神の力を持つ男・クレイトスが、息子のアトレウスとともに北欧神話の世界を旅するPlayStation®4用アクションアドベンチャー『ゴッド・オブ・ウォー(以下、GoW)』が、ついに発売されました! これまで3回に渡りその魅力を紹介してきましたが、今回は視点を変えて、本作のローカライズを手がけたスタッフや、キャラクターに息を吹き込んだキャスト陣への大ボリュームのロングインタビューを掲載! 誰よりもゲームの内部や設定に通じているローカライズプロデューサーの安次嶺クリスさんや、ローカライズスペシャリストの大島陸さんには、ゲーム全体の話を、クレイトスを演じた三宅健太さんや、アトレウスを演じた小林由美子さんには、それぞれの人物について、深く語っていただきました!
ローカライズプロデューサー・安次嶺クリス&ローカライズスペシャリスト・大島陸インタビュー
大島陸(左)
ローカライズスペシャリストとして、本作の翻訳や音声収録などを担当。これまでに携わった作品は、『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』など。
安次嶺クリス(右)
本作のローカライズプロデューサーとして、プロジェクトを取りまとめる。これまでに携わったのは、「アンチャーテッド」シリーズ全般など。
世界観に浸れるように、あらゆる労力を惜しまず全力投球したローカライズ!
――正式な続編でもありつつも、ナンバリングを外したのはなぜですか?
安次嶺クリス:今までの「GoW」シリーズはギリシャを舞台にした作品でしたが、開発スタジオとしてはギリシャ編は一区切りついて終わっているというイメージなんです。スタジオのメンバーも時間を経て成長しているということで、「新たに成長した我々が作れるゲームを心機一転して作ろう」ということですね。海外では”ソフトリブート”という言い方をしているんですが、一から描き直したいということでした。そんなときに、ナンバリングがついていると続編っぽくなってしまいますよね。シリーズとしては続編ではあるんですが、前作から連続した物語ではなく、北欧でクレイトスの新たな物語が始まるということを示すため、あえてこのようにしています。
大島陸:『ゴッド・オブ・ウォー』というタイトルにしたことで、1作目のリメイクだと勘違いしている人もいるとは聞いているので、勘違いがないように、新生『ゴッド・オブ・ウォー』という押し出し方をしています。海外では「A new beginning」というキャッチで触れ込んでいるので、こちらも”新たな冒険の始まり”というところを強調しています。
クリス:日本としては、せめて何か副題を付けられないかという相談はしていたんですけど、今回は『ゴッド・オブ・ウォー』でいきたいという開発からの強い意向があり、このようにさせていただいています。
――クレイトスがかなり歳を経ているように見えるのですが、前作からどのくらい経過した物語なんでしょうか
クリス:正確に何年後、という設定はありません。ギリシャ編の物語は、まさに復讐劇でした。すべての神を殺すことで、クレイトスは自分の苦しみから解放されると思っていたものの、実際はそうはならなかった。ギリシャの地を離れることで心が休まることもあるかもしれないと思い、クレイトスは冒険に出たという設定のようです。具体的な年数はありませんが、かなりの年月を経て北欧の地にたどり着いたとの想定らしいですね。
――アトレウスも神の力を受け継いでいるということが、物語上重要な点として描かれるのでしょうか?
クリス:ええ。クレイトスの実子なので、神の力をしっかり受け継いでいます。ですが、アトレウスにはそのことを伝えていません。クレイトスは、神の力を持つことは、呪いに等しいと思っているんです。神の力を持った自分が、あまりいい神になれなかったということもあり、息子には正しい行ないができるようになってほしいんですよ。なので、クレイトスがそれをどう伝えればいいのかを葛藤しているのも、見どころのひとつとなります。また、アトレウスがそれをどう受け止めて、成長していくのかもですね。
大島:この旅はクレイトスの親としての成長の物語でもあり、アトレウスの神の力を持った者としての成長の物語でもあります。その両方に注目してみてください。
――なぜ本作では舞台が北欧神話になったんでしょうか?
クリス:『GoW』の世界は、いろんな神話が同時に存在する世界となっています。ギリシャや北欧のほかにも、アジアやエジプト、マヤ神話の世界も同時に存在しているんですよ。ほかの神話も検討されていたものの、その中で魅力的なものとして北欧の神々が選ばれたと聞いています。北欧神話って、ゲームにもよく取り上げられるし、比較的なじみのある世界だと思っているんですが、北欧神話って地方によっていろんな解釈があるんですよ。本作に関しては、サンタモニカスタジオのディレクターのコーリーの解釈で描いている世界となっています。
大島:ギリシャ編でもそうでしたが、一般的に本などで見るストーリーをなぞっているわけではありません。クレイトスがいることによって変化がもたらされるというか……。でも、なじみのある神様やモンスターなどは出てきますよ。
――今回は探索が大きな要素となっているようですが、探索することでプレイヤーはどんなメリットがあるのでしょうか?
