世界累計販売7,690万本(*)を超える「グランツーリスモ」シリーズの最新作、PlayStation®4用ソフトウェア『グランツーリスモSPORT』。10月19日(木)の国内発売に向けて完成間近となった本作を改めて紹介する機会として、企画・制作にあたったポリフォニー・デジタル東京スタジオにメディアを招いてのスタジオツアーが行なわれた。
*2016年12月末時点。パッケージ版販売本数(ソニー・インタラクティブエンタテインメントから販売店などに引き渡された数量)およびダウンロード販売数の総数。
タイトルプレゼンテーションに始まり、開発現場を紹介するスタジオツアー、さらには初公開となる製品版ベースのゲーム試遊まで、『グランツーリスモSPORT』の全容が明らかとなったイベントの模様をレポートしよう。
製品版ベースのお披露目となったタイトルプレゼンテーション
この日のプログラムは、タイトルプレゼンテーションからスタートし、「グランツーリスモ」シリーズプロデューサーの山内一典が登壇した。
ポリフォニー・デジタル代表取締役兼プレジデント
「グランツーリスモ」シリーズプロデューサー
山内一典
山内は「『グランツーリスモSPORT』は、これまでのシリーズ作品に比べて、非常に多機能で巨大なタイトルになっています。実際に見て触っていただかないことには、全貌が伝わらないだろうと思い、みなさんにお集まりいただきました。では、体験してもらうまえに、どんな機能を持っているのかを簡単に説明していきましょう」と述べると、トップ画面からアクセスできるゲームモードや機能について、自ら操作しながら解説を始めた。
本作はこれまで、体験会やクローズドベータテストなどさまざまな場面で披露されてきたが、ゲームモードや機能のほとんどが有効になっているのが公開されるのは今回が初めて。この”製品版ベース”のバージョンを使い、注目モードの特徴が解説されていった。
7歳から77歳まで、誰もが楽しめる「キャンペーン」
「キャンペーン」モードには、初心者から上級者まで、誰でもスキルを上達できる「ドライビングスクール」、レース中のさまざまなシチュエーションにチャレンジする「ミッションチャレンジ」、各サーキットの一定区間ずつ段階を追って習熟できる「サーキットエクスペリエンス」などを搭載。それぞれで達成度に応じて、ゴールド、シルバー、ブロンズのトロフィーを獲得でき、楽しみながらレースに必要なスキルを磨くことが可能だ。
また、これらをクリアするためのサポートとして、参考ビデオを見られるようになっているのが特徴。山内は「これまでの「グランツーリスモ」にもミッションに挑戦しながらスキルを上達していく要素はありましたが、どうすれば速く走れるのかという初心者の疑問に答えられていないのが欠点のひとつでした。本作ではテキストによる解説だけでなく、お手本となるビデオを見ることで、初心者にもわかりやすく伝えられるようになっています」と語り、7歳から77歳までプレイできるゲームを目指し、初めて触れる方、久しぶりに帰ってきた方でも楽しめるように作ったことを強調した。
自動車ブランドの玄関となる「ブランドセントラル」
クルマを購入するための場所は、これまでのカーディーラーから「ブランドセントラル」へと呼び名を変え、自動車ブランドそのものを感じて楽しめる新たなポータルとなっている。
各ブランドを選択すると、「ショールーム」でクルマを購入できるだけでなく、そのブランドが公開しているプレミアムなビデオを閲覧できる「チャンネル」や、ブランドと世界の歴史を合わせてたどる「ミュージアム」も楽しめる。
また、「関連スポット」では各ブランドの関連施設が表示され、次に紹介する「スケープス」の技術を使った写真撮影が可能。まだ購入していないクルマも撮影に使えるので、クールな写真をたくさん撮りたいプレイヤーにうれしい機能だ。
新しいHDR写真の世界の始まり「スケープス」
プレゼンテーションの中でも、山内が時間をかけて説明していたのが「スケープス」だ。このモードには、自然や街並など世界各地で撮影した1,000もの撮影スポットが収録されており、そこにクルマを配置して自分好みの写真を撮ることができる。
これらの撮影スポットは光の情報や空間情報を持っているため、写真を撮る際にライティングを自在に変更できるほか、走行中を撮影したような流し撮りも可能。まるで高性能デジタルカメラを使っているよう撮影機能の数々や、見た目のエフェクトを手軽に変えるプリセットも多数用意されているという。
また、所有しているクルマを管理する「ガレージ」内の機能として、クルマの外観を自分好みにデザインできる「リバリーエディター」がある。さまざまなデカールやグラフィックがあらかじめ用意されているほか、オリジナルのデカールを作成することもでき、こうしてデザインしたクルマを「スケープス」で撮影するのも楽しみのひとつとなる。
「グランツーリスモ」を生み出したスタジオの秘密が明らかに!? ポリフォニー・デジタル、スタジオツアーの模様を紹介!
