『A Space for the Unbound 心に咲く花』プレイレビュー! 終末が迫る世界で高校生の心の旅を描いた青春SF

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『A Space for the Unbound 心に咲く花』プレイレビュー! 終末が迫る世界で高校生の心の旅を描いた青春SF

PlayStation®5/PlayStation®4用ソフトウェア『A Space for the Unbound 心に咲く花』は、インドネシアのスタジオMojiken Studioと『コーヒートーク』を制作したToge Productionsによるアドベンチャーゲーム。インドネシアの田舎町を舞台に、超自然的な力を手にした少年と少女の関係、彼らの心の機微を描いた作品だ。

約8年もの月日をかけて制作されただけあって、ピクセルアートで描かれた世界観、謎が謎を呼ぶストーリーなど、見どころは盛りだくさん。プレイレビューで、その一端を明かしていこう。

『A Space for the Unbound 心に咲く花』ゲーム紹介トレーラー

『A Space for the Unbound 心に咲く花』プレイレビュー! 終末が迫る世界で高校生の心の旅を描いた青春SF

CHECK POINT①
ピクセルアートで描かれる1990年代インドネシアの風景

『A Space for the Unbound 心に咲く花』は、1990年代のインドネシアを舞台にした横スクロールアドベンチャーゲーム。モデルとなったのは、開発スタジオMojiken Studioがある東ジャワ州の州都スラバヤだという。懐かしさあふれるピクセルアートで、廃バスが取り残された空き地、日用品や食品が雑然と並ぶ雑貨屋、食べ物を売る露店などのどかな田舎町の風景を描き出している。BGMに耳を傾けつつノスタルジックな町並みを歩きまわるだけで、心地よい気分を味わえる。その反面、不安定な政情を反映するかのようなほの暗さも漂い、「世界の終末」というテーマをかすかに感じさせている。

「?」マークが表示されるポイントでは、「調べる」「話す」「アイテムを使う」などのアクションを起こすことができる。困っている町の人を助けたり、悩みを解決したりしながら、ストーリーを進めていこう。物語は章立てになっているので、連続ドラマを観るような感覚で楽しむことができる。

町の不良少年と戦ったり、隠れて学校を抜け出したりする場面では、ちょっとしたミニゲームも。とはいえ、簡単なものなので、アクションが苦手な人でも行き詰まることはない。逆に、腕に覚えがある人は、ゲーセンでハイスコアに挑戦したり、サッカー少年とリフティング対決をしたりするのも楽しいだろう。

のどかな田舎町だからだろうか、そこかしこに猫がいるのもこのゲームの特徴だ。しかも、ノラ猫に名前をつけられるうえ、顔を合わせるたびに撫でることができるのも大きなポイント。急いでトラブルを解決すべき時でも、ふと足を止めてモフモフしてしまう。それもまた、このゲームののんびりした空気感につながっている。ただし、ストーリー上、猫がつらい目に遭うこともあるので、極度の猫好きは注意が必要だ。

CHECK POINT②
人々の精神世界に潜り込み、悩みや不安を解消

主人公のアトマは、「魔法の赤本」を手に入れたことがきっかけで、他人の精神世界に潜り込む「スペースダイヴ」の能力を手に入れる。この力を使うと、悩みや苦しみを抱える人の心に入り込み、パズルなどの謎解きに挑むことができる。うまく謎を解ければ、現実世界でも人々の悩みが解消されるという仕組みだ。ちょっとした困りごとから、ストーリーに深く関わる重大な局面まで、さまざまなシーンで「スペースダイヴ」の力を発揮することになる。

簡単なものでいうと、屋根に上るためのハシゴを手に入れる場面。アトマはハシゴを借りたいのだが、近くに警備員がいて持ちだすことができない。しかし、警備員の様子をうかがっていると、何やら眠そうにしている。そこで「スペースダイヴ」の力を使い、警備員の心の中に入っていくことに。彼の精神世界で目覚まし時計を止めたり、お気に入りの音楽をかけてリラックスさせたりして安眠できる環境を整えてあげると、現実世界でも警備員が居眠りを始める。その隙にアトマはハシゴを拝借し、屋根に上れるというわけだ。