クリス:物語が進むと、世界が広がっていろいろなところに自由に行けるようになります。今回は探索パートを非常に重要視していて、探索することでアイテムも手に入りますし、隠された重要な情報や隠し部屋、サイドクエストなどが豊富にあり、探索しがいがありますよ。
――そういったサイドクエストをこなすことで、お金や経験値をより手に入れられるということでしょうか?
クリス:そうですね。ブロック(ドワーフの鍛冶屋)のお店で、装備を作ったりアイテムを購入したりできます。作るためには銀(お金)や素材が必要なんですが、この素材が探索をすることで手に入る機会が増えるんですよ。なので、ある意味RPG的な要素も今回は多いですね。
大島:敵を倒すと経験値を得られるんですが、その経験値はスキルを覚えるために必要になります。経験値を溜めてレベルがあがるわけではなく、経験値を消費してスキルをアンロックしていくというものになっています。
――あまりアクションが得意でない人でもクリアできるでしょうか?
クリス:難易度設定もありますから、難しいと思う方は難易度を下げてもらえれば、敵もそんなに固くなりません。しっかりとバランス調整がされているので、メインストーリーだけを追っても、どこかでひっかかることはそうそうないと思います。どちらかといえば、メインクエスト以外で強い敵がいたりするので、それらを倒すためには、やり込んで強くならないと厳しいでしょうね。
大島:これまでの「GoW」とはプレイ感覚が大きく変わっているので、プレイヤーによって感じ方は変わるとは思いますが、成長要素があるので、スキルや武器を強化していけば間違いなくラクにはなっていきます。とはいえ、敵も強くなっていきますから、戦術も覚えていく必要はありますけど。
――武器はどれくらい登場しますか?
クリス:それについては明言できないのですが、武器を強化していくことで解放できるスキルも増えるので、新しいスキルを解放することで戦法が徐々に変化すると思います。同じ武器でも、使っている感覚が変わっていくんですよ。例えば、リヴァイアサンを投げるにしても、ただ投げて戻ってくるだけだったものが、自動追尾して当たるようになったりとか、強力な一発が繰り出せるようになったりとか、アクションが増えていくんです。
大島:どの系統のスキルを伸ばしていくかはプレイヤーしだいですね。一応、敵をどんどん倒して経験値を稼ぎさえすれば、全部のスキルを覚えられます。あくまでも、どれを先に覚えていくかを考えてもらえればいいかと。
――クレイトスとアトレウスの連携というのがアクション面で大きな変更だと思うのですが、リブートするうえでやはり新しい要素を入れようということになったのでしょうか?
クリス:今までのシリーズはどれも同じようなものだったので、あまり代わり映えしないよね、という声がユーザーさんから上がっていたこともあって、今回は視点やバトルシステムが大きく変わりました。今まで主人公はクレイトスひとりでしたが、今回はアトレウスも入れて2人いるので、その連携が戦いのなかでも重要になってきます。連携させることで、2人の絆がどんどん深まっているのが感じられるようになりますし、アトレウスの成長を戦闘のなかでも感じられるようになるので、いい手法になったかなと思いますね。ちなみに、アトレウスは、この世界の説明役という側面もあります。クレイトスは北欧の出身ではないので、文字も読めないですし、言葉もわからない。そんななかでアトレウスに頼る場面が結構出てくるんです。ある意味、クレイトス自身は本当にプレイヤー自身に近い立場といえますね。
大島:ミーミルという、北欧神話で一番頭がいいと描かれているキャラクターが出てくるんですが、彼と一緒に旅をする段階になると、特定の場所を訪れるたびに説明をしてくれるんです。アトレウスの説明と合わせると、北欧神話に詳しくない人でもすんなりと世界観を理解できると思います。
――本作のローカライズについてお聞きします。翻訳作業はスムーズに進みましたか?
大島:作業は必ずしも時系列順に翻訳ができたわけではなく、直前のシーンでいがみ合いがあったあとに、そのあとに仲良さそうに接するシーンがあったりするのが大変でしたね。収録前にプレイをしておき、そこから訳を修正する、という微調整は最後までやってました。
クリス:そこは『GoW』に限らず、ローカライズタイトルの”あるある”ですね(苦笑)。
――クレイトスとアトレウスの距離感が見どころという話でしたが、ローカライズする際、2人の距離感によってしゃべり方を変えるなど、気を使いましたか?
