「E3 2016 PlayStation® Press Conference」において、発売日が2016年10月13日(木)と発表されるなど、いよいよ始動まで秒読み段階となったPlayStation®VR。カンファレンスの発表を受け、高まるPS VRへのユーザーの期待にどう応えていくのか? E3会場において、SIEワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平が語る。
今年に入って、VRへの期待感がより大きなものに
──まずは昨日行なわれたプレスカンファレンスの手応えから聞かせてください。
昨日のプレスカンファレンスでは多くのタイトルを発表することができました。それぞれ長い時間をかけて作り込んできたものばかりでしたから、それらについてきちんとお伝えできたこと、また、皆さんがとてもエキサイティングな反応をしてくれたことに、正直安心しました。
──年内発売予定のVR作品数が50タイトルとのことで、 今回のプレスカンファレンスでも様々なPS VRタイトルが新たに発表されましたが、各タイトルの制作状況はいかがでしょうか?
これまで把握していたタイトルに、今回のプレスカンファレンスで発表された『バットマン:アーカム VR』などのタイトルを加えていくと、いつの間にか50タイトルにまで増えていました。あくまで予定なのでここから増減があるとは思うのですが、PS VR対応タイトルはだいたいそれくらいのボリューム感でローンチ時期を迎えられそうです。
──では、PS VRを買ったけど遊べるソフトが少ない、ということにはならないんですね?
はい。それに、単に数が多いだけでなく、バラエティ感のあるラインナップになっているので、飽きずに遊び続けていただけると思います。
また、ゲーム以外にも映像作品など、さまざまなコンテンツがラインナップされる予定です。これらはその50タイトルに含まれていませんから、実際にはさらに多くのVRコンテンツを楽しめるようになる予定です。
VRにとってゲームは数あるアプリケーションのひとつにすぎません。VRの魅力は”ふだん行けないところに行ける”、”ふだんできないことができる”ことだと思うのですが、そういう欲求は必ずしもゲームファンだけのものではありませんよね?
VRは、旅行が好きな人、音楽ライブに参加するのが好きな人、漫画やアニメが好きな人、さまざまな人に喜んでいただけるものになるはずです。
──PS VRの周辺はわずかな期間で驚くほどの変化が起きていますね。そうした変化の中で、特に印象の強かったことを教えてください。
日本のできごとで言えば、今年に入って、急激にVRに対する認知、期待感が大きくなったことに驚かされました。
3月の海外イベントで発売時期を発表したことに加え、バンダイナムコエンターテインメントさんがお台場にオープンした「VR ZONE Project i Can」など、クオリティの高いVRを体験できる場所が増えてきたことが、その背景にあるのではないかと考えています。
──多くの人が実際にVRを体験したことで、盛り上がりが加速しているということですね。
VRは体験した人と、未体験の人とで感じ方が全然違うアトラクションと言えるでしょう。体験会などでアンケートを採ると、プレイした人のうち9割以上の人が「欲しい!」と言って下さるのですが、プレイしていない人には、何が面白いのかピンとこないようなんです。
もちろん我々も、先日まで行なわれていた企画展「GAME ON 〜ゲームってなんでおもしろい?〜」など、たくさんの場所で体験できる機会を設けているのですが、我々だけの力ではどうしても足りない。1人1台のヘッドセットが必要になるVRでは、E3のような場所に人を集めて映像を見てもらうということができませんからね。
そこで当面はOculusや、HTCなど、VRに携わる他社とも意見交換などで協力しながら、VR体験の拡大を画策中です。現在は業界一丸となってVRの楽しさを広めていくフェーズなのだと考えています。
プレスカンファレンス終了後に行なわれたPS VRタイトルの試遊会。多くの来場者がPS VRを体験していた。
PS VRは”ゲーム体験”そのものを変える革命?
──改めてVRの魅力とは一体どこにあるのでしょうか?
これまでのゲームは、テレビの向こう側にある世界をのぞき込むようにプレイするものばかりでしたが、PS VRでは初めて、その”向こう側”に入り込めるようになりました。それは、これまで誰も体験したことがなかったことです。
VRの登場はPlayStation®によってポリゴンがゲームの世界に持ち込まれたのを越えるくらいの大きなインパクトがあると感じています。ポリゴンは”映像表現”に革命を起こした技術でしたが、VRは”ゲーム体験”そのものを変えてしまうものだからです。
ゲームによってアプローチは変わりますが、その世界に入り込めてしまうという没入感は本当に素晴らしい。ポリゴンがそうであったように、ゲームの作り方にも大きな影響を及ぼしていくことになるでしょう。
そしてゲーム以外にも、例えばコミュニケーションの分野ではアバターや3Dオーディオ技術を使ったVRチャットが実現しているのですが、実際にこれを試してみると、アバター越しでも身振り手振りでその人だということがわかるんです。
これは非常に生々しくて、そこに実在しないはずの”人”を感じる新しい体験です。
──PS VR初期タイトルの中から、VRならではの斬新さを体感できる作品を、いくつかおすすめしていただけますか?
