PlayStation®4用ソフトウェア『My Memory of Us ~ちいさなオリーブの花たち~』は、ポーランドのインディーゲームスタジオ「Crunching Koalas / IMGN.PRO」が手掛けたアクションアドベンチャー。プレイヤーは主人公の少年と少女を切り替えながら操作し、敵のロボット兵から身を隠したり、さまざまな謎を解き明かしながら、過酷な運命に立ち向かっていく。
物語の進行で印象が変わるモノクロのビジュアル
本作を始めてまず印象に残るのが、モノクロで描かれたビジュアルだ。時代を感じさせる古い映画のようなグラフィックは、物寂しくあると同時にどこか優しく、想像力をかき立ててくれる。しかし、ゲームを進めるうちにさまざまな印象が入り交じるようになった。
ゲームは物語の語り手となる老人が、少年時代に巻き込まれたとある事件を回想するシーンからスタート。偶然出会った少年と少女は意気投合し、ともに笑いながら楽しく過ごす。ここでのモノクロのビジュアルは、長い年月を経て色あせながらも懐かしさをかみしめる、老人の記憶を想起させる。
しかし、邪悪な王が率いるロボット兵の襲来により、少年たちの穏やかな時間は終わりを告げることに……。ふたりの住む街はロボット兵に占領されるという、恐ろしい状況に陥ってしまうのだ。
街を支配し、闊歩している大量のロボット兵を見ていると、さっきまでと同じモノクロのビジュアルから、重苦しさを感じるようになってくる。それまでは”古い映画のような”と少し曖昧だった印象が、”まるで戦争映画のような”というように具体性を帯びてきたからだろうか。または、環境が一変した少年と少女に、感情移入しつつあるからなのかもしれない。
効果的に使われる”赤”に目を奪われる
これまでの画像や動画からわかるように、本作のビジュアルは完全なモノクロというわけではなく、赤い色もアクセントとして使用されている。赤い色のオブジェクトは、ゲーム中に拾うことができるアイテムや操作できるスイッチなどを示しているのだ。
この要素はゲーム開始当初から登場しており、初めて目にした際は「調べるモノがわかりやすい便利なシステム」という程度の印象だった。しかし、ロボット兵の支配とともにそれも変化する。赤い色は、ロボット兵が敵対する対象となる市民の衣装でもあることが判明するのだ。
モノクロが基調のビジュアルに要所で登場する赤い色は、とても鮮烈。目にすると、調べるべき場所やアイテムがあることが理解できると同時に、どこか緊張を覚えてしまうようになる。
少年少女の行く手を阻むロボット兵とさまざまな仕掛け
プレイヤーは少年と少女を切り替えながら操作してゲームを進めていくのだが、もちろんふたりにはそれぞれ特徴がある。
ふたりの力をあわせてパズルを解く達成感
少年は物音を立てずに歩くことが可能だ。背後からロボット兵へこっそり近づき、所持品を盗むこともできる。小柄な身体を活かし、狭いパイプの中などを通れるのも特徴だ。また、鏡で光を反射させ、ロボット兵や人間の眼をくらませることもできてしまう。
少女は少年よりも身体が少し大きく力があり、少年を高所へ持ち上げることができる。また、移動中にダッシュでき、多少の隙間なら飛び越えることも可能。さらに、パチンコを入手すれば離れた場所からスイッチを操作できるといった感じだ。
▲先へ進む道が上にあるが、そこへと至るリフトのスイッチも上にあるため、地上のふたりには動かせない。そこでまず少女を操作し、小柄な少年を頭上のハシゴへ持ち上げる。これで少年は上に到達。そして少女をリフトへ移動させ、少年を操作してスイッチを入れれば、少女を乗せたリフトが上昇、ふたりとも先へ進むことができる。序盤のパズルはこのようにシンプルで、チュートリアル的なものになっている。
手をつなげば一緒に移動できるため、先へ進む際にそれぞれを交互に動かす必要はない。その際に、少年を操作していれば少女とともに隠密行動が可能で、少女を操作していれば少年の手を引きながらダッシュすることもできる。異なる特徴を持つ少年と少女を状況にあわせて使い分けて攻略法を模索するのが基本で、パズル要素がとても強いゲームになっている。
