魔王に召喚された破壊神となり、にっくき勇者たちを蹴散らす『V!勇者のくせになまいきだR』(略して『Vなま』)。さまざまな切り口でその魅力に迫る特集2回目は、SIEシニアプロデューサーの山本正美と、株式会社アクワイアのディレクター・大橋晴行氏という『Vなま』の2大トップスタッフにインタビューを敢行! マスターアップ後の今だから話せる開発秘話や新情報の数々などを完全掲載します。
かなりの長文なので、気長にのんびり読んでください!
だまし討ちから始まった『Vなま』の開発
──東京ゲームショウでのタイトルの発表から約1年になりますね。
山本:Facebookで「1年前こんなことがありました」って出てくるじゃないですか? ちょうど(インタビュー当日の)1年と1日前が「東京ゲームショウ2016」のプレスカンファレンスだったんですよ。そこで一番最初の『Vなま』のトレーラーが流れて、ぼくがすごく喜んでるポストが上がってきていて(笑)。
──開発を振り返ってみてはいかがですか?
大橋:なにぶんVRに慣れてないので、いろいろ大変でしたけど、新しい発見があったりして楽しかったですね。
山本:実際の制作期間は2年弱ぐらいで、今のPlayStation®4タイトルでいうと、破格の短さなんですよ。当然、その中では迷いもありつつ。でも、人同士がもめたりとか、長尺なタイトルにありがちなこともなくゴールまで順調に進みましたね。フロントに立っているアートの女性ですとか、プログラマーの子もそうなんですが、2人とも20代だよね?
大橋:いや、30代。
山本:でも、31とかだよね。
大橋:そうですね。
山本:だから、すごい若いチームだったんですよ。ぼくはもうアラフィフに近いんで、そういう意味でもすごく新鮮な開発だったかなぁと。
──そもそもの制作のきっかけを教えてください。
山本:もともとPSP®「プレイステーション・ポータブル」で出ている『勇者のくせになまいきだ。』、『勇者のくせになまいきだor2』、『勇者のくせになまいきだ:3D』という地下を掘っていくゲームがあって、その後、じつはPlayStation®Vitaが発売されたときに、舞台を地上にした「勇なま」作れませんかねって話があって、ちょっとだけ企画していたことがあったんですよね。ただ、いろいろな事情でそれがなくなっちゃって、結局ナンバリングとしては途絶えることになってしまって。表には出てきてないけど、妄想はずっと続けていたという。
大橋:『:3D』が出た後にたびたび話をしたりね。
山本:そんなある日、全然別件でアクワイアさんに行ったら、「作っちゃいましたよ」って、いきなり(笑)。それがもう地上が舞台で、次に「勇なま」があるのなら、こういう形だよねっていうものの原型ができていて。しかも、VRで(笑)。ホントだまし討ちに近い「作っちゃいました」……いや、「作ってみちゃいました」かな? 甘栗じゃねえんだぞって(笑)。それがホントによくできていたんですよ。ありもののキャラクターが単純に城を攻めているだけのビルド(ゲームデータ)だったんですけど。
大橋:フィールドはその時すでにRPGっぽかったですよね。モデルは、海外タイトルによくあるゴーレムとか、トレントみたいなモンスターで。でも、やりたいことは、それでだいたい伝わったかなと。
山本:だからグラフィックとして「勇なま」的な素材はなにもないビルドだったんですけど、だけどこれは「勇なま」だなって思えたんですよ。もともと地下が舞台のゲームなので、VRにしたら、どうなるかなって、僕としては1回も想像してなかったんですよね。地下で周りを見渡しても、土かよってなっちゃうし(笑)。地上にもかかわらず、これは「勇なま」だと思えたことにはホントに驚きましたね。
──山本さんが想像もしていなかった形のものを、思いついてしまうアクワイアさんはすごいですよね。
山本:そこは100%クリエイティブ側ですよね。まぁいくつかVRタイトルのプロトタイプをアクワイアさん側で作っていたという流れがデカかったと思いますが。
──VRタイトルの開発をしようというきっかけはなんだったのでしょう?
大橋:社内でVRを研究しようという流れがあって、そのなかで、FPSみたいなやつだったり、10本ぐらい試作したのかな?
山本:それ、あんまり聞かなかったけど、FPSみたいなもののほかに何があったの?
