2001年に発売されたPlayStation®2用ソフトウェア『Rez』は、ワイヤーフレームで描き出された電脳空間を舞台に、続々と迫り来るウイルスを破壊していく3Dシューティングゲーム。敵をロックオンし、撃つことでサウンドが鳴り響き、それが映像や効果音などにシンクロしてプレイヤー自身が音楽を奏でているような共感覚(シナスタジア)を味わえる「ミッドナイト・ハイ・シューティング」は、ゲームファンに絶大なインパクトを与えた。
あれから15年が経った2016年10月13日(木)、PlayStation®4用ソフトウェアとなった『Rez Infinite』がいよいよ登場。同日に発売されるPlayStation®VRに対応し、大きな注目を集めるローンチタイトルだ。
オリジナル版『Rez』をリマスターしただけではない、究極の共感覚を味わえるまでに進化した『Rez Infinite』の魅力を、Enhance Games水口哲也氏のインタビューとともにお届けしよう。
Enhance Games Founder/President
水口哲也氏
水口氏が本作への想いを語る「Rez Infinite メイキング映像」が現在公開中。あわせてチェックしてほしい。
Rez Infinite メイキング映像
「PS VR対応」「4K対応リマスター」「新ステージ”Area X”搭載」の3つを実現した『Rez Infinite』
インタビューに先立ち『Rez Infinite』を体験させてもらうことができた。水口氏によれば、オリジナル版『Rez』を作った2001年、すでに頭の中ではVRで遊ぶゲームとしてのイメージを持っていたが、当時はそのイメージを実現することができなかったという。本格的なVR時代が到来した今、「いち早くVR化したい。新しく作るなら完全リマスターしたいし、新しいステージも当然作りたい」という思いの元、ひとつの作品になったのが『Rez Infinite』なのだ。
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テレビモニターに映し出されたメニュー画面を見ると、ゲームモード選択のほかに「TVモード」と「VRモード」の切り替え表示が確認できた。モニターとPS VRヘッドセットのどちらでも全てのモードをプレイすることができる。VRモードでプレイする際は、ゲームの進行は同じでも360度を見回すことができ、ヘッドトラッキングでカーソルを動かしてのロックオンも可能となっている。
ゲームのステージは、オリジナル版『Rez』に収録されていたArea 1からArea 5のほか、本作用に追加された「Area X」を搭載。まずはArea 1を体験してみたが、完全リマスターされた微細なグラフィックに目を奪われた。11月10日(木)に発売されるPlayStation®4 Proと4K対応モニターなら、さらにリッチな映像体験ができるはずだが、従来のPS4®でも1080p/60fpsで表現されるグラフィックは圧倒的な美しさだ。また、サウンドも3Dサラウンドにリマスターされている
続いては、本作用に追加された新ステージ「Area X」をVRモードで体験。この「Area X」は初期段階でロックされているが、Area 1からArea 5を60分間プレイすることでオープンする仕組みになっている。
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「Area X」が既存のステージと大きく異なるのは、空間を360度自由に飛び回れることだ。オリジナル版『Rez』に準じたArea 1からArea 5が自動的に前へ進んでいくレールライド型なのに対し、「Area X」での移動はプレイヤーの完全任意。R1ボタンで前進、R2ボタンで後退し、方向はヘッドセットを装着した頭の向きで決まる。視界の外にウイルスがいる場合は、ロックオンカーソル上にサインが表示され、その方向に敵が近づいていることを教えてくれる。
複数のウイルスをロックオンして破壊するたびに、光と音、そしてコントローラーから伝わる振動が共鳴し、トランス感を味わえるゲームプレイは圧巻。宇宙か、海の中か、それとも都市の上空か、形容しがたい神秘的なサイバー空間を飛び回る自由さがじつに気持ちいい。プレイ中はただただ「Area X」の世界に没頭することができた。
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「Area X」で体験する究極の共感覚──水口哲也氏インタビュー
オリジナル版『Rez』から15年、共感覚は新たなステージへ
――『Rez』のVR化は以前からイメージしていたとのことですが、「Area X」の空間を自由に飛び回る仕様も構想されていたのでしょうか。
15年前にレールシューターとしての『Rez』を作った当時、VR化したいという思いはありましたが、その時点で自由に移動するところまでは考えていませんでした。しかし今回、PS VR対応の『Rez Infinite』を開発するにあたって、新しいエリアを作りたい、それはどうあるべきか? と考えたとき、比較的早い段階で自由に動き回れるようにしたいと思いました。
――『Rez』のコンセプトである共感覚の体験は、「Area X」によって新たなステージに到達したと思います。ご自身もその手ごたえをお持ちですか?