今回のイベントでは、今まさに『グランツーリスモSPORT』の開発が行なわれているポリフォニー・デジタルのスタジオを山内が案内するスタジオツアーも実施。通常ではなかなか入ることができない開発セクションでは、クルマのモデリングや、コースの制作工程が説明された。「グランツーリスモ」では伝統的にほぼすべてのデータを外注せずに、スタジオ内で制作しており、それが公開されるのはとても貴重なことだ。
クルマのモデリングについては、まず実車をレーザースキャンして点群のデータを取り、そこにアーティストが手作業でポリゴンの面を張り付けていくところからスタート。外装から内装まで1台あたり5,000枚ほどの写真と見比べながらあらゆる部分で細部までシェイプを整え、素材の質感をつけて……と段階的に制作を進め、6ヶ月ほどかけて完成させるそうだ。各パーツはヘッドライトの内部構造や、メーターの数字のひと文字までこだわって再現されており、ざっくりしたモデルを作るのに3ヶ月、さらに細部を調整するのに3ヶ月をかけるという。
コースも、実在コースの場合はGPSと連動したレーザースキャンで大まかな周囲の地形データを取り、そこに面を貼りつけていく、クルマのモデルの制作と同様の手法で制作を進めていくそうだ。路面に関しては、コース全体とは別にさらに細かく測定を行ない、3ミリ四方程度の精度で各コースの路面状況を再現しているとのことだ。
また、配置されるオブジェクトについてもこだわりがあり、例えば樹木は各コースがある地域の植物の植生を調べてさまざまなパターンの植物を作成。葉の1枚1枚をスキャンするなどして、樹皮や枝ぶりまで意識しながらコースに反映させている。鈴鹿サーキット名物の観覧車も、まず細かいボルトのひとつひとつまで再現した精密なモデルを作り、それを必要に応じてゲーム中に使用。コースのモデルだけでなく、さまざまな時間帯の光の状態の再現まで意識した作りこみが行なわれている。
山内の説明で印象的だったのは”「グランツーリスモ」のモデリングに魔法はなく、そのクオリティはすべてアーティストの努力の積み重ねで作られている”という言葉。シリーズを通じて積み重ねられてきたテクノロジーに対するノウハウと新たなチャレンジ、それらを活かした圧倒的なまでの作りこみが「グランツーリスモ」のクオリティを支えていることを感じさせた。
ツアー中、開発セクションの撮影は残念ながらNGだったが、ほかにもスタジオ内には気になる場所や、シリーズファン垂涎のアイテムがいろいろあった。以下ではその見どころを一挙に紹介しよう。
ミーティングなどにも使われるロビー。その一角にはDJブースがあり、年に1度はDJを招いてパーティなども行なわれるとのこと。壁面には歴代の「グランツーリスモ」や、ポリフォニー・デジタルの活動に対して贈られたさまざまな賞のトロフィーが飾られ、シリーズの20年の歴史と、その高い評価を感じさせる。
通路の壁面には大きな棚が据え付けられ、取材用の撮影機材、実車のテールランプやマフラーなどのパーツ、さまざまなモデルカーなど、「グランツーリスモ」制作に必要な機材や資料が収められている。大量のプラモデルは、現在資料としては使われていないが、社内を彩るディスプレイとしてそのまま残してあるという。
グラフィックチームの壁には、ゲーム中のユーザーインターフェースや、「グランツーリスモ」に関する各種のロゴ、パッケージ用のイラスト素材などが貼られ、スタッフ間のイメージの共有に役立てられている。
アイルトン・セナ財団から贈られたレプリカヘルメットや、「グランツーリスモ」オリジナルマシンである「レッドブル・X2010」制作の際にエイドリアン・ニューウェイ氏とのやり取りに使われた資料なども。シリーズファン・レースファンにとっては垂涎のお宝だ。