大橋:アキバの街で缶蹴りしたりとか。
山本:おー、『アキバズケリップ』(笑)。
──そこはやっぱり「プ」なんですね(笑)。
大橋:あと『Ocean Descent』とかぶっちゃいますけど、海の中を探索したり。乗馬ものも作りましたね。カメラ揺らしたら、酔うってのはそこで知りました。VRはカメラ揺らせないんだなぁ、と。
山本:そのときに何をやったら酔って、どうしたら酔わないのかっていうのが結構わかったみたいだったんですよね。『Vなま』がトップビューになったのは、それまでにお蔵になっていったいくつかの試作品の賜物で。だから、VR初体験を酔う酔わないっていう点で躊躇している人がいたら、ぜひ『Vなま』を1回やってみてほしいなぁと思いますね。
──『Vなま』のベースができるまでにはかなりかかったのですか?
山本:どちらかというと時間がかかったのは、ゲームのルール作りだよね?
大橋:去年の4月、5月にミニマムサイクルを作るまでは結構大変でした。もともとワンステージをもう少し長く遊ばせる予定だったんですけど、VRゲームに最適なプレイ時間を探るところで開発の前半はかなり苦労しましたね。当初は1ステージ20分ぐらい遊ぶつもりで企画書を書いていて……。
山本:まあね、でも、製品版でもステージによっては結構な時間遊べるところはあるよね?
大橋:プレイによってはいっちゃいますね。
『Vなま』新情報ピックアップ! その1
触れるとダメージを受ける溶岩が流れるデスマウンテン。凍てつく風が吹き荒れ、あまりの寒さに勇者や魔物の動きが鈍る寒冷地帯。魔界の領土にすれば、勇者にダメージを与える毒沼になる聖なる泉など、全15のステージはどれもバリエーション豊か。後半のステージでは、ある手順を踏まないと敵の拠点を攻撃できないなどの仕掛けも。
今のムスメがあるのは、ある人の鶴の一声のおかげ?
──VRタイトルといえば、「体験」させるものが多いんですが、『Vなま』は「ゲーム性」を重視している印象が強いですよね。
山本:かなりゲーム性に寄っていると思いますね。
大橋:ゲームとして遊ばせたいという思いはかなりあったので。ホントに、そこのバランスをどう取るかが課題でした。
山本:VRって、現実を代替することは当然やれるじゃないですか。例えば……。
大橋:『サマーレッスン』とか?
山本:そう、現実であんなかわいい子と出会えるかは別にして(笑)。それと現実にはできないんだけど、VRだと可能なもの。今のアトラクション系のやつって、そんな感じで楽しいものが多いじゃないですか。ビルの上でネコを助けるだとか、ガンダムに助けられるとか。あとはVRでしかできないというものもあって、水口さん(レゾネア代表、水口哲也氏のこと)が手がけた『Rez Infinite』の「Area X」とかは、リアルでは絶対できないですよね。VRを装着すると、あの世界の1つの分子になれるっていう。ああいうのって、なかなか天才的な、感覚で生きてる人じゃないとできないと思いますね。
一方ゲームって「一定のルールでしっかり遊ばせる」ことで進化してきたんだとしたら、デバイスがVRになったとしても、ルールで遊ばせるVRタイトルのイスは絶対あるはずだと、最初の頃からすっごく思っていて。だから、あちこち見回すのはVRっぽいけど、ゲームとして疲れるんだったら、それはゲームとしてのやりやすい方、体験よりもゲーム性を取るべきだっていうのは、開発中ずっと話してましたね。
──VRとリアルタイムストラテジーの相性はかなりよさそうですよね。
山本:もっといろんなパターンもあると思うんですけどね。開発中、海外のインディーやアメリカのストアには、こういうトップビューのゲームがあるよねって、みんなで動画を見ながら話したこともありましたよ。『DINO FRONTIER』とか。だから、潮流として有り得るジャンルなんだろうなぁって信じて、最後までやれましたね。
ただ一方で、ユーザーさんを交えたモニター会や、社内のチューニングでは、もっとVR感を出したほうがいいんじゃないかって意見もあって。魔王のムスメをもっと近くに寄せてみたりだとか、しばらくみつめていると、ちょっとツンデレなこと言い出したりだとか、そういうVR的な楽しみも、ギリギリでしたけど、なんとか最後に盛り込んだりもしました。
──製品版ではムスメはかなり近い位置にいますが、もともとはそうじゃなかったのでしょうか?
