死者と旅し、思いを叶える。癒しの船上生活を描いた『Spiritfarer』クロスレビュー

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死者と旅し、思いを叶える。癒しの船上生活を描いた『Spiritfarer』クロスレビュー

発売中のPlayStation®4用ソフトウェア『Spiritfarer』は、死にゆくものをテーマにした、心温まるマネジメントゲーム。プレイヤーは故人を乗せて運ぶ船頭ステラとして、世界を探索する船を造り、霊魂となった友人たちのお世話をすることに。彼らを神秘の海へと導き、死後の世界へ解放してあげよう。

船頭の仕事は、船の行き先を決めるだけではない。料理、採掘、魚釣り、収穫、船の増改築など、日々の生活を支えるのもステラの役目だ。みんながより快適に船上生活を送れるよう、資材を集めたり、食材を育てたりしながら広い海を旅しよう。オフラインでの2人協力プレイでは、ステラの猫・ダフォディルになって冒険に参加することができる。

このゲームをふたりのPS.Blogスタッフがプレイ。ひとりは世界観とストーリー、もうひとりはシステムを中心としたクロスレビューをお届けしよう。

『Spiritfarer』プレイ動画

死者と旅し、思いを叶える。癒しの船上生活を描いた『Spiritfarer』クロスレビュー

【ストーリー編】
死者の思いや痛みを分かち合う、切なくも愛おしい物語

何の心残りもなく、最期の時を迎えられる人はどれくらいいるだろう。「もっと家族との時間を大切にすればよかった」「大好物をもう一度食べたかった」「最期にあの人に会いたかった」──。誰しもかすかな後悔やわだかまりを抱えながら、あの世に旅立っていくのではないだろうか。

『Spiritfarer』の主人公ステラは、そんな迷える魂を死後の世界へと導くスピリットフェアラーだ。世界各地で漂着する魂を船に連れ帰り、彼らの思いを叶え、心の準備が整ったらひとり、またひとりとあの世へと送り出していく。それが、魂の旅人である彼女の役割である。

死者の魂はシカやカエル、ヘビ、ハリネズミなど動物の姿をしているため、世界観は童話のようにファンタジック。アニメーションによるグラフィックも美しく、薄紅色に色づく夜明けの空、月明かりを反射する夜の海など、時間とともに移り行く景色を楽しむだけでも心癒される。

海上に点在する島々も、自然豊かな地あり、エキゾチックな家並みあり、その土地ごとに目を楽しませてくれる。見晴らしのいい場所では、椅子に腰かけてのんびりできるようになっているのも、景色を楽しんでほしいからだろう。穏やかなBGMもあいまって、ゆったりとした時の流れを感じさせてくれる。

死者と信頼関係を築き、彼らの人生の一端に触れる

船に乗り込んできた死者の魂は、みんな心残りを抱えている。とはいえ、乗船してすぐに彼らの思いを聞き出せるわけではない。ともに船旅を続け、何度も頼みごとを聞くことで、彼らは徐々に心を開いてくれるようになる。

「頼みごとを聞く」と言うと、いわゆる「おつかいゲーム」のようなものを思い浮かべるかもしれない。だが、一人ひとりに寄り添い、願いを聞き遂げる様子はセラピストやカウンセラーのようで、作業感は薄い。死者とはいえ、少しずつ信頼関係を築いていく過程は、生きている人間と変わらないのだ。

「生きている人間と同じ」と言えば、死者の魂は生前と同じように空腹を感じるようだ。しかも、人によって「家庭料理が好き」「ベジタリアンなので肉や魚は食べない」「刺激の強いものは苦手」など、好みがはっきりしている。そのうえ、同じ食べ物を続けて差し出しても、食べてくれない。「なんと贅沢な……」と思ってしまうが、死後だからこそ好きなものしか食べたくない気持ちもわかる。そこでステラは、行く先々で食材を調達し、船内の畑や菜園で植物を育て、キッチンで調理をして、彼らに食事を振る舞うことになる。