▲囚われの身となった少年を救出すべく、軍の施設を訪れた少女。少年は1階の牢屋の中で、その出入り口の前には兵士がひとり詰めている。この1階の兵士をなんらかの手段で移動させ、その隙に少年を牢屋から出したいところだ。まずは少年を操作して、1階の兵士の注意を引くことに。兵士が少年のほうを向いたところで操作を少女に切り替え、テーブルに置いてあるタバコを入手する。そのタバコを2階の兵士に渡すと、2階の兵士はタバコを吸うためにベランダへ移動。これで2階にある電話が自由に使えるようになった。2階から1階を呼び出すと1階の兵士が牢屋から離れるので、その隙に少年を救出できるというわけだ。パズル要素は少しずつ複雑になっていくので大変だが、うまく解けたときの達成感は格別だ。
ゲーム中の会話が音声や文字で行なわれることがないのも、本作の大きなポイント。会話の内容は記号やジェスチャーで表現され、プレイヤーはそれらの意味を読み取らなければならない。もちろん謎を解くための手段も、直接的な言語を介さない会話や散りばめられたさまざまなヒントから、自らの手と目で探し出す必要がある。
「なんだか難しそう……」と思われるかもしれないが、会話やパズルの内容はとてもシンプル。むしろ、一発で解けないパズルに直面し、思案を重ねて自力で解答を見つけた際は「こういうことか!」と思わず膝を叩きたくなる達成感が味わえた。個人差はあるだろうが、次はどんなパズルが待っているのか楽しみになる、うまいバランスだと思う。
直接的な会話はないが、ムービー中の字幕やシステムメッセージは日本語に対応している。物語の流れやキャラクターの操作は把握しやすくなっているので安心。
じっくり挑むパズルだけでなく、アクションを重視したシーンも
腰を落ち着けて考えるパズル要素だけでなく、本作には巧みな操作を求められるちょっとしたアクション要素も登場する。タイミングよくボタンを押していくリズムゲームのようなシーンや、バイクで障害物を避けながらロボット兵の追撃を逃れるチェイスシーンなどが存在する。
頭を使い、知恵を絞っていたパズル要素とはテイストが異なるため戸惑うこともあったが、それもほどよいアクセント。目を見張るようなスーパーテクニックが求められるわけではないので、酷使した頭には心地よい刺激となるかも? もし失敗したとしても、直前からすぐにやり直すことができるのはうれしい。
過酷な運命に立ち向かった少年と少女。その結末とは……?
本作はロボット兵の支配にあらがう少年と少女の物語であり、長い年月を経て老人となった少年がそれを語るという形で描かれている。オープニングから回想に至るまでの展開はとても平和で、ロボット兵の支配が続いている様子は感じられない。そして語り手である老人が健在のため、かつての少年がロボット兵の脅威から無事に逃れたことは明白だ。
……では、少年とともに歩んだ少女はどうなったのだろう?
先の展開が気になるあまり、やめどきが見つからなくなるのも本作の大きな魅力。謎解きにかかる時間によって差が生じるためプレイ時間は人それぞれだろうが、スムーズにいけば比較的短時間でクリアできる作品となっているので、週末や休日にまとめてプレイするのもオススメだ。
少年と少女は、手を取り合った逃避行の果てに何を見たのか……。ふたりの物語の結末を、ぜひあなたの目で確かめてほしい。
『My Memory of Us ~ちいさなオリーブの花たち~』プレイ動画
※記事内のプレイ動画をまとめたものです。
My Memory of Us ~ちいさなオリーブの花たち~
・発売元:Phoenixx Inc.
・フォーマット:PlayStation 4
・ジャンル:アクションアドベンチャー
・配信日:好評配信中
・価格:ダウンロード版 販売価格 2,200円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:B(12才以上対象)
※ダウンロード専用タイトル
『My Memory of Us ~ちいさなオリーブの花たち~』をPS Storeで購入する
My Memory of Us TM & © Juggler Games. Licensed by Crunching Koalas.
© 2020 IMGN.PRO All rights reserved.
Published by Phoenixx Inc.
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