大橋:去年の東京ゲームショウで出品したバージョンだと、ムスメは出てませんでしたし、想定としてはプレイヤーのななめ後ろにいて、そこからしゃべる感じでしたね。じつは大きいキャラクター2体(魔王とムスメ)と、たくさんの魔物を同時に視界に入れると処理負荷がすごくて、開発中は状況しだいでフレーム落ちしちゃっていたので、当時は視界に入りにくいプレイヤーの後方にムスメを置いて、しゃべらせる感じだったんですよ。
山本:ごちゃっといる魔物を見てるときは、ムスメは視界に入らない。ムスメを見てるときは、魔物が視界に入らない。フレーム落ちを防ぐために、そうするしかなかったんですよ。でも、それからエンジニアがこねこねがんばってくれて、両方ちゃんと見える位置にいるって形に。だから、ゲームの中のバーチャルのキャラクターなんだけど、一緒にボードゲームをやってる感じっていうのは、最終的にうまく出せたんじゃないかなって思ってます。
大橋:視界に入らないと、誰もムスメの存在に気づかないんですよ。これはもったいないぞ、と。魔王もなかなか近寄ってこないから、手の届く範囲にキャラクターがいるって状況がない。じゃ、いっそのことムスメを近くに置いちゃおう、と。プログラマーとアートの皆さんにはがんばってもらいましたね(笑)。
山本:ちなみにそれを一番強く要求したのは、うちの吉田プレジデントなんですけどね(笑)。「左前方におっさんがいるだけのゲームなの?」って。この辺は書いてください、是非!(笑)。
『Vなま』新情報ピックアップ! その2
ステージクリア時には強化ポイントを獲得できる。これを使って、魔界ガーデンで魔物たちをランクアップさせることが可能。ステージが進むにつれ、勇者たちも強くなっていくので、それに対抗すべく、魔物を強化していきたい。クリアしたステージも再度プレイが可能で、強化ポイントももちろん獲得できる。勇者が強くて、クリアできないステージに遭遇したら、前半のステージを繰り返しプレイし、強化ポイントを稼ぐのもアリ!
<強化モンスター例>
魔王のおウチに遊び行くような感覚
──ビジュアルがドット絵から3Dに変わり、舞台が地下から地上に移ったことで、世界観が広がったみたいなところはありますか?
山本:ありますね。設定上、プレイをするのは魔王のへやなんですが、魔王って、やっぱ生きてたんだな。魔界に行ったら、あいついたんだなってのは、すごい実感しました。よく漫画家さんが自分で描いたキャラが勝手に動き出すとかいうじゃないですか? あれに近い感じですね。魔王お前、「いたんだ!」って(笑)。
大橋:前のシリーズは、ブロックだらけのダンジョンの画面で片隅に顔があるだけだった魔王。そんな彼がどんな生活しているだとか、どんな動きをするのだとか、イメージを膨らまして、作り上げました。これまでの雰囲気を踏襲しつつ活き活きとしたキャラに仕上がったと思うので、遊んでもらえば、より魔王というキャラがイメージしやすくなっていると思います。
──魔王がいる空間、魔王のへやでプレイするっていうのは最初からあった発想で?
