「西遊記」をモチーフにした大ヒット映画が、PS4®用のアクション・アドベンチャーとなって日本に上陸決定
「PlayStation® LineUp Tour」でトレーラーが公開され、日本での発売が発表されたPlayStation®4用ソフトウェア『Monkey King: The Hero is Back (仮称)』。本作は、「西遊記」の物語を描いた3Dアニメ映画を原作としたアクション・アドベンチャーゲームだ。
「東京ゲームショウ2018」の二日目となる9月21日(金)には、本作のメディアセッションが行なわれた。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の北川竜大と、開発を手がけるヘキサドライブの服部達也氏による、熱の入ったプレゼンの模様をお伝えしよう。
本作のディレクターを務めるヘキサドライブの服部達也氏(左)。プロデューサーを務めるSIEの北川竜大(右)。
日中共同プロジェクトで、中国発のビッグIPをゲーム化
まずは北川より、本ゲームの原作となった映画について説明がなされた。2015年に中国で公開された映画「Monkey King: The Hero is Back」は、中国アニメ映画の歴代興収で新記録を更新。興行収益は180億円を超え、総動員数は3,000万人、総上演数は80万回という、日本の常識では考えられないほどの大ヒットとなる。日本でも「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」というタイトルで、2018年1月に公開された。
これほどのビッグIPがいよいよゲーム化されるということで、中国でも大きな期待が寄せられている。2018年8月に行なわれた中国最大のゲームショウ「ChinaJoy 2018」では初の試遊台が出展され、多くのファンが詰めかけたそうだ。
本作は、日本のSIEとヘキサドライブ、そして版元でもある中国のアニメスタジオ「OCTOBER」と、ゲームビジネスのパートナーである「OASIS GAMES」による、日中のコラボで開発。中国におけるPlayStation®の中長期的な成長のためには、中国のゲームクリエイターたちがつくるコンテンツと、中国で知られているIPが重要となる。本作は、そのポジションにマッチしたタイトルというわけだ。
サウンドも日中でコラボ! エンディングテーマは「GARNiDELiA」のtokuがプロデュース
本作で使用される音楽については、日本のゲーム音楽制作会社「ノイジークローク」が主に担当。中国的な雰囲気を重視する場面の楽曲は、中国の「VANGURD SOUND」が手がける。また、エンディングテーマは日本の音楽ユニット「GARNiDELiA(ガルニデリア)」のtokuがプロデュース。「GARNiDELiA」は中国でも人気が高く、「本作が日中の架け橋となるようなタイトルになれば」と北川はコメントした。
「西遊記」や映画の世界観を、ゲームならではの表現で再現!
映画の原典である小説の「西遊記」は、全100回に渡る長大な物語。その中でも、映画では大聖(孫悟空)が三蔵法師たちと共に天竺を目指すパートをモチーフにしており、本作でも映画と同じパートがゲーム化される。日本でもドラマやコミックなどの影響により、「西遊記」といえばこのパートを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。
このように、世界観は映画と共通ながらも、ゲームはそのパラレルワールド的な立ち位置になると、服部氏はコメント。メディアとしての違いがあることはもちろんだが、ゲームでは新規キャラクターを追加し、映画で省略されていた部分を補完するような形で構成しているそうだ。映画と同じく、大聖、江流児、八戒という3人の旅路を描くものの、ゲームでは大聖にフォーカスを当て、映画では語られていないエピソードや遊びを盛り込んでいるという。
苦労したのは世界観の再現で、「西遊記」をよく知る中国の人たちにも納得してもらえるよう、大がかりなロケハンを敢行。中国から資料を取り寄せたり、「西遊記」の専門家から話を聞いたりもしたそうだ。もちろん原作小説も読み込み、映画やゲームで描かれる前後のパートも把握したうえで、ゲームとして新しい表現ができないかを模索したと、服部氏は熱く語った。
キーワードは「張力」! コミカルなアクションでヒーロー気分を味わえる
また、映画を見た服部氏は、コミックやアニメ、そしてジャッキー・チェンの映画などに見られるような、コミカルな印象を受けたという。そこがとても面白かったと中国の人に話すと、そういった表現は中国では「張力(ちょうりょく)」と呼ばれていると教えられたそうだ。そこで服部氏は「張力」をキーワードに、ファミリー層でも安心して遊べるアクションゲームを模索。「法術」を駆使したり、マップ内にある椅子などのオブジェを利用したりすることで、まるで大聖になったような気分を味わえるつくりとなっているそうだ。
ぶつかり合うことで信頼関係を構築! 完成度の高さに中国からの期待も高まる
プレゼン後は質疑応答のコーナーへ。いくつか寄せられた質問の中から、印象に残ったものを紹介しよう。
──本作は中国発のIPですが、中国では具体的にどんな反応がありましたか。