社員が休憩の際などにくつろぐためのスペースには大型モニタとゲーム機がずらり。かつて喫煙室だったという奥のスペースは、現在「グランツーリスモ」シリーズの名曲を多数手がけたコンポーザーとして知られる嘉生大樹さん(ゲーム中では「DAIKI KASHO」のクレジットでおなじみ)がさまざまな楽器を持ち込み、サウンドスタジオと化しているそう。山内いわく「高校の部室みたいな場所ですね(笑)」とのこと。
こちらは山内の作業スタジオ。パソコンのほかに楽器のキーボードがあり、時には気晴らしに自分で曲を作ったりもするそうだ。大量のカメラのレンズは、クルマやサーキット取材用の撮影機材を検討するにあたって、山内自身が自腹で購入したもので、その中から撮影に用いる機材を選んでいるという。
ポリフォニー・デジタルの一角に特設された広い試遊スペースには、20台以上の試遊機を完備。今回はここに製品版とほぼ同等の仕様の『グランツーリスモSPORT』が用意され、体験会が実施された。
山内一典が語る、『グランツーリスモSPORT』への想い
ツアー中には山内へのインタビューも実施されたので、その内容を紹介しよう。
――『グランツーリスモSPORT』もいよいよ発売が近づいてきましたが、本作にかける意気込みを改めて教えてください。
今回、初めてみなさんに『グランツーリスモSPORT』の全容をお伝えすることができました。本作はこれまでの20年間に生まれた「グランツーリスモ」の良いところと、エッセンスを取り入れたうえで、スポーツモードやHDRへの対応、新しい写真の世界であるHDRフォトグラフィーといった新しいフィーチャーを足していて、言ってみれば新世代の「グランツーリスモ」の基本形が整ったのが『グランツーリスモSPORT』だと思っています。
制作にあたって、僕らは最初の「グランツーリスモ」を作った時の気持ちで作りました。「グランツーリスモ」はシリーズを重ねるごとにいろんなトライアルをしている作品で、それが正しかったこともあるし、間違っていたこともある。『グランツーリスモSPORT』は、その中でも本質的に重要なことを、過去20年間から振り返って、きちんと統合しようという気持ちがすごくありました。つまり、もう一度「グランツーリスモ」のこれからの20年間を考えてデザインし直したものが、『グランツーリスモSPORT』ということになります。
――一度発売が延期されましたが、その理由をお答えいただける範囲で教えていただけますか。
「グランツーリスモ」には、すべてをやり過ぎな状態でユーザーに届けたいという思いがあるわけですが、いつもそれが叶うわけではありません。例えば『グランツーリスモ6』はPlayStation®3で制作していましたが、PS4®の発売が迫ってきて、その前に出す必要がありました。
ゲーム開発というのは、どこで終わりというのが決められないものです。今まで「グランツーリスモ」を出すごとにそう言った物語は常にあって、最初の『グランツーリスモ』にしても5年かけています。『グランツーリスモSPORT』では、いろいろな人の期待に応えつつ、本当にまじめに作って、やりたいところまでやりたいという気持ちが強かった。そうした中で昨年に一度発売日が決まったわけですが、その時点で僕が思ったのは「出せなくはないけれども、これで出してしまうと自分が後悔するだろうな」ということ。ですから、ちょっとわがままを言わせていただいて、発売日を遅らせてもらいました。
――過去のシリーズと比較して、開発環境などに変化はありましたか?