大島:英語版でも、けっこう、激しい口調になるシーンあるんです。過去のクレイトスを知っている身からすると、心配になるような「クレイトスにこんな口をきいて大丈夫なのか?」みたいな。でも親子だからなのか、意外とクレイトスも殴りかかるような怒気で怒ったりもしないんですよ。案外大きい度量がクレイトスにもあるんです。でもアトレウスは思春期前、反抗期にちょうど入るかくらいの時期。加えて、大事にしていたお母さんが他界したばかりなので、精神的にすごく不安定です。そんな状態で、突然旅に連れていかれて、アトレウスの中にはいろんな感情が押し込められているんです。なのでときに反発したり、これまで気づかなかったクレイトスの優しさに気づいたりするんです。そういった感情の変化には気を使ってローカライズしましたね。
――役者の方はオーディションで決定したんでしょうか?
クリス:主要キャラはオーディションです。大人数でオーディションは行なわれたんですが、クレイトスもアトレウスも、声優さんの演技を聞いて、みんなが「この人だ」と同じ意見になって、スムーズにまとまりましたね。
――三宅さんにクレイトスの声を演じてもらう際に、どのような演技をお願いしたのでしょうか?
大島:今回のクレイトスは歳を経ていることもあり、すごく気持ちを抑えている感じです。ギリシャ時代は一般市民だろうと神様だろうと怒鳴り散らしていたというイメージだと思うんですが、そこはクレイトスの成長が最初から垣間見れるところですね。でも、自然に落ち着いたトーンを保てているわけではなくて、常に自分を律している状態なんです。なのでひとたび激昂すると、若いときの感じになってしまう。過去を悔いる悲しみも表現できて、息子に背中を見せて育たせるような父親の振る舞いができる。一方で、怒ったときは手が付けられない迫力を出せるような人、ということで、三宅さんがバッチリでしたね。
――北欧神話固有の言葉をローカライズする際に気を付けたことなどはありますか?
大島:僕はこの担当になるまで北欧神話にはあまり詳しくなかったんです。まずは書籍やいろいろなメディアに触れて、勉強しました。とはいえ、先ほど話題に出たとおり、独自解釈の北欧神話という面もあるので、そこは割り切って、もともとの北欧神話をリスペクトして、そのエッセンスは保ちつつ、本作の北欧神話を描くように心がけました。
クリス:あと、呼び方が複数ある名称は、日本人になじみがあるほうを最終的に選んだものもあります。
大島:本作では原則として、北欧の発音に近いものを選ぶようにしているんです。悩んだのはドワーフですね。原音は確かにドワーフって言ってるんですが、北欧神話だとドヴェルグなんです。英語版がドワーフって言っているし、とおりもいいし、ドワーフでいいでしょう、という感じでもあるんですけど、これはかなり悩みましたね。
クリス:北欧神話が好きな人からすれば、「これはこっちでしょ」というものもあるかもしれませんが、そこは日本人になじみのあるものを優先したということでご理解いただきたいですね。
――昔の洋ゲーだと、日本人向けに難易度を優しくするなどの調整がありましたが、今回はいかがでしょうか?
クリス:今回は難易度設定はありますが、日本のみの変更点はなく、全リージョン共通になっています。逆に、今まで日本版は海外版に比べエロやグロ的な部分が削られたケースがありましたが、今作においては海外版とまったく同じものになります。それと、ゲーム中のキャラクターは、攻撃時の声などは以前などは海外版のものとなっていましたが、今回はそれらも全部ローカライズしているので、違和感なくプレイに没頭できるようになっています。
大島:そういった力みとか掛け声などまで収録できたのは日本リージョンだけですね。確かにそこは苦労しました。何回も「ウッウッ」とかしゃべっていただいて、我々も声優さんたちも大変でしたが、でもそのぶん没入感は高められたかなと思います。そこは自信をもってお届けできる部分ですね!
――それは日本側からそうしたいと希望を出したんでしょうか?
