PlayStation®.Blogスタッフが、最新作や話題のタイトルの中から厳選した「今、注目すべきタイトル」をご紹介する「EDITORS’ CHOICE」。今回は、主人公もゲームジャンルも一新し、生まれ変わった『龍が如く7 光と闇の行方』。
『龍が如く7 光と闇の行方』最新ゲームトレイラー
『龍が如く7 光と闇の行方』最新ストーリートレイラー
泥水をすすってきたからこそ、弱者に寄り添える 優しき勇者・春日一番の成り上がりストーリー
新宿をはじめとする日本の代表的な歓楽街の地理は、「龍が如く」シリーズで覚えた。旅先では脳内地図をたよりに街を歩き、その地で起きた事件や喧嘩を我がことのように回想。夜の街の魔力に惹きつけられたのか、今では神室町によく似た街のはずれに住んでいる。心の故郷は神室町。桐生一馬を敬い、真島吾朗を愛する者、それが私だ。
だからこそ、『龍が如く7 光と闇の行方』での方針転換を最初に聞いた時は、「正気?」と書いて「マジか」と思ってしまった。桐生一馬でもない。神室町でもない。ゲームシステムも、アクションではなくRPG。それって本当に「龍が如く」なのか?
だが、プレイしてすぐにわかった。これは、まごうことなき「龍が如く」シリーズの正統的続編。春日一番は、新たな看板を背負う男である、と。
前作までの主人公・桐生一馬は、シリーズ第1作からすでに完成された極道だった。クールに見えるが情に厚く、筋の通らぬことは許さない。敵対組織に単身乗り込み、超人的な身体能力で並み居る強敵を叩き潰す。カリスマ性にあふれた、まさに漢の中の漢だ。
一方、イチこと春日一番は、どうにもこうにも頼りない。義理人情に厚いところは桐生と共通しているが、直情的で熱い性格ゆえに暴走しがち。喧嘩もそれなりに強いとはいえ、伝説の極道にはほど遠い。
しかも、自身が身を置く荒川組のために罪をかぶって服役し、出所した時点で42歳。織田信長だったら、そろそろ安土城を建てる頃である。RPGの主人公としては歳がいきすぎており、「え? これから勇者を目指すんですか? もう介護保険料を払っている歳ですけど……」と心配になってしまう。おまけに、親父代わりの荒川組組長に撃たれ、気づけば横浜・伊勢佐木異人町で無一文のホームレスに。これ以上ないほど、どん底からのスタートだ。
逆に言えば、そんな主人公だからこそ仲間なしでは立ち行かない。パーティーを組み、ゼロから成長していくRPGというゲームシステムを採用したのは、必然だったとわかる。そのうえ、初期のパーティーメンバーもどん底にいる人間ばかりだ。41歳のナンバは、病院をクビになった元・看護師のホームレス(安田顕のワケありホームレス感が素晴らしい!)。足立にいたっては、神奈川県警から免許センターに左遷され、定年間近で懲戒免職された59歳のおっさんだ。だが、彼らの目は死んじゃいない。実際、イチの瞳は桐生に比べてキラキラしているように感じるのだが、気のせいだろうか。地面に這いつくばって生きる男たちが、置かれた境遇や年齢を言い訳にせず信じた道を突き進む。その果敢な姿に勇気づけられ、胸が熱くなる。
「龍が如く」=男臭い人間ドラマという印象を持つシリーズファンからすると、女性がパーティーに加わるのも新鮮だ。最初に加わる女性メンバーは、飲食店の雇われママ・向田紗栄子。店のオーナーが殺害されたにもかかわらず、中華マフィアの関与を知った警察は捜査を打ち切りに。自分の非力さを痛感し、悔し涙にくれる彼女をイチは仲間に迎え入れる。家族とは縁遠く、親しかったオーナーも失った紗栄子に「サッちゃん」と呼びかけ、寝泊まりしている小料理屋へ誘うイチの無骨な優しさときたら……! 他人の痛みに寄り添い、そっと手を差し伸べるイチの男気に痺れてしまう。
イチが伊勢佐木異人町で出会うのも、ナンバや足立同様、社会から爪はじきにされた人々だ。ショバ代をせびるチンピラに怯えて暮らすホームレス、風俗で働く女性たち、居場所をなくした不法滞在者。物語で重要な役割を果たす中華マフィアも、もとを正せば中華街から追い出されたあぶれ者の組織だ。社会の片隅で身を寄せ合う弱者たちの姿が、作中では克明に描かれていく。
そんな彼らを、街から排除しようという動きも見られる。街からグレーゾーンを撤廃しようとする団体「ブリーチジャパン」の活動がそれだ。「違法行為は許さない!」と声高に叫ぶ彼らの主張は、確かに理解できないものではない。だが、誰だって望んでグレーゾーンに生きているわけではない。そうならざるを得なかった人々に、イチは心からの共感を寄せる。
「法律が完璧じゃねえように、人間も完璧じゃねえ」
「法律の為に人が居るんじゃなくて、人の為に法律があるんじゃねぇのか?」
弱者と同じ目線に立てるのは、自身も泥水をすすって生きてきたからこそ。桐生が圧倒的な強さで巨悪を挫く漢だとしたら、イチは弱者に寄り添い、同じ目線で戦う勇者。同じリーダーでも、強烈なカリスマ性で周囲を惹きつける人もいれば、少々頼りないけれど人柄に魅力があり「コイツのためなら、ひと肌脱いでやるか」と思わせる”人たらし”タイプもいる。「龍が如く」らしさを受け継ぎながら、全く新しいヒーロー像を提示していると言えるだろう。
と、ストーリーのことばかり語ってしまったが、本作はただストーリーばかりが突出した作品ではない。最大の魅力は、ストーリーとシステムが濃密に絡み合い、ゲームならではの体験を生み出していること。無一文のイチが、小銭集めや空き缶拾いで日銭を稼ぐ。ハローワークで転職を繰り返しながら、戦いに身を投じる。コマンド式のターン制バトルも、仲間とともに戦うイチの姿勢を表わしているし、カラッと明るい性格なのでギャグ路線のサブストーリーもしっくりくる。もちろん、従来どおりのプレイスポットも点在し、「スジモン図鑑」のように新たなやり込み要素も。そこに声優陣の熱演、3Dキャラクターの芝居が乗っかり、ゲームでなければ表現できないエンタテインメントに仕上がっている。いや、見事としか言いようがない。
「従来のシステムで良かったのでは?」「コマンドバトルになって本当に大丈夫?」「春日一番に馴染めるか心配……」
そんな発売前の懸念をものともせず、シリーズに新風を吹き込んだ『龍が如く7 光と闇の行方』。すでに私は、春日一番の虜。早くもイチの次回作が楽しみでならない。
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龍が如く7 光と闇の行方
・発売元:セガ
・フォーマット:PlayStation 4
・ジャンル:ドラマティックRPG
・発売日:好評発売中
・価格:パッケージ版 希望小売価格 8,390円+税
ダウンロード版 販売価格 9,229円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:D(17才以上対象)
©SEGA
※画像は開発中のものです。
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