大橋:そうですね。「勇なま」としては、ミニチュアライクなキャラクターたちがテーブルの上を動き回るだけでよかったのかもしれませんが、VRタイトルとしては、舞台となる空間が楽しめるものであってほしかったんです。それで、どんな空間だったらおもしろいかなって考えたときに、目の前に魔王がいて、魔王と一緒にやんややんやいいながら、世界征服ゲームを遊べたら楽しいなって。魔王のおウチに遊び行くような感覚ですね。ということで、魔王のへや一択でした。
山本:やっぱり空間に入るので、居心地のよさって大事。そこに居たくないと思われちゃうと遊んでもらえなくなっちゃうので。だから、かわいさとか、色彩の感じにはこだわりましたね。あとむやみに傷つけるようなことは、やっぱ魔王はいっちゃいけないとか、そのあたりも気をつけましたね。
──へやもいろいろ小物が置いてあったり、リアルというか、生活感あふれてますよね(笑)。
山本:一応へやの向こう正面にこれまでの主人公だったツルハシが置いてあります。そういうところもシリーズ作を遊んでくださってる方には、クスっとしてもらえればと。ちょっと話がズレますが、ドラえもんの映画のキャンペーンのVR企画で、どこでもドアを開けられるというのがあって、それをひと通り遊んだあとに、おなじみの机の引き出しの中からドラえもんが出てきて、「何月何日映画公開。よろしくね」って言うんです。ドラえもんに直接いわれると見なきゃって気になるんですよね。ちゃんと存在感があることで得られる実在感。これはVRならではなのかなと。そんなことを思って、いろんなことを魔王にさせたりしてるんですけどね。
大橋:でもね、最初の頃はしゃべってる魔王を見つめられなかったというか。ちょっと気恥ずかしかったですね。「ふぁぁッ、魔王がこっち見てる!」って。
山本:宮本ひかりちゃん現象だね(笑)。よくも悪くも「画面」というものがゲーム世界との境界に存在していたわけですが、もうそれがないという世界に行けるのは、それこそ新鮮な体験かなという気がしますね。ちなみにボク的には、魔王の言葉を関智一さんが吹き替えしてくれているって認識なんだけどね。
大橋:翻訳こんにゃくみたいなものを食べた途端に魔王がしゃべり出すとか、演出はいろいろ考えましたね。
山本:冒頭ではこれまでのシリーズ同様、ごにょごにょごにょって言ってて、下に字幕が出ているんだけど、ムスメに画面をぶち割られて、中の世界に入ったら、日本語をしゃべり出すという。世界に違和感なく入ってもらうためにも、こういうオープニングを入れました。
──魔王の声として、関さんを選んだ理由は?
大橋:鳥山プロデューサーの提案にまんま乗った感じです。いろんな声優さんの声を聞いて、関さんが一番合うだろうということで。それで実際声をあててもらったら、やっぱりドンピシャで。それでいてところどころ「妖怪ウォッチ」のウィスパーが入ったりして、おもしろおかしくなったかなと。
山本:声のイメージすらもオマージュになっているあたり、そこも「勇なま」っぽいよね(笑)。
──ムスメ役の小清水亜美さんに関しては?
大橋:「リトルプリンセス」っていうアニメがあるんですけど、わがままでおてんばなお姫さまを小清水さんが担当されていて、それがとてもいい演技で。腹黒さをかわいさと無邪気さで包み込んだ感じがムスメのイメージと近かったこともあり、ぜひにとお願いしました。あ、小清水さんは「勇なま」をプレイされてたみたいですよ。
山本:ムスメに関しては、プチイベントみたいなものが何カ所かあるので、「かわいいじゃないか、こいつ」ってなりますよ(笑)。やっぱり声優さんはうまいよね、引き出しが多いというか。
『Vなま』新情報ピックアップ! その3
通常の魔物はエサを食べることで繁殖し、仲間を増やしていく。それに対し、ドラゴンはエサの魔物を食べても増えないが、ちびドラ→成体(ドラゴン)へと成長する。ちびドラの段階では、ほかの魔物とそれほど大きさに変わりはないが、成体になるとその大きさは魔物の数倍ほど。上空を力強く飛び回る勇ましい姿は必見!
ポリゴンゲーム黎明期のノウハウが生きた
──遊んでみて、VRヘッドセットで長時間遊んでもまったく疲れないという印象が大きかったですね。
山本:疲れないのは、あっちを見たり、こっちを見たりというのが、ほかのVRタイトルよりも少ないからだと思います。
大橋:単純にゲームの展開として、征服し返されるみたいなことが過度に頻発しないようにして、攻めて行く気持ちよさみたいなところを楽しめるように調整しました。どこを見るかはユーザーさんの自由なんですが、そんな感じで、あっちを見たりこっちを見たりしないといけない状況そのものを減らしています。
山本:最初は、例えば線路上に風船があって、こっちから電車が来てるから割れないように気をつけながら、別のところで他の何かをやるみたいなゲームのように、忙しさが出るといいんじゃないかなって考えていたんですが、結局リアルタイムストラテジーの忙しさで首をたくさん振るのは疲れる。なのでそこは、ゲームとしての戦略性は保ちつつ、VR感も保持させるよう苦労したポイントですね。あと、パキっとした明るい色をあんまり使っていないというのもありますね。ギラギラした色使いだと目が疲れる。メインのキーカラーが紫で助かりました(笑)。
大橋:実は去年の東京ゲームショウ版よりも解像度をかなり上げてまして。プログラマーの努力もあるんですが、アートの方も処理負荷がかかりにくいデータに作り直してくれたりして。ほんとアタマがさがります。
山本:さっきの「ムスメも同時に出したい」というのもあって、そんなに描画でパワーを食うようなポリゴンの使い方ができなかったんです。そこを色でカバーしたり、照明を焼き込んだりね(笑)。
大橋:いろんな工夫はしましたね。それこそ、昔のPlayStation®とか、PlayStation®2時代の作り方でやるみたいな。なつかしのやり方でしたよね。過去に培った技術が大いに役立った!