すでに亡くなっているため、空腹が続いたからといって命に別状はないが、おいしい料理を振る舞えば彼らの機嫌も良くなる。すると、資材を集めてくれたり、料理を作ってくれたり、ステラの仕事を手伝ってくれることに。上機嫌になれば、音楽を奏でてくれることもある。

ほかにも、一緒に瞑想したり、思い出の地を訪れたりしながら、死者とのコミュニケーションを重ねていく。平穏な時間が続くため、いつしか彼らが死者であることを忘れそうになるほどだ。だが、やがて信頼が深まると、彼らは問わず語りに生前の思いを話しだす。饒舌ではなく、「おそらくこういうことがあったのだろう」と推察できるような言葉を、ぽつりぽつりと語るだけ。ステラも全編通して言葉を発することはなく、ただ黙って彼らの声を傾聴するのみだ。彼らの人生の一端に触れ、その思いや痛みをほんの少しだけ分かち合う。そんな、ささやかながらも深い交流を体験できる。

こうして心残りを晴らした後には、死者との別れが待っている。死者の魂は最期に何を思い、ステラにどんな言葉を残すのか。一人ひとり異なる去り際を、その目で確かめてほしい。

死者の魂をそっと抱きしめる、「ハグ」で癒しのひと時を

交流を描いたゲームとあって、スキンシップが多いのもこのゲームの特徴だ。象徴的なのは「ハグ」だろう。このゲームには「話す」「食べ物をあげる」などと並んで「ハグ」というコマンドが備わっており、いつでも死者の魂を抱きしめることができる。さらに、物語上の重要なシーンや最後の別れでも、彼らを優しくハグできる。先ほども述べたとおりステラは言葉を話さないが、ハグが言葉よりも饒舌に情愛を伝える手段となっている。ハグした瞬間、一瞬驚いたような表情を浮かべる人、満ち足りた表情を浮かべる人など、それぞれ違った反応を見せるのも興味深い。

相棒の猫・ダフォディルとも、触れ合うことができる。ダフォディルは、いつもステラの後をついてくる愛猫。しゃがんだ状態で猫に触れるとダフォディルを撫でることができ、椅子などに座るとダフォディルを膝に乗せることもできる。ゲームの進行とは関係ないアクションだが、猫好きならずとも心がほっと安らぐはずだ。

各地で出会う人々との会話も楽しい。いつ会ってもゲームの話ばかりする人、どうでもいいダジャレを言う人など、一風変わった住民がたくさん登場する。中には、高いところから唾を落として遊ぶふたり連れや、石を舐める人物も。おかしな住民たちと言葉を交わすだけでも、なんだか楽しい気分になってくる。

船に乗り込んでくる死者の魂、愛猫のダフォディル、そして船旅で出会う島の住民たち。さまざまな交流を楽しみながら、癒しのひと時を過ごしてほしい。

【システム編】
迷える魂だけでなくプレイヤー自身にとっても快適な航海を

ある日突然、スピリットフェアラーの後継者として任命され、大海原を旅することになったステラ。そんな彼女の物語をさらに魅力的にしているのが、素材を集めて行なう船のカスタマイズはもちろん、釣りや料理などをこなして迷える魂たちをお世話しながら生活を営むマネジメント要素だ。

大海原へいざ出航! 集めた素材で施設をつくり、船を自分好みにカスタマイズしよう

大海原を旅する方法は、海図上で目的地を指定するだけと、とてもシンプル。船は自動的に進むので、目的地に到着するのを待てばいい。海図はほとんど白紙の状態だが、物語や探索を進めるにしたがって少しずつ埋まっていく仕組みだ。流氷や岩礁などが邪魔をして進めない場所もあるが、アルバートというサメが経営する造船所で船を改良すれば航行可能に。

目的地は、街や造船所といった賑やかな場所だけでなく、海面を漂う木箱や空中を漂うクラゲがいる奇妙なスポットなども指定できる。

到着した目的地では、探索して人々と会話をしたり、素材を収集したりすることが可能。集めた素材で施設を建築、設置することで、船をカスタマイズできるのだ。建築できる施設は、料理を行なうキッチンをはじめ、食物を育てる菜園や畑、乗客として招いた迷える魂の部屋など、実にさまざま。鋳造所や製材所を設置すれば、鉱石や木材を加工して新たな素材をゲットすることもできる。