SIE作品の中では『PlayStation®VR WORLDS』に収録されている『Ocean Descent』をよくおすすめしています。リフトに乗って深海に降りていくだけの作品なのですが、ダイビングをやったことがない私でも、まるで海の底に潜っているかのような感覚を味わうことができました。特別なゲーム性がないからこそ、逆にVRの体験に集中できるんですよね。
『PlayStation®VR WORLDS』に含まれる作品では、もうひとつ、『The London Heist』もとても人気があります。ロンドンギャングの一味になってカーチェイスを繰り広げるという内容で、PlayStation®Move モーションコントローラーを使って両手を自由に動かせるのが楽しい。VRの世界に入り込む楽しさを感じられる作品です。
そして、本格派ゲーマーの皆さんにぜひプレイしていただきたいのが対戦ロボットアクションゲーム『RIGS Machine Combat League』。ロボットに乗り込んで自由自在に動き回るという”夢”がいよいよ現実のものになりました。自由度も含め、非常に”攻めた”内容に仕上がっていると思います。
……あとは、やはりバンダイナムコエンターテインメントさんの『サマーレッスン(仮)』も外せませんね。VRを駆使すると、デジタルキャラクターにこれほどまでの存在感を与えることができるのかと必ずや驚かれるでしょう。
仮想現実のキャラクターに見つめられているだけでドキドキしてしまうなんて、最もVRの可能性を体現してくれた作品ではないでしょうか。
──発表当初は発売予定のない「技術デモ」という位置付けだったにも関わらず、多くのメディアで大々的に取り上げられていましたよね。
これまでは発売予定がなかったため、おすすめしにくい作品でもあったのですが、今回、正式にローンチタイトルになったことで、自信を持って推薦することができるようになりました(笑)。
クリエイターたちの熱意が生み出したVRというムーブメント
──VRに対する、ゲームクリエイターの反応はいかがですか? この技術は作り手にとってどのように映っているのでしょうか。
ご存じのように、VRというコンセプト自体はとても昔からあるものです。ですから、今回VR技術が具現化する前から、それを想定した作品作りは行なわれてきました。例えば、『Rez Infinite』を発表した、Enhance Gamesの水口哲也さんもそんなゲームを作っていたひとりです。
水口さんが2001年にプロデュースしたPlayStation®2、ドリームキャスト向けシューティングゲーム『Rez』は、まさにゲーム世界に入り込んでしまったかのような体験を味わえる作品でした。それから15年が経って、やっと技術がそれに追いついてきたということです。
また、お台場の「VR ZONE Project i Can」で所長を務められているバンダイナムコエンターテインメントの小山順一朗さんがおっしゃっていたのですが、1993年に登場したアーケードレースゲーム『リッジレーサー』のセールスコピーが「究極のバーチャルリアリティ体験」だったそうです。
その当時からクリエイターはVRをやってみたくてしかたなかったのだ、と。
──クリエイターにとってもVRは”夢”だったんですね。
海外では、大作志向の大手メーカーではVRにチャレンジできないからという理由で、意欲的なクリエイターが次々に独立して、投資家がそこに出資するという流れも生まれています。
──確かに初期作品のリストの中には、聞き慣れないメーカーの名前がいくつもありました。
国内ではまだそこまでの動きはないのですが、それでもVRをやってみたいということで、現在進行形のプロジェクトの中でリソースをやりくりしてVRに対応していくという動きが起きているようです。
これは私の勝手な想像ですが、プレスカンファレンスでVR対応が発表された『バイオハザード7 レジデント イービル』や『ファイナルファンタジーXV』なども、きっとそんな意欲があってVR対応を果たしたのではないでしょうか。
それに、そもそもPS VR自体が、そうしたクリエイターの熱意によって生み出されたもの。我々の開発も、当時のクリエイターたちがVRをやってみたいとPlayStation®3で実験し始めたのがきっかけでした。彼らの作り手としての感覚、嗅覚が、そこに未来を見出したのです。
こういったボトムアップな、クリエイタードリブンな活動が今のVRを生み出し、支えています。その熱意を無駄にしないためにも、PS VRを成功させねばいけないなと改めて、重大な責任を感じています。
──最後に、PS.Blog読者に向けてメッセージをお願いします。
くりかえしになりますが、VRは体験してみないと、その真の魅力がわかりません。これまでどんなにたくさんのゲームをやってきたという人にも未体験で、想像できないものなのです。
そこで今後は、発売日に向けて、実際にPS VRをプレイしていただける機会をどんどん増やしていこうと計画中です。各地のショップでプレイ可能な実機を展示するほか、体験イベントなども企画し、もっと多くの皆さんにPS VRに触れていただきたいと考えています。
もしご近所でPS VRを試遊する機会がありましたら、ぜひ、お時間を作って体験してみてください。きっと、私が語った意味を理解していただけるのではないかと思います。
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©Sony Interactive Entertainment Inc.
※ゲーム画面は開発中のものです。内容は予告なく変わることがあります。
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