山本:VRタイトルの制作ではけっこういわれますよね。じつはスタート地点からポリゴンゲーム制作の黎明期でやっていたようなノウハウが生きるっていうのは。
大橋:ちなみに解像度のアップだけでなく、PlayStation®4 Proにも対応してもらってます。PS4®Proの解像度を一度体験しちゃうと、もう普通のPS4®に戻れなくなるかもしれません(笑)。
──魔物を吸い込んで運べるという仕様は、どういった着想から生まれたものですか?
大橋:なんでしたっけ?(笑)。企画書段階から、運べたらいいなって書いていたと思うんですけど(笑)。
山本:ユーザーが「介入したいから」ってすごく説明されたんだよ(笑)。
大橋:そうだそうだ。旧作のシリーズでは、直接介入するようなものはやりたくなかったんですけど、VRということで、いかに体験させるか、体験のおもしろさを出すかってところが課題としてあって。そこから介入の仕方をいろいろ考えてて、やっぱり運んだりしてエサのお世話とかするのは体験として楽しいし、ゲーム性としてもあった方がいいだろうということで採用しました。コントローラーの上に魔物が乗っかったら、近くで見られますしね。
山本:フィールド上にいる魔物も、のぞき込めば近寄ることはできるんですけど、限界がある。神コンに吸い込んで手元に寄せれば、魔物の動いている姿がもっと近くで見られるんですよ。ちなみに一番最初のだまし討ちビルドでは、コントローラーに吸い込むのではなく、横にあるテーブルにユニットが全部置いてあって、そこから手に取ってフィールドに置くという形だったんですよ。
大橋:フィギュアをつかんで置くと動き出すイメージだったんです。
山本:じつはそれって視界が動くので、VR感が出てたんですが、その反面すごく疲れたんです。それでコントローラーに集約したらどうだろうと。
大橋:そのあたりはいろいろ試しましたよね。最初はユニットをつかんで配置するってところから、なかなか抜けられなくて。ユニットが横にあると疲れるから、手前に置いたらどうだとか、上から降りてきたらどうだとか(笑)。
山本:ユニットのテーブルが上からニュンって降りてきたり、いろいろ試しましたね。SF感はあって、かっこいいけど、どういうへやなんだって(笑)。やっぱり生態系って謳っている以上、不自然で違和感のある設定にはできないし。あと魔界の拠点近くで育ったものは終盤になると、戦況的には無駄に終わるというのもあったので「そいつら持っていければいいじゃん」っていうところもありました。ですのでコントローラーに吸い込んで運べるという形は、ゲーム性にもうまく合致していると思いますね。
──ポインターでの直感的な操作もストレスがなくていいですよね。
大橋:ポインティングも、仕様が決まるまではけっこう右往左往しましたね。
山本:最初はモーションセンサーじゃなくて、フィールド上のカーソルを方向キーで動かし、ポイントしていくみたいな形だったんですよ。でも、さっきお話したモニター会で、ダイレクトにやっている感じがしないという意見が多く、それで画面上に表示されるコントローラーからポインターを出し、モーションセンサーで動かすという形にしました。モーションセンサーなので、実際のコントローラーをひっくり返すと、ゲーム画面に表示されるコントローラーの裏側も見られるんですが、裏にちょっとイラストが描いてあるという小ネタを仕込んであったりもします。
大橋:プログラマーの工夫で、わりと段差があってもススっと、ポインティングしやすいようになってますよ。さすがに段差の裏側は隠れちゃってポイントできないんですが、テーブルをL/Rボタンで、90度ずつガガガガッっと回転できますし、立体感を出しつつも、操作性も維持できたんじゃないかなと。
山本:PlayStation®Move モーションコントローラーを2本使うようなものも楽しいですが、コントローラーで遊べたほうが、当然買っていただける機会も増える。しかしコントローラーにこだわりつつも、直感性は損なっちゃいかん、と、できるところまで追求していますね。
──「勇なま」のいいところは、ゲームとしてのルールがストーリーも含め、わかりやすくおさまっているところですよね。