大島:そうですね。お願いしました。「これは日本だけなんですけど、すみません」みたいな。応じてくれてよかったです。
クリス:ゲーム中に、途中で一瞬でも違う声が聞こえると「んっ?」ってなって没入感がそがれるじゃないですか。それをなくしたかったんですよ。
大島:とくに今回はHUD表示などを極力減らしたり、ワンカットでイベントを流したりして、没入感を意識した作りになっているんですよ。世界観に浸れるような工夫を目指すという意味では、戦闘ボイスなどの収録は外せない部分でした。そこを海外の開発も理解してくれて対応してくれたので、いいローカライズができたと思っています。
――お2人はすでにプレイを終えていると思うんですが、プレイして楽しかった点を教えてください。
クリス:システム自体が過去作から大きく変わったので新鮮でもありましたし、探索が加わったことで長く遊べるというか、成長させる楽しさが大きくなったかなと思いますね。武器を強化していくだけでなく、素材を集めて作るとかもあります。僕がもともとRPGが好き、というのもありますけど。子どもを持つ親としては、今回の親子の物語を見てグッとくるものがあったので、最後までプレイしていただいた方には、心に残る作品に仕上がっているのかなと思います。
大島:僕は過去作にはなかった、旅をともにする息子や、ブロックやシンドリというキャラクターなど、北欧神話の地で出会う仲間たちとのやり取りがすごく新鮮だなと思いました。やはりクレイトスはクレイトスなので、基本的にはぶっきらぼう。気を許したかと思えば「ふん」とひとことですませたりとか、 “らしい”なあと思うんですが、そこで息子が間を取り持ってくれるとか、これまでにはなかったですよね。すごく魅力的なキャラクターがたくさん登場しますし、彼らとの会話や紡がれるストーリーがおもしろいなと思いました。
クリス:クレイトスひとりの冒険のときはなかった、旅の途中で発生する会話や掛け合いがおもしろく、移動時にも飽きさせない作りになっているんですよ。
大島:特定の場所を訪れないと聞けない会話などもたくさんあるので、セリフを聞くために探索するといった楽しみ方もできますね。
――シリーズを知らない人に向けた、本作のイチオシな部分って、どんなところでしょうか?
クリス:今までの「GoW」シリーズというのは、巨大な敵をバッタバタと倒していくクレイトスの無茶苦茶さが売りでしたが、今回は人間らしさや登場人物の成長など、ストーリー性が重厚なものになっているのが見どころだと思います。物語の中で過去の描写も一応出てきますが、過去作をやっていないと楽しめないということはありません。アクション性も、近年人気のあるゲームのプレイスタイルに近くなっているということもあって、初めての方でも、とまどうことなくプレイでき、難しすぎないものになっているかと思います。今回は敵がけっこう積極的に攻撃してくるため、防御などを駆使する必要はありますが、そのぶん本当に戦っているような気持ちになれると思いますよ。
大島:北欧神話を知らない人、という見方をしたときにひとつ言えるのは、基本的にクレイトスも知らないんですよ。なので、逆に知らない方がクレイトスとシンクロして楽しめるかなと思います。ほとんどのことは、ゲーム内でアトレウスが教えてくれるんですよ。もしかしたら、北欧神話を知らずに、息子さんがいるプレイヤーが一番クレイトスに感情移入できるかもしれません(笑)。
クリス:物語の中で過去の描写も一応出てきますが、過去作をやっていないと楽しめないということはありません。本当に心機一転やっている感じなので、初めて今回やる人も楽しめる内容だと思います。
――最後に、楽しみにしているユーザーへメッセージをお願いします。
クリス:新生『GoW』として、新しい冒険が始まります。クレイトスも長い旅を経て、いろいろ変わったのが見どころだと思いますし、息子との関係性やストーリー部分でも注目できるところがたくさんあります。ゲーム性の部分でも、進化したところがたくさんありますので、今までプレイしてもらったファンも楽しめると思いますし、初めての人でも楽しめるものになっていると思います。なのでハゲのおっさんだからといって敬遠せずに、ぜひプレイしてほしいと思います。
大島:僕が担当したローカライズ面でいえば、キャストも一新されて、今作においてこの人たちにしかこの物語は紡げない! という人たちに演じてもらいました。過去作にはない物語性と、それを語る声優陣が大活躍されているので、それをぜひ期待していただければと思います。
クレイトス役・三宅健太さんインタビュー
三宅健太 氏
81プロデュース所属。渋く、威厳のある声色が人気の男性声優。代表作は、映画「アベンジャーズ」シリーズのマイティ・ソー役や、アニメ「僕のヒーローアカデミア」オールマイト役、「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダー」モハメド・アヴドゥル役など。
より”人間くさい”クレイトスを演じました
――今回、クレイトス役を演じてらっしゃいますが、「GoW」シリーズはご存知でしたか?
三宅健太さん(以下、敬称略):タイトルは知っていたんですけど、実際にプレイしたことはなかったんです。
――では、今回初めてクレイトスを見た印象はいかがでしたか?
三宅:キャラクターのビジュアルを見せていただいたり、設定資料を読ませていただいたときは、神というのもあったんですけど、ちょっと”死”を匂わせているというか、”闇”を感じましたね。クレイトスは屈強で、己の身をかえりみないで戦い続けるキャラクターなんですが、白っぽい肌の質感などから、死を感じました。本作では息子であるアトレウスと一緒に旅をすることになるのですが、この闇のある人物がどんな旅をするのか、初めはなかなかイメージが結びつかなったのが正直なところですね。
――前作までは、クレイトスを玄田さんが演じてらっしゃいましたが、演じる際に参考にされたりしましたか?