北川:やはり認知度がとても高く、タイトル名を伏せて集まってもらった10代から20代の方の95%以上が、映画を知っていました。さらに、実際に映画を見たという人も80%以上。そういった方たちにゲームをプレイしてもらったところ、「映画の中に入り込んだようだ」という感想をいただきました。つくり込んだかいがありましたね。
中国の人たちにとって「西遊記」は精神的にも重要なものらしく、現在でも映画、アニメ、ドラマ、コミックなど、さまざまなエンタテインメントの題材になっています。日本だと、幕末や戦国時代に通じるのかもしれません。それほど愛されているものを題材にしたゲームで、「中国人の心を形にできている」と言われたことがうれしかったです。
服部:試遊台を出展した「ChinaJoy 2018」でも、「中国のIPをしっかりゲーム化してくれてありがとうございます」と言われたんです。彼らが本当に映画「Monkey King: The Hero is Back」を愛しているということが、とても印象に残りました。こだわったコミカルな部分も伝わったようでうれしいです。ただ、そのときプレイしていただいたのはほんの一部。まだまだスゴイことがいっぱいあるということを、言いたくて仕方ありませんでした(笑)。
北川:「中国的な思想や中国発のIPが、PlayStation®を通して世界に広がってくれるとうれしい」というお話もあり、そういった感想をもらえたことがありがたいです。
──中国との情報やデータのやり取りや、コミュニケーションはスムーズに行なえたのでしょうか。
北川:ワークフローをつくるまでがとても大変でした。データのやり取りのようなインフラの部分はつくってしまえば問題ないのですが、やはりコミュニケーションに関する部分が大変でしたね。開発当初はSIEで中国語ができるスタッフを通しながらやりとりをしていたのですが、それだけではどうしようもないんです。お互いに質問したいことは山ほどありましたし、こちらが作成したシナリオに対するフィードバックなどもいただく必要がありますから。
そこで、完全に本作のために専門の通訳や翻訳のスタッフを用意し、そこを通して我々は日本語で、中国側は中国語で質問などを互いに送るようにしたんです。それが24時間以内に翻訳され、互いに受け取ることができる仕組みをつくりました。もちろん実際に中国へ開発スタッフが行くこともあります。時には主張がぶつかり合い、喧嘩することもありましたよ(笑)。そうやって激しく言い合うことでわかりあうことができ、信頼関係を築くこともできました。
──どのようなことで喧嘩になったのか、差し支えのない範囲で教えていただけますか(笑)?
北川:そうですね……例えば、「西遊記」には「沙悟浄」というキャラクターがいるじゃないですか。沙悟浄は複数のドクロが付いた首飾りをしているのですが、実はそのドクロは、過去に亡くなった三蔵法師のものなんですよ。三蔵法師は、何度も転生しているという設定なんです。それを聞いて驚いていたら、「そんなことも知らないの!?」と怒られるんです(笑)。中国の人たちが持つ「西遊記」の常識とこだわりを実感しました。
──服部さんはジャッキー・チェンのファンだそうですが、アクションのモーションキャプチャーなどでこだわった部分はありますか?
服部:アクションに関しては、実写映画の「るろうに剣心」などで知られる日本のアクション監督の谷垣健治さんに演出をお願いしました。谷垣さんは、ジャッキー・チェンの下でスタントアクションをしていた経験がある方なんですよ。特定のシーンを谷垣さんに演出してもらい、その動きを撮影してモーションに落としています。
その際に谷垣さんへお願いしたのが「最近のリアルファイト寄りでスピーディなアクションとは異なる、クラシックでコミカルな動きを」ということです。谷垣さんも最近ではそういったアクションを求められる機会がなかったそうで、面白がってノリノリでやってくれました(笑)。
「西遊記」や映画「Monkey King: The Hero is Back」に対するリスペクトとこだわりが、熱く語られた今回のメディアセッション。本作はまず中国で発売され、その後日本を含めたアジアで展開していくとのこと。ゲームシステムなどの詳細は、今後の発表をお楽しみに!
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Monkey King: The Hero is Back (仮称)
・発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
・フォーマット:PlayStation 4
・ジャンル:アクション・アドベンチャー
・発売日:2019年予定
・価格:未定
・プレイ人数:1人
・CERO:審査予定
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©OASIS GAMES LIMITED / Oct Animation Studio Based on original movie by Oct Animation Studio.
Developed by Sony Interactive Entertainment Inc.
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