ビデオゲームの進化というのはすさまじいものがあって、ハードが変わるごとにあらゆる状況がガラッと変わります。それに応じて、ソフトウェアの制作体制や制作手法も同じであり続けることはなく、その都度、作り方から見直して作っています。
先ほどスタジオツアーでクルマをモデリングしているところを紹介しましたが、「グランツーリスモ」というタイトルは、常にやり過ぎる作品です。ゲームを構成するそれぞれのピースすべてにおいて「ここまでで十分」という境界がなくて「それ以上のところまで実際にやってみる」。ですから、なかなか事前の計算どおりにはいきません。ある程度やることを絞れば、その分だけ未来を予想することもできますが、「グランツーリスモ」は結果としてこの20年間やり過ぎたことによって、全世界で8,000万人ものユーザーが買ってくれているという背景があります。だから、僕らとしても手は抜けない。いったいどこまで行けるのか、常に限界までチャレンジしているところはあります。
――クルマ1台のモデリングの制作に6ヶ月がかかるとお話されていましたが、これは従来から変わらないのでしょうか。
変わっていないですね。『グランツーリスモ5』の時代でも6ヶ月はかかりました。制作プロセスの効率化や、ツールの進化によって制作の効率自体は上がっていますが、そのぶん僕らがターゲットにするクオリティも同時に上がっているので、制作期間はなかなか短くならないですね。
――今後の技術の進化によって、さらに短くなる可能性はあるのでしょうか。
クルマに関して言うと、かなり難しいと思います。1台1台について、自動化できる部分というのはすでに自動化していますし、そのうえで本当に人間にしかできないところを人間がやっていますから、それ以上効率化するというのは非常に難しい。「グランツーリスモ」のモデリングというのは、おそらく今あるレースゲームの中では唯一、すべてポリフォニー・デジタルで内製し、外注には出していないタイトルです。それがシリーズのクオリティを支えている要素ですし、その部分は「グランツーリスモ」として守らなければいけないことだと思っています。
――本作のクルマのモデリングは現状のフルスペックともいえるクオリティで作り込まれていますが、これからさらにクオリティが上がっていくのでしょうか。
現行のクルマのモデリングは、向こう10年使えるモデルとして制作をしていて、おそらく1,000台、2,000台という規模までは今の仕様で作ると思います。「グランツーリスモ」のシリーズで言うと、だいたい4世代目ぐらいのモデリングになりますが、その間にハードウェアのスペックも数10万倍という規模で上がっています。実際に10年たった時にそのクオリティが自分たちのやりたいことに十分でないと判断したならば、また一から作り直すでしょう。
――今回はウィンカーが操作できたり、パッシングができたりと、今まで以上に非常に細かい部分まで再現されています。そうした自由度が上がっている点を含め、シリーズを通してユーザーに体験してほしいことが変わっているのでしょうか。
ウィンカーやハザードの操作は以前からやりたかったことで、今までやりたくてもできなかったものが、今回やっとできるようになったということが大きいですね。もともと「グランツーリスモ」は、とてもシンプルな作りで、クルマ自身の美しさ、運転の楽しさ、クルマに光が当たった時の光の美しさ、おおむねその3つの要素から成り立っています。それらを追求したうえで、最大限の自由度をユーザーの方に体験してほしいと思って作っています。今回はそれが、僕らが考えている全部ではないにせよ、ずいぶん実現したことになります。
――スタジオツアーで見せていただいた観覧車などもそうですが、通常では見えない部分にそこまでこだわる理由とは?
