VRで自分だけの写真展をつくろう! ワークショップ「MEMOREUM TOKYO(メモリアム・トーキョー)」レポート

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VRで自分だけの写真展をつくろう! ワークショップ「MEMOREUM TOKYO(メモリアム・トーキョー)」レポート

11月3日(土)と4日(日)の2日間にわたり、千代田区立麹町中学校にて、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)とプログラミング教育を手がけるライフイズテック株式会社の共同で、中学生・高校生のクリエイティブ力や表現力を培うことを目的にPlayStation®VRを活用したワークショップ「MEMOREUM TOKYO(メモリアム・トーキョー)」を開催した。

本イベントは、11月4日(日)と5日(月)に紀尾井カンファレンスおよび千代田区立麹町中学校で行なった日本最大のEdTech 国際カンファレンス「Edvation × Summit 2018」のプログラムの一環として開催。「VRで創るわたしだけの写真展」をテーマに、今回のために用意されたVR教育ツール「MEMOREUM(メモリアム)」を使って、「写真」に込められた「感情」を「VR空間」に表現し、VR上で自分だけの写真展を創るワークショップだ。

写真展のテーマは「東京」。参加者には自分が撮影した東京の写真データを持ってきてもらい、VR内の3D空間に写真やオブジェクトを配置しながら、記憶や想い出を表現した自分だけの東京の写真展を創っていく。

中高生の驚きと喜びの笑い声で包まれた、VR写真展開発体験イベントの模様をお伝えしよう。本イベントをダイジェストでまとめた動画も公開しているので、こちらもぜひチェック!

「MEMOREUM TOKYO」公式サイトはこちら

「Edvation × Summit 2018」公式サイトはこちら

中高生の男女33人が参加! オリジナルVR写真展の開発にチャレンジ!!

2日間のキャンプとなった「MEMOREUM TOKYO」には、応募者の中から抽選で選ばれた中高生の男女33人が参加。メンバーはA班からF班の6チームに分かれ、現役大学生でVR教育ツール「MEMOREUM」に精通する”メンター(指導者)”が各班に一人ずつ付き、夢のオリジナルVR写真展開発に臨むこととなった。

オープニングでは、今回のワークショップに協力しているデジタルハリウッド大学大学院の佐藤昌宏教授が登壇。緊張している参加メンバーに向けて、開発のアドバイスと激励の言葉を送った。

デジタルハリウッド大学大学院 教授 佐藤昌宏氏のコメント

みなさんは東京に対して、「楽しい」「キラキラ」「ワクワク」「温かい」「冷たい」など、さまざまな感情を抱いていることでしょう。しかし、今までにそれを絵で表現したことはあっても、テクノロジーを使って表現するという体験はなかったと思います。

人に対して自分の感情を伝えるということは、実はものすごく難しいんです。答えはないと言っていいかもしれませんね。むしろ、答えらしいものは探さないでもらいたいのです。答えらしいものがあるとするならば、それは相手に伝わったかどうかです。それを確認して試行錯誤しながら、相手に何かを伝えるということを、この技術を通して考えてもらえるとうれしいです。それでは2日間、がんばってください!

脳内シートを使った自己紹介や頭脳系アクティビティには、開発のアイデアを出すヒントが!

メンバーが最初に行なったのは、脳内シートの記入。自分の好きなこと、興味があることを自由に書き込み、これをもとに自己紹介を行なう。アニメやゲームといった共通の話題で会話が弾むメンバーや、遠方からの参加ということもあり地元ネタで笑いを取りに行くメンバーがいるなど、各班は大盛り上がり! 初対面ではあるものの、2日間を共に過ごす仲間として次第に打ち解けていく姿が見られた。

また、開発の中では参加メンバー全員が協力して行なう頭脳系アクティビティも実施。与えられたわずかな道具と茹でる前のパスタを使った「パスタタワー対決」では、各班のメンバー同士で協力してパスタのタワーを立て、その頂点にマシュマロを設置。その高さを他の班と競う。