三宅:じつはですね、収録をしているときは、あえてこれまでのクレイトスの演技を聞かないようにしていたんですよ。本作でのクレイトスは、前作からの戦いから歳を重ねていて、息子と一緒に旅をしていて、そのなかで会話のやり取りもあって、神というよりも父親としての面、人間臭い面が出ていたと思うんですね。前任が尊敬している大先輩の玄田さんだったプレッシャーもありましたし、シリーズファンの方からは賛否両論あるだろうなとも思いましたが、まずは自分なりのクレイトスに挑戦させていただきました。収録が終わったあとに、玄田さんが演じられていたクレイトスも聞いてみたんですが、まさに武神という感じで、すごく懐の深さを感じました。自分が演じたクレイトスでよかったのかな? っていうとまどいもあったんですが、先程も言ったとおり、本作では彼の人間的な面が出ているので、僕は”人間臭いクレイトスを演じた”と思うことにしました(笑)。
――収録時に、開発の方からこう演じてほしいといったオーダーはありましたか?
三宅:基本はすごく好きにやらせていただきました。なかでも”重さ”というところにはこだわって演じましたね。自分も若輩とは言わない年齢にはなりましたが、まだまだ経験も浅いところもあって、ともするとお芝居のなかで深みが消えがちになってしまうんですよね。クレイトス自身がすごく経験を積み重ねている人物なので、その重さを意識してやりました。制作・音響サイドさんもすごくていねいに収録してくださったので、本当にありがたかったです。
――戦闘のボイスも三宅さんがやられているんですよね?
三宅:そうですね。戦闘のほうでは、重さに加えて、常に怒気を持つように意識しました。例えば「フッ!」って攻撃のときに声を出すとするじゃないですか。その声に常に「お前を砕く!」という気持ちを込めました。それは回避などの動作も同じで、危ないって避けるのではなくて、「避けて次にお前を砕く」といった感じで(笑)。前のめりな気持ちを内包させて演じましたね。収録時に北米版のボイスも聞いたんですが、息が深くて、声が太くて。「日本も負けんぞ!」という気持ちも持って、アドリブ全開でやらせていただきました。
――戦闘ボイスの収録では、かなりエネルギーを使われたのでは?
三宅:そうですね。かなり消費はしました(笑)。ただ、戦闘よりも、ストーリー部分でのお芝居の掛け合いのほうが、どっとエネルギーを使った気がします。息子のアトレウスや、ミーミルというキャラと一緒に旅をして、徐々に心を通わせていくことになるのですが、そんな中にあっても、クレイトスはどこかで拒絶する心を持っているんですね。その演技をしているときは、すごく心が疲れました。
――クレイトスはずっと拒絶するような感じなのですか?
三宅:物語が進んでいくと、やはり変わっていきますね。物語の初めのクレイトスは、自分の中に闇があって、相手を拒絶することで自分を罰する……戒めているんじゃないかなって感じたんです。でも、物語が進んで、アトレウスやミーミルたちと会話をしていくなかで、ちょっとだけクレイトスが許されているような印象を受けて。息子との会話や旅を通して、彼が許されるというか、救われているんじゃないかと。物語前半と後半では、演技もそれに合わせて変えていきました。
――最後までクレイトスを演じて、最初に持った彼へのイメージへの変化はありましたか?
三宅:変わりましたね。最初は”死”と隣合わせのイメージがあったんですが、だんだんクレイトスがアトレウスとのやり取りを通じて本当の親子になっていくんです。不器用なお父さんと、ちょっと難しい年ごろの男の子っていう。クレイトスは表面上はそこまで変わらないんですけど、心のどこかで、懐が深い、優しい人なんだろうなっていうイメージに変わりました。
――では、息子となるアトレウスの印象はいかがでした?
三宅:最初にアトレウスのビジュアルを見たときは、目力の強さが印象的でした。母親が亡くなってしまい、いきなり使命を果たすために旅立つことになって……。そういうこともあったためなんでしょうけど、クレイトスよりもアトレウスのほうが目が鋭く感じましたね。また、彼の目も、怒気をはらんでいるのかな、とも。かわいいというよりは、強い子だなという印象でした。先程、クレイトスがアトレウスたちを拒絶すると言いましたが、アトレウスは彼に反発しつつ、ちょっと寄っていってるのかな? と思えるところもあるんです。僕だけかもしれないですが、アトレウスのほうがクレイトスよりもちょっとだけ大人な印象を持ちました。
――本作は北欧神話の神々や怪物が登場しますが、収録時にとくに覚えているエピソードはありますか?