ストーリーが進むと現実世界と精神世界を行き来して複数のアイテムを集めたり、裁判のようにアイテムを証拠品として突き付けたり、精神世界が二層構造になっていたりと、謎解きも複雑になっていく。あるアイテムを手に入れるには、また別の問題をクリアしなければならず……と、込み入った謎をひとつひとつ解きほぐしていく過程が楽しく、つい没頭してしまう。

CHECK POINT③
終末が迫る世界で何が起きているのか。切なくも愛おしいストーリー

ここまでシステムや演出の見どころを紹介したが、このゲームの最大の特徴はストーリーにある。ジュヴナイル系のSFやファンタジー、中でも「終末もの」や「セカイ系」というワードにビビッと来た人は、ぜひプレイしてほしい。

ゲームの序章では、主人公アトマとニルマラという少女とのエピソードが描かれる。幼いニルマラは童話を書いており、アトマは彼女にさまざまなアイデアを授けているよう。そのため、彼女からは「共作者さん」と呼ばれている。だがある日、川で溺れるニルマラを助けようとしたアトマが、濁流にのみ込まれてしまう。

ここで序章が終了するのだが、第1章では状況が一変。高校の教室で昼寝をしていたアトマが目覚めると、目の前にはひとりの少女の姿が……。彼女は、アトマの恋人・ラヤ。ここからは序章での出来事が夢だったかのように、アトマとラヤの瑞々しい青春ストーリーが描かれていく。

高校生活も終わりに近づいているが、将来やりたいことが見つからないというアトマ。そんな彼に対し、ラヤはふたりで一緒に「やることリスト」を作ろうと誘う。将来設計を考えるにあたり、とりあえず今やりたいことを書き出していこうという提案だ。といっても、進路に関わるようなことではなく、「アトマと一緒に映画を観る」「ペットの猫を飼う」「音楽を聴いてギャン泣きする」など他愛のない願望にすぎない。そんな何気ないやりとりが、甘酸っぱくて微笑ましい。

ゲーム内には、実際にふたりで映画を観に行くシーンも。ポップコーンをつかもうとしてラヤの手に触れてしまいドキッとする……というベタな展開も待ち受けており、プレイしながらニヤついてしまう。

だが、そんな穏やかな日常は長くは続かない。不思議な力を発動するラヤの姿が描き出されるとともに、彼らの高校生活にも不穏な気配が立ち込めていく。この世界で何が起きているのか。ラヤはなぜそんな力を持っているのか。そして、ニルマラという少女は何者なのか。町全体が混乱をきたす中、物語は後半以降、一気に加速していく。ネタバレになるため多くは語れないが、胸をギュッと掴まれるような切なくも愛おしい物語が待っている。

心の奥底に分け入るゲームシステム、緻密なピクセルアートで描かれる少年少女たちの物語など、素朴ながらも見どころの多い『A Space for the Unbound 心に咲く花』。ストーリー重視派、中でも青春SF・ファンタジーが好きな人にはぜひともプレイしてほしい作品だ。

『A Space for the Unbound 心に咲く花』プレイ動画

『A Space for the Unbound 心に咲く花』プレイレビュー! 終末が迫る世界で高校生の心の旅を描いた青春SF

A Space for the Unbound 心に咲く花

・発売元:コーラス ワールドワイド
・フォーマット:PlayStation 5 / PlayStation 4
・ジャンル:アドベンチャー
・発売日:好評発売中
・価格:パッケージ版 希望小売価格 4,378円(税込)
    ダウンロード版 販売価格 2,860円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:C(15才以上対象)


PS Blogの『A Space for the Unbound 心に咲く花』記事はこちら


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