これは開発に関係ないと思われるかもしれないが、自分の感情を表現するVR空間をつくるうえで重要な行程だ。この「パスタタワー対決」の目的は、「まずやってみる」という姿勢が大切だとメンバーたちに実感してもらうこと。高いパスタタワーを立てようと知恵を絞るのは大切だが、実際にやってみないとわからないことも多い。パスタタワーの建設では、うまく立たなかったり、頂点にマシュマロを置く際にその重さで倒れてしまったりした班も多く見られた。

今回の開発でも、まずは挑戦してみることが大切で、その中でわからないことがあればメンターに相談し、アドバイスをもらいながら進めていった。

「楽しい」「驚き」「期待」といった感情をブロックで表現するアクティビティ「ブロックルーム」の目的は、そのものズバリ! 今回のテーマである「東京」に自分が抱いている感情を、VR空間でどのように表現するかの練習となった。

このように決まったお題でトークをしたり、全員が関与するゲームをしたりと、初対面同士の人たちがコミュニケーションを取りやすい環境をつくる手法を「アイスブレイク」と呼ぶ。緊張のほぐれたメンバーたちが、メンターはもちろんメンバー同士で相談しながら楽しそうに開発へ臨む姿が、各班で見られた。

VR教育ツール「MEMOREUM」で、手軽に自分だけのVR空間を演出!

開発1日目では、今回のためにつくられたVR教育ツール「MEMOREUM」の使い方を覚えることが主題となった。「MEMOREUM」はMEMORY(メモリー)とMUSEUM(ミュージアム)の造語で、PS VRと本ツールを使って、VR内の3D空間に写真やオブジェクトを配置しながら、記憶や想い出(メモリー)を表現した自分だけの美術館(ミュージアム)をつくることができる。

メンターのサポートがあることはもちろん、この「MEMOREUM」はVR写真展の制作に最適な”教科書”! メンバーたちはチュートリアルに従ってパソコンを操作していくだけで、手軽にVR空間の作成について学ぶことができる。チュートリアルが終了するとファンファーレが鳴る仕組みになっており、ファンファーレが聞こえると会場からは大きな拍手も。照れくさそうな笑顔を浮かべているメンバーたちの姿が、強く印象に残った。

チュートリアルを終えたメンバーは、壁の色や模様を替えたり、オブジェクトを配置したり、自分だけのVR空間をどう演出するかを模索。マウスを片手に真剣な表情で試行錯誤している様子や、班のメンバーに自分のVR空間を見せて意見を求める姿なども見られた。

そして、自分がつくったVR空間をすぐにPS VRで実際に確認できるのも、本ワークショップの大きな魅力だ。初めてVRを体験するメンバーも多く、目の前に広がるVR空間の臨場感に大興奮! 各班からは「うわ、すごい!」という驚きの声が上がる。

VRヘッドセットを外したメンバーたちの笑顔とキラキラと輝く瞳が他のメンバーたちにも伝播し、会場はとてもにぎやかな雰囲気に。これから本格的に作成する自分だけのVR写真展で、どのような感情を伝えたいのか考えることを宿題として、1日目の開発は終了した。

みんなの作品を体験! 自分の感情はどう伝わったのか?

開発2日目。宿題となっていた伝えたい感情のテーマと空間イメージを元に、本格的な制作が開始された。パソコン操作の慣れには個人差があるため、開発スピードはそれぞれ。それでも多彩なオブジェクトをアセットから手軽に配置できる「MEMOREUM」の使いやすさと、前日のトレーニングのおかげで、自分のペースでバリバリと作り上げていく。

メンバーたちがとりわけ熱心に取り組んでいたのが、オブジェクトのアニメーション表現だ。配置したオブジェクトには、回転や上下運動、拡大縮小などさまざまな動きを設定可能。実際のVR体験中、PlayStation®Move モーションコントローラーでオブジェクトを選ぶと、設定したアニメーション動作が実行される仕組みだ。このインタラクティブな要素を取り入れ、ありとあらゆるオブジェクトを動かそうとするメンバーもいた。

作品の完成度に保護者も驚き! みんなで体験会&発表会!