山本:そういっていただけるとありがたいです。先ほどもいいましたが、ルールは結構最後まで大変だったよね。
大橋:そうですよね。シンプルにしないと、ルールの把握も難しかったり、インターフェイスもVRだと難しい操作を要求できない。
山本:VRだと「ここを見てください」ができないんですよね。だから、画面から外れていると、こっちを向いてくださいって、世界観に合わせたアイコンと矢印がピコンピコンって出るようにしたり。あと魔王の問いかけなどのセリフの量もかなり録りましたね。あと、あんなに看板が出てくるゲームになるとは思わなかったね。
大橋:最初の3ステージがチュートリアル的なステージなっているんですけど、チュートリアルがやっぱりわかりにくいという意見があって、最終的にそこはガラッと作り直したりして。だから、序盤のテンポはゆっくりめなんですけど、ルールをしっかり理解してもらったうえで遊ぶリアルタイムストラテジーとしては、結構いい線いったんじゃないかなと思いますね。
──直感でわからせるものだけでものを作るのは難しいですよね。
山本:それでわからせられるのもすばらしいとは思うんですけどね。なので、「VRを装着したら、そこは海です」みたいなものは映像の説得力がすごいから、VRらしさは出るとは思うんですけど、それだけじゃないハズで。インフォメーションの仕方とか、UIのあり方というのは、まだまだ今後もたくさんの発明が出てくるんじゃないかと思いますね。
『Vなま』新情報ピックアップ! その4
魔法陣からより強力な魔物を召喚する”合成召喚”。特集1回目では、デーもんを紹介したが、今回それ以外の魔物の存在が判明したので、紹介しよう。なお、どの魔物の魔法陣ができるかは、吸い込んだ魔物の種類と強さで決まる。また、”合成召喚”によって生み出した魔物をさらに合成することで、より上位の魔物を召喚できる。
ゴーレム族
動きはのろいが、高い防御力を誇り、「咆哮」による衝撃波で勇者たちを混乱させ、同士討ちさせる。勇者たちが殴りあう様は見ものだ。
ちなみに空腹時には、もうダメ感全開の動きで破壊神のサポートを誘う。
ガーゴイ族
魔法陣から伸びるポールの上から基本動かず、勇者を見つけると「ぶったたき」で大ダメージを与える。また、勇者の攻撃ミスを誘う「のろいブレス」も使いこなす。ただし打たれ弱いので、勇者に囲まれていたら神コンに吸い込んで助けてあげよう。
じゃしん
魔法陣系の最上位魔物。超強力な「邪(よこしま)光線」で勇者どもをなぎ払う。ただ召喚に必要な軍パワーが高く、なかなか召喚できないかも?
ミミック類
空になった宝箱と魔物を合成すると、宝箱型の魔物・ミミックが作れる。勇者の通りそうな場所に置き、宝箱だと思って近づいてきた勇者を襲わせろ!
理想は『Vなま』でのユーザー同士の対戦プレイ
──今作でも “ずかん”のプロフィールがおもしろいですね。
山本:“ずかん”は、このシリーズの醍醐味ですからね。VRになったとはいえ、やっぱりはずせないよねってことで、それ用の「魔界ガーデン」という場所を作り、そこで魔物や勇者のプロフィールが閲覧できるようにしました。
──なかなか出会えない勇者もいるのでしょうか?
大橋:攻略の仕方によっては出てこない勇者もいますね。たとえば特定の拠点を制圧しないと出てこないやつとか。
とはいえ、難しい条件はないので。何回か遊べば、コンプリートできるかと。
山本:シリーズでおなじみの勇者はもちろん、ステージをまたいで何度も出てくる勇者とかもいて、プロフィールが物語みたいになっていたりもするので、そのあたりも相変わらず見どころだと思います。あとはステージも、どこかで見たことのあるようなものも、ところどころ入れていたりします。自分がプレイしてきたRPGのいろんな名場面みたいなものを紐解きつつ、本作ならではの物語を想像してもらえるとけっこうおもしろいんじゃないかなと。じつは最初はもっといろいろやろうって話もあったんですけどね。
大橋:やりたかったですねぇ。やりたいこといっぱいありましたよ!(笑)。
山本:ある王子を探している姫みたいなやつがいたり。「よく見ると村と城を行き来してるな、こいつ」みたいな。サマルトリアか!