鈴鹿サーキットの観覧車は結構遠くにあるので、実際だと見えそうもないわけですけど、じつはゲーム中でそうした細部が見えないわけではなく、見える時もあるというのがポイントです。ああいった凹凸は最終的にノーマルマップという立体情報を含んだテクスチャーに変換されます。それは1枚のテクスチャーのようでいながら、立体情報を持っている。ゲームになって、そこに太陽の強い光が入った時、ボルトの頭にキラッと太陽の光が入る瞬間というのがあります。そういうテクスチャーを作るためには、まず立体のモデルがきちんとできていないと作れません。
――その、とことんまでやろうというスタッフのみなさんのモチベーションはすごいですね。
とことんまでやるという意味で、僕は「グランツーリスモ」がすごく日本的なタイトルだと思っています。やり過ぎともいえる、必要以上のことをやってしまうことについて、僕は日本的な感性だと思っているんですよ。「これだけコストをかけたから、これだけゲインがなければいけない」みたいなトレードオフの感覚はそこにはなく、何にせよ、まずやり過ぎること、そしてそれを差し出すこと。そこからすべてのコミュニケーションが始まるという考え方は、古き良き日本的な感覚ですよね。根底に「ユーザーに驚いてほしい、ユーザーをもてなしたい”」という考えが、すごく大きいものとしてあると思います。
――発売時点での収録台数は150台となっていますが、そのほとんどがスポーツカーのようです。今後は、一般の自動車も登場するのでしょうか。
アップデート、あるいはダウンロードコンテンツで追加していこうと思っています。今回はスポーツカー、とりわけレーシングカーが最初の時点から必要だったのは、FIAチャンピオンシップのために、すべてのカテゴリーのレースカーを用意する必要があったからです。一見すると比重がそちらに傾いているように見えますが、スポーツカーだけでなく、ちょっと古いクルマや、みんなが乗っているファミリーカー、あるいはうんと古いクラシックカーまで、そういうクルマも「グランツーリスモ」としては大事な存在なので、どんどん追加していきたいです。
――PlayStation®VR対応にあたって、平面での表現のリアリティと、VRのリアリティはまったく違うものだと思います。その表現の実現や、制作にあたっての苦労などを教えてください。
VRへの対応でいちばん大変なのは、主に負荷対策です。左右の目に合わせて2枚の映像を描画しなければならないし、フレームレートの維持に関してもVRは非常に厳しいので、そこを解決するのがいちばん大変でした。結果として、今PS VRでできるVR体験という意味では、最高レベルのものができたと思います。内装をあそこまできちんと作ってあるというのも、VRを見据えてのことでした。本当の内装体験みたいなものは、やっぱりVRでこそ生きるところがありますから。
――VR酔いへの対策は?
できることは全部やっています。ただ、クルマというのはもともと酔いにくいものです。座って操作するものであり、操作系が限られています。ステアリング、アクセル、ブレーキ、そういったものでコントロールするところ。それから内装があって、その向こう側に景色が広がっているという、自分のポジションを見失わないような空間になっていますから。もともとVRとドライビングゲームとの相性は良いと思っています。
あとは、クルマの挙動。普段みなさんが運転しているクルマと同じように直観的に動くような挙動になっていれば、酔いは発生しにくいです。人間は常に、こうして話しているときも、歩いているときも、無意識のうちに何秒か先の未来予測をしながら行動しているわけですが、その未来予測がズレた瞬間に酔います。本当に、1秒もかからず酔ってしまう。そうした状況を徹底的になくすようにしています。
――「キャンペーン」モードの中にお手本の動画があり、今回プレイできたものは英語でナレーションが入っていました。こうした動画は日本語にローカライズされますか?
動画は多言語に向けてローカライズするつもりで、日本版は、たぶん女性の声になると思います。これまでの「グランツーリスモ」にも、模範リプレイみたいなものが入っていましたが、熟練したプレイヤーが横でアドバイスしてくれたらすぐわかるようなことでも、リプレイだと何回見てもどこがツボなのかわからなかったりすることが多かった。とりわけレースゲームを初めて遊ぶ方や、クルマを初めて運転する方にとっては、それが大きな障壁だったので、その問題を解決するためにナレーションを入れる形にしました。動画では「ここに気をつけるとうまく走れるよ」ということを伝えようとしています。
――『グランツーリスモSPORT』ではインストールに必要なHD容量が60GB以上となっています。もはやすべてのデータを収めるには、ブルーレイディスクでは足りなくなっているのでしょうか。
そのとおりです。今回ご覧いただいた「スケープス」でも、背景に使われる写真がHDRでRGB各32bitの情報を持っていて、しかも空間情報まで持っていますから、写真1枚あたりのデータ容量が数百MBにもなります。「スケープス」では最初から1,000枚ぐらいの写真を用意したいと思っていますが、そのすべてはディスクに入りません。必要に応じてダウンロードする形式にせざるを得なかったのです。過去あったようなディスク2枚組というパッケージも、技術的にはもちろん不可能ではありませんが、できるところまで収めておいて、必要に応じてダウンロードしたほうが、ユーザーの利便性は高いのかなという気はします。
――本作でも多くの自動車メーカーの協力を受けていると思います。『グランツーリスモSPORT』の開発において、そうした自動車メーカーとのやり取りの中で印象深かったことなどはありますか?
