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PlayStation®4用ソフトウェア『魔法使いの夜』は、TYPE-MOONが開発したビジュアルノベル。2012年に発売されたPC版をフルボイス化・フルHD化して完成度をより高め、10年の時を経て新たに蘇ったタイトルだ。
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12月8日(木)の発売に先駆けて、本日11月3日(木)21時より体験版が配信開始! 本編から選び抜かれた4つのシーンをプレイし、作品の雰囲気を味わうことができる。今回はゲームの概要を紹介するとともに、体験版を先行試遊レビュー!
TYPE-MOON作品の時系列において、もっとも古い物語
『魔法使いの夜』は、TYPE-MOONのシナリオライター・奈須きのこ氏による未発表小説をベースにしたビジュアルノベル。1980年代後半が舞台となり、『月姫』『Fate/stay night』『空の境界』といったTYPE-MOON作品の中でも比較的古い時代を描いている。
主人公は、高校生の蒼崎青子。『月姫』では世界に5人しかいない魔法使いのひとりとして登場するが、『魔法使いの夜』ではまだ見習い。魔女である久遠寺有珠と洋館で暮らしていたが、そこへ山奥から転校してきた静希草十郎が転がり込むことになる。そんな3人の共同生活を描いた、ジュブナイルストーリーとなっている。
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シナリオ・監督は奈須きのこ氏、キャラクターデザイン・原画・グラフィック総監督はこやまひろかず氏が担当。戸松遥さん、花澤香菜さん、小林裕介さんら豪華声優陣が声をあて、フルボイスで物語を堪能できる。選択肢によるルート分岐はなく、ストーリーをじっくり味わうゲームになっている。
【STORY】坂の上のお屋敷には、ふたりの魔女が住んでいる──
1980年代後半。華やかさと活力に満ちた時代の黄昏時。
都会におりてきた少年は、現代に生きるふたりの魔女とすれ違う。
少年はごく自然に暮らしてきて、
彼女は凛々しく胸を張って、
少女は眠るように隠れ住んで。
三者三様の星の巡り。
交わることなんてもってのほか。
何もかも違う3人の共同生活が始まるのは、あと、もうちょっと先の話―――
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【登場人物】屋敷で共同生活を始めるふたりの魔法使いとひとりの少年
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蒼崎青子
(あおざき・あおこ)
CV:戸松 遥
現代に生きる魔法使い。ただし見習い。中学校までは魔術世界とは関わりのない日常を送っていたが、高校入学から魔術師として祖父の遺産を継ぐことになった、もと、フツーの女子高生。
気丈で負けん気の強い性格が幸いして、なんとか魔術師としての生活をこなしている。信じたことはとことんまでつっぱる姉御肌。特別なようでいて、どこにでもいる女の子。
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久遠寺有珠
(くおんじ・ありす)
CV:花澤香菜
現代に隠れ住む魔女。最後の鳥。生まれついた時から魔術世界に生きてきた、生粋の魔女。とある事情から故郷イギリスを離れ、日本の地方都市に住み着いた。現在、お嬢様学園と名高い礼園女学院に通っている。
無口で、他人と関わりたがらないため、独りきりでもなに不自由なく暮らしている。信じたことはひたすら胸に秘める浪漫主義。特別なようでいて、そうでもない少女像。
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静希草十郎
(しずき・そうじゅうろう)
CV:小林裕介
現代に下りてきた田舎少年。ある意味タイムスリップ状態。街の豊かさに感心しつつ、少しずつ順応していく平凡な男子高校生。その前向きさは、たくましいと言えなくもない。
言葉は少ないが人なつこい性格で、たいていの人間とは仲良くなれる長所を持つ。信じたことは、とりあえず黙っておく堅実派。特別でもないが、まあ、普通というワケでもない。
【体験版試遊レビュー】ビジュアルを巧みに使った演出で、日常や戦闘を表現
体験版では、ゲーム本編から切り取られた断片的な4つのエピソードを順を追ってプレイできる。選択肢のないビジュアルノベルなので、ゲームシステムや操作性を深く知るというよりは、作品の世界観やストーリーの雰囲気、映像や音楽といった演出を味わう体験版になっている。
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青子と有珠の密やかな暮らしを描く日常シーン
体験版を始めると、まずは洋館での青子と有珠の日常が描かれていく。途中、「山奥から男子が転校してきた」と青子が話すが、これはおそらく草十郎のことだろう。彼がふたりの生活にどう関わっていくのかは、今後のお楽しみだ。さらに、青子が普通の女子高生ではないことがうっすら垣間見えたり、出前をする謎の巨大猫(!?)の目撃談が飛び出したりと、これから始まる物語への期待を高めてくれるエピソードとなっている。