三宅:カタカナの名前が多く、そこが難所でしたね(笑)。あと、バルドルというキャラクターが印象に残っていますね。ネタバレになるので言えないんですけど、いろいろあるんですよ。もう、本当に腹が立つ! 今、聞かれるまで、バルドルって名前を記憶から外していたくらいです。ぜひ、プレイして確認してみてください(笑)。
――ちょっとだけゲームから話はそれますが、本作は北欧の世界が舞台となりますが、寒い地方などはお好きですか?
三宅:苦手ですね。こう見えて、冷え性なんですよ。本作の映像はすごく繊細で、美しいので、声を収録しているときも常々寒いって思ってました(笑)。収録時はちょうど冬だったこともあって、余計に寒く感じましたね。やっぱり暑いほうがいいです。
――三宅さんはお子さんがいらっしゃいますが、父親目線で見たときのクレイトスってどう思われましたか?
三宅:クレイトスは見た目がいかついですし、わりと怖いじゃないですか。でも、根底的な部分は、ほかの父親と一緒じゃないかなと思うんですよ。不器用というか、母親には勝てないところがあるんじゃないかと。だから必要以上に厳しくなってしまったり、必要以上に子どもの言葉を受け止めすぎてしまって、それに対して答えられなったり。物語の中でも、クレイトスはそういうジレンマみたいなものがすごくあったので、等身大のお父さんなのかなって思いました。
――クレイトスとアトレウスは、親子関係の築き方の参考になったりすると思いますか?
三宅:反面教師だと思いますね(笑)。クレイトス自身は、初めアトレウスを戦士として、一緒に目的を果たす者として認めていないんですよ。だけど、物語が進んでいくと、息子をクレイトスが男として認める瞬間が来るんです。これっていうのは、父と息子でしか共有できない、独特な気持ちだと思いますね。最初は上下関係的だったクレイトスとアトレウスが、旅を通じて、互いを男として認め合い、同志的な立場になっていくんです。現実世界でもそうだと思うんですけど、いつか父と息子は、友人になっていくんだなって思いました。
――ご自身のお子さんと、クレイトスたちのような旅をしたいと思ったりしますか?
三宅:どうかな(笑)。さすがに『GoW』のような過酷なものではないですが、いつか旅には行きたいですね。そのときは、クレイトスのように、ちょっととまどう気持ちになるかもしれません。先程、男として認め合うと言ったのと反するかもしれないんですけど、心のどこかに、子どもにはカワイイまま、小さいままでいてほしいなって思いもあって。でも、ちゃんと自立して成長してほしいという気持ちもあり……。2人で旅をしたら、きっとその成長はうれしいんだけど、いつも手を引いて、手をつないでいたのが離れていくような気がして、寂しくなるような気がします。複雑な気持ちですね。
――では最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。
三宅:そうですね。本作はとにかくゲームとしての映像も美しいですし、迫力もあります。本当に、すごく作り込まれている作品なので、すべての人にやっていただきたいと思っています。また、父と子の物語になっているので、お母さんにはナイショで、お父さんと息子で夜こっそりと、友人みたいな感じで楽しんでいただきたいなと思いますね。ただ、エグいシーンもありますので、18歳以上のお子さんとでお願いします(笑)。本作は、父と息子の2人で冒険するなど、今までの「GoW」シリーズから目線が変わっていて、ファンの方のなかにはとまどっている方もいるのかなって思います。でも、シリーズの新たな伝説の、新たな1ページとしてぜひプレイして、楽しんでいただきたいですね。僕も一生懸命にクレイトス役をがんばりましたので、何卒、よろしくお願いします!
アトレウス役・小林由美子さんインタビュー
小林由美子 氏
元気な少年から少女、動物キャラクターなども演じわけるフリーランスの女性声優。代表作はアニメ「デュエル・マスターズ!」の切札勝役や「焼きたて!ジャぱん」の東和馬役「鬼灯の冷徹」のシロ役など。
ただ弱い少年にはならず、心に秘めた強さがにじみ出るように心がけました
――最初に見たアトレウスの印象はいかがでしたか?
小林由美子さん(以下、敬称略):アトレウスを初めて見たのは、オーディションのときでした。ビジュアルや資料を見せていただいて、病弱で、肌の色が青白くて、お父さんには認められていなくて……。内気な男の子なんだなっていう印象を受けたんです。ですから、そういうイメージでオーディションに臨みました。
――その際に、開発の方々から演技などの面で要望はありましたか?