自動車メーカーのみなさんとのやり取りは、常に刺激に満ちています。自動車業界というのはすごく競争の激しい業界ですし、面白い人たちがたくさんいます。デザイナーの方やエンジニアの方と僕らは大変仲良くさせていただいていますが、常に興味深い話に展開することが多いです。
例えば、本作ではポルシェが収録されることになりました。そのきっかけは、去年のル・マン24時間レースで、ポルシェのエンジニアのみなさんにお会いしたことです。彼らに時間を取っていただいて、そこで『グランツーリスモSPORT』のコンセプトを伝えて、一体どんなことをやっているのかをプレゼンテーションしました。その時にポルシェの方が、本作のコンセプトや考え方を聞いて「これは本物だ」「このゲームはレースのことをわかっている」という言い方をされて、「だから、ポルシェとしてこれは関わらなければいけない」とも言ってくれました。その出来事は面白かったですね。
そう言っていただけたのは、クルマ好きとしての熱意もあるでしょうけど、エンジニアリングに関する僕らの姿勢を感じてもらえたからだとも思います。自動車というものや、レースというものを正しくとらえていると評価していただけたから、ご協力をいただけた。今回のFIAグランツーリスモチャンピオンシップに関しても、そのコンセプトやシステム、ルールに対して、長年レースをやってきた方の共感というか、押さえるツボを押さえているということを理解していただけたのだと思います。
――実車の世界ではクルマの自動運転化が大きな話題となっています。「グランツーリスモ」もそうした動きに関わりを持つことになるのでしょうか。
自動運転は実際のリアルな世界で実験するのが難しい技術なので、基本的にはシミュレーションベースでいろいろ実験をしています。そのために「グランツーリスモ」を使って自動運転の開発をしている企業が、すでにあります。僕らが望む望まざるに関わらず、今の「グランツーリスモ」が自動運転の開発に使われていますし、『グランツーリスモSPORT』も、リリースされるとおそらくさまざまな形で自動運転技術の開発に使われるんだろうなと思っています。
「グランツーリスモ」シリーズには、過去に「Bスペック」という自分で運転しないゲームモードがありました。クルマのセットアップをして、かつストラテジーをあらかじめ入力しておくことで、まったく自分が手を触れずにレースを楽しめる。結果がどうなるかは、事前にセットアップしたクルマとストラテジー次第なところがあって、今回の『グランツーリスモSPORT』にはそのモードは入っていませんが、いずれ復活させようとは思っています。
自動運転の必要性には、たぶんいろんな見かたがあると思いますが、スポーツカーと自動運転の関係でいうと、僕はフェラーリにこそ自動運転がほしいです。スポーツカーであればあるほど、普段乗りの快適性ってどうしても落ちてきてしまうので、そういうときこそ自動運転があったほうがむしろスポーツカーは生きるのではないかという気がしています。渋滞の中でフェラーリに乗るのは苦痛ですから、ワインディングロードやサーキットまで、自動運転で行ってくれるといいなと思いますね(笑)。
――クルマのモデルを、どこかのメーカーがデジタルカタログとして使わせてほしいといったお話は?
そういう話はしょっちゅうあります。今回の「スケープス」のようなテクノロジーは自動車メーカーの方にとっても初めてのテクノロジーで、カタログ写真を作るのにすごく向いています。ですから、実際にそういうお話もすでにあって、『グランツーリスモSPORT』を完成させたら、エンタープライズ向けの「グランツーリスモ」というか、業務用の「グランツーリスモ」というのを開発しなければいけないなと考えています。
――自動運転開発用なども……?