建築した施設は形が多種多様なうえに、設置できるスペースが限られているので、配置に頭を悩ませるちょっとしたパズル要素も。アルバートの造船所へ行けば、通貨のグリムを支払うことでスペースを拡張できるのだが、建築できる施設の種類も増えていくため、悩みは尽きない(笑)。とはいえ、一度設置した施設も自由に移動させることができるので、気軽に建築&設置しても大丈夫。

よく使う施設はアクセスしやすい下の方に設置して、ステラ自身があまり訪れることのない乗客の部屋は上の方に配置するなど、効率を求めるのもよし。施設の形を考慮して美観を意識した並びにするのも、またよしだ。愛猫のダフォディルに次ぐさらなる相棒として、理想の船を設計していくのがとても楽しい。

船の上は大忙し!? 料理、栽培、釣りなど、やれることがたくさんある

船の上では釣りをしたり、設置した施設で料理や栽培をしたりなど、さまざまなことが可能。その中にはミニゲーム的な要素を含むものもあるため、飽きることなく船上での生活を楽しめるのも本作の魅力のひとつだ。目的地へ船が到着するまでの時間を、効率よく利用できるのもうれしい!

料理は、使用する食材を選んで完成するのを待つだけと簡単なものの、キッチンを改良すると複数の食材を組み合わせることが可能となる。組み合わせによって完成する料理が変化するので、さまざまな組み合わせを試してレシピを埋めたくなってしまう。

料理に必要な食材は、各地で採取することはもちろん、設置した菜園や畑などでも栽培できる。入手した種を蒔いて水をあげれば勝手に育つのだが、音楽を聴かせることで成長を早めることが可能だ。音楽を奏でる方法は、なんとリズムアクションゲーム! 本作の雰囲気にマッチしたゆったりとしたメロディで、出現するノーツも難しいものではないため、リズムアクションが苦手だという人も安心してほしい。

釣りは、糸を垂らして魚がかかるのを待ち、ウキが沈んだら○ボタンを押しっぱなしにして引き上げる。かかった魚によっては糸が切れそうになることがあるので、○ボタンを一度離して糸を緩める必要も。マグロといった大型の魚は難易度が高く、糸が切れて失敗したことが何度かあったものの、うまく釣り上げたときの達成感は格別だ。

鋳造所、製材所、織機などで素材を加工する際も、ちょっとしたミニゲーム的な要素が登場。船上での生活を彩るアクセントとしてさまざまな手段が用意されているが、そのどれもが気軽に楽しめるものなので、ゆったりとした船上ライフを満喫できる。

ステラのアクションは簡単明瞭。心置きなく物語に集中できる

基本的にステラの移動操作は、方向キーや左アナログスティックによる移動と、×ボタンのジャンプのみ。物語が進むと、二段ジャンプや滑空といったアクションを習得でき、それらを駆使しないと進めない場所があるものの、シビアな操作を要求されるわけではない。

巨大なドラゴンと遭遇した際の戦闘も、簡単操作で迫力のある展開を楽しめるようになっているのがポイント。全体的にまったりとした雰囲気が漂うゲームだけに、インパクトのあるシーンが登場すると心に残る。アクションゲームが苦手な人でも、本作の物語と幻想的な雰囲気に浸ることができるようになっている配慮がうれしいところだ。

船に招いた乗客だけでなく、プレイヤー自身もマイペースで快適な航海と冒険を楽しめる『Spiritfarer』。”死”をテーマとして描き、迷える魂たちを新たな世界へ導くという、切なくも心温まる物語の結末をぜひ見届けてほしい。


Spiritfarer

・発売元:Thunder Lotus
・フォーマット:PlayStation 4
・ジャンル:アドベンチャー、シミュレーション、アクション
・配信日:好評配信中
・価格:ダウンロード版 販売価格 2,970円(税込)
・プレイ人数:1~2人
・CERO:B(12才以上対象)

※ダウンロード専用タイトル


PS.Blogの『Spiritfarer』記事はこちら


『Spiritfarer』公式サイトはこちら(海外サイト)

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