6時間ほどの開発はあっという間に過ぎ、それぞれの完成した作品に触れる体験会を行なった。この場では、見学に訪れた保護者を交えて、制作したメンバーが表現したかった感情を伏せた状態で体験。「MEMOREUM」のVR空間に入り、見て、動かして、どんなことを感じたかを寄せ書き風に記録していく。

寄せられた感想を見ると、「楽しい」「かわいい」「ハッピー」といったポジティブな感情が集まる作品もあれば、「落ち着く」「悲しい」などさまざまな受け取られ方をした作品もあった。作品を通して感情を表現することは簡単ではなかったようだが、自分の子どもの作品に驚く保護者の様子も印象的だった。

みんなの作品をひとしきり体験した後は、班ごとの発表会に。自分の作品に込めた感情のテーマと表現方法の工夫、そして寄せられたさまざまな反応を踏まえ、自分の感じた意見を述べていく。

あるメンバーの作品は、薄暗い部屋にわずかな照明、その壁際に人型のオブジェクトが何体も寄りそうように集まり、反対側のベンチには1体だけがポツンと佇むというもの。「東京って、人はたくさんいるけど、心は独り。それを表現したくて、オブジェクトはあまり使わずに余白を多くして、シンプルさやミニマルさを意識しました。みんなの反応には孤独とか寂しいとかがあって、ある程度伝わっていたけど、思った以上にマイナスな感情でとらえられたかもしれない」と評価し、伝わった部分もあれば、そうでなかった部分もあるようだ。

【総評】表現する体験は、やがて技術の進歩を作り出す

本ワークショップの締め括りとして、佐藤教授から総評が述べられた。佐藤教授が「みんなに体験してもらってみて、自分の表現したかった感情がうまく伝わったという人はいますか?」とたずねると、手を挙げたメンバーは全体の2割程度。この結果に「伝えるのは難しいです。伝わらなかった原因は何かを考えることも、ものづくりのきっかけのひとつです」としつつ、進歩する技術の担い手となることへの期待が語られた。

デジタルハリウッド大学大学院教授 佐藤昌宏氏 総評

表現したかったことが伝わったか、伝わらなかったかよりも、もっと大事なことがあります。今回、VRを使ってみて、「こんな機能があればもっと表現できたのに」と感じた人がいるかもしれません。例えば、「自分が作った部屋にオンラインでいろいろな人を呼んでみたい」とか、「スマートフォン上で見ることができて、メッセージに添えて手軽に送ってみたい」とか。そんな思いが、技術をどんどん進化させます。何かが足りないと感じたら、今度はみんながそれを開発する側になっていくのです。

5年、10年も経てば、僕らが想像もしないほど技術は進歩していき、みなさんはその中で生きていきます。コミュニケーションのスタイルや勉強のやり方も、新しい技術によって変わっていくかもしれない。そんな世界を、自分で工夫して作れる人になってほしい。そういう可能性が自分にあることを、頭の中に残してくれたらうれしいです。

今回の「MEMOREUM」以前にも、SIEとライフイズテックは「VR CAMP with PlayStation®VR」と題したワークショップを実施してきた。この取り組みに携わるSIE制作技術責任者の秋山賢成は、新しい試みとなった「MEMOREUM」に手応えを感じている。

SIE制作技術責任者 秋山賢成 総評

過去2回のワークショップはVRのゲームを作る学び場として開催していましたが、今回はアーティスティックな部分で、未来のクリエイターを育成する視点で行ないました。今の子どもたちはITに慣れているので、ちょっとしたきっかけがあれば、自分のやりたいことをすぐに形にできる。その能力の高さをあらためて感じました。

自分のやりたいことを脳内シートで具体化させて、それを3Dの芸術にしていくのは、本来とても難しい作業です。でも、プロと違って下書きなしでもどんどん進めて、それがまた自分たちのクリエイティビティを刺激して、短い時間ですごい作品がたくさん生まれました。僕らが思っている以上に深く物事を考えているし、それぞれの個性が拡大化されて、たくさんのことを並行して考えながら制作に没頭できていたのは、今回の新しい発見だったと思います。

SIEとライフイズテックのワークショップへの取り組みには、さらなる開催の要望や、やってみたいことへの意見が数多く寄せられている。秋山も「みなさんのポジティブな意見を踏まえ、今後の計画を検討していきたいと思います」と語っており、ぜひ今後に期待したい。

これまでに開催したワークショップのレポートはこちら

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