先ほどもお話ししたように、市販されている「グランツーリスモ」をそのまま使って自動運転が開発されているメーカーさんもあるわけですが、例えば、クルマの車速を測るのに画面に表示されている車速の部分を画像認識して車速のデータを取ったりしています。そういった情報であれば、ある特定のAPIを通じて外に出すこともできるので、その機能を持つエンタープライズ向けの「グランツーリスモ」というのは、今の『グランツーリスモSPORT』が終わったらやろうと考えています。
試遊プレイで各モードを体験! そのプレイフィールはいかに?
この日のスタジオ内には試遊スペースが用意され、製品版ベースのバージョンを自由に体験することができた。今回お披露目となったモードや機能を中心に、実際に体験したうえでの特徴やプレイフィールをお届けしよう。
キャンペーン
「キャンペーン」メニューは、従来シリーズの「ライセンス」などにあたる、ドライビングの基礎を学ぶための機能を集約したモードだ。
収録されているのは、基礎からドライビングを学べる「ドライビングスクール」、パイロン倒しなどのミッションに挑戦し、目標の達成を目指す「ミッションチャレンジ」、収録コースの基本的な攻略法を学べる「サーキットエクスペリエンス」、サーキット走行のルールやマナーを学べる「レーシングエチケット」の4モード。今回は「レーシングエチケット」以外の3モードを体験できた。
注目すべきは、各モードに用意されたドライビングのお手本となる動画。従来にも動画によるお手本は用意されていたが、『グランツーリスモSPORT』ではこの動画に、攻略のポイントを説明したナレーションがつき、さらにわかりやすくなっていた。
アーケード
ひとりで気軽にレースを楽しむために用意された「アーケード」メニューでは、「シングルレース」「2プレイヤー対戦」「VRドライブ」「タイムトライアル」「ドリフトトライアル」「カスタムレース」の6つのモードがプレイ可能。レース自体はこれまでイベントなどで楽しむことができたが、製品版同様の形で各モードをメニューから選び、プレイできたのはこれが初めてのことだった。
各レースで選べたコースは、レイアウト違いも網羅された9コース。その中でも注目したのは、今まであまり情報がなかったコロラドスプリングスとサルディーニャの2つのダートコースだ。滑りやすいダート路面は、コースの細かいギャップで大きく体勢が崩れたり、タイヤのグリップをきちんと意識しないと加速しにくかったりと、サーキットコースとはまた違ったテクニックが必要だ。
ダート走行は最初こそ難しさを感じるが、走りこんでズルズルと流れる車体をコントロールし、スピードを落とさずにコーナーを抜けられるようになると、その感覚がちょっとクセになってくるもの。従来のシリーズでもダート走行はできたが、『グランツーリスモSPORT』では挙動やグラフィックの進化、より繊細になったコントローラーの振動などを通じてプレイヤーに与えられる情報量がさらに増え、走りやすさがさらに向上している印象だ。
加えて今回は、本格的なフォースフィードバックを体感できるステアリングコントローラーでの試遊だったため、手元からタイヤが踏ん張る感覚がしっかり伝わってきて、グリップをキープしながら走りきれたときの達成感がとても強かった。今後のイベントなどの試遊でプレイすることもできそうなので、シリーズファンは機会があれば進化したダート走行をぜひ体感してみてほしい。
また、「東京オートサロン 2017」や「E3 2017」でも出展されていたPS VRを使ったVRモードは、今回ウィロースプリングスの2レイアウトに加えて、ダートコースのコロラドスプリングスで走れるようになっていた。実際のレースカーのコクピットに座ったかのような状態でドライビングを体感するVR体験はやはり格別! VRについてはまだまだ調整中とのことだったが、ヘアピンが続くショートコースや、ズルズル滑るダートコースを走っても特に酔う印象はなく、そのスムーズさや自然さは、これまでの展示からまた進化を遂げていたように感じられた。製品版でどこまで進化を遂げるのか、こちらも楽しみだ。
ブランドセントラル
各メーカーへのポータルとして新装された「ブランドセントラル」。新しく購入するクルマのスペックをチェックするだけでなく、そのメーカーのブランドイメージやスピリットまで感じ取れるようになっている。