大橋:勇者の挙動でストーリーを感じさせるところまでいけるとよかったんですけどね。そのへんはチャンスがあれば次の機会に。
──本作を開発してみて、VRタイトルや「勇なま」に限らず、今後こんなものを作ってみたいとアイディアみたいなものは出てきましたか?
大橋:VRでいえば、やっぱりトップビューのリアルタイムストラテジーライクの作品をもっと突き詰めたいなぁと思ってますね。VRを活かした演出やルールのアイディアも沸きあがってきましたし。「勇なま」に関して言えば……、ま、また地下に戻りたいなぁと(笑)。今回VRで地上を舞台にしたことで、なんだか沸々と地下のネタがまた出てきました。あ、地下と地上を行き来してもいいですね。
山本:そうね! やっぱ地下いいんだよね。
大橋:地下もある、VR「勇なま」もアリかな。
山本:真下を見た視点でずっと掘っていく(笑)。下スクロールみたいな(笑)。
大橋:ぶっちゃけシリーズ3作品、地下でやってきて、もう地下はお腹いっぱいになってたんですよ。ネタも出てこないし。でも、今回地上を舞台にしたら、沸々と地下のネタが湧き出てきて。
山本:もともとプランニングの広がりって、限定しないほうが広がるじゃないですか? でも、「勇なま」はステージがずっと地下のダンジョンというゲームだったので、ステージ=出てくる勇者のバリエーションでボリュームを出すのは結構大変で。今回発見だったのは、地上を舞台にすると、こんな大陸もありましたって、どんどん広げられるってこと。そこでネタが尽きることはないなぁって。
大橋:地上が舞台だと、ギミックもいろいろ作れますし、それを地下でもやれるんじゃないかって思ったりしてます。
山本:ボクのやりたいことは、『Vなま』でのユーザー同士の対戦プレイですね。ユーザー同士が魔王軍と勇者軍にわかれて、ボイチャでお互いにおしゃべりしながら戦うっていうのは、ゲームプレイとしてはけっこう新しい形になるんじゃないかなと。4人でできたら、新たな麻雀が生まれる。ま、それは麻雀をやればいいのか!(笑)。
──最後になりますが、ここに注目して遊んでほしいというところを教えてください。
大橋:単純なミニチュアじゃなくて、生き物の愛らしさをすごく出したかったんですよ。そこで重要になってくるのは造形もそうなんですけど、アニメーション。愛くるしく生き生きと動き回る魔物の動きはぜひ見てもらいたいなぁと思います。
山本:魔王とムスメの親子の間に、なぜか1人、お客さんが呼ばれてしまい、一緒にワイワイ言いながら、ゲームを楽しんでいるという空間自体をぜひ味わっていただきたいと思います。ま、ゲームオーバーのときは後ろの扉から勇者が来ちゃうんですけどね(笑)。現実にはあんな空間はないし、でも、友だちと一緒にゲームをやるってことは現実にあるじゃないですか? そのちょうどいいハザマにいられるようなコンテンツにしたつもりなんで、そのあたり楽しんでいただきたいなと!
『Vなま』新情報ピックアップ! その5
金色に輝くレア勇者や見るからに不気味なチート勇者といった、特殊なタイプの勇者の存在も判明。レア勇者は1ステージに1体出現し、倒せば、ドラゴンオーブをドロップ。一方チート勇者は、ステージごとに設定された征服期限を過ぎると不穏なBGMとともに現れ、たいへん不適切な強さで魔物たちに襲い掛かる。
インタビュー読破おつかれさま! 特集の最後を飾る第3回目では、「勇なま」コアユーザーと初心者ユーザーによるプレイインプレッションを掲載予定。乞うご期待!
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V!勇者のくせになまいきだR (ぶいっ! ゆうしゃのくせになまいきだ りたーん)
・発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
・フォーマット:PlayStation®4
・ジャンル:リアルタイムストラテジー(VRTS)
・発売日:2017年10月14日(土)予定
・価格:パッケージ版 希望小売価格 4,900円+税
ダウンロード版 販売価格 5,292円(税込)
・プレイ人数:1人(オンライン時:未定)
・CERO:A(全年齢対象)
※PlayStation®VR専用
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