そうですね。オリジナル版の『Rez』も15年前当時の表現技術をフルに活かしたものでしたが、技術が進歩した今、やりたかったことをできるようになりました。
『Rez』のビジュアルは、点が線になり、線が面になっていくイメージで作っていて、今回の「Area X」ではさらに無数のパーティクルがサウンドに合わせて色めき、音を見るように、色を聴くような感覚で作りたいと思っていました。
サウンドでは、『Rez』でテクノ風の気持ちよさを出していたのに対し、「Area X」はそれに加え、よりエモーショナルに、感情的に訴えかけるイメージです。体験した方からも「胸にくるものがある」といった感想をいただいていますので、新しい感覚を味わってもらえると思います。
こうした感覚は、ゲームプレイの体験だけでなく、ビジュアルや、サウンドや、いろいろなものが融合して、化学反応を起こして感じるものであって、かつての技術では表現できなかった。VRで全てが3Dになり、フレームや境目のない映像の世界が目の前に広がっているのは、初めての体験になるでしょう。それはゲームの向こう側の世界ではなく、自分がその世界の中に入った自分自身の体験です。
――この感覚を存分に味わうには、やはりヘッドホンを着けてのプレイが推奨ですか?
スピーカーでも迫力は感じると思いますが、音響自体が3Dサラウンドになっているので、ヘッドホンでプレイすれば何かが近づいている、音が移動する、自分の周りで音楽が共鳴している体験をより楽しめます。ただ、特別に高価なヘッドホンである必要はなく、普通の製品でも十分に伝わると思います。
プレイ環境でいえば、ゲームの操作はPlayStation®Move モーションコントローラーにも対応しています。持っている方は、こちらのプレイ感覚もぜひ試してみてください。
――ゲームをプレイしている中で、いわゆる”VR酔い”をまったく感じなかったことも驚きです。
気持ちのいいゲームを作るのに、気持ちの悪い瞬間があってはいけません。開発を担当してくれたMonstars社、Resonair社のスタッフ一同、細かいところまで何度も何度もトライ&エラーを繰り返して実現できたものです。
酔いにはさまざまな要因があり、フレームレートが落ちることはもちろん、人間の空間認識力において、自分が意図しない動きが起こると気持ち悪さを感じることがあります。その意味で、「Area X」の空間を360度自由に飛び回ることは、体験したことがなく自分で予想できない動きになっているはずなのに、気持ち悪くなりません。きっと僕たちには、飛んでみたいという願望やイメージがあって、頭の中では何度も飛んでいるのかもしれないですね。僕自身、この体験をしてみたかったし、気持ちよく実現することができました。
「Area X」に込められた「誕生」の物語
――「Area X」をプレイして、オリジナル版ステージの世界観と異なる感じを覚えました。何かバックグラウンドとしての設定に違いはあるのでしょうか。
オリジナル版『Rez』は、ウイルスに侵された電脳空間を、ハッカーとなって救う設定になっていました。たった1人で戦い、ウイルスに攻撃にされながらも突き進み、最後はマザーコンピュータの「エデン」と出会って救います。こうした電脳空間の物語の一方で、じつは僕たちがみんな経験している「ある旅」の記憶を掛け合わせていました。僕らが受胎する前、生命が結合するまでの物語を描いていました。
そして、「Area X」を作るにあたって考えた設定が「誕生」です。オリジナル版の最後に受胎した瞬間から、誕生までの物語が秘められています。舞台としてイメージするのは2045年、これから技術がさらに進歩して、CPUやAIが人間の能力を超えていくかもしれない「シンギュラリティ(技術的特異点)」の世界です。ゲーム中の表現をどう解釈するかはプレイヤーそれぞれにお任せしますが、「誕生」というテーマが根底にあるので、何か”祝祭”の雰囲気を感じてもらえるのではないでしょうか。
――「Area X」は、Area 1からArea 5を60分間プレイすることでオープンされますが、このような仕様にしたのはなぜでしょうか。
一番の理由は、多くの人に「Area X」を体験してほしいからです。15年前なら、何度も何度もプレイして、長時間かけても攻略したい人がたくさんいましたが、今の時代は決してそうではありません。ゲームに時間をかけることが難しい人もいる中で、体験するまでの制限を強くしたくなかったのです。
『Rez』は多くのファンに支えられ、15年間消えることなく遊んでもらっていたタイトルです。1回で終わらない、繰り返し楽しめる体験を評価していただいていると思っています。今回の新しいステージである「Area X」も、何度も遊んでもらえるものになっていると思うので、ぜひ体験していただきたいですね。
VRでやりたかったことをやれる時代がついにきた
――さまざまなVR機器が登場している中で、PS VRを選んだのはなぜでしょうか。
2001年に発売した『Rez』はPlayStation®2でデビューしましたし、「プレイステーション」に縁のあるタイトルだと思っています。『Rez』はいつか必ずVR化したいと思っていたので、PS VRで出すことはとても自然な流れでした。VR時代の波がやってきたときも、考えたのは「VR化にあたって、完全に新しいステージを見せたい」ということ。PS VRで出すことに疑いはなく、スムーズに、素直に決まっていました。
それに、振り返ってみると、新しいハードウェアが出るとき、そこからどんな新しい体験が生まれるかを常に意識してきました。例えば、2004年に発売した『ルミネス』はPSP®「プレイステーション・ポータブル」のローンチソフトです。ゲームのイメージは、当時のSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント/現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)さんが標榜していた「PSP®はインタラクティブウォークマン」というフレーズから着想を得ています。いつでもどこでも、どんなスタイルでも、音楽を聞くようにゲームを楽しむ。そんな新しいハードウェアに合うゲームを作ろうと考え、音楽とパズルゲームの融合形である『ルミネス』が生まれたのです。こうした新しい技術からのインスピレーションは、僕らにいつも新しいモチベーションを与えてくれます。
――新しい技術であるPS VRのローンチに間に合った達成感も感じていますか?