「チャンネル」でメーカーが公開しているムービーを眺めるのも楽しいが、特に目を引いたのが「ミュージアム」だ。ここではメーカーの歴史を年表と写真でたどりつつ、同時期に起こった世界のトピックを合わせて見ることができる。たとえば、BMWが誕生したのは1917年。これだけでも歴史の長さを感じられるが、同じ年にロシア革命が勃発していることを知ると、さらに歴史の深みが増す。
世界年表のトピックは、政治、テクノロジー、芸能など、さまざまなジャンルから集められており、1980年代あたりに入ると、懐かしさを感じるトピックもちらほらと。「CDプレイヤーが発売されたころに、このモデルが誕生したのか!」と、自分が見知った歴史と合わせて見られるのはなんとも楽しい。
こうしてメーカーのブランドを深く知っていくと、クルマの購入が単なる所有車追加だけではなくなる。まるで実際のカーディーラーに足を運び、新車のオーナーになるワクワク感まで味わえるようだった。
スケープス
これまでの「グランツーリスモ」シリーズもフォト機能が充実していたが、今回の「スケープス」は「ここまでやるか!」という高機能が詰め込まれている。1,000もの撮影スポットは、それぞれが光と空間の情報を内包し、クルマを配置したときのライティングが美しくも自然。現実そのものの色彩表現を可能としたHDR Wide Colorの恩恵を、強く受けているモードともいえる。
撮影機能も、最新のデジタルカメラでできることをほぼ再現しており、カメラに詳しい方も納得の表現が可能なほか、プリセットでお手軽にエフェクトをつけたあとで微調整できるのもうれしい。
また、今回は「ガレージ」の「リバリーエディター」も体験。あらかじめ用意されていたPS.Blogのロゴをデカールとして貼ってみたが、位置やサイズ、角度を自由かつ簡単に設定できた。こだわり派は、オリジナルのデカールを作成してみても楽しいだろう。
クルマのデザインが完成したところで「スケープス」に戻り、朝日がまぶしいロンドンの街並みに合わせて撮影。さらには、レースのリプレイから好きな瞬間、距離、角度での撮影も楽しめる。
撮影した写真をはじめ、作成したデカールやデザインしたクルマは、完成したそばからフレンドにシェアすることが可能。自慢の1枚を見せあったり、オリジナルのデカールを交換したりと、共有する楽しさを味わえるのも良い。
実際、「スケープス」の体験中はクルマを走らせることがほとんどなかったが、それでも時間を忘れて夢中になれた。ドライビングの楽しさはもちろん、クルマを愛でる楽しさにもとことんこだわっているのは、『グランツーリスモSPORT』の特徴と言えそうだ。
発売に向け、着実に完成へと近づく『グランツーリスモSPORT』。今回のスタジオツアーで体験したモードや機能は、どれもすさまじいほどのクオリティを感じることができた。遊べる日を待ち望んでいる方も納得できる楽しさなので、ぜひ期待してほしい。
PS Storeにてダウンロード版の予約受付中!
PlayStation™Storeでは、『グランツーリスモSPORT』ダウンロード版の予約を受付中! 通常版と『デジタルリミテッドエディション』共通の早期購入特典として「ボーナスカーパック(3台)」が付属。『デジタルリミテッドエディション』には「スターターカーパック(8台)」や「リバリーステッカーパック」が同梱されるほか、限定特典として「ゲーム内通貨100,000,000Cr.(クレジット)」と「ゲーム内アイテム ヘルメット」ももらえる!
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グランツーリスモSPORT(「グランツーリスモスポーツ」)
・発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
・開発元:ポリフォニー・デジタル
・フォーマット:PlayStation®4
・ジャンル:リアルドライビングシミュレーター
・発売日:2017年10月19日(木)予定
・価格:パッケージ版 通常版 6,900円+税
パッケージ版 リミテッドエディション(初回限定) 9,900円+税
※初回生産限定の商品となります。無くなり次第終了となります。
ダウンロード版 通常版 7,452円(税込)
ダウンロード版 デジタルリミテッドエディション(期間限定) 8,532円(税込)
※期間限定販売の商品となります。販売期間は追ってお知らせいたします。
・プレイ人数:1~2人(オンライン時:2~24人)
・CERO:審査予定
※PlayStation®VR対応
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