの時間を割くことで、このシークエンスの緊張感と恐怖を呼び起こす新しい方法を見出しています。

「ニールと私は、ジョエルとサラの関係をさらに詳しく描き、サラのことをもっと深く知れるというアイデアにワクワクしていたと思います」とメイジンは語っています。「私やゲーム版をプレイしたことがある方が初めてゲームをプレイしたときに感じた、サラとしてプレイして、目を覚ますと、父親が見つからず、下に降りていくときの感情は、ゲームだからできたことなので、ドラマではできない演出ですからね。

ドラマ版ではジョエルとサラ、そして彼らの関係が運命的な瞬間に至るまでがより詳細に描かれています。

「目が覚めて、朝ご飯を食べ、学校に行き、父親の時計を直しに行くなど、日常の随所にアウトブレイクを予感させる演出を盛り込みました」と、ドラックマンは説明します。

「しかし、それ以上に重要なのはキャラクターたち、特にサラとジョエルとの絆をさらに深めることでした」

もうひとつの違いは、トミーとの関わりです。過ごす時間を長くしたことにより、アウトブレイク前のトミーをより理解できるようになっています。演出のなかにはオリジナルにはなかった要素もありますが、それらはドラックマンとメイジンとそのチームがパイロット版の撮影をやり直したときに生まれたものです。

「朝食のシーンは、最初撮影したときにはトミーがいなかったのですが、パイロット版の撮影をやり直す予算があったので、そのときにトミーを同席させることを思いつきました」とドラックマンは説明します。「朝食のシーンや、ジョエルが彼を刑務所から保釈しなければいけなかったときの電話も、再撮影の一部でした」

「トミーは自分の面倒は自分で見ることができる人だということがすぐにわかりますし、実際、1話目でジョエルの命を救ったのはトミーです」とメイジンは語ります。「そして、誰が助けるのか、誰が助けられるのか、というコンセプトは、私たちが何度も何度も持ち出すテーマです」

こういったシーン追加は、役者にとっても必要なものでした。というのも、この家族の絆を最初から固めることが、この番組、特にジョエルとトミーの関係にとって重要な要素になるためです。

「ジョエルはトミーとは違うということを、バランスよく表現したかったのです。ドラマの最初から出会うこの家族、そしてもちろんゲームのなかでも出会う彼らに命を吹き込みたい、家族や愛のリアルな感覚、そして彼らがお互いにとってどういう存在なのかを伝えたい」とドラマ『THE LAST OF US』でトミーを演じるガブリエル・ルナは語っています。「私はいつもジョエルを困らせ、手を焼かせている弟ですが、いつもそばにいる男でもあります。お互いにどんなに罵り合っても、彼はいつでも僕を頼れるし、僕もピンチになったらいつでも彼を頼れるのです」

そして、ジョエルを演じたペドロ・パスカルにとって、このオープニングの裏にある心と感情を理解することは、彼、そして観客がジョエルという人物を理解するために不可欠なことなのです。

「ジョエルの喪失感は、彼のキャラクターとしての存在の中核であると思います。なぜなら、ジョエルの心は娘と一緒に死んでいるのです、ジョエルにとって生きていることは何も意味しないのです」とパスカルは語ります。「そして、ジョエルは自分自身を見失っていると思います。だからこそ、ジョエルは本当に残酷なこともできるのです。ジョエルは、娘の愛の光を失った自身を人間だと思っていないのです。誰かにとっての何かでなければ、人間らしくいられないのです」

このドラマは、ゲームに忠実でありながらも新しいアプローチで挑むことによって、メディアの種類にかかわらず「The Last of Us」シリーズの核心であるキャラクターをさらに掘り下げながら描いています。

「自分の誕生日を祝う気になれないこの男に、私はとても共感しました。彼の世界全体は、小さなものなのです。彼の世界全体がバラバラになるまで、彼の全てであるこの小さな家族以外のことは、実は何もわからないのです」とパスカルは続けました。

第一話の最も悲惨な瞬間のひとつは、もちろんゲームと同じくサラの死です。ゲーム版でうまくいったことを理解した上でドラマに臨んだドラックマンですが、最初のエピソードを監督したメイジンは、テレビ版には独自の課題があることを説明しました。

「撮影は夏に行なわれました。初夏にカルガリーの北にいるということは、夜が短いということです。そのため、日が沈むと同時に一生懸命必要なものを確保しました」とメイジンは言います。「ビデオゲームを作っているときには気にする必要のない、血液検査装置やそのほかのこともありました。これらに加えて、風などの環境との戦いもありました。そして、その混乱の中心でたったふたりの人間が一瞬を演じようとするのです。

メイジンは、俳優のペドロ・パスカルとニコ・パーカーがこの重要なシーンに命を吹き込んだ演技を称賛しています。

「ニコには何かがありました。特に痛みや恐怖など、多くの人が演じるのが難しいと思うネガティブな感情に彼女は瞬時にアクセスできたのです。そしてそれは素晴らしいものでした」とメイジンは言います。「そしてペドロは、拒絶を我慢できなくなるまで放置して、どこかに行ってしまうという美しい行動をとりました。私が一番好きなのは、最後のシーンです。彼女を抱いているとき、彼の目が本当に大きくなったのです。その瞬間“ああ、だめだ”と悟ったように。」

このシーンがドラマシリーズを通じて新たな形で展開されることで、新旧のファンの皆さんは、ジョエルの人生を永遠に変えてしまう出来事を新たな視点から見ることができたと思います。長年プレイされている方も、そしてこれからこのシーンと物語の全貌を体験したいと思っている方も、『The Last of Us Part I』では、ジョエル、サラ、トミーの物語の重みと感情を尊重しながら、この名作に新たな命を吹き込み、最も没入感と技術的に優れたゲーム体験を提供しています。

『The Last of Us Part I』は現在PlayStation®5で発売中です。PCでは3月29日(水)の発売までSteamとEpic Games Storeで予約購入が可能です。オリジナルドラマ『THE LAST OF US』はU-NEXTでストリーミング配信されています。

PC版『The Last of Us Part I』をEpic Gamesで事前購入する

PC版『The Last of Us Part I』をSteamで予約購入する


The Last of Us Part I

・発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
・フォーマット:PlayStation®5 / PlayStation®4 / PC (Steam / Epic Games)
・ジャンル:サバイバルアクション
・発売日:好評発売中
     PC版は2023年3月29日(水)予定
・価格:ダウンロード版 販売価格 5,900円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:Z(18才以上対象)


PS Blogの『The Last of Us Part I』記事はこちら


『The Last of Us Part I』公式サイトはこちら

©2022 Sony Interactive Entertainment LLC.Created and developed by Naughty Dog LLC.The Last of Us is a registered trademark of Sony Interactive Entertainment LLC and related companies in the U.S. and other countries.

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