小林:オーディションで、父親のクレイトスとの対話をしたんですけど、父親に対してビクビクするような、内にこもるような芝居をしたんですね。開発の方から、そうではなくて、クレイトスに対して、もっと強気にいってくださいって言われてまして。
――反抗期的な感じに?
小林:そうですね。反抗期に近いというか、あまりお父さんに億しているような感じ……例えば、言いたいことが言えずにというより、思ったことはけっこう、感情をぶつけてしまうような感じでと言われまして。初めに自分が作っていたキャラとは真逆の方向に、オーディションで作り直した感じですね。
――役が決まって、実際にアトレウスを演じ終わったあとに、彼に対するイメージは変わりました?
小林:初めは、本当に弱いっていうイメージだったんですね。ですが、最終的には優しさもあるし、考え方もしっかりしているし、すごく快活明瞭な強い男の子だったんだなって思いました。
――そういう点は、父親の影響だったり、彼本来の気質だったり、どう感じられました?
小林:お父さんと一緒に戦ってきて、その強い背中も見ているというのもあると思うんですけど、アトレウスは自分の運命をお父さんから聞いて、それをしっかりと受けて止めていくんです。お父さんの影響もありつつ、自分自身も強いところを持った男の子だと思いました。
――ボイスの収録は、ゲーム画面を見ながら演じられたのでしょうか?
小林:ドラマで絵がある部分は、実際に画面で動きを見たり、英語の音声を聞きながら、声をあてていきました。いわゆる吹き替えというか、海外ドラマの収録と一緒ですね。映像のない、バトル中のセリフなどは、向こうの方の声を聞きながら、それと同じ尺で、同じような息遣いで、聞いてしゃべって、聞いてしゃべってっていう感じでやりました。このゲームは、絵も本当に本物みたいなんですよね。キャラの動きもすごくて、遠くから見たら本当の人間の子どもが動いているのと間違えてしまうくらいリアルだったので、海外の映画の吹き替えをしているような感覚でしたね。
――アトレウスを演じるうえで難しかったところや注意した点は、いかがでしょうか?
小林:そうですね、やっぱり、あんまり気弱になりすぎないっていうところに注意しました。シナリオの文字だけ見てしまうと、お父さんの顔色をうかがっているような、弱々しい部分だけが見えてきてしまって、芝居も気が弱い男の子になりがちだったんですね。そうではなくて、根っこにはすごく快活な普通の少年というところがあって、そこから言葉が出てくることを忘れないように演じました。言葉がちょっと弱くても、ただただ弱い少年にならないように気をつけましたね。
――普段演じられているような少年のキャラよりも、声のトーンは落とし気味にしたりといった感じでしょうか?
小林:そうですね。原音を聞いて、それに近い感じでしゃべるようにしました。年齢設定としては、8歳ぐらいというのがあったんですけど、自分の中にある8歳の音程っていうのは気にせず、動いているアトレウスを見たときの印象や、ゲームの印象で演じていきましたね。
――クレイトス役を三宅さんがやられていますが、収録時は三宅さんだったら掛け合いではこう返すだろうとイメージされたりしました?
小林:初めは、クレイトス役を三宅さんがやられているのを知らなかったんですよ。あとから、そのことを聞きまして。じつは過去にも三宅さんと父子を演じたことがありまして、そのときも厳格な父でしたので、今回もそのときを思い出しながら掛け合いの部分などを演じておりました。
――どういう風にイメージされました?
小林:三宅さんの人となりからすると、厳しいなかにも優しさが見え隠れするのかな、と。なので、息子としてはそこを感じ取ってガツガツ言ってもいいのかな、と(笑)。
――本作に限らず、子どもを演じるうえで気を付けていることは?
小林:声に私の年齢分の経験値が乗らないようには気を付けています。声の高さ的には8歳から10歳ぐらいなのに、年齢分の経験値が乗ってしまうと、子どもらしさがなくなってしまうので。本当に10歳だったら10年分の経験値でしゃべるように気をつけていますね。ただ、アトレウスの場合は、母親を亡くしてしまったり、いろいろな運命に出会ったりしているので、リアルな8歳ぐらいの年齢は気にせずに演じました。
――アトレウスで印象に残ったシーンは?
小林:そうですね。アトレウスが自分の中にある、ある能力に気づいてしまって、急に生意気というか、反抗期を迎えてしまうシーンがあるんです。「俺、こんなことできちゃうんだぜ」みたいな、自分の能力に引っ張られて、ちょっと子どもらしさを失ってしまうんですね。このシーンは、アトレウスの目線でストーリーを見ていただくと、子どもが思春期を迎えた親の気分を味わっていただけると思います(笑)。あと、物語の後半に親子で会話をする静かなシーンがあるのですが、そこで飲み物を飲んだあとに「あぁっ」って息をはくんです。この息を何度も取り直したのをすごく覚えています。このシーンは、親子の関係をちゃんと位置付けているものでもあるので、私のお気に入りですね。息子っていいなって思いました(笑)。
――アトレウスは、序盤では北欧神話の世界をクレイトスに説明する役でもあるのですが、そこでのエピソードなど教えていただけますか?