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プレイして驚くのは、ストーリーを最大限に引き立てる演出の数々。クラシック音楽を用いたBGM、古めかしい屋敷の調度品まで繊細に描き込んだ背景CGから、洋館の静けさ、青子と有珠の秘めやかな暮らしぶりが感じとれる。
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一般的なテキストアドベンチャーは主人公=プレイヤーであることが多く、画面に表示されたキャラクターがプレイヤーに向かって話しかけてくるという構図が大半だが、このゲームはそうではない。シナリオが三人称で書かれているため、青子や有珠の会話をかたわらで聞いているような感覚を味わえる。演出も他のゲームとは一線を画しており、キャラクターの拡大縮小を巧みに使った演出や独特のレイアウトで三人称の物語を成立させつつ、ボイスによる感情表現でキャラクターの魅力もしっかり伝えている。
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設定画面ではBGMやボイスの音量、文章の表示速度などを細かく調整できる。もちろん、バックログ機能も搭載され、気になるところをもう一度読み返すことが可能。必要十分な機能がそろっているため、快適にプレイできるはずだ。
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続くふたつのエピソードからも、青子と有珠、草十郎の日常がうかがえる。ふたつ目のエピソードになると、草十郎もすでに同じ屋敷で暮らし始めている様子。バイト先の知り合いであり、学校の同期生・久万梨金鹿(くまり・こじか)も登場し、「最近やたらと青いコマドリにつつかれる」という草十郎の奇妙な悩みに耳を傾けることになる。
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3つ目のエピソードは、屋敷周辺の草むしりをする草十郎の超人的な働きぶりが描かれる。手伝う気などまったくなく、サンルームから見守る青子と有珠のマイペースぶりも面白い。
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マザーグースの調べが妖しく響く圧巻のバトル!
最後のエピソードでは、これまでの穏やかな日常から一転、バトルシーンが描かれる。暗い森を歩く有珠の前に現れたのは、2体の口裂け男。魔女・有珠は、子豚のようなトゥイードル・ディーとトゥイードル・ダムやテムズトロルを使役し、彼らを葬り去っていく。ちなみに、トゥイードル・ディーとトゥイードル・ダムは、マザーグースや『鏡の国のアリス』に登場するキャラクターと同じ名前。バトルでもマザーグースの詩が引用されており、奇妙な味わいを添えている。
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ムービーは使わず、テキストとグラフィックだけで戦闘シーンを表現しているのだが、臨場感抜群。ソリッドな文章、寓話のようなセリフまわし、SEや動きの演出によって、スピード感あふれるバトルを見事に表現している。無表情であることは変わらないが、日常シーンとはまた違う怜悧な有珠の顔つきも見どころ。短めながらも、見ごたえのあるエピソードになっている。
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こうして4つのエピソードを終えると、本編冒頭が始まり、ほんのさわりだけプレイできる。青子の安眠を妨げる一本の電話は、何を告げるのか。製品版への期待を高める展開が待っている。
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2012年に発売されたPC版をベースにしつつ、グラフィックやサウンドを一新し、現代風にアップデートされたPS4版『魔法使いの夜』。静謐な世界観に浸ったり、バトルシーンに痺れたりと、この作品単体で楽しめるのはもちろん、TYPE-MOON作品の理解をさらに深める一助にもなるはずだ。まずは体験版をプレイし、深淵なる世界へと足を踏み入れよう。
魔法使いの夜
・発売元:TYPE-MOON
・販売元:アニプレックス
・フォーマット:PlayStation 4
・ジャンル:ビジュアルノベル
・発売日:2022年12月8日(木)予定
・価格:パッケージ版 希望小売価格 通常版 6,600円(税込)
パッケージ版 希望小売価格 初回限定版 7,700円(税込)
ダウンロード版 販売価格 通常版 6,600円(税込)
ダウンロード版 販売価格 デジタルデラックス版 7,150円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:C(15才以上対象)
© TYPE-MOON
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