本当に達成したと感じるのは、たくさんの人の手に渡ったときでしょうね(笑)。『Rez Infinite』を体験した方の反応をじっくり見たいという思いと同時に、これから形にしていきたいアイデアが、すでに進行しています。Enhance GamesはVRにフォーカスするために設立した会社ですし、これからVRの新たな開発を進めていく予定です。
多くのアイデアを実現できる最高に楽しい時代
――15年前はできなかった『Rez』のVR化が実現したように、技術が進歩してできることが増えました。技術を活かすために大規模な組織を必要とする状況も生まれましたが、そこからさらに、インディーズや個人のクリエイターでも物作りができるまで進化が続いています。このような状況に対して、どんなお考えをお持ちでしょうか。
今ほどアイデアを実現できる時代はないと思います。少人数でもスタジオを立ち上げ、パブリッシャーにもなれる時代でもあります。Enhance Gamesもパブリッシャーとしてはインディーズですし、15人ほどの少人数で作った『Rez Infinite』をグローバルに配信できる。人数をかけて大作を生み出すところもありますが、僕の場合は描いたビジョンを実現するだけのサイズでやっているので、それができる今は最高に楽しい時代ですね。
――そんな時代に、一番大切なのはどんなことでしょうか。
ビジョンを実現するには、トライ&エラーの繰り返しが必要です。このプロセスはすんなり成功すれば楽しいのですが、そう簡単にはいきません。途方もないほどトライ&エラーが繰り返される状況であっても、それを楽しめるチームというものが大切だと思います。
あとは、ビジョンに向かうためのノウハウを、経験として持っていることも大事です。僕が『Rez』を作ったころは、軽装でヒマラヤに登っているような感覚でした。目指しているビジョンに辿りつけるかどうかわからなくなって、遭難しそうになったり諦めそうになったりしたこともあります。それが、だんだんと経験を積み重ねていくうちに、ビジョンに向かってクリアに進めるようになりました。ここに至るまで、語り尽くせないほどいろいろな経験をしてきたのも事実ですが。
――そうした経験に必要な時間は、進歩した技術がカバーしてくれるかもしれませんね。
そうですね。僕は以前から、壁として感じていたことが全て解消されるのは、時代が進化して新しい技術が登場するときだと思っていましたし、VR機器をみんなが買えるようになって、実際にそうなりました。このタイミングで、若い才能がたくさん出てきてほしいと思っています。『Rez Infinite』の「Area X」を体験して刺激を受けて、さらに新しい体験や表現に挑戦する人たちが出てきたら嬉しいですね。
もちろん、われわれにもやりたいことはたくさんあるので、早く先に進みたくて仕方ありません(笑)。
――それでは最後に、『Rez Infinite』に期待するユーザーに向けてメッセージをお願いします。
VRで得られる体験は、言葉で伝えることがとても難しいです。僕の感覚としては、通常のモニターで遊ぶゲームに比べて、体験の強さが8倍から10倍になる感じ。実際にやってみないことにはわからないと思います。興味を持った方は体験会などに参加してほしいし、実際に買っていただいた方はいろいろと試してほしい。
これからVRの新しい時代が始まります。僕はさらに新しい体験をたくさん作っていきたいと思っていますので、みんなで盛り上がっていければと思います。
「Rez Infinite Countdown & Launch Event – Powered by PlayStation®VR 試遊体験会」を10月16日(日)まで開催中!
詳しくはこちら!
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Rez Infinite
・発売元:エンハンス・ゲームズ (Enhance Games)
・フォーマット:PlayStation®4
・ジャンル:共感覚シューティング
・発売日:2016年10月13日(木)
・価格:ダウンロード版 販売価格 3,400円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:A(全年齢対象)
※PlayStation®VR対応
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