小林:神様の名前や怪物の名前とか、普段、言いなれないカタカナの名前がすごく多かったので、間違えないようにカタカナに漢字をあててみたりして、言いやすいように工夫しました。世界のあらゆることを知っているミーミルというキャラが出てくるんですけど、そのミーミルがわりと難しいことをサラサラって言ってらっしゃるのを聞いて、「いかん、子どもだからといって許されない」と思って、何回も練習して臨みました。とくにイントネーションが独特だったりするので、気を付けました。
――ちょっとだけゲームから話はそれますが、本作は北欧の世界が舞台となりますが、寒い地方などはお好きですか?
小林:寒い地方は、雪による銀世界とかキレイな風景がいっぱいあると思うんですけど、寒いのが苦手で……。すぐに暖かいほうに逃げちゃいます(笑)。今回、ゲームの中で吹雪の中を歩いたり、ガタガタ震えながら極寒の中を薄着で進んでいくようなシーンがあったのですが、目から飛び込んでくるゲーム画面の情報がもう寒いので、自分の中でかなりリアルなガタガタができました(笑)。
――小林さんはお子さんがいらっしゃいますが、親御さんの目線で見たとき、クレイトスってどう思いましたか?
小林:年ごろの男の子と接する男親って、難しいだろうなって思いました。というか年ごろの子どもとの接し方って難しいだろうな、と。私にも今年、小学校に入る娘がいるので、何となくクレイトスの気持ちがわかるというか……(笑)。多分、アトレウスに強くなってほしいから、お父さんのクレイトスは厳しく言ってしまうんだろうし、子どももその気持ちはわかっているけれども、反抗せずにはいられないみたいなところもあるだろうし。アトレウスは、お父さんに対して、けっこうなことを言うんですよね(笑)。クレイトスは暴れ回るし、大きいし、力も強いし、はたから見ると、そんなこと言って大丈夫?って思うんですけど。わりとお父さんはちゃんとひとこと、ひとこと、言葉を選んで息子に伝えようとしてるんですよね。それがすごく伝わってきて、親として見たら、応援したくなる、すごくがんばっているお父さんだなって思いました(笑)。
――まだ序盤しかプレイできていないのですが、親子関係がどうなっていくのか楽しみになりました。
小林:この作品は、親子の物語としてもすごくよく描かれているんですよね。親目線、子ども目線、第三者目線と、いろいろな目線で楽しめると思います。ファンタジーではあるんですけど、親子関係の物語はすごくリアルに描かれているので、ここも注目してほしいですね。
――では最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。
小林:物語としても、ゲームとしても本当におもしろい作品になっていると思います。私もこの作品が発売されたら、夜通しでやってしまうと思います(笑)。私も楽しみにしているので、みなさんもぜひぜひ楽しみにして、手元に届いたら、楽しんで遊んでください。映像がとにかくキレイなので、ストーリー部分は映画を見るような気分で観ていただけるとうれしいです!
インタビューからも、本作に対する熱意が伝わってくるかと思いますが、実際にプレイすると、ローカライズのクオリティの高さや、声優さんたちの熱演によって、ゲームへの没入感が高められているのがわかります。本作をプレイする際には、ぜひ今回の記事で触れられているポイントにも注目してみてはいかがでしょうか?
次回は、実際に本作をプレイした方の反応を中心に、あらためて魅力を紹介していく予定です。
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<デジタルデラックス版の内容>
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・デジタルコミック
・アートブック
・テーマ
<PlayStation™Store早期購入特典(2018年5月6日(日)まで)>
・鍛冶師の盾(シールドスキン)
・闇のエルフの盾(シールドスキン)
・光のエルフの盾(シールドスキン)
・悠久なる光の護符(ゲーム序盤を有利に進められるアイテム)
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ゴッド・オブ・ウォー
・発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
・フォーマット:PlayStation®4
・ジャンル:アクションアドベンチャー
・発売日:好評発売中
・価格:パッケージ版 希望小売価格 6,900円(+税)
ダウンロード版 通常版 販売価格 7,452円(税込)
ダウンロード版 デジタルデラックス版 販売価格 8,532円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:Z(18才以上のみ対象)
※ダウンロード版ご購入の際のご注意。
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